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動じることなく

jcd02.jpg by sashiko
ジャパンカップダート2002-観戦記-
 戦前の予想に反し、スタートから4コーナーに至るまで、レースは非常に緩やかに流れた。これはスマートボーイがアブリーズに絡まなかったこと以上に、どの騎手の脳裏にも「スタートからのハイペースに巻き込まれたくない」という意識が植え付けられていたことの結果である。時としてレースの流れは、このような各ジョッキーの脳裏に描かれた極端なイメージ(偏見)によって大きく影響を受けてしまうことになる。後半は各有力馬が一斉に動いたため速くなったが、誰がこれほどまでの後傾ラップを予測し得ただろう。

 勝ったイーグルカフェに騎乗したデットーリ騎手は、そういったイメージを即座に修正し、レースの流れに合わせて馬のポジションを上げることに最も成功していた。さらに、手応えの良いゴールドアリュールを目標としてアドマイヤドンが仕掛け始めた時にも、動ずることなく自分の競馬を貫いた。道中のポジション上げ、4コーナーでのタメ、この2点が勝負の明暗を分けることになった。アウェイの競馬場でこのような落ち着いた騎乗をするのは簡単なことではなく、まさに世界のトップジョッキーの凄みを見せつけられた。

 イーグルカフェもNHKマイルカップを勝ったほどの馬であり、絶対能力が高いことは疑いようがなく、フランス遠征におけるレースでも3着と見せ場を作っていた。帰国後の調教、特に最終追い切りの坂路でも素晴らしい動きを見せていて、調子自体も上がってきていたのだろう。ガルチ×ヌレイエフという短距離血統の馬が、中距離においてもこれだけの活躍ができるのは、この馬の持つ精神的な強さ、落ち着き故である。世界を知り尽くしたジョッキーと馬の「動じなさ」が一つとなった勝利であり、素晴らしいレースであった。

 1番人気のアドマイヤドンは力を出し切っているにもかかわらず、リージェントブラフに差され、連すら外してしまった。藤田騎手がゴールドアリュールを意識しすぎたきらいはあるが、この馬にとってはこの結果が限界だったのではというのが正直な感想である。朝日杯フューチュリティーSを制した時の馬体重が460kgで、今回のJCダートにおけるそれは453kgと2歳時からの馬体面における成長が全く感じらず、勝ち切れるだけのインパクトはなかった。

 ゴールドアリュールはつくべきところに筋肉がつき、馬体面においては成長を感じたが、それにしても今回は馬体が立派すぎたかもしれない。手応えの割に直線で伸びを欠いたのは、追って伸びるタイプではないということに加え、馬体に余裕があったことに原因があるだろう。もう少し他馬を引き離す形でレースを進めたかったが、展開にも恵まれなかった。いずれにせよ、このまま無事に行けば、来年も日本のダート界を背負っていくべき存在となるはずではあるが。

 リージェントブラフにとっては、多少なりとも力の要るダートであったことが好走の原因だろう。道中も砂を被ることのない絶好の位置を追走することができたし、有力馬同士が意識し過ぎるあまり早仕掛けになったことにより漁夫の利を得ることもできた。プリエミネンスもこのメンバーに入ってしまうと底力のなさを露呈してしまうが、力は出し切っているし、牝馬にもかかわらずダートの一戦級でこれだけ長く活躍していることには頭が下がる。

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