G1を勝つには隙のないレースをしなければならない
岡部幸雄(元)騎手が、現役時代から週間GALLOPに連載している「馬優先主義」というコーナーがある。今週で515回目を数えるという息の長さであるが、私自身、このコーナーを通じて岡部幸雄から学んだことは多い。数々の修羅場をくぐってきた岡部幸雄にしか語りえない示唆に富んだ内容には、時折ハッとさせられる瞬間がある。
今週号の連載で、宝塚記念を制した池添騎手&スイープトウショウのレース振りを評して、「“G1を勝つには隙のない競馬をしなければならない”という言葉を体言した完璧な競馬だった」とする。“G1を勝つには隙のない競馬をしなければならない”とは、当たり前のようではあるが、改めて言葉にされると、G1を勝つことの厳しさ、そしてG1を予想することの難しさに突き当たる。
G1レースでは、トップレベルの馬と騎手が秒単位で凌ぎを削り、勝敗を争う以上、わずかな不利やミスが命取りになる。G1レースにおいてトップジョッキーに求められるのは、好騎乗をすることではなく、隙のないレースをすることである。そういえば、岡部幸雄ジョッキーも現役時代には隙のない騎乗をしていたことを思い出す。
そして、予想をする際には、このことを念頭に入れなければならない。つまり、隙のないレースができる馬、そして騎手を探さなくてはならない。単に強いかどうかだけでなく、隙のない人馬かどうかということを問うてみる必要があるのだ。
さらに、「G1を勝つには、いかに他人に分からない動きをするか、というのも大事だ」と岡部幸雄は付け加える。ここで言う、「他人に分からない動き」とは、レースの流れに溶け込んでいる動きのことを意味する。スタートで出遅れたり、馬と喧嘩したり、極端な位置取りになったりすると、誰の目にも不自然に映り、どうしても目立ってしまうことになる。

今年の宝塚記念で佐藤哲三騎手とタップダンスシチーが目立ってしまったのは、コスモバルクから無理矢理に先頭を奪おうとしたからである。なぜ半ば強引に、佐藤哲三騎手はコスモバルクを交わしに行ったかというと、タップダンスシチーは最後の直線で内埒を頼りに走らせないと伸びない馬であるからだ。4コーナーを先頭で回らないと、内埒沿いを確保するのは困難になるため、強引に交わすのは元々作戦の内だったはず。昨年の宝塚記念でも3コーナー過ぎから先頭を奪い返すというパターンで勝利したが、今年との違いは、馬の行く気に任せて馬なりで交わせたか、そうでなかったかということ。今年のタップダンスシチーは体調が優れず、鞍上の思い通りに動けなかったため、スムーズさを欠き、隙のないレースをすることができなかった。
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