集中連載:「一流の騎手とは」-第8回-
■ペース判断
「ペース判断」とは、“レース全体の流れに対して自分の馬がどのくらいのペースで走っているか”を把握することである。「武豊騎手は体内時計を持っている」という言い方をよくされるが、単純に自分の馬がどれくらいの時計で走っているかどうかであれば、たとえ見習い騎手でもほぼ正確に分かるだろう。調教などで、「ハロン15ー15くらいで行って、上がりを38秒くらいで」という指示どおりに乗ってくることなど騎手にとっては朝飯前なのである。
では、なぜ武豊騎手が「ペース判断」に優れていると言われるかというと、レース全体の流れに対する自分の馬のペースを正確に把握することができるからだ。少し言い方を変えれば、“自分の馬のリズムを崩すことなくレースの流れに乗っていくことが上手い”のである。
それぞれの馬にそれぞれの走るリズムがあり、そのリズムを壊してまでレースの流れに合わせようとしても逆効果になってしまう。レースの流れが速いからといって後ろから行けばいいというものではないし、遅いからといって前に位置すればいいというものではない。あくまで馬とのリズムを大切にした上で、速いペースなら後ろに、遅いペースなら前に位置できればよいのである。自分の馬のペースだけではなくレース全体のペースを正確に、そして瞬時に把握することができなくてはならない。
■仕掛け
「仕掛け」とは勝負どころを見極めて動き出すタイミングである。「仕掛け」が早すぎてもゴール前でバッタリと止まってしまうし、遅すぎても脚を余して不完全燃焼のままレースを終えてしまうことになる。ほんのひと呼吸、ふた呼吸の仕掛けのタイミングの違いが、ゴール前の1完歩、2完歩の差となって勝負を左右することになる。ゴールした時点で、馬に全く余力が残っていないという「仕掛け」が理想である。
基本的には「仕掛け」をギリギリまで我慢した方が馬は伸びるのであるが、馬によってはタメてもあまり伸びない馬もいるので、やはり「仕掛け」のタイミングはその「馬の個性」によっても違ってくる。さらにレースのペースによって早く「仕掛け」ざるを得なかったり、道中で馬群から出られずに「仕掛け」が遅れたりすることもあるだろう。勝つためにはどのタイミングで「仕掛ける」のがベストかという判断を正確にできて、なおかつそれを実行できなければならない。
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