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集中連載:「一流の騎手とは」-第9回-

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■平成17年桜花賞に見る福永祐一騎手の成長
福永祐一騎手がラインクラフトで制した桜花賞は、「ペース判断」と「仕掛け」が見事にマッチングした芸術的な騎乗であった。もちろんラインクラフトの競走能力や器用さがあってこその勝利ではあるが、福永騎手が僅かでも騎乗ミスや判断ミスをしていれば、猛追してきたシーザリオに交わされていたかもしれない。

レースに臨むにあたっての福永騎手の不安は、やはり大外枠を引いてしまったということであったろう。桜花賞は最初のコーナーまでの距離が短いため、外枠から先行するには無理を強いねばならず、ラインクラフトへの負担はその分大きくなる。もし先行できずに中途半端な位置しか取れなかった場合は、道中は終始馬群の外々を回される羽目になる。それを避けるためには、馬を一旦後方まで下げるしかない。つまり、ラインクラフトの負担を承知の上で無理をして先行するか、レースの主導権を渡す覚悟で後方まで下げるか、という2つの選択肢があった。

最終的に福永騎手は、ラインクラフトの行く気に任せて先行しようというスタンスで騎乗した。スタートを切って、もしラインクラフトが行く気を見せれば、それを利用して先行する。行く気になっている馬を抑えても、スタミナをロスするだけである。どうせロスをするならば、ある程度の負担は承知で、先行して好位をキープした方がよいだろう。まずは馬の走るリズムを優先しようというスタンスである。案の定、ラインクラフトはスタートから行く気満々で、外枠から切れ込むようにして、極めてスムーズに好位を取ることができた。考えうる範囲内の、最小限のロスで抑えることができたのだ。

しかし、そのまま馬の行く気に任せ過ぎると、魔の桜花賞ペースにハマってしまいやすい。少しオーバーペースで流れているという「ペース判断」を福永騎手もしたはずで、その状況の中で、ラインクラフトをなだめながら、少しずつレースの流れに乗せていく必要があった。ハイペースだからといって、必ずしも後方に位置するのが正解ではない。ラインクラフトのリズムを崩さないように、レース全体の流れに乗せていったのである。

「仕掛け」は4コーナー手前であった。デアリングハートの手応えが良く、この馬をどこで捕らえるかと、後ろの馬に差されないという2つの命題を天秤にかけて「仕掛け」を判断しなければならなかったはず。結果的には、少し早めのスパートが功を奏して、デアリングハートを捕らえ、追い込んでくるシーザリオを凌ぎきったところがゴール。ラインクラフトの持てる力をゴール時点で全て出し切った、まさに究極の「仕掛け」であった。

福永騎手は馬のペースを崩すことなくレースの流れに乗ることに長けているが、その真骨頂が存分に発揮されたのがこのレースである。この後、ラインクラフトはNHKマイルも制することになるが、桜花賞に比べると実に危なげのない楽な勝利であった。桜花賞は不利な条件を克服する必要があり、そのためには、馬の力だけではなく騎手の技術がものを言ったのである。

【平成17年桜花賞の映像はこちら】

(第10回へ続く→)

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