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「G1勝利の方程式」

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ダンスパートナー、アグネスデジタル、スペシャルウィークと、数々の名馬を調教してきた白井寿明調教師による競馬論である。立命館大学を卒業後、白井調教師は競馬サークルに飛び込んだのだが、厩務員試験の面接で、「なぜ厩務員になりたいのか?」と聞かれ、「調教師になりたい」と答え、面接官に「ここは調教師の面接会場ではない」と言われた(?)異色の調教師である。

競馬論というよりは調教論というべきかも知れないが、さすが調教師と思わせる数々のノウハウが惜しげもなく公開されている。なによりも特筆すべきは、私たち競馬ファンにも分かりやすいアウトサイダー的な発想で競馬が語られていることである。気がついたら馬が隣にいたというような競馬サークルの人間とは違った感覚で、馬を調教することに向き合っているのが手に取るように分かる。

たとえば、休養明けの馬の仕上がりを見るポイントとして、

「10kg以上減ってたり、10kg以上増えてたりする馬はダメですね。(中略)ここで気をつけて欲しいのは、増減は必ずベスト体重と比較するということです。ベストが450kgだとして、レースを使い徐々に減って436kgで放牧に出した場合、460kgで復帰したらプラス24kgと発表されるわけです。でもベスト体重からはプラス10kg。そういう馬が人気にならずに勝ってしまうことがあります。」

と述べている。馬体重など見ないという調教師もいる中で、まるで馬券オヤジがモニターで馬体重をチェックするような視点で仕上がりを確認している。

そして、調教スタイルもまた、最近主流となりつつある「馬なり調教」とは一線を画している。

「軽い調教をやっていて厳しいレースを勝てるならそれに越したことはないけれども、そういうわけにはいかないのが勝負の世界ですから」
「やはり持ったままの調教で競馬に通用するかというと疑問ですね。我々の場合、厳しいレースに対応するにはハードなトレーニングが必要だと思うからこそ、あれだけの調教を課すわけです。かといって馬の競走生命が短かったかというと、そうではないと思います。」

「馬なり調教」に代表される馬優先主義が浸透しつつある中で、競走馬には強い調教が必要だとここまで言い切れる信念は見事である。もちろん、数々の大きなレースを獲ってきている実績と自信が大きな支えとなっているのだろう。実際に、上に挙げたダンスパートナー、アグネスデジタル、スペシャルウィークたちは、白井調教師によって厳しい調教を課されたからこそ、あれだけのG1タイトルを獲れたにちがいない。

さらに、白井調教師は血統通としても知られ、その実体験に基づいた血統論には説得力がある。特になるほどと思わせられたのは、スペシャルウィークの産駒は馬体が大きく出てしまうので、繁殖牝馬は小さい馬を選ぶべきという意見である。産駒の馬体が大きすぎて、脚元に負担が掛かるため、満足な調教を施せず、素質を引き出してやることができないという。

確かに、スペシャルウィーク産駒で活躍したシーザリオ(450kg台)、インティライミ(470kg台)ともに、コンパクトにまとまった中型の馬体である。それに対して、下級条件をウロウロしているスペシャルウィーク産駒を見ると、500kgを超える馬をよく見かける。また、たとえ大型馬でも、夏場になり絞れると走ることもあるという。字ヅラを見ただけでは分からない、これぞ本物の血統論である。

白井調教師の主観的な要素が強く出ている部分はあるが、全体的には、調教について余すところなく語られた良書である。いい意味でダビスタ的感覚を持ち合わせた異色の調教師に学ぶところは多い。

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