
■休み明けのレースをマイナス体重で走った後
②の休み明けのレースをマイナス体重で走った後というのは、休養前に走ったレースにおける体重よりも、休み明け初戦における体重が減っている場合である。
休養に入る前には数戦のレースをこなしているため、馬体重も絞れて、ベスト体重の範囲にあることが多い。究極の仕上げを施された後、疲れが出たため、放牧に出されることも少なくないだろう。そういった最も仕上がった状態の馬体重よりも、放牧をされた休養後に、馬体重が減って出てくるということは決して良い現象ではない。
牧場でのんびりして英気を養った馬は、普通であれば、体もふっくらとして厩舎に帰って来る。そして、いったん馬体が緩んだ状態から再び調教を開始するため、休養明けのレースにプラス体重で出てくるのは当然といえば当然である。
体が減って休養明けのレースを迎えるということは、放牧先での休養がうまく行かなかったのか、帰厩してからの調教を失敗してしまったのか、つまりは肉体面においての調整が上手くいかなかったことを示す。
しかし、そういった状態にもかかわらず、休み明けのレースでは好走してしまう馬も実は少なくない。
なぜかというと、馬体重が減っているため(ここでは敢えて「絞れている」とは書かない)、思っているよりも<仕上がり>が良いからである。いわゆる「急仕上げ」もこれに当たり、調教の中身以上に<仕上がり>が良いことを意味する。それによって、休み明けのレースでも予想以上に走ってしまうのである。
もう一度、ここで忘れてはならないのが、
「当日の馬体重の増減が馬の<体調>に影響を及ぼすのは、その日のレースにおいてではなく、レースの後になる」
という原則である。
通常、休み明けを叩いた次走では上積みが期待される。しかし、休み明けのレースをマイナス体重で走ってしまった場合は、上積みがどころか、かえって逆に<体調>が悪くなってしまうため、次走は思いのほかの凡走をしてしまうのである。
■ナリタトップロードの場合
ナリタトップロードの3歳時と4歳時の秋を比べてみると分かりやすい。
ナリタトップロードは、3歳時の春にダービーを2着して休養に入った。そして、休養明けの京都新聞杯の馬体重は+2kgの486kgで出走。結果はダービー馬のアドマイヤベガに差し切られてしまい2着に負けてしまったが、休み明けを1回叩いたことで、次回の本番菊花賞では万全の状態で出走できる手応えを感じさせた。そして、本番の菊花賞では早めの仕掛けからアドマイヤベガ、テイエムオペラオーを退けて見事優勝した。
4歳になったナリタトップロードは、天皇賞春で3着の後、3歳時と同じように休養に入った。その後、休み明けの京都大賞典ではなんと-4kgの480kgで出走となった。レースではテイエムオペラオーの2着となり、やはりテイエムオペラオーの連勝を止めるのはこの馬であると思われた。
しかし実際は、3歳時の秋と比べても成長しているどころか体は減少しており、休養前のレースからマイナス体重であるように、休養の効果もあまり無く、上積みすら期待できない状態であったのだ。案の定、秋の天皇賞5着、ステイヤーズS4着、有馬記念9着と目も当てられない成績で平成12年のシーズンを終了することになった。
3歳時
京都新聞杯 2着 486kg 【休養前のレースと比べて+2kgでの出走】
↓
菊花賞 1着
4歳時
京都大賞典 2着 480kg 【休養前のレースと比べて-4kgでの出走】
↓
天皇賞秋 5着
つまり、休養明けのレースにマイナス体重で出てきた場合、それ以降のレースでの上積みは期待できないどころか、休養明けのレースよりも体調はさらに下降線を辿ってしまうことが分かる。たとえ休み明けのレースで好走したとしても、叩いた次走ではさらなる良化が望めると考えてしまうのは早計である。休み明けのレースにおいては、わずかな馬体重のマイナスでさえも、その後の明暗を分けることも覚えておきたい。
(次回へ続く→)
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