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集中連載:「サラブレッドはコースで演技する」第8回

Course09_1■仕掛け④「コーナーの数」
コーナーの数は、レースの流れ(緩急)に大きな影響を与える。同じ競馬場でも、使用されるコースによって、コーナーの数は違ってくる。たとえば、東京競馬場を例に取ると、1600mのレースだと2つ、2000mだと3つ、2400mだと4つコーナーを回る設定になっている。有馬記念が行われる中山競馬場の2500mではなんと6つもコーナーを回らなければならない。

回らなければならないコーナーの数が、レースの流れにどういった影響を与えるかというと、数が多いほどペースのアップダウンが激しくなるということになる。「大回り、小回り」のところでも触れたように、必ずコーナーでは多少のスピードダウンをしなければならないため、コーナーが多ければ多いほど、道中で一息入れてペースダウンする場所が増えるということになる。そうすると、自然と全体のペースも落ち着いてしまうことが多く、基本的にはコーナーの数の多さとレース全体のペースの速さは反比例するのである

このことが分かれば、暮れのグランプリ有馬記念が荒れやすいことには納得がいくだろう。コーナーが6つもあるということは、それだけペースが落ちる場面があり、極端に遅い流れになってしまったり、また逆に、ペースが急激に上がったりと、展開のアップダウンが激しくなることがあるということである。この連載の冒頭で、コーナーのない直線だけのレースは力どおりの決着になりやすいと述べたが、つまりはこういうことである。回らねばならないコーナーがあればあるだけ、道中のアップダウンが激しくなり、その分、紛れが生じやすくなるのだ。

photo by fake Place

(次回へ続く→)

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これがヨーロッパである

ハーツクライが欧州最強の2頭に差し返された瞬間、これがヨーロッパであると改めて感じた。あのハーツクライが、後ろから差されたのである。日本であれば考えられないことである。ルメール騎手の仕掛けは、決して早くはなかった。ヨーロッパには、ハーツクライ以上に、最後まで脚を伸ばし続けることが出来る馬がいるということである。

実を言うと、私たち競馬ファンが思っている以上に、ハーツクライがキングジョージを制することは難しいだろうと考えていた。その理由を述べてしまうと、ディープインパクトの凱旋門賞にも水を差しかねないのでここでは黙っておくが、ハーツクライの体調がベストではなかったということ以上に、もっと単純明快で根本的な理由である。ヨーロッパの壁は、私たちが思う以上に厚くて高いのだ。

だからこそ、ハーツクライの健闘には心を打たれた。先頭に立った瞬間は、奇跡が起きたかと思ってしまった。結果が全てではないと思う。挑戦して、敗北したことから生まれることの方が実は多いのかもしれない。関係者には最大級の賛辞を贈りたい。間違いなく、世界競馬における今年のベストバウトのひとつである。

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キングジョージはハーツクライに託す

Heartscry

いよいよハーツクライがキングジョージに挑む。今となっては、ディープインパクトと比較しても、どちらが強いか分からないだけの実力を秘めているが、その飛躍の最大の理由は、これまで物足りなかった後肢(トモ)、特に臀部(でんぶ)に十分な筋肉が付いてきたということである。

それまでのハーツクライは、ヒョロっとして頼りなさを感じさせる馬で、どうしてもレースでは道中で置いていかれてしまうことが多かった。走る資質が高いので最後は差を詰めてくるが、届かず惜敗という走りを繰り返していた。ところが、昨年夏の放牧を境にして、体がシッカリとした上に、後肢(トモ)に豊富な筋肉が付いたのである。

母のアイリッシュダンスも、古馬になってから完成した馬で、血統的にも奥手であったのだろう。奥手の馬を絶妙なタイミングで放牧に出すと、驚異的な成長を遂げる馬がいるが、ハーツクライはまさにそのタイプである。様々な原因で完成されないまま終わってしまう馬も多い中、ハーツクライは見事に晩成の花を咲かせたといえる。

後肢(トモ)が充実してくれば、ジョッキーが無理に押さえ込まない限り、自然な形で先行してしまうのは当然といえば当然である。ルメール騎手が前に行こうと思ったから先行できた訳ではなく、ハーツクライの後肢(トモ)に十分な筋肉が付いてきたからこそ、無理をすることなく前に行けるようになったのだ。別の言い方をすると、前に行こうと決めたのはルメール騎手であるが、もうその時点で、ハーツクライは前に行ける馬になっていたということである。

さて、キングジョージであるが、ハーツクライにとっては苦しい戦いになりそうである。最大の理由としては、ハーツクライ自身の体調が万全ではないかも知れないからである。気候の違うドバイへの遠征は、我々が考える以上にハードなものであり、さらにハーツクライはドバイで勝っているのである。目に見えない疲れは当然あるだろうし、回復してきたとはいえ、輸送によってトモの張りが落ちていたことはとても気になる。それに対し、ライバルであるハリケーンランやエレクトロキューショニストは、前走で負けている分、逆に上積みが期待できる。前走の状態を維持するのに精一杯のハーツクライと、このレースに向けて体調が上向いてくるであろうライバル2騎の差は、ゴール前でどういう形で表れるだろうか。

そして、アスコット競馬場については、1年8ヶ月に渡る改修期間を経て、素晴らしい馬場になったようである。馬場の凸凹も舗装され、何と言っても、絨毯のように走りやすい馬場だと聞く。時計自体は以前と変わらないようだが、アクシデントの少ない馬場であることは間違いない。そもそも、ジャパンカップの2分22秒1という時計が速すぎるのであって、ドバイの2分31秒の時計は普通であるし、極端に時計が掛からない限り、ハーツクライにとってマイナス材料になることはないだろう。欧州の一流馬を相手に、どこまで力と力のガチンコ勝負が出来るか興味深い。この後に続く、日本の英雄のためにも、ハーツクライには先頭でゴールを通過して欲しい。


■出走馬8頭の情報はこちらから→【けいけん豊富な毎日】
■ハーツクライの詳細情報はこちらから→【今日のハーツクライ】

Special photo by Ichiro Usuda(Photostud)

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集中連載:「サラブレッドはコースで演技する」第7回

Course08_1

■コーナーリングが上手くない
コーナーを回るのが上手くない馬も、小回りコースを苦手とする。
どの馬にとっても、スピードを落とさないようにコーナーを回ることは難しいのだが、明らかにコーナーリングが下手な馬は、特にコーナーの進入角度がきつい小回りコースでは、その都度、余分な減速をしなければならず、リズムを崩してしまうことにつながる。いくらスピードやスタミナを豊富に備えていたとしても、コーナーを回るたびに極端な減速をしていては、その能力を十分に発揮することは難しい。  

コーナーを回ることが不得手な大型馬の代表として、アグネスワールドが挙げられる。この馬はイギリスとフランスのG1レースを制したにも関わらず、結局日本のG1レースでは2着が精一杯であった。アグネスワールドは、短距離のレースにおいては相当な能力を持っていて、スピードの絶対値という面においては歴史的名馬と比較しても遜色ない。

それでは、なぜこれほどの名馬が、日本のG1レースの勲章をひとつも獲得できなかったかというと、コーナーリングが上手くなかったことが大きな原因なのである。だからこそ、コーナーのない直線だけのコースで行われる海外のスプリントレースにおいては、持てる力を最大限に発揮し活躍することが出来たのである。馬の個性を的確に把握して、直線レースのG1レースがある海外に連れて行った森調教師も素晴らしいが、その反面、アグネスワールドほどの十分過ぎるほどのスピード能力を備えていたとしても、コース設定によっては、その能力を発揮することが出来ないということも起こり得る。G1レースという舞台では、ほんの少しのマイナス材料のために勝ち切れないということが往々にしてあるのだ。

(次回へ続く→)

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◆第2位指名◆グラマラススカイ(父マンハッタンカフェ)牝

マンハッタンカフェ サンデーサイレンス Halo
Wishing Well
サトルチェンジ Law Society
Santa Luciana
ポインテッドパス Kris Sharpen Up
Doubly Sure
Silken Way Shantung
Boulevard

かつて社台スタリオンステーションを見学に行った時、この馬の父マンハッタンカフェの迫力と美しさに圧倒されてしまった。四肢はスラリと長く、毛艶はピカピカで、並み居る種牡馬たちと比べても遜色ない、いやそれ以上の威圧感をマンハッタンカフェは放っていたのだ。私にとって、まさに理想のサラブレッドであった。同じ馬房にいたシンボリクリスエスも素晴らしい雰囲気を持っていたので来年はぜひ狙ってみたいが、今年の新種牡馬の1番手としては、マンハッタンカフェを挙げてみたい。

マンハッタンカフェは、サンデーサイレンス産駒としては珍しい部類に入る典型的なステイヤーで、本格化も遅く、クラシック路線の最後の菊花賞にてようやく頭角を現した。当然、ダービー時点で終了してしまうPOGのルールでは狙いにくい種牡馬である。さらに、マンハッタンカフェの肉体の特徴を見ても、馬体の大きさの割にパーツパーツのジョイントが緩いので、完成までに時間が掛かってしまったという経緯がある。産駒にもその特徴は遺伝しているはずで、脚元がキチッと固まってからでないと、強い調教は課すことができないだろう。

以上のことを考慮に入れた上で、それでもマンハッタンカフェの産駒を指名するとすれば、仕上がりが比較的早く、馬体も大きく出にくい牝馬を狙ってみたい。色々な資料から探してみたが、現時点での動きや雰囲気を見て、グラマラススカイ(母ポインティドパス)に決めた。落ち着きがありそうで(ボーっとしている?)、馬体のバランスもよく、動きも柔らかい。来年デビューでも一向に構わないので、焦らずに調教して、なんとかオークスに間に合ってくれれば幸いと思う。

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集中連載:「サラブレッドはコースで演技する」第6回

Course07

■大跳びの馬 
コーナーがきつい(小回りである)ことによって、能力を発揮できない馬もいる。大跳びの馬、もしくはコーナーを曲がるのが上手くない馬にとっては、コーナーが少なく、緩やかなコースの方がレースをしやすい。大跳びの馬というのは、フットワーク、つまり1歩1歩のストライドが大きく、小脚が使えなかったり、不器用だったりする馬のことである。この反対が、ピッチ走法で走る馬と考えてもらえれば分かり易いだろう。手脚を伸ばして、綺麗なフットワークで走る、その長所がコーナーのきついコースでは逆に仇となってしまうのである。

もちろん、跳びが大きいからといって小回りコースで全く能力を発揮できないということではないが、大跳びの馬は、幅が広く、コーナーも緩やかなコースの方がノビノビと走り、より能力を発揮することができる東京競馬場のような広いコースは、大跳びの馬にとってはプラス材料になるのである

平成12年のダービーを制したアグネスフライトは、器用な脚が使えないタイプであった。小脚(ピッチ走法)をうまく使えないタイプと言い換えてもよい。そのため、全体の流れに上手く乗って好位を進むことができず、幅が狭くコーナーもきついコースではあまり上手く立ち回ることができない。ダービー直前のレース、京都新聞杯(京都2000m内回り)では3~4コーナーにかけて道中追っつけ通しでなんとか勝利したが、次走のダービーではさらにペースが上がることを考えると、いささか不安の残る前哨戦であった。

しかし、本番のダービーでは道中も楽に追走し、4コーナーでの手応えも抜群で、最後は東京競馬場の長い直線を味方にして、皐月賞馬のエアシャカールを差し切ったのだ。もちろんエアシャカールの体調が万全ではなかったことや、アグネスフライトの持っている能力が優れていたことは言うまでもないが、東京競馬場の2400mという広いコースによって、アグネスフライトの能力が最大限に発揮されたのである。

もしダービーが小回りの小倉競馬場2400mで行われていたとしたら、違った馬がダービー馬の称号を得ていたかも知れない器用な脚が使えないタイプのアグネスフライトにとって、東京競馬場の広々としたコースがプラス材料になったことは間違いない

(次回へ続く→)

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集中連載:「サラブレッドはコースで演技する」第5回

Course06

■仕掛け③「大回り、小回り」
大回り、小回りとは2種類のカーブ、「複合カーブ」と「スパイラルカーブ」のことである。

Hukugoucurve_1大回りの「複合カーブ」とは、直線が集まってそれが全体としてカーブになっているものと考えてほしい(右図は分かりやすくしたもの)。直線で構成されているため、複合カーブではあまりスピードを落とさなくてもコーナーを回ることができるその反面、コーナーでスピードを落とすことが出来ないため、競走馬にとっては息を入れることが難しくなる


Spiralcurve_1小回りの「スパイラルカーブ」とは、円のように回っていくカーブである(右図参照)。スパイラルカーブで外に振られないように回るためには、どうしてもスピードを落とさざるを得ないスピードを落としながら回るため、競走馬はコーナーで息を入れることができる

つまり、同じ距離を走るにしても、途中のコーナーで一息つける小回り(スパイラルカーブ)のコースと、そうできない大回り(複合カーブ)のコースでは要求されるスタミナが違ってくる。すべてのコーナーが「複合カーブ」である東京競馬場が、タフなコースであると言われるゆえんはここにある。

■コーナーがきついとペースのアップダウンが激しくなる
コーナーが大回り(複合カーブ)か、小回り(スパイラルカーブ)によって、展開が大きく影響されることがある。人間でも同じことなのだが、馬もコーナーを曲がる時には、必ずスピードを落としながら曲がる。そうでないと、どこに吹っ飛んで行ってしまうか分からないからである。

かつてサクラエイコウオーという馬がいたが、この馬は新馬戦で抜群の手応えで4コーナーを回りながら、コーナーを回りきれずに逸走(正規のコースから外れてしまうこと)してしまったのだ。後には重賞を勝つほどの馬であったが、あれほどの勢いでコーナーから飛んで行ってしまった馬を後にも先にも私は見たことがない。

話を元に戻すと、コーナーがきつければきついほど、それだけスピードを落として曲がらなければならないため、コーナーのきつい(小回りの)コースでは、ペースが落ち着きやすいことになる。しかし、一概にコーナーがきついと全体のペースが緩くなってしまうかというと、必ずしもそうとは言えない。なぜなら、小回りのためコーナーでペースが落ち着きやすく、先行している馬に有利な流れになることを騎手が意識しすぎることがあるからである。そのため、焦って普段より早く仕掛けてしまうことによって、結果的にペースが速くなってしまうこともあるのだ。

いずれにせよ、コーナーがきつい(小回りである)ことによって、ペースのアップダウンが激しくなり、展開にも大きな乱れを与えることが少なくなく、小回りのコースでは展開的な紛れが多くなるという結果につながる

photo by fake Place

(次回へ続く→)

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今、信じること

Ibelieve_1

先日、NHKの「プロフェッショナル-仕事の流儀-」という番組で、将棋の羽生善治の特集を観た。羽生善治は弱冠25歳にして栄光の頂点に立ってしまうのだが、その後の知られざる苦悩の10年間で、羽生善治の思考法は大きく変わったという。10代や20代の頃に比べ、衰えた記憶力やひらめきの力を、全体の流れを読む「大局観」によってカバーするというのだ。1000手先を読むと称された羽生善治が、今はあえて手を読まない手を読まないでどう決断するかというと、自分の中から浮かび上がってくる直感を信じるというのだ

ここ最近、年齢や経験によって、予想する際の思考法が変わっていかなければならないことを、私も痛切に感じていた。この変化は、どの道の達人たちも、必ず通ってきている道である。もちろん、私が達人ということでも、年を取っているということでも、競馬の道に熟練しているという意味でもないが、それでもこの春のG1シリーズの自分の不甲斐なさを見ると、ついにそういう時期が来たのかと感じていた。ちょうど私の考えていた思考法の変化と、羽生善治のいう「大局観」の意味合いが一致したので、まさに的を射た気持ちで番組を見ていた。

私も、10代、20代の頃は特に、レースに出走してくる全ての馬を念入りに調べ上げていた。5走くらい前のレースからビデオでチェックして、Gallopや競馬ブックを引っ張り出しては、騎手や調教師のコメントを比較する。調教をつぶさに見たり、パドックで直前の気配を確認したりもしていた。これらの作業を1頭1頭行い、それを材料に縦にも横にも比較するのである。将棋で言えば、全ての手を読んでやろうという気持ちで、私も競馬の予想に臨んでいた。

しかし、この予想法(思考法)には、いつか限界が来るのだ。知識や経験が増えるにつれ、もちろん精度は高くなるのだが、それ以上に、不安や怖れが増幅してしまう。今までであれば考えもしなかった、ありとあらゆる可能性が見えてきて、比較をすればするほど複雑になり、訳が分からなくなってしまう。知識や経験が増えたとしても、必ずしも良い結果には結びつかないのだ。考えれば考えるほど、知れば知るほど当たらないという経験は、誰しもが味わっているのではないだろうか。

全ての手を読んでから、ひとつの手を選ぶという思考法をボトムアップだとすると、直感的に思い浮かんだひとつの手の正しさを読んでいく思考法はトップダウンである。私たちの思考法は、たとえどの道を志そうとも、ボトムアップからトップダウンへと向かわなければならない宿命にある。羽生の言うように、直感はこれまでの経験から浮かび上がってくる以上、いきなり初心者がトップダウンの思考法を用いることは難しいだろう。徹底的なボトムアップから初めて、少しずつ意識的にトップダウンへと思考法を変えていくべきなのである。そして、どれだけ徹底的にボトムアップに取り組めたかによって、トップダウンの精度が違ってくるのではないかと、今ひそかに信じている。

P.S 
同じく羽生善治の思考法に興味を持つあらたさんへ。この番組、ビデオに録画して2回観てしまいました。最後の局面で羽生の手が震える場面ですが、ゴール前で単勝を買っている馬が抜け出してきた時の興奮と同じなのでしょうね。私は全身が震えますから(笑)。

photo by fake Place

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集中連載:「サラブレッドはコースで演技する」第4回

Course05

■仕掛け②コースの広さ
「コースの広さ」 コースの広さとは、コースの幅のことである。以下に、中京競馬場を含むG1レースが開催される5場の、芝コースの最大の幅員(最もコースを広く使ったときの幅)を挙げておく。

東京競馬場中山競馬場京都競馬場阪神競馬場中京競馬場
41m 32m 35m 25m 28m

コースの幅がレースにどういった影響を与えるかというと、幅が狭くなればなるほど、レースがゴチャつきやすく紛れが多くなり、コースの幅が広ければ広いほど、紛れがそれだけ少なくなる。

コースの幅が狭いと、各馬の間隔も狭くなり、横にいる馬にぶつかられたり、前をカットされたりなど様々なアクシデントに遭遇する可能性が高くなる。また、馬にとっても、幅の狭いコースで走ることはストレスになる。

その反対に、幅の広いコースでは、思わぬ不利を被ることも少なく、各馬のびのびと走ることができるため、持っている能力を発揮しやすい。コースの幅が広ければ広いほど、紛れがそれだけ少なくなるのは当然である。

さらに、コース幅が狭いと、移動柵を大きく使って、芝の養生スペースを取ることができない。たとえば、最大幅員が25mの阪神競馬場の場合(下図参照)、16頭立てのレースに必要な19~20mの幅員を確保するには、わずか5mの養生スペースを取ることしか出来ない。

Souro(阪神競馬場)

そうすると、たとえばCコースからAコースへと替わった時には、内の5mがグリーンベルトで、外の20mが荒れ馬場ということになってしまう。コース幅が広い東京競馬場や京都競馬場であれば、C、DコースからAコースへと替わった場合、芝コース全体が良馬場に替わる。つまり、コース幅が狭いことによって、内を通った馬は伸びて、外を回された馬は失速してしまうというような、トラックバイアスが生まれやすいということになる。そして、トラックバイアスが大きければ、それだけ紛れも多くなることはご存知の通りである

(次回へ続く→)

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◆第1位指名◆フサイチオフトラ(父ブラックホーク)牡

ブラックホーク Nureyev ノーザンダンサー
Special
シルバーレーン Silver Hawk
Strait Lane
ダンシングサンデー サンデーサイレンス Halo
Wishing Well
ダンシングキイ Nijinsky
Key Partner

この馬を指名したくて、POGを始めたと言っても過言ではない。ダービー馬のペーパーオーナーになるという目的から、血統的には少し外れるかもしれないが、そんなことは知ったことではない。なんとしても、たとえペーパーでも、この馬のオーナーになってみたかったのだ。

理由は単純で、私はこの馬の父ブラックホークの大ファンなのだ。ブラックホークよりも強い馬はたくさんいるが、ブラックホーク以上に“好き”という感情を私が抱いた馬はかつていない。正確に言うと、“好き”というよりも、“尊敬している”といった表現の方が近いかもしれない。少年が偉大なスポーツ選手を尊敬するように、私もブラックホークというサラブレッドを尊敬する。

ブラックホークは普段は牛のように大人しいが、いざ走り出すと、闘志をむき出しにして驀進(ばくしん)する。走ることを決して嫌がらず、常に前を向いて走り続ける。そんなブラックホークの男らしさに、当時の私は惚れ込んでしまったのだ。平成11年のスプリンターズSはかなりの主観的な自信を持って臨み、ゴール前でアグネスワールドを差し切った時には、人が変わったように叫んだ(らしい)。

とはいえ、この馬には大きな心残りもあって、それはブラックホークにとって最後のレースとなった安田記念で、この馬を買わなかったことである。高松宮記念(1200m)2着→京王杯SC(1400m)3着というステップレースでの走りを見て、いくらブラックホークでも安田記念を勝つことは難しいと考えてしまったのだ。

安田記念は府中競馬場で観戦していたのだが、直線で大外からブラックホークが飛んできた時には、自分の馬券が外れたことなどどうでも良くて、「あいつが来た!」と何度も叫びまくった(らしい)。とにかく、ブラックホークが勝ったことが嬉しくて嬉しくてたまらなかったのだ。当時の私には、ブラックホークの勝利はまさに奇跡に思えた。論理的でしかなかった自分の予想を反省し、頭で考えるだけでは馬券は当たらないことをブラックホークに教えてもらった。

そんなこんなで、ブラックホークが種牡馬入りしてからずっと、その産駒に期待していた。血統的にも、ヌレイエフとの相性が良い、母父サンデーサイレンスという配合は理想的である。フランスでデビューした母ダンシングサンデーは、競走馬としては結果を出せなかったが、消耗していない分、母としての活躍に期待できる。また、ブラックホーク自身がコロンとした体型なので、父サンデーサイレンスで伸びのある牝馬と配合することによって、距離にも融通が利くようになるだろう。立ち写真を見る限りでは、父ブラックホークが出ているが、この夏を越して、もう少し馬体に伸びが出てくれば最高である。そして、なんと言っても、父ブラックホーク譲りの「男気」を、このフサイチオフトラからは感じる。

Fusaichiofftra

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P-1グランプリに参戦!

「ダービー馬のオーナーになることは、一国の宰相になるよりも難しい。」

その難しさは、ペーパーオーナーとて同じ。

しかし、難しいと言われれば、チャレンジしたくなるのは人の常である。

そこで、なんとしてもダービー馬のペーパーオーナーになるべく、今年はPOG(ペーパーオーナーゲーム)に挑戦してみたい。どこに参戦しようかと迷っていたところ、Eisukeさんやnozowebさんの紹介もあって、【P-1グランプリ】に決めた。東西・牡牝の制限なく10頭まで選ぶことが出来るし、締め切りが9月3日までというのもありがたい。血統の勉強もしながら、これからゆっくりと時間を掛けて選んでいこうと思う。

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集中連載:「サラブレッドはコースで演技する」第3回

Course03

■仕掛け①「左回り、右回り」
左回り(半時計まわり)と右回り(時計回り)では、実際のレースにおいてどのような違いが生じるのであろうか。

人間は足を交互に前に動かすことによって走ることが出来るが、4本足の馬は左右どちらか2本の脚を軸にして走らなければならない。左脚を軸にする走り方を「左手前」、その逆を「右手前」と呼ぶ。左回りだと「左手前」で、右回りだと「右手前」でコーナーを回るが、実際のレースではスタートからゴールまでずっと一方の手前で走り切ってしまうことはまずない。片一方の脚だけを軸にして走っていると当然負担がそちら側だけに掛かってしまうため、コーナーを回りながら騎手が意識的に手前を変えさせたり、馬が苦しくなって道中で手前を変えてしまったりするからである。

道中を「左手前」で走れば、直線では「右手前」、道中が「右手前」であれば、直線では「左手前」で走ることになる。たとえば、「左手前」で走るのが得意な馬がいるとすると、左回りのコースでは、道中は得意の「左手前」で進むことができるが、直線では「右手前」で走ることになる。「左回りの方が行きっぷりがいい」ということは“左手前で走る方が右手前で走るよりも得意である”ということを意味する。

しかし、たとえ道中の行きっぷりがいいとしても、不得意な「右手前」で走る直線での伸びがいいかどうかは別問題である。結局のところ、右回りでも左回りでも、どちらかの手前だけを使って走るわけではなく、基本的にはどちらの手前もバランス良く使って走ることになるのである。

■グラスワンダーは左回りが苦手ではなかった
グラスワンダーは、2歳時にG1朝日杯フューチュリティーS(当時の朝日杯3歳S)を勝利した。その後骨折してしまい、10ヶ月に及ぶ休養後、毎日王冠で復帰し5着。次走のアルゼンチン共和国杯では、6着に敗れてしまった。しかし、休養後3戦目の有馬記念で見事に復活し、その頃から、左回りは苦手で右回りに強いと言われるようになった。

安田記念でエアジハードの2着に敗れた時にも、左回りの東京競馬場が敗因のひとつに挙げられた。しかし、この馬の場合、たまたま敗れたレースが左回りの東京競馬場であったということで、断じて左回りを苦手としていたということではない。 実際にグラスワンダーは2歳時に左回りの東京競馬場で強い勝ち方をしているし、4歳時の京王杯SCにしてもまた然りである。さらに5歳時には、得意であるはずの右回りの日経賞、宝塚記念を惨敗している。 このことからも、グラスワンダーは右回りが得意で、左回りが苦手という説にはなんの根拠もないことが分かる。東京競馬場で負けたレースには他の原因があったと考えるべきで、左回り、右回りはこの馬の走る能力にほとんど影響を及ぼしてはいなかったのである。

Course04

■左回り、右回りは競走成績に影響を与えない
グラスワンダーの例からも分かるように、この馬は右利きであるとか、左利きであるという認識は専門家による恣意的なものであって、実際の競走においてはそれほど意味を持たない。もし明らかに左右どちらかの回りで走らないといったことがあるとすれば、それは利き脚の問題ではなく、後に詳しく述べるコースの幅やコーナーの角度が関係しているのではないだろうか。たとえば中山競馬場では走るのに東京競馬場では走らないといった馬のケースでは、それは左回り、右回りが原因ではなく、コースが大回りか小回りかいうことに理由を求めた方が良いかもしれない。

つまり、ほとんどの馬にとっては、コースが右回りか左回りかということはそれほど競走成績には影響がない。最も分かりやすい違いなので仕掛け①として挙げたが、実際のレースを想定して予想をする上では、左回りか右回りかはほとんど気にする必要はないだろう。

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「馬を走らせる」

Umawohasiraseru_1 2star_2

騎手としてよりも、調教師としての小島太が私は好きだ。私の中にいる騎手小島太は、サクラの馬に乗って大レースを華々しく勝つこともあるが、それ以上に、半ば乱暴に見える騎乗をして、人気馬を凡走させてしまうイメージが強い。我慢が利かないというか、自分の馬の強さを証明してやろうという騎手のエゴが先行しての早仕掛けが多かったように記憶している。鎬を削った岡部幸雄や柴田政人らと比べると、騎手としての才能で劣っていたことは、おそらく本人も認めるところなのではないだろうか。

しかし、調教師としての小島太は才能に溢れている。マンハッタンカフェを筆頭に、育て上げた数々の名馬はご存知の通りであるが、その調教法には開業当初からキラリと光るものがあった。馬なり調教に固執するわけでもなく、坂路調教バカでもなく、当時の実力派トレーナーの調教法のエッセンスを見事に融合しながら、小島太流にアレンジしていた。悪く言えばいいとこ取りの調教法であるが、その馬その馬に合わせた調教方法を柔軟に取り込んだ、非常にバランスのいい調教である。

騎手として成功した人間は、プライドが邪魔をして調教師としては成功できないことが多いが、小島太調教師に限っては当てはまらないだろう。おそらく私たちが持っている華々しくて豪快なイメージとは違い、実に繊細で柔軟な、如才のない性格の持ち主ではないだろうか。厩舎を経営するという視点を持ち、スタッフを育てることに重きを置く。そして、何よりも馬を愛してやまない。この本の全編を通して、小島太調教師のそういった人間性が伝わってくる。そういったことも含めて、小島太は騎手ではなく、調教師に向いているのではないかと思う。もし万が一、私が馬主になって馬を預けるようなことがあったとすれば、小島太厩舎も候補のひとつに入れてみたい。

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不達、休眠、不在について

7月1日から配信開始しておりますメルマガ「馬券のヒント」ですが、皆さまのもとに毎日届いていますでしょうか?本日ある方から不達のご連絡をいただき、調べてみたところ、きちんとメアドも登録されており、こちらのシステムでは配信完了になっておりました。届いているはずの方に届いていないようです。さらに、6件の休眠と、13件の不在が確認されました。不在はアドレスの登録違いかもしれませんが、休眠って一体なんでしょう?私はあまりシステムに強い方ではないので、なぜ届かないのか不明です。どことは申しませんが、安い配信システムを使っているからでしょうか?

せっかく登録していただいたにもかかわらず、競馬の世界を共有できないことは、私の本意ではありません。もしきちんと届いていれば、先週の函館スプリントSもラジオNIKKEI賞も獲れていたかもしれませんが、怒らないでくださいね(笑)。それは冗談ですが、約束どおり届いていない方がもしいらっしゃいましたら、お手数ですがご連絡ください。私がバックナンバーを直にお送りします。それから、メアドを変更される方もいらっしゃいましたら、言ってくださいね。

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集中連載:「サラブレッドはコースで演技する」第2回

Course02_2■「7つの仕掛け」
現在、JRA(日本中央競馬会)には10の競馬場が存在する。そして、ひとつの競馬場の中でも芝、ダートのコースがあり、芝・ダートコースの中でも、距離によってスタート地点が異なるため、どれひとつとして同じ設定・性格のコースはない。

そういった考えのもとJRA(日本中央競馬会)の全競馬場のコース設定を合計すると、約110という数字が出てくる。もちろん全てのコース設定・性格について精通しておくに越したことはないが、約110ものコース設定・性格を把握しておくのは難しいだろう。

しかし、競馬場のコースは、実は「7つの仕掛け」によって構成されている。つまり、「7つの仕掛け」さえ知っておけば、いつ、どこでも、たとえ海外の競馬場に遊びに行った時でも、そのコースの設定・性格について把握することができ、予想をする上でのひとつの大切な要素として加えることが出来るようになる

「7つの仕掛け」とは以下のとおりである。
①回り(右回り、左回り)
②コースの広さ(幅)
③大回り、小回り
④コーナーの数
⑤直線の長さ
⑥坂があるか、平坦か
⑦1コーナーまでの距離

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答えや過程はひとつじゃない

Wttakaraduka06

はじめに言っておくが、私は決してアンチ‐ディープインパクトではない。そうではなく、ディープインパクトという馬の能力に心底惚れているし、チームディープインパクトをどこまでも応援している。そして、私が生きている間にはもうお目にかかれないかも知れない、日本競馬の至宝の走りを、目に焼き付けておきたいと常々思ってもいる。

それでも、私が宝塚記念において本命◎を打たなかったのは、レース前の時点では、ディープインパクトが負ける可能性は十分にあったからだ。今でもそう思っている。もちろん、どれだけ強い馬であろうが、負ける可能性はあるのだが、特に今回の宝塚記念は十分にあったのである。

私としては、むやみやたらとこのようなことを言っているわけではなく、皐月賞、ダービー、菊花賞の3冠レースは実際に本命◎を打っているし、本命を打たなかったのは、有馬記念と天皇賞春、そして今回の宝塚記念である。皐月賞、ダービー、菊花賞は、「勝つだろう」という気持ちで本命◎を打ち、有馬記念、天皇賞春と宝塚記念では、「負けるかもしれない」という意味で本命を打たなかった。

もし、「負けるかもしれない」という気持ちが強いならば、たとえ結果的にそれが空論であったとしても、思い切った思想(予想)を展開するべきなのである。そして、思い切って挑戦してみたことによって得るものも大きい。

私は宝塚記念が終わった後、ディープインパクトが調教で走らなくなった理由がようやく分かった。調教で走らなくなる理由として、「体調が悪い」と「走る気力が失せている」の2つを私は挙げたが、ディープインパクトの場合はどちらでもなかった。ディープインパクトは、調教で人間が乗って走ることに慣れてしまったのだ。よく言われる、ディープインパクトは頭が良いから、調教とレースの違いが分かるということではなく、毎日繰り返される日常的な調教に慣れてしまって、それほど本気で走らなくてもいいことが分かってしまったのである。

これはディープインパクトだからということではなく、どんな馬でも、ちょっと気を抜くとサボろうとするし、適当に走ってサッサと厩舎に帰ろうとする。それを、人間側が手を変え品を変え、走る気にさせるのである。ディープインパクトはあまりにも厩舎にいる期間が長すぎて、調教で走ることに飽きてしまっている。おそらく、厩舎にいること自体がストレスにもなっているに違いない。

レースでは緊張して走ったので、悪い結果は出なかったが、ディープインパクト自身の気持ちの面での変化は明らかである。その変化がディープインパクトの走りに影響を与える可能性は、宝塚記念のレース前には確かに存在した。競馬は結果が明らかになるゲームであるため、正しい答えやそこに至る思想(予想)の過程もひとつしかないと思われがちだが、そうではないだろう。ディープは格好よくて、私は格好悪かったが、その思想(予想)の過程は間違ってはいなかった。

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集中連載:「サラブレッドはコースで演技する」第1回

Course01
■コースは舞台装置である
想像してみてほしい。

もし、全てのレースが、直線だけのコースで行われたらどうなるだろうか?

たとえば、2500mの有馬記念も、3200mの天皇賞春も、直線だけのコースで行うのである。思い浮かべるだけで、壮観な光景である。

どうなるかというと、有馬記念も天皇賞春も、どのレースでも、強い馬があっさりと勝ってしまうことになるだろう。直線だけのレースでは、展開、コース取り、コース適性などによる有利・不利がほとんど生まれないため、弱い馬が強い馬を出し抜くことが難しいからである。

いつも強い馬が勝ってばかりでは、馬券に対する私たちの興味は半減してしまうかもしれない。ある程度の紛れがあってこそ競馬は面白いし、そこにドラマが生まれるのであろう。つまり、どのようなドラマが演じられるのかは、どのようなコースで行われるのかと密接なつながりを持っていて、コースとは、競馬を演出してくれる数々の仕掛けが施された舞台装置なのである。

舞台装置を知らずして、演出されるレースを予想することは難しい。

そして、競馬というドラマをもっと楽しむためにも、私たちはコースについて知っておかなければならない。

(次回へ続く→)

Photo by 【fake Place】

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