夢のような日々を忘れない
ディープインパクトの敗因について、今さら述べる必要もないだろう。今回の凱旋門賞に限っては、戦いが終わってから敗因を挙げることには全く意味がない。なぜなら、そんなことは戦前から誰もが分かっていたことだからだ。あれだけから騒ぎをしたマスコミが、負けたとなるや敗因を口にするのは、当事者でない私でも腹が立つ。「よくやった」と褒め称えるだけでよいのではないか、と個人的には思う。まあ、そんなことはごく些細なことではあるが。
それよりも、私が最も恐れるのは、今回の敗戦によって、「ディープインパクトをもってしても世界の壁を破ることが出来なかった」という結論に達してしまうことだ。
そもそも、世界の壁とは何なのか。かくいう私も錯覚していたのだが、凱旋門賞を世界一決定戦と位置づけてしまうこと自体に大きな問題がある。凱旋門賞はヨーロッパ一を決定するレースかもしれないが、決して世界一を争うレースではない。
何度も言うが、ヨーロッパと日本の競馬は全くもって別物である。それぞれの土俵で求められている資質が違う以上、どちらが最強ということはない。戦う場所が異なれば、勝者も違ってくるのだ。ここを取り違えてしまうと、日本近代競馬の結晶であるディープインパクトの敗北という悲観論に達してしまう。日本競馬のレベルが既に世界に追いついたことが明らかな今、凱旋門賞を最終目標に据えてしまうこと自体がナンセンスである。日本の最強馬が凱旋門賞を制することによって世界の最強馬となる、というマッチョな思想からは、悲劇の結末しか生まれないだろう。
私たちは堂々と胸を張って、ディープインパクトの健闘を称えるべきなのだ。
競馬はまだまだ社会的には傍流にすぎないが、今回は大きな注目もあった。そんな中、私たちはディープインパクトが無事に出走できるよう祈り、その走りに一喜一憂することができたのだ。もしかすると自分たちもが認められるかもしれないその日を待ち望み、心をひとつにディープインパクトを応援できた夢のような日々を、決して私は忘れない。
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Comments
競馬についてもっと俯瞰的な視点を持てれば
ヨーロッパと日本の違いだった、ということで
悔やまれることではない・・と思えるのでしょうけど・・。
胸のうちにくすぶるこの割り切れない気持ちによって
自分がどれほどディープを応援していたか、
ディープを信じていたか、を思い知らされています。
ディープの勝利に喜び、ディープの敗戦に涙する・・
そういう機会を与えられたこと自体が今の時代に
ディープと出会えた幸運なんだなぁとつくづく思います。
Posted by: けん♂ | October 02, 2006 at 10:31 PM
私も治郎丸さんと同じ気持ちで、素直に健闘を称えたいと思ってます。
ほとんど全ての馬からマークされていたにもかかわらず、堂々と正攻法で戦った結果の三着ですから十分胸を張って良いと思います。
でも、現役続行で来年再挑戦って話も出てきているようですし、そうなったらまた期待してしまいますね。
Posted by: 菊池 潤也 | October 02, 2006 at 11:30 PM
こんにちは。
自分もディープインパクトの走りは素晴らしいパフォーマンスだったと思いますし、凱旋門賞を世界最高峰の芝レースと位置づけること自体ナンセンスだという治郎丸さんの考えに同調します。結局、凱旋門賞は今年も3歳馬が勝ち(直近13年で11頭)ました。これってゴルフにたとえれば、10打ほどのハンデをもらったジュニアの選手が優勝して、レディースティーから打たせてもらった藍ちゃんが二位、タイガーウッズが三位ということですよね。NHKが積極的に放送しているように、最近スポーツとしての一面を認められつつある競馬ですが、最高峰と目されるレースがこんな結果では、治郎丸さんが言われるように、競馬が社会的傍流から脱することなど永遠にできないように思います。これを他山の石として、JRAはジャパンカップの性齢によるハンデを撤廃し、競馬は単なる博打ではないことを世界のスポーツファンに示して欲しいですね。
Posted by: 山川世界 | October 03, 2006 at 03:23 PM
高低差10メートルのコースでは、
斤量差の3.5キロは相当な違いでしたね。
しかし、これを承知で出たわけなので、いいわけにはできませんが。
個人的にはエルコンドルパサーとディープインパクトの力量差はないと
思っていたので、勝ちきるのは難しいと頭ではわかっていたのですが、
後ろから差し切られたときには、ショックでした。
騎乗に関しては、一度は差し返していることを考えると、
仕掛けのミスではなく、単純な力負けだと思いました。
Posted by: さとし | October 03, 2006 at 04:56 PM
けん♂さん
私も勝って欲しかったですよ。
あらゆる違いを乗り越えて。
ただ、やはりヨーロッパと日本の競馬は違いましたね。
>ディープの勝利に喜び、ディープの敗戦に涙する・・
>そういう機会を与えられたこと自体が今の時代に
>ディープと出会えた幸運なんだなぁとつくづく思います。
→私もそう思います。
そして、私たちにとっては、これが全てだと思います。
これからもお互いに競馬を楽しみましょうね。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 03, 2006 at 10:51 PM
菊池さん
ありがとうございます。
日本の最強馬ディープインパクトは、その力を十分に見せてくれたと思います。
また彼の雄姿が日本でも観たいですね。
来年も挑戦するようであれば、それはそれでまた応援しましょう!
Posted by: 治郎丸敬之 | October 03, 2006 at 10:54 PM
山川世界さん
そうですよね。
欧米を一番上の基準として考えることから、私たちはまず抜け出さなければなりませんね。
山川世界さんのように、「凱旋門賞オータムハンデ」とまでは言いませんが(笑)、それぐらいの意識でいいのではないでしょうか。
その馬場やコースに合った馬を連れて行くのが、競馬の国際化だと思います。
私としては、日本でG3すら勝てなかった3歳馬が、凱旋門賞をあっさりと勝ってしまうことが、競馬が真の意味で国際化された将来はあるかもしれないと思っています。
まあ、凱旋門賞だけを取ってみると、ハンデ差については、もうすこし検討の余地はあると思います。
世間の注目が集まっただけに、あらゆる意味で残念なレースでした。
それでも、ディープインパクトのおかげで楽しかったですね。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 03, 2006 at 11:02 PM
さとしさん
私も単純な力負けだと思っています。
あれだけ、一瞬で来られてしまいましたから。
もちろん、あの条件の下での力負けということですが。
ディープインパクトが弱かったということではなく、ヨーロッパではもっと適材適所の強い馬がゴロゴロしているということだけです。
これからも競馬は続きますので、お互いに楽しんでいきましょうね。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 03, 2006 at 11:05 PM
安易な騎乗で勝てるほど欧州最高峰レースは甘くない.
レースビデオを見ればわかるが,外に持ち出すために手綱を引きブレーキをかけ下げている箇所がある.単純に考えれば下げただけの距離ロス程度で済ませられるかもしれない.しかし,このブレーキをかけたポイントが非常にまずいのだ.3コーナーに差し掛かる手前の一番坂のきつい場所.しかも登りきる前だ.自転車で坂を登っている途中にブレーキをかけることを考えれば,馬に対して,いかに厳しい負担を強いたかということは想像できるだろう.
武騎手はレース後,「もう一つギアが入らなかった」とコメントしている.果たしてそうだろうか.同斤量で前年の覇者ハリケーンンランやブリーダーズカップ勝ち馬のシロッコには先着している.走らなかったとは到底思えない.アウェー,レース間隔,斤量など過酷な条件のもと,直線半ばで一旦は抜け出し,差されはしたが僅差の勝負に持ち込んでいる.ディープ自身は少なくとも自分が果たすべき仕事は行っているはずだ.
武騎手は敗因を馬のせいにするのではなく,自分の安易な選択にあったということを認めるべきである.その上で,今後に向けて新たな決意を示し精進していけばよい.
Posted by: DeepMonitor | October 05, 2006 at 01:30 PM
うーん。確かに凱旋門賞を勝てば世界最強という訳では無いんですが、日本、ヨーロッパという違う環境、違う馬場、それらを克服して、ヨーロッパ1の格式高い凱旋門賞を勝てば、世界最強と言って過言では無いと考えます。
ディープが負けたからと悲観になるのは、確かに気がかりです。来年にピークが過ぎていなければ再挑戦をして欲しい。
出来れば、有馬記念等は度外視して、早めに遠征。
キングジョージから凱旋門。フォア賞から凱旋門等のステップを踏んで欲しい。
あ、それから負けた原因に斤量を言うと、凱旋門で一番強かったのはプライドになりますね。
牝馬で1.5Kしか差が無い訳ですから。
しかし、敗戦した後すぐに武騎手にインタビューをしに行った合田さんでしたっけ?ちょっと非常識でしょ?って感じたのは私だけですか?
Posted by: はやひで | October 06, 2006 at 08:37 AM
はやひでさん
お久しぶりです。
確かにおっしゃる通り、それが出来れば最強なのですが、その考え方はあまりにも独りよがりすぎるのではないでしょうか。
たとえば、将棋の名人に、チェスでもチャンピオンになって来ることを求めるくらいの無理を感じます。
もちろん、不可能ではないですし、それが挑戦だと言われればそれまでなのですが。
こちら側からしか世界を見ていないにもかかわらず、欧米が一番という基準を持っている日本人特有の裏腹な感じです。
最終目標をそこに据えてしまう感覚が怖いなと、今回の凱旋門賞でディープを応援して思ったことなんです。
でも、もし行くならば来年も行って欲しいですよ(笑)。
私も矛盾していますね。
だから、はやひでさんの気持ちもよく分かります。
あと、合田さんも仕事とはいえ、話したくないことを察知したら引くべきだったかもしれませんね。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 06, 2006 at 09:31 PM
本当に残念でしたね…
エルコンドルパサーの時、蛯名騎手が「レース前から、勝たせないという雰囲気があった…」と言っていましたし、楽観視する友人達の尻目で、「ディープでも厳しいんだろうなぁ…」とは思っていましたが…終わってみると、残念だった…という気持ちしか残りませんでした。
武騎手によるとレース中気負いすぎていた…ということだそうですが、映像でも確かに私の眼にも菊花賞のように、スロー過ぎてかかってる感じに見えました。ただ、外国の競馬はスローで直線勝負というのが大レースではほとんどみたいですので、対応できなかったというのは、仕方のないことなのでしょう…
ディープインパクト、お疲れさまでした。
Posted by: シャチ | October 07, 2006 at 12:46 AM
はじめまして、ゆうといいます。その場にいたものとして少し書かせてくだい。
ゴール直後、ディープ、騎手、関係者全てがたとえ200%いえそれ以上であっても一頭でヨーロッパ(はじ今回はフランスかな)の歴史、伝統、プライド・・に勝つことができるのだろうか・・一番にそれを感じました。ぐさっと胸に刺さるものがありました。
日本に帰りこのブログに出会い治郎丸さんの文に触れ、ほっとしました。
まさに凱旋門賞の実質はそうだと思いました。フランス競馬に20年以上関わっている現地の日本人のかたもこの凱旋門賞は勝ち馬が一番になったけれど、だからといって一番強いと思う必要はない、フランスの競馬はこうゆうものだと言われました。
でも競馬の歴史、伝統が長いヨーロッパでは凱旋門賞をトップと言い、それを勝って最強と言うのも現実・・彼らのプライドでしょうか。今回はそれを守るのに必死だと感じました。それに馬はアメリカで買うが日本が向いている方向はヨーロッパということも感じました。
レースは日本的に言うと美しくなく、日本の競馬を見慣れている者には腹立たしい思いがありました。でもそれが彼らの競馬。同じ土俵で戦うなら一頭で立ち向かうのは辛い・・日本も複数頭でいかないととも思いました。それでも・・心の中にディープには全ての不利を乗り越えて再びあの場でリベンジして欲しいと思う気持ちもあり・・矛盾ですね。
ディープも武騎手も全ての関係者の頑張りは肌で感じました。馬大好き、競馬大好きな一ファンとしては「ここに連れてきてくれてありがとう」でした。
30日、1日と武騎手の気合には近寄りがたいものがありました。ペリエ騎手が気を使って武騎手をホローしている姿は日本人としてはなんか嬉しい思いでした。それにペリエ騎手の家族が日の丸を振っていたとか・・・・。
ロンシャン競馬場では一年で一番人が入るのが約5万人の凱旋門賞(イギリス人が1万人)、前日が二番目で約1万人・・・従業員より観客が少ないなんてざらとか。馬券は街のPMUで買うみたいです。一般人は馬券のみなのかな・・。
Posted by: ゆう | October 07, 2006 at 05:23 PM
シャチさん
ディープも武騎手も気負っている部分があったのでしょうね。
それは仕方ないと思います。
だって、海外に行ってレースをしているんですから。
あれだけの注目もありましたし。
ただ、残念ですが、私は悲観はしていませんよ。
こういう経験をして、馬はさらに強くなっていくんですから。
年内で引退するのはもったいないですね。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 07, 2006 at 06:42 PM
ゆうさん
はじめまして。
ゆうさんは、現地に行かれ、肌で感じてきたんですね。
私も、凱旋門賞出走を楽しみにしていたひとりですが、ひとつだけ違和感があったことを書いてみました。
今回は世間も大きく注目しましたし、それゆえに日本の競馬の行方を左右するかもしれないと期待半分、不安半分といったところでした。
>フランス競馬に20年以上関わっている現地の日本人のかたもこの凱旋門賞は勝ち馬が一番になったけれど、だからといって一番強いと思う必要はない、フランスの競馬はこうゆうものだと言われました。
→おそらく、そういうことだと思います。
といいながら、私もゆうさんと同じく矛盾している気持ちも持っているのですが(笑)。
頭と心が少しズレているというか…
それでも最後には、こんな夢のような日々をありがとう、ということですよね?
ゆうさんもお疲れ様でした。
また遊びに来てくださいね。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 07, 2006 at 06:55 PM
こんばんは。私も現地観戦組です。
帰国後、VTRで最後の直線での岡部さんの故大川さんばりの
応援を聞いて、現地で同じようなこと叫んでたなと苦笑い
をした次第です。
実際、レース直後はかなりガッカリはしましたが、要注意と
思っていた3歳馬にやられるのはある程度想定はしていた
ので、去年の有馬記念の後に比べれば冷静になるのに時間は
それほど要しませんでした。
でも本当にレース前は、素晴らしく晴れたロンシャンの馬場
を見て『これならディープも他の不安要素を全て乗り越えて
くれるかも』と思わずにいられませんでした。
でもそれは本当に大変なことだったんですね。
レースでのディープは、折り合っていたとはいえ、
少し力んだ走りに見えました。交わされてから再度差し返そう
と一瞬伸びた脚、最後は力尽きてプライドにすら交わされて
ゴールを迎えたその姿を見て、本当にディープはこの状況の
中で全力を尽くして頑張ったんだなぁと思いました。
一ファンの私ですらこれだけ口惜しかったのですから
努力してきた関係者の方々の気持ちは察するに余りあります。
池江調教師もそれ故のインタビューだったと思います。
(後日、ディープでの再挑戦ではないと念押しされたそう
ですが…)
金子オーナーのコメントを見つけることはできませんでした
が、やはり私たち以上のものであると信じたいです。
一生に一度会えるかどうかわからないこの馬での挑戦の結果
が、このままで終わるのはあまりに寂しいし、そういう意味
ではこの経験を次に活かして来年はさらに大きくなって世界
を相手にしてほしいですね。
ロンシャンのターフビジョンに映ったディープ、
ホントいい顔になったと思いました。
Posted by: タマネギ | October 08, 2006 at 11:42 PM
タマネギさん
ありがとうございます。
タマネギさんは、本当にディープが好きなんですね。
私も負けるかもしれないと思いつつも、心から応援していました。
岡部さんの掛け声には、グッとくるものがありましたし。
>一ファンの私ですらこれだけ口惜しかったのですから
>努力してきた関係者の方々の気持ちは察するに余りあります。
→おっしゃる通りだと思います。
レースが終わった後で、とやかく言うのはあんまりだと思います。
ディープを始め、全ての関係者が全力を尽くしての結果ですから。それは力が足りないということでは決してなく。
競馬ファンの夢を乗せた挑戦を、現地で見ることが出来たタマネギさんは幸せものですね(うらやましい)。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 09, 2006 at 02:34 PM