再掲:コンピュータは競馬を超えるか
1997年に、チェスの世界王者であるカスパロフ氏が、スーパーコンピューター「ディープブルー」との対戦に敗れてしまったのは有名な話である。「ディープブルー」は、1秒間に2億通りの指し手を読み、局面ごとに平均14手先までの変化を検索して決めることができる。カスパロフ氏は対局を終えたあと、「新しい知性を感じた」と感想を語ったそうである。誕生から約半世紀を経て、コンピューターが人智を超えた瞬間であった。
また、日本古来のゲームである将棋においても、凄まじい勢いでソフトの開発が進んでいる。現在のコンピューターのレベルはアマチュアの4段程度とされているが、2010年には、将棋の第一人者である羽生善治とコンピューターの真剣勝負が実現するとされる。チェスや将棋に限らず、オセロや囲碁など、人間の歴史が作り上げてきた全てのゲームにおいて、コンピューターが人間の知性を脅かす時代がついにやってきた。
もちろん、競馬においても、たくさんの予想ソフトや予想支援ソフトが開発されている。果たして、競馬の予想というゲームにおいても、コンピューターが人間を超える日がすぐそこまで来ているのだろうか。競馬新聞の馬柱欄を、人間の予想ではなく○○○というソフトの予想が占める日が。もしかすると、百発百中のソフトが開発され、競馬がギャンブルとして成立しなくなるなんてこともあり得るのだろうか。
私の結論から言うと、競馬の予想において、コンピューターが人間を超えることは難しく、百発百中のソフトが開発されることは未来永劫にない。なぜなら、競馬の予想は無限を扱うからである。
チェスは限られたマス目の中で限られた駒(石)を動かすクローズド(閉鎖系)なゲームである。限りなく無限に近い変化を持つ将棋でさえも、煎じ詰めれば有限のゲームである。それに対し、競馬はオープン(開放系)なゲームであり、血統、馬の能力、展開、コース設定、馬場、枠順、騎手の心理などの要素に加え、数々の外的な要因が複雑に絡み合う。そこから生まれる変化はほとんど無限であり、どれだけコンピューターの計算能力が進歩しようとも扱いきれないのだ。
かつて、興味本位で予想ソフトを試してみたことがあったが、二度とは使う気にならなかった。うまく表現できないが、予想がトンチンカンなのである。人間性がにじみ出る的外れな予想ではなく、非常に機械的に的外れな予想なのである。あるプログラミングに沿ってポンと弾き出した、もの凄く短絡的な予想には、競馬という世界に対するリスペクトは全く感じられなかった。
誤解されると困るが、私は決して予想ソフトを批判しているわけではない。優秀な開発者が、ある要素だけに限定して作成すれば、そこそこのモノができる可能性は否定しない。たとえば、血統に焦点を絞って分析をして、「このレース条件に強い血統の馬」を弾き出すことはできる。また、全体の走破時計や道中のラップを用いて、各馬の「スピード指数」のような数字を示すこともできる。
しかし、それらは競馬の全体から見るとごくごく一部分に過ぎない。ある一部分が分かったからといって、全体の予想が当たることはない。予想が当たったように見えても、それは偶然に結果が予想に当たっただけである。勘違いをしていると、もう次のレースではカスリもしない予想をすることになる。
競馬の予想の本質とは、「わからないことをわかる」ということである。人間にもコンピューターにも分からない神の領域がある、ということを分からなければならない。近い将来、コンピューターは人間と同じ、もしくはそれ以上の思考能力持つことになるかもしれない。そうして、コンピューターが進化すればするほど、競馬予想の本質が明らかになるだろう。競馬の奥行きや深さは測り知れないのである。
追記
ここ最近思うところがあって、およそ1年前に書いたエントリーを再掲させていただきました。個人によって見解の差異はあるとは思いますが、将棋というゲームで、コンピューターが羽生善治を負かすことは未来永劫にないと私は思っています。それは、コンピューターと羽生善治の間には、ひとつの大きな違いがあるからです。そして、私たちが競馬という無限を扱うゲームに臨むためのヒントも、そこに隠されています。「21世紀の競馬戦略ライブ」では、その違いについても詳しくお話いたします。
■「21世紀の競馬戦略ライブ」の詳細はこちら
→ http://www.glassracetrack.com/blog/2006/10/21_f915.html
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Comments
極端な話、オッズだけをみて買うこともできますよね。
JRA-VANを使っているので、マイニング予想をいつもみていますが、
少頭数のレースのときはまあまあ当たっているという感じです。
買い方によって回収率も変わってくるのでなんともいえませんが。
マイニングだと明日のMCSだとロジック、マイネル、シンボリになっています。
次郎丸さんのようにアタマだけを当てるというのは、
かなり難しいことですね。
でも、自分でアタマだけを予想したほうが、当たっても外れても面白いものですね。
次郎丸さんの明日の予想、楽しみにしています。
Posted by: さとし | November 18, 2006 at 10:48 PM
こんばんわ、yasuです。
私はコンピューター予想はあまり好きではないですね。
デジタルといっても、デジタルのソフトを作っているのは結局人間というアナログですもんね。完璧なコンピューターはありえないと思います。
指数予想家と言われる人たちも最終的には自分のさじ加減で買い目を決めていますし。
競馬は自分のアタマで考えるのが一番ですよね!
Posted by: yasu | November 19, 2006 at 12:49 AM
ども。
その大きな違いは非常に気になるところですね。
私がひとつだけ思うなら、大一番に負けたときにも今度勝てばいいと思って打てる羽生3冠の意思の強さですね。
来週のプロフェッショナルで未公開トークシーンが放送されますのでご覧あれ。
明日は雨模様ですね。
アグネスラズベリを考えていましたが…。
馬券はやる気がおきませんのでダイワメジャーに強い勝ち方してもらいたいとこです。
では。
Posted by: あらた | November 19, 2006 at 01:05 AM
いつもありがとうございます。
マイニング予想も、結果がたまたま当たるレースがあるのでしょうね。
>でも、自分でアタマだけを予想したほうが、当たっても外れても面白いものですね。
→おっしゃるとおりです。
結局、なんだかんだ言っても、自分で予想しないと競馬やる意味あるんですか?ってところですよね。
最近、さとしさんの予想を拝見しませんが、また思い切った予想をお聞かせくださいな。
Posted by: 治郎丸敬之 | November 19, 2006 at 10:54 AM
あらたさん
どーも。
この大きな違いは、本当に大きいですよ(笑)。
確かに意思の強さも大きいですが、人間にはその反対に、物怖じしてしまうという欠点もありますよね。
コンピューターは、常に一定の手を打てますから。
ひとつだけ言うと、人間の脳とコンピューターの思考の決定的な違いということでしょうか。
あっそれから、渋谷で働く社長の藤田’sバーというブログで、羽生3冠との対談が見れます。
結構面白かったですよ。
プロフェッショナルもまた見てみようかな。
Posted by: 治郎丸敬之 | November 19, 2006 at 11:00 AM
yasuさん
コンピューター予想は、安心を求める人のためにあります。
ラストミニッツマンになってしまった人は、最後に頼れる数字とか指標を外に求めてしまうんです。
ただ、そうすると競馬の本質から離れていくことが直感的に分かるからこそ、自分のさじ加減で補うのでしょう。
自分の頭で考えるのは苦しい作業ですが、その分、喜びは大きいですよね。
Posted by: 治郎丸敬之 | November 19, 2006 at 11:04 AM
こんばんは。
私は将棋のことは全く詳しくありませんが、コンピュータは終盤は強いが、序盤が課題といわれていますね。治郎丸さんがコンピュータでは未来永劫羽生善治を負かすことは出来ないと言われるのには、きっと大きな違いがあるのでしょうね。
競馬に関して言えば、私も百発百中の予想ソフトは絶対にありえないと思いますし、絶対に勝ち続けられる競馬必勝法も無いと思います。
私は競馬を初めて13年ですが、今でも競馬は楽しいですし私に新しいものを与えてくれます。ただ、馬券を買わなければいいのでしょうが、やはり買ったほうが断然楽しい。そしてやる以上は馬券で負けたくないという気持ちが根底にあります。
でも少なくとも私は、調子が悪くなってくるとラストミニッツマンになりがちです。その思考にはぶれが生じます。ぶれない事の重要さをわかってはいてもぶれる。この弱さを補完するのに指数、私で言えば位置取り指数があるのだと思います。
ただ、一つだけ治郎丸さんと意見が違う所があります。治郎丸さんが予想ソフトを使った時、競馬という世界へのリスペクトが全く感じられなかったと思われたところ。
他人の作った予想ソフトを使った場合。例えが悪いですが、ある答えのわからない試験で全く判らないから隣の人の解答を写すような感じでしょうか。そしてその答えの真意がわからないし、解答も間違っているかもしれない。
ところが、自分でソフトを作った人にとっては違って見えるのではないでしょうか。そこには自分の競馬に対する考えや経験を乗せている。無限を扱う競馬に対して真正面から勝負する手段としてコンピュータを使うというのなら、違うことが言える場合があるかもしれないと思います。
それでもね、やっぱり自分の大局観と読みで臨む方が100倍面白いという思いは最近さらに強くなりました。
あー長くなってごめんなさい。
Posted by: nozoweb | November 19, 2006 at 09:57 PM
nozowebさん
ありがとうございます。
nozowebのおっしゃることは、凄くよく分かりますよ。
最後には、自分の音は自分で奏でるしかないのですよね。
いつか、位置取り指数の特集をやらせてください。
Posted by: 治郎丸敬之 | November 20, 2006 at 01:52 AM
どうもです~
私もコメントさせていただこうかなと。
たしかにコンピューターのデータというのは人の手を経たものであります。実際に走るのはお馬さんですし、人が埋め込んだデータ以上のものはCPUからはでてこないと思います。
でも、コンピューターの方が上ということも実はあるんですよ。
それは「感情が無い」ということです。
自分の例えで済みませんが、私は秋華賞でアサヒライジングを
狙いました。様々な要因がありますがやはり一番なのは「自分が
好きな馬だった」ということなんですよね。
しかし、これが得てして馬券では外れにつながるのですw
「好きだから」という理由で、他の強い馬を差し置いて頭で買ってしまう…勝負事は感情を入れてしまったら負けとよくいいますが、
本当にそういうことは良くあるのです。
毎回強い馬が勝つわけではありませんので、そう単純なものではありませんが余計な情を挟まなかった分だけ当たりにつながるということもありますよね…アフラックではありませんが、私も買うときは今よりもっとよく考えて買ってみようと思います(^^
長文失礼致しました。
Posted by: しゃち | November 20, 2006 at 11:18 PM
しゃちさん
ありがとうございます。
「感情」ですか。確かにそうですね。
コンピューターは外れるのが怖いとか思ったりしませんから、常に一定の状態でいることが出来ます。
これは人間との大きな違いでしょう。
しかし、「感情」があるからこそ、人間には創造が出来ると思っています。
「感情」もプログラミング出来るという人がいますが、まだまだ先の話か、私はおそらくないと思っています。
もし万が一、コンピューターに「感情」をプログラミングすることが出来るとすると、人間以上のものが出てくるかもしれませんね。
「好きだから」という馬券も、私はたまにはありかなと思っています。
「好き」には何か理由があるからです。
今週はジャパンカップ、JCダートと2本立てですね。
しゃちさんの狙いは決まりましたか?
私もよーく考えて買いたいと思います。
お金は大事ですから(^^
Posted by: 治郎丸敬之 | November 21, 2006 at 07:17 PM
治郎丸さん
連レス失礼致します。(JCのほうに書こうと思いましたが、
続きということで主旨とは違いますがこちらに致しました。)
今年は友人が忙しいそうですので、どちらも自宅で観戦です(^^
「感情」こそが馬券の買い方を十色にしている源泉ではないかと
思いますよ。私はしょっちゅう後で悔やんでますが(TT
いつも冷静に買いたいとは思ってるんですが…性分ですねw
好きな馬を買うのは楽しいですよね(^^
それで競馬ができるというのは素晴らしい事だと思います。
でも、大金で勝負するときはよく考えたほうがいいですよね(TT
(私はたいてい100~1000円単位で治郎丸さんのように万単位はとても買えませんが…)
JCの狙い目ですけど、一応決めております。JCはもうディープ→ハーツ→ドリパス、ウィジャ、フリードニアのどれか、3連単1点で勝負しようと思っております。
JCDは混戦ですよね。馬券的には非常に面白いと思いますよ(^^今のところはヴァーミリアン、サンライズバッカス、JBC組が
有力と見ております。ヴァーミリアンは初G1でも流れに乗れました。今回はおそらく2分8秒~9秒くらいになると思いますが、
休み明けは返って疲れが無くていいかもしれません。
また、ローテーションはサンライズバッカスが最も良いですね。今年は1叩きでココを狙ってきました。あとはJBC組でしょうか。3歳馬はどうでしょう?私はフラムドパシオン、マンオブパーサーの順だと思っておりますので3歳馬は様子見したいと思っております。G1の流れにいきなり乗れるとはちょっと思えないので…あっさり勝たれてしまうかもしれませんけどね(^^
またもや長文失礼致しました(汗
参考になるとは思えませんが、一応こんな感じですw
Posted by: しゃち | November 22, 2006 at 12:35 AM
たびたびすみません、シーキングザベストを入れ忘れてました…
この馬も要チェックです。
今のところ短距離しか走っていませんが、父や産駒は中距離が
ベストの馬でしたのでこの馬にも注目です(^^
Posted by: しゃち | November 22, 2006 at 12:44 AM
しゃちさん
おっしゃる通りですね。
「感情」こそが馬券を十人十色にしていると、まさに私もそう思います。
極端に言うと、全ての馬券は、その人の感情から生まれてきているものです。
私たちはその感情とやらをコントロールすることもプログラミングすることも出来ませんが、成り立ちを知っておくことで、何か役に立つこともあるのではと試行錯誤中です(笑)。
ジャパンカップは3連単勝負ですか??面白そうですね。
JCダートは、シーキングがどんな走りをするのかも注目ですね。
今週は寝ている暇がないですね…w
Posted by: 治郎丸敬之 | November 22, 2006 at 01:04 AM
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