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もっと好きに

好きな馬がいると、世界はキラキラと輝いて見える。私が初めて本当に好きになったのは、ヒシアマゾンという牝馬であった。黒鹿毛の馬体は薄い皮膚で覆われていて、その艶やかな黒さがほんのりとした色気を漂わせる。いざ走り出すと、完歩の大きなダイナミックなフォームで他馬をごぼう抜きにする。スタートがあまり良くないため後ろから行くことが多かったが、3コーナーから4コーナーにかけてスッと上がっていくあのスッという瞬間がたまらなく好きだった。

ヒシアマゾンが有馬記念で負けた時は、ショックで言葉が出なかった。比喩としてではなく、何か言おうとしても、言葉が口から出てこなかった。まるで世界と私が断絶されてしまい、その溝を言葉で埋めようとしても埋められないような感覚であった。華やかなりしクリスマスツリーと、田原成貴のインタビューを傍目に、当時付き合っていた彼女と一言も口を利かずに、船橋法典から高田馬場まで地下鉄で帰った記憶がある。

彼女が走った他の全てのレースにも、その時代の私のありとあらゆる感情が詰まっている。クリスタルカップの鬼脚は今でも語り草にしているし、ニュージーランドT4歳Sの府中のゴール前で、誰よりも叫んでいたのは私である。エリザベス女王杯は心臓が止まるかと思ったし、京都大章典ではその強さに酔いしれた。マイルまでならばナリタブライアンにも勝てると信じていたので、友人と言い争いをしたこともあった。どのレースも10年以上前のことであるが、その時の心象風景は、まるでつい昨日のことのように浮かんでくる。

好きな馬がいるということは、本当に素晴らしいことだと思う。投資競馬とか、勝ち組とか、競馬予想ソフトとか、いろいろと喧しい世の中であるが、1頭の馬の走りに自己投影をしてしまうことは、競馬を楽しむことの本質に最も近いのではないだろうか。あらたさんのヒシアマゾンに対する淡い思い出や、バランスオブゲームに対するUPUPさんの想いや、onyxkissさんのスウィープトウショウに対する思い入れを目の当たりにして、1頭の馬を好きになることがほとんどなくなってしまった自分に気付かされた。競馬に対する私の後ろめたさを癒してくれたディープインパクトにはとても感謝しているが、彼は私が自らを自己投影するには強すぎる馬であった。好きな馬は好きになろうとして見つかるのではなく、なぜか好きになってしまうものだ。好きな馬ができたことで、今を好きになり、人を好きになり、そして世界が輝き出すのだ。

私は、競馬の世界を心から楽しめているのだろうか。


■UPUPさんの読者参加型ブログはこちら
http://blog.livedoor.jp/upupdesu/
■onyxkissさんの妄走ブログはこちら
http://love.ap.teacup.com/onyxkiss/
■あらたさんの親バカ(笑)ブログはこちら
http://blog.livedoor.jp/aratazzz/

ちなみに、2006年に私が最も好きだった邦楽ポップ曲はBankBandの「to U」でした。最初に聴いた時は普通の曲だなぁと思ったのですが、聴けば聴くほど味わい深い名曲です。あなたの好きな馬、好きだった馬との想い出と一緒にご試聴くださいな。

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2006年度JRA賞授賞式

報告が遅くなりましたが、先週の22日に行われた2006年度JRA賞の授賞式のパンフレットの表紙を、Photostudのあの写真が飾りました。いやー、スゴイことですよ!本当におめでとう!

Photostudとは、ディープインパクトの菊花賞以来、壁紙企画でコラボレートさせてもらい、おかげさまで、毎回クオリティの高い壁紙を皆様にプレゼントすることができました。Photostudの本質は写真とデザインを融合させたその芸術性にありますが、もちろんレース写真だけを切り取らせても右に出る者はいないでしょう。「ガラスの競馬場」も、また何らかの形で一緒に活動していきたいと思っています。

Jyusyousiki

上に掲載したのが当日配られたパンフレットです。黒くつぶれた書体のところは、実は金色の文字でした。そのままをお届けしたかったのですが、スキャニングすると、反射してどうしても黒くつぶれてしまいます(残念…)。とても薄いパンフレットですが、この中には競馬に携わる人々の熱い想いがたくさん詰まっていると感じました。

JRA賞の授賞式のパンフレットの表紙には、もちろんその年に撮られた写真の中で一番良いものが選ばれるわけですが、この一枚には本当に多くの人々の気持ちが凝縮されていますね。疑惑や屈辱を自らの走りで振り払った、ディープインパクトの勇ましい表情も輝いています。武豊騎手や池江調教師、並びに関係者の方々は、どんな気持ちでこのパンフレットを手に取ったのでしょうか。

■JRA賞の授賞式のパンフレットの表紙を飾ったPhotostudのHPはこちら
(こんなにも劇的で感情に溢れたレース写真を見たことがありますか?)
→http://www.photostud.com/

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騎手の上手さは勝率に表れる

Kisyunogijyutu日本人ジョッキーの中では、武豊→安藤勝己→横山典弘→岩田康成騎手の順に上手いという仮説を私は持っている。これはあくまでも現在の仮説であるし、「どの騎手が上手いか」という問いは、「どの馬が強いか」という問いと同じくらいナンセンスであることは百も承知である。

しかし、あえてその仮説を証明すべき数字(データ)を色々と探し出してみたところ、最終的には案外と身近なところに落ち着いた。

やはり、騎手の総合的な上手さというのは勝率に表れるのである。

2006年度勝率
武豊 0.225
安藤勝己 0.192
横山典弘 0.171
岩田康誠 0.132

リーディングの順には並んでいないことが分かる。武豊騎手はリーディングも勝率も1位という断然の存在であるが、リーディング4位の安藤勝己騎手が勝率では2位に食い込んでいる。リーディング5位の横山典弘騎手も、勝率では3位にランクアップする。もちろん、ケガによる騎乗数やエージェントの問題も含まれるが、安藤騎手にしても横山騎手にしても600鞍以上を騎乗してのデータだけに、統計学的に考えても、ほとんど誤差のない数字であろう。

そして、勝率という観点から見ると、横山典弘騎手と岩田康誠騎手の間に、実は2人のジョッキーが存在する。藤田伸二騎手と内田博幸騎手である。藤田騎手の勝率は0.141で、内田騎手の勝率は0.138である。こうして見ると、その人間性はカッコで括るとしても、藤田伸二騎手は素晴らしい技術を備えたジョッキーであることが分かるし、全く乗り方の違う地方競馬と中央競馬を股にかけての数字だけに、内田博幸騎手の評価は高くて当然である。もちろん、岩田康誠も中央挑戦1年目であることを考えると、今年はさらに勝率を伸ばしてくることが予想される。

たくさん勝つこと自体は上手さの証明であるし、勝てば勝つほど良い馬を依頼されるので、また勝てるようになるのは必然の流れである。しかし、それだけではないのだ。騎手の技術は、どれだけ馬を上手く走らせることが出来たかに表れるのである。ナンセンスな問いに対する私の仮説は、そんな当たり前の結論に落ち着いた。

追記
当たり前の結論に納得がいかない方は(笑)、「けいけん豊富な毎日」のけん♂さんが、「支持達成率」と「穴馬率」という鋭い切り口で騎手の能力値について書かれていますので、ぜひご覧ください。なかなか面白い結果が出てますよ。

■上位騎手編はこちら→http://90884.blog64.fc2.com/blog-entry-731.html
■中堅騎手編はこちら→http://90884.blog64.fc2.com/blog-entry-737.html
■若手騎手編はこちら→http://90884.blog64.fc2.com/blog-entry-739.html

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「馬は誰のために走るか」

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オグリキャップが勝った有馬記念は、私は馬券も買わず、ひとりぼんやりと後楽園ウインズで観ていた。当時はまだ右も左も分からない競馬初心者で、有馬記念のウインズがあれほど混むとは思いもよらず、長蛇の列に並んでみたものの馬券を買うことが出来なかったのだ。しかし、あの時、生まれて初めて、競馬のレースを観て鳥肌が立った。最後の直線でオグリキャップが先頭に立った時の、後楽園ウインズを包んだあの異様な空気は、今でも忘れられない。

この本の著者、木村幸治氏はその空気を映画「蒲田行進曲」のラストシーンに重ねる。

(オグリ、来い、来るんだ、オグリ。) 心の中で、わたしも叫んでいた。胸の奥で熱いものが湧いてきた。何かのシーンに似ている。そうだ。映画「蒲田行進曲」のラストシーンだ。<池田屋階段落ち>で、新撰組に扮した風間杜夫の銀ちゃんが、自分のため死を覚悟で階段を転げ落ち、瀕死の重傷を負った安次に、涙で顔をグシャグシャにして言うセリフにそっくりだ。 (ヤス、来い、来るんだ、ヤス、上がってこい、立つんだ、ヤス) 不思議な感覚が、小さな震えが、わたしの全身を襲ってきた。 オグリは下がらなかった。トップを譲らなかった。 ゴール。オグリキャップが勝った。勝ってくれた。メジロライアンを四分の三馬身差に押さえ込んで。信じられないことが、目の前で起きた。奇跡といっていいだろうか。

やはり、競馬のノンフィクションを書かせたら、木村幸治の右に出る者はいないと思う。このくだりは何度読んでも、読むだけであの時の興奮が蘇ってきて、鳥肌が立つ。そして、あのレースを生で観ることが出来たことを、一競馬ファンとして幸せに思う。

馬は誰のために走るか?

その答えは、この有馬記念にある。

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ウルグアイの英雄

◆2006年WTRR総合ランキング
1 インヴァソール Invasor(牡4、米)129、ダート(I)
2 ベルナルディーニ Bernardini(牡3、米)128、ダート(I)
2 ディスクリートキャット Discreet Cat(牡3、米)128、ダート(M)
4 ディープインパクト(牡4、日)127、芝(L)
4 ジョージワシントン George Washington(牡3、愛)127、芝(M)
4 ラヴァマン Lava Man(セン5、米)127、ダート(M)
4 レイルリンク Rail Link(牡3、仏)127、芝(L)
8 バーバロ Barbaro(牡3、米)126、ダート(I)
8 ディラントーマス Dylan Thomas(牡3、愛)126、芝(I、 L)
8 ハリケーンラン Hurricane Run(牡4、仏)126、芝(L)

2006年のワールド・サラブレッド・レースホース・ランキング(WTRR)が発表され、129ポンドで総合ランキング堂々1位の支持を受けたのが、アメリカのインヴァソールである。どの馬が強いという評価は極めて難しく、主観的なものになってしまうことを承知で言わせてもらえば、ディープインパクトと同じくらい、インヴァソールは強い馬だと私は思う。ブリーダーズカップに至るまでの走りには、それぐらい強い衝撃を受けた。

ウルグアイ3冠を無敗で制した直後にドバイの殿下に買われてしまったが、インヴァソールは今もってウルグアイの英雄である。アルゼンチンで生産され、ウルグアイで走っていた馬が、ブリーダーズカップまでを制して、世界のランキング1位を獲得したのだ。インヴァソールのアメリカンドリームは、ウルグアイの国民にとってなんと痛快であろうか。

インヴァソールの父キャンディストライプス(Candy Stripes)の半弟は、あのバブルガムフェローである。そして、同馬の母系はまさにアルゼンチン土着の血統で、雑草血統の逞しさに支えられた活力と生命力に溢れた配合であり、それゆえに底知れぬ可能性を十分に感じさせられる。また、いかにもダート馬という馬体ではなく、もしかしたら芝でも走るのではないかと思わせるほど、全体のバランスが取れていて、しなやかな動きをする。道中はリラックスして走り、それでいてアメリカのダート競馬の速さにも楽に付いていくことができる。だからこそ、最後の直線でも追えば追うほど伸びる。そして、レースに行っての闘争心溢れる走りとは裏腹に、その表情はとても愛くるしく、普段は大人しい性格なのであろうことが想像できる。

ランキングに話を戻すと、私はベルナルディーニの2位タイには疑問があって、引退が決まってしまった馬を今さら評価しても仕方ないが、それほど強い馬とは思えなかった。インヴァソールとの比較からこうなったのかもしれないが、ブリーダーズカップクラシックも着差以上の力差があるように感じた。それならば、日本の英雄ディープインパクトが、ディスクリートキャットと同じ2位タイ、欲を言えばインヴァソールと並ぶ1位タイの評価を与えられても良かったのではないか、とあくまでも個人的には考えている。



ウルグアイの英雄インヴァソールのプロモーションビデオ(?)はこちら↑
今年も応援したくなりますね!必見です。

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全成績から分かること

ドリームパスポートは有馬記念で遂に4着と複勝圏内を外してしまったが、それまではデビュー以来12戦で【3・6・3・0】という、超が付くほどの堅実な走りを見せてきた。【山人の「適当」競馬予想】によると、1000円で複勝コロガシを始めると、デビューから有馬記念までで何と530万6700円になるらしい。ちなみに先日引退を発表した菊花賞馬ソングオブウインドは、デビューから菊花賞までの10戦を複勝でコロガし続けると120万2320円だそうだ。

それはさておき、実はこの【1着、2着、3着、それ以外】という全成績の数字列を見るだけで、その馬の大まかなタイプや強さを把握することができる。

全成績の数字列は大きく4つのタイプに分けられる。
1、逆三角形型
2、三角形型
3、ダイヤ型
4、砂時計型

1の逆三角形型とは、【5・3・2・1】のような数字列である。全成績を縦に並べたとして考えてほしい(通常、馬柱は縦に並んでいるので)。上が一番大きい数字が並んでいて、下に行くにつれ数字は小さくなってきている。こういう逆三角形の成績を残してきた馬は、紛れもなく強い馬である。勝ち切るだけの決め手を持っているし、どんな条件や相手だろうが、その力をいかんなく発揮できる馬である。こういう馬は安心して買ってよい。有馬記念でいうと、ディープインパクトが当てはまる。
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ディープインパクトの有馬記念時の馬柱(一番右が全成績)

2の三角形型とは、【1・2・3・5】のような数字列である。逆三角形型の正反対と考えてほしい。上の数字が一番小さくて、下に行くにつれ数字は大きくなる。こういう成績を残してきた馬は、あまり強くはない馬である。ほとんど勝ち負けに加われないことが多く、よほど条件や相手に恵まれた時だけ好走することが可能である。有馬記念でいうと、デルタブルースが当てはまる。
Zenseiseki02
デルタブルースの有馬記念時の馬柱(一番右が全成績)

3のダイヤ型とは【2・4・4・1】のような数字列である。上と下の数字に比べ、中の数字が大きいということである。つまり、大きく負けることはないのだが、イマイチ勝ち味に遅いというタイプの馬である。こういうタイプの馬は単勝で勝負するのは危険である。ただし、このような馬には将来性があって、なにかひとつのきっかけで勝てるようになると、あっという間に1の逆三角形のタイプに成ってしまうということもある。そのきっかけとは、休養を挟んで肉体的、精神的に成長したことであったり、脚質を変換したことであったりする。有馬記念でいうと、ドリームパスポートが当てはまる。
Zenseiseki04
ドリームパスポートの有馬記念時の馬柱(一番右が全成績)

4の砂時計型とは【4・1・2・4】のような数字列である。上と下の数字に比べ、中の数字が少ない(中が凹んでいる)ということである。能力は高い馬であるが、自分の型に持ち込めないと力を発揮できないタイプで、勝つときと負けるときがハッキリとしている馬である。ある程度の条件が揃えば、好走がかなり期待できる馬ということもある。有馬記念でいうと、ポップロックが当てはまる。
Zenseiseki03
ポップロックの有馬記念時の馬柱(一番右が全成績)

私は昔、地方競馬巡りをしていたことがあったが、初めて見る、横の関係も縦の関係も全く分からない馬たちのレースを予想する際に、このテクニックは重宝していた。1の逆三角形型は否が応にも人気になり、4の砂時計型は馬券的な妙味があり、3のダイヤ型は人気ほどの期待には応えてくれないことが多く、2の三角形型は馬券に絡まないことが多い。同じような人気になっていれば、1の逆三角形型→4の砂時計型→3のダイヤ型→2の三角形型の順で優先して本命を決める。

もちろん、全ての馬が単純に4つのタイプに区別されていくわけではなく、また各馬の成長によってタイプが変わってくることもあり得る。たとえば、ソングオブウインドは3のダイヤ型であったが、この馬は1の逆三角形タイプになっていくだろう(そう考えていた矢先に引退してしまったが)。それでも、その馬のその時点でのタイプや強さを、大まかではあるが把握することができるのである。おそらく誰もが意識する・しないに関わらず行っていることなのだとは思うが、極めてシンプルで数秒しかかからない作業なので、ぜひ一度試してみて欲しい。

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弱いところが狙われる

Deltablues

昨年の日本のスプリンターズSとオセアニアのメルボルンカップは、まさにこれからの世界競馬を象徴する2つのレースとなった。どういう意味かというと、これだけ競馬の世界地図が小さくなった今、層が薄いにもかかわらず、賞金が高いレースは格好の標的になるということである。つまり、弱いところが狙われるのである

オセアニアはサラブレッドの生産頭数がアメリカに次いで2番目に多い国であり、その多くの馬は2歳時に行われるゴールデンスリッパーS(1200m)を目標として生産される。このゴールデンスリッパーSは、1着賞金がなんと約1億6000万という、2歳戦としては世界最高賞金を誇る超ビッグレースである。日本の生産者が将来のダービー馬を夢見るように、オセアニアの生産者はゴールデンスリッパーS馬を夢見て配合・調教をする。このことだけを見ても、オセアニアはスプリンターの層が厚く、その中からトップに上り詰めてくる馬が、尋常ではない能力を秘めていることがうかがい知れる。もちろん、その代わりに、純粋なるステイヤーは皆無に近く、層が薄いことは否めない。

対する日本では、生粋のスプリンターとして生産される馬の数はまだ少なく、生産という面から見てもその層は薄い。また、スプリンターズSを秋口に移行したことにより、スプリンターとマイラーの分極化が進んでしまった。強い日本のマイラーがスプリントレースに出走しづらくなったため、まだまだ弱いスプリント路線を外国馬から守ることが出来なくなってしまっているのが現状である。しかし、マイル~中長距離路線は、血統や調教技術の飛躍的な向上により、ひいき目なしに見ても、世界のトップレベルにあるといっても過言ではない。重賞クラスの馬がきちんとした状態であれば、世界のどこに持って行っても好勝負になるだろう。

どちらの国のレベルが高いということではなく、その国のレース体系によって、目指している強い馬づくりの方向が違っているということである。それに応じて、層の厚い路線と薄い路線が出てきてしまうのは、当然といえば当然の結果である。

もちろん、日本としても手をこまねいて見ているわけではない。高松宮記念とスプリンターズSの短距離2冠を制した快速名牝であるフラワーパーク(父ニホンピロウィナー)が、年明けにもオセアニアでリダウツチョイス(父デインヒル)と交配するという。リダウツチョイスは言わずと知れたオセアニアのリーディングサイヤーで、快速馬の中の快速馬を生み出して、のし上ってきた種牡馬である。これは完全に短距離のスペシャリストを意識した配合で、下手にサンデーサイレンスやダンスインザダークなどをかけて距離を持たせるよりもずっと良いと私は思う。弱いスプリント路線を補うために、血統は敢えて強いところを伸ばす配合をする。これからの世界競馬は、「強いところを伸ばす」、「弱いところを補う」ことの両方が要求される時代なのかもしれない。

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勝己の凄み

Katuminosugomi

日経新春杯を勝った安藤勝己騎手に、凄みを感じたのは私だけだろうか。ジョッキーとしての最高峰にいる者のみが放つ、ある種の凄み。普通に乗っては勝ち目のなさそうなトウカイワイルドを、まるで別馬が走っているかのように、その手綱で蘇らせてしまったのだ。

12.5 - 11.2 - 11.0 - 13.0 - 12.8 - 13.0 - 13.8 - 12.8 - 11.7 - 11.7 - 11.6 - 12.3

これがレースのラップタイムである。京都の2400mは、スタートしてから1コーナーまでの距離が597mと長いため、今回のレースのように逃げ・先行馬が気分良く行き過ぎてしまうと、前半の3ハロンまで速いラップが刻まれることがある。その反動で、1コーナーから2コーナーにかけてペースが落ち、引き続き向こう正面もゆったりとしたペースでレースは進んだ。レースが動き出したのは3コーナー過ぎのラスト4ハロンからで(少し速かったか)、ラスト200mはどの馬も失速している(トウカイワイルド以外)。まさに、コーナーを基準にペースが変わる典型的なラップ構成である。

このようなラップで流れるレースを、どのように乗るかを説明するのは簡単である。テンの速いところではゆっくりと行き、道中でペースがガクンと落ちた時に無理なく前との差を縮め、ラストで再び各馬のペースが上がり始めた時には手綱を抑えてゆっくりと仕掛ける。つまり、全体の流れが速くなったら遅く行き、遅くなったら速く行くのである

「全体の流れが速いときには遅く行き、遅いときには速く行く」

誰もが分かっていても出来ない乗り方である。今回の日経新春杯でも、こんな当たり前の乗り方が出来ていたのは安藤勝己騎手だけであった。とはいっても、安藤勝己騎手が何か特別なマジックを使った訳ではない。もしひとつだけマジックがあるとすれば、安藤勝己騎手はトウカイワイルドの走るリズムを崩さないことだけを心掛けて乗っていたということである。スタートからゴールまで、トウカイワイルドのリズムで走らせた結果、全体の流れが速いときには遅く行き、遅いときには速く行くという乗り方になっただけなのである。そして、気が付くとゴールでは先頭に立っていただけなのである。これが安藤勝己の凄みだ。

日経新春杯のレースをもう一度
→http://www.jra.go.jp/JRADB/asx/2007/08/200701080511h.asx

Special photo by Ichiro Usuda


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口は災いの元

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「口は災いの元」とはよく言ったものだが、ブルーコンコルドをJCダートに出走させた服部調教師の超が付くほどの強気な発言には、耳を疑った。私の記憶によると、師は「競馬に“絶対”という言葉はないことは知っているが、それでも勝つ。他馬をねじ伏せて勝つ。」と高らかに勝利宣言をした。この発言を聞いて私は、ブルーコンコルドは負けると確信した。

というのも、メルマガ「馬券のヒント」や【決して信じてはいけない】でも書いたように、「競馬の世界で“絶対”という言葉は禁句」だからである。“絶対”に勝てると調教師が宣言した馬が負け、“絶対”に当たると豪語した馬券が外れたりするのを、私は幾度となく見てきている。厳密に言うと、服部調教師は“絶対”とは言ってはいないが、そのニュアンスは、“絶対”と感じさせるに足るものであった。

このような“絶対”と感じさせるような発言が出てくること自体、何かがおかしいのだ。服部調教師は、その思考の過程において大きな錯覚をしていたからこそ、あのような極めて主観的な言葉を発してしまったのであろう。ブルーコンコルドの調子がよほど良かったのかもしれないが、他馬との力差や距離、展開などの要素を冷静に分析しての発言ではない。全体が見えていれば、あのような発言になるはずがないのだ。

もちろん、服部調教師の発言とブルーコンコルドの惨敗の間には、直接的な因果関係はない。強気な発言を受けて、幸騎手が消極的な騎乗をしたわけでも、最後の直線で致命的なほどに前が詰まったわけでもない。ただ単純に、ブルーコンコルドには2006年のJCダートを勝てるだけの力がなかっただけのことである。そして、ブルーコンコルドを本命に推した私の思考過程も、どこかに大きな錯覚があったはずなのである。

服部調教師の発言によって、ブルーコンコルドの人気は急上昇した。1週間前の段階ではほぼ無印であった馬が、当日は2番人気にまで祭り上げられた。あの発言を聞いて、ブルーコンコルドに大金を突っ込んだり、押さえに追加したりした競馬ファンは少なくないだろう。私のようにイヤな予感がしても既に予想を出してしまっていたり、また馬券を買ってしまっていた人もいただろう。その馬を管理する調教師としての発言の形を取っているだけに、影響力は極めて大きいのだ。本人はラッパを吹いて自らを鼓舞しただけのつもりだろうが、あまりにも前時代的なやり方であったし、結果的にはホラを吹いたことになってしまった。

私も気をつけよう。

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競馬2ちゃんねる

お恥ずかしい話ですが、私はあの有名な「2ちゃんねる」とやらを見たことがないんです。いや、正確にいうと、見ようと思ったことはあるんですが、たくさん競馬に関する掲示板がありすぎて、どれをどう見ていけば面白いのか分からなかったんですね。

そんな「2ちゃんねる」の掲示板を、分かりやすく編集してくれている競馬ブログがあります。管理人であるさとしさんのセンスで、競馬に関する最新のニュースやら、面白ネタをピックアップされています。【競馬板 まとめ ブログ】というブログです。

「2ちゃんねる」にありがちだと言われる、誹謗中傷ネタがこのブログにはないところも私は好きですね。たまーに、毒のあるトピックもありますが、そのギリギリのラインの線引きがこのブログの面白さのひとつです。

最近ではこんなネタがありました。
「武豊ってなんで乗ってないの?」っていうエントリーです。

武豊ってなんで乗ってないの?
1 :名無しさん@実況で競馬板アウト :2007/01/07(日) 17:54:19 ID:34IrjsHY0

干されてるの?
引退したの??

4 :名無しさん@実況で競馬板アウト :2007/01/07(日) 17:55:52 ID:YxjEXPOm0

今年の凱旋門に備えていまからフランスで修行

6 :名無しさん@実況で競馬板アウト :2007/01/07(日) 17:56:32 ID:Gh+DcL4wO

リーディング争いのハンデとして騎乗自粛中

それでもリーディング当確なんだけどね

10 :名無しさん@実況で競馬板アウト :2007/01/07(日) 18:00:48 ID:/tkva06Y0

新年から馬乗ってるのは2流の証拠
福永も藤田も乗ってないだろ

25 :名無しさん@実況で競馬板アウト :2007/01/07(日) 18:20:34 ID:AEr/Uesv0

関西の騎手は正月休みですか?

26 :名無しさん@実況で競馬板アウト :2007/01/07(日) 18:20:53 ID:S9wRkhZx0

>>1
暮れは大井競馬場で馬券かって生活費の足しにしてた。

31 :名無しさん@実況で競馬板アウト :2007/01/07(日) 18:25:20 ID:HrPC9LiD0

武より
哲三を心配しろよ

32 :名無しさん@実況で競馬板アウト :2007/01/07(日) 18:25:47 ID:ZnfNo4AIO

この二日間勝春の着ぐるみ着た武が乗ってた

この「クスっ笑」が好きですね。

昔のエントリーにも、かなり「クスっ笑」がありますので、真面目に競馬のことを考えるのに疲れたときには立ち寄ってみてください→【競馬板 まとめ ブログ】

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<感情>が決断を支える

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マイルCSとジャパンカップは、そのレースの性格やコースの設定上から考えても、基本的には「守る」べきレースである。強い馬がその力を発揮しやすいレースなので、もしAという強い馬(得てして人気馬)と、恵まれればチャンスがありそうなBという馬(得てして人気薄)の2頭で迷った場合には、あえてBという馬を選択して「攻める」必要はないのである。

私はダイワメジャーとプリサイスマシーン、そしてディープインパクトとハーツクライとの間で判断を迫られたのだが、どちらも「攻める」という決断をしてしまった。そして、この誤った決断を下した原因を辿っていくと、“今年これだけ馬券を外してきている以上、今さら「守る」馬券など買うことができない”という極めて不安定な<感情>があったことに行き当たる。「攻める」べき局面において守ってしまったり、「守る」べき局面において攻めてしまったりする時は、得てして、<感情>が不安定な状態にあることが多い

人間の<感情>には、「守り」と「攻め」のバランスを取る役割がある。そして、その2つの間のバランスを取ることは、私たちがどの世界で生き残っていくためにも極めて自然で、正しい方法論なのである。

たとえば、あなたが自然の中でいろいろな所を歩き回って餌を探している動物であるとしよう。すでに、ある場所に行けば食べ物があると分かっている。危険な捕食者もいないと知っている。これは環境の中のほぼ確実な報酬源である。

しかし、その場所に行くだけで生きるために十分な食べ物が確保できると分かっていいても、食べ物を与えてくれる他の場所も探し続ける必要がある。なぜなら、たとえ今ほぼ確実な報酬源があったとしても、いつ状況が変わるか分からないからだ。

つまり、確実な報酬源だけに頼っていたのでは先細りになるし、環境の変化にも適応できない。その一方で、不確実な報酬源ばかり追い求めても、死に絶えてしまう。何がどうなるか分からない未知の世界で生きている動物にとって、ほぼ確実な報酬源を利用することと(「守り」)、未知の不確実な報酬源を探索すること(「攻め」)のバランスを取ることは、何よりも大切なことなのである。

少し話が逸れてしまったが、いざ馬券を買う時には、誰しもが確実な報酬源を利用する(「守る」)か、未知の不確実な報酬源を探索する(「攻める」)かの決断を迫られるだろう。人間の判断や決断は、単に決まったルールに基づいて結論を下すといったプロセスではなく、判断する対象について、必ずしも十分な情報が与えられていない中で行われなければならない。そして、そういった不確実な状況で、「守り」と「攻め」のバランスを取りながら決断を支えているのは、実は私たちの<感情>であることは意外と知られていない。不安定な<感情>では、「守り」と「攻め」のバランスを失ってしまうのである。

Wtjapancup06_1


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尖がって表現していきたい

Kingasinnen

新年あけましておめでとうございます。年末はバタバタと、年始はまったりとした生活を楽しんでおりました。メールやコメントを頂いた方々、返信が遅くなってしまい大変失礼いたしました。馬券が当たらなくて年を越せなかった訳ではないので、ご安心ください(笑)。1年を通して考えると、競馬のことを考えないのも、この時期くらいですね。まあ、一年の計は元旦にありとも言いますので、そろそろ始動していきたいと思います。

さて、昨年を振り返ってみての反省なのですが、少し丸くなってしまったかなという気がしました。言いたかったことや、言うべきであったことなどが、明瞭かつ大胆に伝えられていなかったのではと反省しています。「ガラスの競馬場」も6年目に突入している中で、いろいろなお付き合いや絆が生まれ、相手の顔が見えてきてしまった部分があったのではないかと。

他人の顔が思い浮かんでしまうと、書けないことも出てきてしまいます。こういうことを言うとあの人はこう思うだろうなと考えると、書かないでおこうとか、やんわりと書こうとか遠慮してしまったこともあったように思います。ただ、それじゃダメなんですよね。別にそれが相手を無下にしているわけではありませんし、個人のブログで発信している意義を考えると、やはり思ったことは思った通りに伝えていこうと。そう思い直しました。

競馬は何が正しか間違っているかが極めて曖昧なゲームですので、たとえ結果的に間違っていようが、自分が正しいと思ったことは断言しなきゃ面白くないんですよね(エンターテインメントとして断言することもたまにはありますが…)。色々なことを言っておいて、後からああも言ってた、こうも言ってたと自己弁護するのは、競馬評論家だけに任せておけばいいんです。せっかくこういう場があるですから、自分の思想や主張ぐらいは尖がって表現していきたいと思います。もちろん、決して言い訳することなく。

今年、新しく取り組んでいきたいことは海外競馬です。というのも、ここにきて世界の競馬は極端にボーダーレスになってきているからです。世界の競馬を知らないと馬券が獲れない時代が、実はもうすでにやってきているんですよね。テイクオーバーターゲットがスプリンターズSを、デルタブルースとポップロックがメルボルンカップを勝った2つの事件は、このことを象徴的に表しています。せめて世界の競馬の大きな潮流だけでも知っておかなければ、これからの競馬には付いていけないことは間違いありません。

今日は思いついたことをつらつらと書きましたが、今年は私自身がワクワクドキドキできることを、皆さんと一緒にリアルにやっていきたいなと考えています。それでは、今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします。

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