武豊の逆襲
高松宮記念2007-観戦記-
道中の位置取りよりも、内外のコース取りが着順を大きく左右したレースとなった。降雨の影響で、最終週の馬場の内側が傷み、内2~3頭分を通らされた馬はスタミナを失い、外側をスムーズに追走できた馬が好走するという、典型的なトラックバイアスが出現していた。
勝ったスズカフェニックスは、直線に向かう手前で、早々に先行馬群を飲み込んでの圧勝であった。阪急杯は外を回したことにより追い込む形となったが、今回は初めてのスプリントの流れにも戸惑うことなく、楽に追走していた。重い馬場で他馬をスタミナと底力でねじ伏せた印象を受けるが、たとえ良馬場でも抜群の瞬発力で差し切っていたはずである。まさにスプリント適性を証明した形となったが、それゆえ、かえって距離延長に対しては不安を抱かせる。この後、G1レベルのマイル戦、つまり安田記念に参戦してくるようであれば、厳しい戦いを強いられるはずである。
また、武豊騎手の勝負に対する冷徹さが垣間見えたレースでもあった。良馬場であれば内でジッとしていたのだろうが、スズカフェニックスの切れ味が削がれる重い馬場になった時点で、傷んでいない馬場の外目を通り、早目に先団に取り付く作戦にチェンジしたのだろう。好スタートを決めるや、外からマイネルスケルツィを内に閉じ込めるような形で上がって行き、4コーナーのきつい曲がりにも躊躇することなく突っ込んでいった。この少し強引に見えた仕掛けには、おそらく安藤勝己騎手のプリサイスマシーンを早目に潰しておきたいという意図があったに違いない。一気に外から来られた安藤勝己プリサイスマシーンは、4コーナーで取りたかった進路を塞がれて、もはやなす術がなかった。相手に打つ手を与えず、完膚なきまでに打ちのめした騎乗には恐ろしさすら感じた。今年はスタートで出遅れているが、武豊騎手の逆襲はもう始まっている。
あっと驚く2着に入ったペールギュントは、外枠から馬場の良いところを通り、スムーズに追走できたことが大きい。勝ち馬の後ろを付いていったら、ゴール前では他の馬が勝手に脱落していたといったレースであった。スズカフェニックスが早目に動いたということ、外目の馬場を通ることが出来たという2点が、好走の最大の理由である。もちろん、G1レベルのレースでは底力に欠けるこの馬にとって、距離短縮は好材料であり、またスプリント戦の速い流れに刺激を受けて、いつも以上に集中して走ることができていた。
プリサイスマシーンは前進意欲満々で、道中は勝ったかと思わせる抜群の手応えであった。誤算としては、スズカフェニックスが強すぎたことと、4コーナーで早目に来られてしまったことである。もう少しスズカフェニックスの仕掛けが遅ければ、連対は楽に確保していたに違いない。それにしても、8歳にして最も油が乗り切った走りができることには驚かせられる。パドックでも畏怖堂々と歩いていた。
マイネルスケルツィは好仕上がりであったが、道中で外からスズカフェニックスに閉められ、最後まで理想的なレース運びができなかった。そもそも、スプリント戦に対する適性は疑問であり、一本調子なところのあるこの馬にとっては、もう少し距離は長い方が合っているのだろう。
エムオーウィナーは、理想的な位置取り・コース取りで、自身の力は出し切っている。多少上がりのかかる馬場状態も、この馬には合っていたはずである。それでも、最後まで伸び切れなかったのは、G1レベルの実力がなかったということである。
special photo by fake Place


















今月号の「優駿」で、騎手自身が選ぶ「マイ・ベスト・レース」という企画を読んだ。安藤勝己騎手からペリエ騎手、そして岡部元ジョッキーまで、15人のジョッキーらが自ら騎乗したレースの中でも最高のものを1つだけ選ぶという企画なのだが、私の印象に深く残ったのは、横山典弘騎手が選んだ2006年のフラワーカップである。


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