どの騎手から乗り替わったのか
今月号の「優駿」で、騎手自身が選ぶ「マイ・ベスト・レース」という企画を読んだ。安藤勝己騎手からペリエ騎手、そして岡部元ジョッキーまで、15人のジョッキーらが自ら騎乗したレースの中でも最高のものを1つだけ選ぶという企画なのだが、私の印象に深く残ったのは、横山典弘騎手が選んだ2006年のフラワーカップである。
キストゥへヴンで勝ったこのレースであるが、横山騎手はこのレースを選んだ理由について、「騎乗前に考えた課題をすべてクリアできた会心のレースでした」と語る。その課題とは2つあって、ひとつは、テンションの高いキストゥへヴンに気持ちをコントロールしながら、折り合いをつけて走ることを覚えさせること。もうひとつは、次の本番である桜花賞に向けて余力を残して臨めるよう、負担をかけないレースをして、なおかつ権利を獲ること。この2つの課題をクリアできたからこそ、横山典弘騎手にとっては会心の騎乗であったというのである。
ご存知のとおり、桜花賞は安藤騎手の手綱によって勝利したわけだが、その勝利は横山典弘騎手が乗ったフラワーカップという伏線があってこそのものであった。騎手は勝たなければならないが、それだけではならない。将来を見据えながら馬に競馬を教え、先々へとつながるレースをしながら、なおかつ勝たなければならないのだ。ひとつのレースは点であるが、その点と点が結ばれながら線となって、その馬を形成していく。ひとつのレースで起こったことは、過去のレースからの集積であると共に、未来のレースへの布石でもある。
つまり、「どの騎手から乗り替わったのか」ということは、非常に大きな意味を持つということである。私たちは馬券を予想する上で、「どの騎手に乗り替わったか」ということに重きを置きすぎる嫌いがあるが、それと同じかそれ以上に、「どの騎手から乗り替わったのか」ということは大切な要素なのである。特に、競馬を覚えていく時期(クラシックシーズン)の若駒の走りを占う上では、どの騎手がどのようなレースをしてきたかという視点を欠いてはならない。
明日は牡馬クラシックに臨む精鋭が集う弥生賞が行われる。アドマイヤオーラ、モチ、サムライタイガース、メイショウレガーロと、このレースも本番を見据えた乗り替わりが多い。中でも私は、後藤騎手から乗り替わったメイショウレガーロの走りに注目している。前走の京成杯は、後藤騎手が前半で抑えすぎたように映るが、その時の馬の雰囲気に合わせ、リラックスして走らせることに集中した、まさに先を見据えた騎乗であったと私には思えた。思えば、先週のローエングリンも、田中勝春騎手が差す競馬を根気強く教え続けたからこそ、後藤騎手がバトンを受けた中山記念でも、掛かることなく折り合いがつき、マイペースの単騎逃げを打つことが出来た。後藤騎手が勝たせたように見えても、実は田中勝春騎手が勝たせていたということはある。騎手とは因果な商売なのである。果たして今度は、後藤騎手の騎乗がメイショウレガーロをどのような形で皐月賞に導くだろうか。
photo by fake Plece
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Comments
なるほど、どの騎手から乗り替わったか・・・
かなり大事な事ですね。
なるほどなるほど。。
僕も優駿のこの記事読みました^^
いい企画ですよね。
横山騎手がキストゥヘヴンを選んだのはビックリしましたが、
アンカツ騎手がスズカマンボを選んだのにもビックリしました。
僕ら予想側の人間は「この騎手はこういう乗り方、癖・・・」
みたいな事を考えて思い込んでますけど、
実は騎手本人達は全然違う何かを考えて乗ってるのかもしれませんね。
奥深いですねぇ~楽しいですよねぇ^^
Posted by: たまバス | March 03, 2007 at 06:36 PM
たしかにローエングリンの復活は田中勝騎手の功績でしょうね。
乗り代わる前の騎手・・うーん、これはいいヒントを頂きました。
復活が待たれるオースミダイドウも武豊騎手が
いろいろ教え込んでいましたよね(^^)
ディープインパクトのときにも先々を見据えた競馬を
教えていた、という話でした。
逆の例をあげると申し訳ないんですが田中勝騎手が
主戦だったショウナンタキオン・・・
我慢も集中も何も教えてこなかったのではないかといまだに疑問・・。
若駒にどういう競馬を教えてきているか、今後は意識して
見ていこうと思います。ありがとうございましたm(__)m
Posted by: けん♂ | March 03, 2007 at 11:09 PM
田中勝騎手の場合は、教えるというより「試す」という意味合いが多い様な気がします。マイヨジョンヌに追い込みさせたのも田中勝騎手でしたね。
ローエンは最近後ろからの競馬が続いていたので、また後ろからと思ってたのですが逃げる。。こういう捕らわれない騎乗が出来るというのは後藤騎手の思い切りの良さと臨機応変さを感じました。
「同じ競馬」しか出来ない騎手にはあまり魅力を感じません。優等生なんですがね。
乗り替わりでは、テンノリだから競馬を教えるのでは無く一発勝負の騎乗という時もある様な気がしてなりません。横山騎手はキストゥヘヴンに桜花賞でも乗れるチャンスがあったから課題を課したのでしょうか?もし、このレースだけの騎乗だと判っていればその様な課題を課したのだろうか?
この辺りは騎手それぞれだろうし、難しい所だと思っています。
Posted by: はやひで | March 04, 2007 at 10:36 AM
たまバスさん
この企画面白かったですよね。
中舘騎手がクリスタルCを選んでいたのには笑いました。
それはあなたではなく、ヒシアマゾンのベストレースだろ!って突っ込みましたから。
でも、それだけ彼女との思い出が深いのでしょうね。
安藤騎手が天皇賞春を選んだのは、私も意外というか、渋いっていう感じでした。
ちなみにその天皇賞でこんな記事を書いていますので、おヒマなときにご覧ください。
http://www.glassracetrack.com/blog/2005/05/post_e4b7.html
Posted by: 治郎丸敬之 | March 04, 2007 at 04:57 PM
けん♂さん
どんな騎手がどんなレースをして乗り替わったかは、とても大切な要素ですよね。
アドマイヤオーラも、騎手の支持に機敏に従える馬になりましたね。
もちろん、その馬の資質というのは大きいのでしょうけど。
ショウナンタキオンですか…。
良い素質を持っていた、アグネスタキオン産駒らしい馬でしたが、少し早熟だったのかもしれませんね。
度肝を抜かれた、あの新潟のレースを思い出します。
あっ、チューリップ賞の的中おめでとうございます!
3連単まで取られたのではないでしょうかね。
Posted by: 治郎丸敬之 | March 04, 2007 at 05:01 PM
はやひでさん
ローエングリンについては、何度も根気強く差す競馬を教えていたのだと私は思っています。
1回切り差してみたとか逃げてみたのであれば、それは試したということにすぎないのだと思いますが。
そういう伏線があって、後藤騎手の思い切りの良さも生きたのではないでしょうか。
>こういう捕らわれない騎乗が出来るというのは後藤騎手の思い切りの良さと臨機応変さを感じました。
→私もそう思います。後藤騎手に乗り替わった時点で、前に行く(逃げる)作戦だったのかもしれませんが。
>乗り替わりでは、テンノリだから競馬を教えるのでは無く一発勝負の騎乗という時もある様な気がしてなりません。
→確かにそういう騎乗もあると思います。
特に短期免許で来ている外国人の騎手などはそうでしょう。
横山騎手のフラワーCは、コイウタという前から約束した馬がいたという条件での騎乗だったので、桜花賞で乗れるチャンスはなかったのです。
それでも、競馬を教えながら勝つという仕事が出来るのが一流の騎手の証明でしょう。
そういう仕事が、いつか回りまわって自分のところにやってくると私は信じています。
横山騎手がG1を勝てるといいですね。
Posted by: 治郎丸敬之 | March 04, 2007 at 05:13 PM
読みました、治郎丸さん観察眼もすばらしいですね^^
「なんでスズカマンボじゃー!!!!!」
ってあの頃は言ってた気がします(笑)
こういうのいいですよね~ほんと。
僕も予想ばっか書いてる場合じゃないな・・・。
G1から頑張って色々書こうと思います^^
Posted by: たまバス | March 04, 2007 at 08:05 PM
勝手なチューリップ賞の見解
上位2頭がずば抜けていた。これで桜花賞ではウオッカの方がスカーレットより人気するだろう。本当に格付けは済んだのだろうか?
否。と私は感じています。スカーレットは追い出し始めの時にシンザン記念の時もそうであったが、ふらつく癖がある様である。これで数完歩損をしている。そこから伸び始めるのだが、このロスがあまりに痛い。
しかし、安藤勝騎手もこれで完全に手の内に入れていれば桜花賞での逆転もあり得る。
ウオッカは強いですね。牝馬4冠を取って欲しい!
Posted by: はやひで | March 05, 2007 at 12:30 PM
たまバスさん
ありがとうございます。
もうすぐそのG1ですね。
うまジオにも、たまバスさんの書くエントリーにも期待していますよ!
Posted by: 治郎丸敬之 | March 05, 2007 at 09:45 PM
はやひでさん
なるほど、そういう見方もあるかもしれませんね。
私はウォッカが遅いペースをよく我慢していたなという印象を受けました。
私は今の阪神マイルのコース設定であれば、ダイワスカーレットが最高に巧く乗られても、追ってから味のあるウォッカが強いと思います。
四位騎手がよほど慢心した騎乗をしない限り(ここが怖いw)、勝利に一番近いのではないでしょうか。
4冠獲って欲しいですね~。
Posted by: 治郎丸敬之 | March 05, 2007 at 09:58 PM