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集中連載:「馬を見る天才になる!」最終回

10頭の名馬の馬体をチェックしてきたが、あなたのパッと見た瞬間の評価と、馬を見る天才の評価は、どのくらい違っていただろうか?もちろん、一人ひとりの印象(主観)には違いはあるので、全く同じ評価になるはずはないが、ここまで真剣に読んでいただいた方であれば、おそらくそれほど大きな違いはなかったのではないだろうか。

しかし、実を言うと、正しい馬体の評価というものはない。あるのは正しい馬体の見方だけなのである。馬体の評価とはその人にとって固有に存在するものであるが、あなたが正しい見方で馬体を見なければ、あなたは決して馬を見ることはできない。もし馬を見る天才とあなたとの間に僅かばかりの違いがあるとすれば、それは馬体の見方だけなのである。

それでは、正しい馬体の見方とは何か?

私が挙げた5つのポイント(胴体、バランス、毛艶、メリハリ、目つき・顔つき)に沿って馬体をチェックしていくこと、ではない。スター馬体チェック法は、あくまでも馬を見る天才の無意識を、あえて意識化してみたに過ぎない。馬を見る天才は、実際には5つのポイントを意識的にチェックしながら馬を見たりはしない。そうではなく、全く逆の見方をしなくてはならないのである。

馬を見る天才の見方を説明する前に、ひとつ間違った馬体の見方を以下に示してみたい。

追い切り前でもすでに余分な脂肪がなく、腰椎周辺や首はスッキリしている。肩甲骨の角度がなだらかで胴が長めの体形。前脚のつなぎはバネを生かせる芝向きの角度で、後軀は臀端→飛端へのカーブが大きく、うまく衝撃を緩和できる構造になっている。

どこにでも良く見かける馬体解説の例であるが、何を言っているか意味が分からないし、本当にそうなのかさえ分からない、というのが私たちの正直な感想ではないだろうか。このような見方に付き合って、自分では馬体を見ても分からないと思わされてしまった読者は悲劇である。

このような馬体の見方が根本的に間違っているのは、馬の体全体を部分(パーツ)へと切り分けて見てしまっているからである

こういうたとえ話がある。魚の体について詳しく知りたいと思った人が、釣った魚を解剖してみることにした。目、あご、歯、尾ひれ、背ひれ、尻尾、肺、心臓などなど、各部分(パーツ)に切り分けて行ったところ、目は目、あごはあご、歯は歯であることは分かったが、ついに魚は動かなくなってしまった。慌てて元に戻してみたが、もちろん魚は生き返ることなく死んでしまった。

馬の体についても同じことが言える。全体を理解するために、部分(パーツ)に解剖(分解)してみても、結果としては全体を失ってしまうことになる。たとえば上の例のように、馬体を腰椎、肩甲骨、前脚のつなぎ、臀端、飛端などと各部分(パーツ)に分解して見てしまうと、その時点で、馬体全体は死んでしまうのである。部分(パーツ)を見れば見るほど、全体は動きを失っていく。これが、私たちが専門用語など知っておく必要はない、使ってはいけない理由である。馬体全体を見るには、意識的に馬体全体を見なければならないのだ

つまり、馬体は意識的にパッと全体を見なければならないのである。これまで、しつこいくらいにパッと見るということを述べてきたのは、そういう意味である。そんなことかと思われるかも知れないが、馬体は決して部分(パーツ)を見るのではなく、全体をパッと見た瞬間の印象で判断しなければならないということである。もちろん、これはパドックで馬を見る時にも応用できる。パドックでは馬の「動き」や「雰囲気」を見るが、全体をパッと見た瞬間の印象で判断するという馬の見方については、そのまま使えるはずである。

とはいっても、最初から全体をパッと見た瞬間の印象で判断するのは難しい。だからこそ、スター馬体チェック法を使って、馬を見る天才の思考プロセス(たった5つの点しか見ていない!)を意識的に真似るのである。そうして、いつの間にか馬体全体をパッと見た瞬間の印象で判断できるようになった時、馬を見ることは、あなたにとって決して難しいことではなくなっている。そして、その時、あなたはこう言うだろう。

「勘だよ、勘」

Ketudan03
special photo by Ichiro Usuda

追記
誤解があるかもしれませんが、馬を見る天才とは決して私のことではありません。私の知っているある人から教えてもらったことを、私なりに解釈して説明したつもりですが、もしうまく説明できていない部分があればご容赦ください。この連載で言いたかったことは、誰でも馬を見る天才になれるということです。最後まで読んでいただいてありがとうございます。

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Comments

正直、馬体を見るのは苦手で良くわからないから・・と
敬遠気味でした(^^;
用語の難しさについてもまさにご指摘の通り!
「それはどこのこと?」
と常々疑問に思っていたり、わざわざネットで検索してみたりと
(それでも覚え切れていなかったりします:笑)
苦手意識が払拭できていませんでした。

もちろん今は勉強中でパッと判断できることは少なく、
間違った認識を持つことも多々ある状態。
それでもこの連載を読ませていただいてから
馬体を見てみよう、という意欲がわいてきています。

やっとのことでブログに写真を貼り付ける方法も
学んだこともあり(笑)間違ってもいいから馬体について
何らかの感想を持つようにしようと試行錯誤を始めてみています。
たくさんの馬を見続けることで何かがつかめるように
なれたらいいなぁ・・・
まだ道程は遠く険しいですけど(^^;

Posted by: けん♂ | April 21, 2007 at 04:50 PM

けん♂さん

ありがとうございます。

ブログ上だけでは伝え難い部分もあったりしましたが、最後までお付き合いいただいて、本当にありがとうございます。

私が言いたかったのは、誰でもほとんど予備知識のない段階から、馬を見ることができるのだよということです。

詭弁でもなんでもなく、その人が感じたこと、思ったことが、正しい馬体の評価なのです。

それを余計な知識を得ることによって、肝心な全体をパッと見て感じるということが出来なくなってしまうんですね。

何か今の教育問題を論しているような気になってきました(笑)

けん♂さんの馬体評価も楽しみに拝見しています!

Posted by: 治郎丸敬之 | April 22, 2007 at 12:00 AM

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