安藤勝己騎手のウデが試される舞台

「皮肉」なのは、私たちの馬券だけではないのですねぇ。そういえば、先週のオークスも皮肉でした。ウオッカ、ダイワスカーレット、ベッラレイアの3強の熾烈な戦いが期待されていたのですが、ウオッカがダービーに挑戦したことによって2冠が濃厚になったはずのダイワスカーレットは出走回避の憂き目を見て、1強に追い出されたベッラレイアはプレッシャーに押し潰されてハナ差で勝利を逃してしまいました。もしかすると、競馬とは皮肉の歴史なのかもしれません。
騎手の世界にも皮肉は当てはまりますね。G1レースをあれだけ勝てなかった田中勝春騎手が、皐月賞を逃げ切っただけではなく、シンガポール国際カップまで制し、今や関東リーディングのトップを走っています。関西のリーディングに目を移しても、上位2人はなんと地方競馬出身のジョッキーたちです。中央競馬の騎手養成課程とは一体何なのでしょうか?そして騎手とは一体何なのでしょうか?
サラブレッドがゲートに入るまでには、関わったたくさんの人々の気持ちと時間の積み重ねがあります。特にダービーともなると、その積み重ねは最高潮に達します。騎手がリレーのアンカーと言われるのは、そういうことです。騎手は華々しい部分を一手に引き受けますが、その栄光の後ろには、たくさんの人々の想いが詰まっています。だからこそ、騎手たるべき者は、決して謙虚さを失ってはいけないと思います。また、謙虚さを失った騎手がダービーを勝つこともないでしょう。
安藤勝己騎手によって、中央と地方ジョッキーの壁が崩れ落ちました。本人にはそんなつもりはないのかもしれませんが、とてもエポックメイキングな出来事だと思います。野球で言えば、古臭い日本野球の体制を飛び出した野茂英雄投手に近いものがあります。この2人は自分の好きな世界を追求し、高いレベルにチャレンジした結果、その世界のルールを変えてしまった英雄です。その安藤勝己騎手が、平成16年のキングカメハメハに続き、再び1番人気の馬に乗ってダービー制覇に挑みます。1番人気で受け取ったバトンを、果たして1着でゴールまで持ってくることができるでしょうか。
フサイチホウオーは、父のジャングルポケットと同様、皐月賞を僅差の3着に敗れてダービーに臨んできます。皐月賞の追い込みづらい馬場・展開を、あきらめることなく、よくぞあそこまで追い込みましたね。同じラスト3ハロン33秒9でも、アドマイヤオーラとは一味違う、ダービーのゴール板へとつながることを予感させる末脚でした。左にもたれたり、手前の替え方がうまくなかったりと、器用さに欠ける馬だけに、中山は難しいコースでしたね。唯一の心配はそこだけです。左回りは乗りにくいはずですし、直線に向いてから、きちんと右手前に替えて伸びてこられるでしょうか。安藤勝己騎手のウデが試される舞台でもあります。キングカメハメハの時ほど、簡単には勝てないはずです。
ヴィクトリーは皐月賞であっと言わせる逃げ切り勝ちでした。力の要る追い込みづらい馬場が合っていたとはいえ、皐月賞を逃げ切ることは容易ではありません。過去に皐月賞を逃げ切った馬は3頭(カブラヤオー、ミホノブルボン、サニーブライアン)いますが、全ての馬がダービーをも逃げ切っています。しかも、皐月賞を差し返して勝ったことには、大きな意味があると思います。接戦に見えますが、余力を残して相手なりに走る馬という証明でもあり、たとえ府中のチャンピオンディスタンスでも、そう簡単にはバテないはずです。唯一の不安の激しい気性は、確かに気掛かりですね。スンナリとハナに立たせてもらえるのか、それともサンツェッペリンに絡まれてしまうのか。
牝馬ながらも挑戦してくるウッカは、牝馬離れした身体能力を持つ馬です。「なんだかんだ言っても結局のところ牝馬だから」というセリフは、この馬には相応しくないのかもしれません。横からみると、長方形に近い、まるで重戦車のような馬体です。桜花賞の時はスッキリ見せていましたが、仕上がりすぎていたのかもしれませんね。桜花賞終了後、ジックリと時間を掛けて立て直してきました。そういう意味でも、桜花賞から1週でも遅いダービーはローテーション的には良いかもしれません。この馬に対しては牝馬という意識は持たずに臨みます。距離の延長も大きなマイナスにはならないはずです。唯一の不安は、体調面が戻りきっているかどうかということです。
青葉賞の勝ち馬ヒラボクロイアルは、ここに来て成長著しいですね。障害を飛ぶ練習で、前脚の捌き方のコツを憶えて、さらに伸び伸びと走られるようになっています。おそらく得意ではないだろう前走の重馬場でも、他馬とは力の差を見せ付けての楽勝でした。上記3頭には一枚劣りますが、この馬にもチャンスはあるはずです。
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Comments
JRAが抱える根本的な問題として、
リーディング下位騎手があまり騎乗できないので、腕が上がらないということがありますよね。
一方で、地方の騎手は小回りのコースでレース数も多いので、
技術が上がりやすいのだと思います。
ただ、その地方でも、あの二人は別格だったわけですが。
ホウオーのあの脚はどの陣営も意識しているはずで、
押さえ込むために、逃げたい、先行したい馬は多いと思うので、
ヴィクトリーはどうなるんでしょうか(笑)
Posted by: さとし | May 23, 2007 at 11:04 PM
今晩は、いよいよダービーですね。
私にとって今回、競馬歴超40年で初の生ダービーを体験します。昨年暮れは初有馬記念を体験しました。関西圏の私にとってなかなか実現するのは難しく、永い月日を要しました。
この貴重な初体験のダービーに冷静な予想より私的感情が優先する事態が残念です。
勿論勝負の世界での乗り換わりは有り得ることで武騎手とて例外でないのは充分承知していますが何故岩田なのかが疑問です。どうせ換えるのなら思い切って若手を起用してもらいかった。
そもそも安勝さん、岩田、小牧の3騎手を簡単(だと思います)に受け入れ多数の有力馬を騎乗させていることがこれからの競馬人気を復活さえるためには問題で、その分だけ中堅、若手の騎手の騎乗数が減っているわけで特に関西では人気若手騎手を育つ訳が無い。
ディープのオーナーといい、今回のオーナーといい自分さえ良ければ良い(競馬界に限っての話ではない)の機運が寂しいですね。
治郎丸の競馬が100年続けばいいねの意見には賛成ですが、このままでは長期下落傾向は止めれそうにはなく盛隆は10年が限度のように感じています。
話がそれて申し訳有りません。
肝心のダービーですが皐月賞1~3着馬プラス、トライアル勝ちのヒラボクロイヤル、ゴールデンダリア、タスカータソルトの内から勝ち馬は出ると思っています。
Posted by: やす爺 | May 24, 2007 at 12:13 AM
気がつけばタニノギムレット産駒がダービーに3頭。
あまり勝率が高くない種牡馬だと思っていましたが
大物を出す傾向はブライアンズタイムを受け継いでいる感じです。
ウオッカ、ヒラボクロイヤル、ゴールドアグリを
並べてみると体型というか立ち姿が似てますね(^^;
筋肉隆々なのも共通点かと。
この中ではヒラボクロイヤルが一番ポチャッとしていて
成長途上じゃないかと感じました。
ゴールドアグリはまさにダンプカーの如し・・(爆)
さすがに重たすぎるのではと逆に懸念してしまいました。
ウオッカが一番バランス良く見えました。
つくべきところに筋肉がミッチリついて、かといって
重すぎる感じもしない・・。ほんとに牝馬なのかと
疑いたくなります(笑)
私は逃げ馬としてヴィクトリーよりサンツェッペリンの方が
優秀だと考えているので、サンツェッペリンVS好位追走馬
という構図でダービーをとらえています。
フサイチホウオーと言えどもなかなか前をとらえ切るのは
難しいのでは?という机上の計算データが果たして
当たるのかどうか?
アドマイヤオーラ、ウオッカは東京でどの程度の末脚が
使えるのか?ほんとに面白いダービーになりました。
それぞれが力を出し尽くした激闘を楽しみにしています(^^)
Posted by: けん♂ | May 24, 2007 at 03:06 AM
今年のダービーでの皮肉といえば、
武騎手と岩田騎手は皐月賞直前にヴィクトリーに騎乗したことがあるにも関わらず、
別の馬を選んでしまったことでしょう。
しかも、その武騎手と岩田騎手がダービー直前は乗り換わり騒動の真っ只中とは、
なんとも不思議な運命を感じてしまいます。
今年のダービーはウオッカが牡馬相手にどこまで迫れるかなど、
例年以上に未知の要素が多くてわくわくしますね。
今のところヴィクトリー、フサイチホウオー、ウオッカ
この3頭のどれかが勝つのではないかと考えています。
馬券的には、レベルが高かった毎日杯を圧勝しながらも
皐月賞ですっかり評価が落ちとしまったナムラマースと、
さりげなく3着~5着あたりにいそうなローレルゲレイロを買いたいですね。
Posted by: sousuke | May 24, 2007 at 01:34 PM
フサイチホウオー。皐月賞で右に左にフラフラしてますよね。東京コースでまっすぐ走ってくれますかねぇ。降着になったりして・・。安藤勝騎手の「もう一つエンジンがあると思う」・・ですか。「もう一つギアがある」から更に大きく出ましたね。エンジン2つあったら重くて走りませんがね。(笑)
一番不安材料が少ないのはこの馬だと思いますね。
なんだかんだでドリームジャーニーで逝きますよ。前走では目立ってないですが4コーナで視界から消えてからも大外を一気に伸びてきてました。脚を溜めれればまとめて差しきれないものですかねぇ。
後はゴールデンダリアとヒラボクロイヤル。ヴィクトリーよりはサンツエッペリンの方が買いたいんですよねー。ゴールデンダリアは前走が強いんだか?どうなんだか?ヒラボクロイヤルはナムラマースに負けたりしているし、強いんだかどうだか?
そんな馬ばかりで買いにくいレースですね、
Posted by: はやひで | May 24, 2007 at 06:25 PM
さとしさん
若手騎手に騎乗機会がないというのは、確かに大きな問題ですね。
とはいえ、やはり競争原理が働く世界なので、特に中央のような賞金の高いレースでは、腕の立つ騎手を乗せるのは当然のことだと思います。
それが行き過ぎにならないよう、若手騎手が騎乗する場所を持てるよう、JRAもある程度の配慮が必要となってきます。
難しい問題なので、私などがどうこう言えるものでもないのですがね。
ダービーは、どの馬もホウオーを意識して、ホウオーよりも前で競馬をしたいと考えるでしょう。
他にも逃げたい馬はいるので、ヴィクトリーはスンナリと逃げられるかどうかは大きな問題ですよね。
皐月賞を逃げ切って勝った馬は、ダービーでも逃げて勝っていますから。
Posted by: 治郎丸敬之 | May 24, 2007 at 08:37 PM
やす爺さん
ダービー生観戦なのですね!
おめでとうございます。
やはり、ダービーを生で観るのはひとつの夢ですよね。
ルドルフおやじさんも、そうおっしゃっていましたよ。
やす爺さんの、若手騎手に対するお気持ちよく分かります。
今の現状では、若手騎手が育つ余地はほとんどありませんよね。
個人的には、安藤、岩田両騎手は、素晴らしい騎手だと思いますので、もし自分が馬主であっても彼らに乗って欲しいと思うはずです(今回の乗り替わりには?ですが)。
だからこそ、地方競馬で修行を積んで、実績を残してから中央というルートも、これから騎手になろうとする人は考えるべきですよね。
実は、私もその辺りのところは、実際にどのようにするのが最適なのか分からないところが多いのですよ。
競馬とあなたが100年続いて欲しいという想いは嘘ではありませんが、私には私なりのやり方しかないのかなという無力感がありますね。
やす爺さんの今年のダービーが素晴らしいものでありますように!
Posted by: 治郎丸敬之 | May 24, 2007 at 08:45 PM
けん♂さん
タニノギムレット産駒がここまで活躍することを予想した人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
ウオッカも素晴らしい競走馬ですが、ヒラボクロイヤルもなかなかの馬です。
けん♂さんの馬体評価を拝見させていただきましたが、かなり的確ですね(私が言うのも偉そうですが)。
もう私がここのブログで書く必要もないかなとも思わされました(笑)
私もその3頭の中ではウオッカが良く見えました。
といっても桜花賞の時が一番良く見えたのですが…
仕上がりすぎていたのかもしれないですね。
サンツェッペリンがヴィクトリーよりも上という説も面白いですね。
私はスプリングSよりも格段に皐月賞の方が状態が良かったのではと考えています。
果たして、どちらが逃げるのでしょうかね。
それだけでも面白いダービーになりました。
Posted by: 治郎丸敬之 | May 24, 2007 at 08:52 PM
sousukeさん
>さりげなく3着~5着あたりにいそうなローレルゲレイロ
→意外と盲点になってあり得そうですね(笑)
ヴィクトリーの騎手(武、岩田騎手)については、私もそう思っていました。
今回の出走馬の中でも、両騎手が騎乗したことがあるのはヴィクトリーだけですよね。
ヴィクトリーが勝ったら皮肉ですよね~。
Posted by: 治郎丸敬之 | May 24, 2007 at 08:55 PM
はやひでさん
路線が違う馬たちの力の比較は難しいですね。
フサイチホウオーは、若さゆえか、苦しいところがあるのか、もたれたりヨレたりしています。
このあたりが、ダービーを安藤騎手と松田国調教師とのコンビで勝ったキングカメハメハとは大きく違うところでしょう。
断然の人気にはなりますが、キンカメほど信頼は置けないですよね。
とても乗り方の難しい馬だと思いますよ。
ドリームジャーニーで逝きますか。
ローブデコルテを当てて乗っているはやひでさんとはいえ、コメントは控えさせてください(笑)。
Posted by: 治郎丸敬之 | May 24, 2007 at 08:59 PM
はじめまして。いや、本当ははじめましてではないのですが。
以前、初めてディープインパクトの壁紙を提供されていた時に思わず申し込み、いただいた事があります。その節はお世話になりました。
いよいよ本番ですね。サラブレッドにとって、そこに携わっている方々にとって、出走が叶ったとしてもそうでないとしても、いよいよこの日が・・・という特別な日だと思います。
この時期(ダービー)までの競馬はとても好きです。
もちろんそれ以降も大好きなのですが、世代の頂点を目指すダービーまでの道程は、競馬が博打であるという事を少し脇に置いて、ここまでの物語りやその背景を聞きたくて待っているような、そんな不思議な感覚になります。
いつも拝見させていただきながら感じていたのですが、治郎丸さんの文章からは競馬に対する愛情がとても伝わってきます。
博打としての競馬、ロマンとしての競馬。
両方知っているからこそ伝わってくるものが、とても心地いいのです。
これからも応援しています。
Posted by: GisyuT | May 24, 2007 at 10:37 PM
GisyuTさん
ありがとうございます。
1年以上前になりますが、GisyuTさんのこと覚えていますよ。
丁寧にメールをいただきましたね。
いよいよダービーです。
競馬の予想をしていると、どうしても1頭1頭の馬のストーリーを忘れがちになりますが、出走馬18頭とここに出られなかった馬たちにも語りつくせない背景があるのですよね。
そういうものに想いを馳せると、我々の予想などちっぽけなものだと痛感します。
でも、やっぱり、ダービーだけは当てたいのも本音(笑)。
「格理論」も「ガラスの競馬場」も、お互いにいつまでも高いところを目指して運営していきましょうね。
これからもよろしくお願いいたします。
Posted by: 治郎丸敬之 | May 25, 2007 at 12:45 AM