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それでも彼らは行くのだ。

Soredemoikunoda松岡正海騎手が、今年もアイルランドへ旅立つ。ただ単純に、素晴らしい挑戦だと思う。アイルランドで修行したからコイウタでヴィクトリアマイルを勝ったとは思わないが、アイルランドに行っていなければ勝てたかどうかは分からない。常に前を向いている松岡騎手だからこそ、海外にも行けたし、ヴィクトリアマイルも勝てたのだろう。

かつては故野平祐二ジョッキーが先陣を切り、岡部幸雄騎手や武豊騎手、そして蛯名正義騎手、後藤浩輝騎手など、多くのジョッキーが海の向こうへと戦いの場を求めた。それがたとえわずかな期間であったとしても、彼らはまるで別人のように成長して海外から帰ってきた。欧米の競馬はそんなにも騎乗技術が進んでいるのか、そう思ったこともあるぐらい、彼らは変わった。

今はその理由が分かる。彼らが変わったのは、海の向こうから技術を持ち帰ったからでも、刺激を受けて帰ってきたからでもない。そうではなく、彼らが変わったのは、ひと時として彼らが所属する場を失ったからである。どこかに所属するという安心感を捨て、もしかしたらどこにも戻られないかもしれないという不安を抱え、それでも鞭一本を持って挑戦した。これまでの日常では考えられなかったような世界へ、思い切ってジャンプすることによって彼らの内的風景が変わったのだ。そんな彼らにとっては、手綱の感触や、股下から伝わってくる馬の鼓動、呼吸のリズム、蹄鉄の音、全てが今までとは違って見えたはずだ。

私たちは生まれた時から、常にどこかに所属しているという安心感を持って過ごしている。それは母親の胸であったり、学校であったり、職場であったりする。そして、特に日本社会という文脈の中では、どこかに所属していないことを悪とみなす傾向が強い。そうして、私たちは社会の文脈から外れないよう、履歴書に1日たりとも穴が空かないよう振舞い、汲々とした人生を送ることになる。それは、たとえジョッキーという特殊な職業に就いた者とて同じで、彼らも常にどこかに所属して生きてきたはずなのである。

しかし、どれだけ澄んだ水でも留まれば濁る。だからこそ、ある時、彼らは安定した地位と名誉と賞金を捨て、どこにも所属することなく、わざわざ全くの当てもない世界へ単身で飛び込んで行くことを決めた。もしかすると、そう決めた時点で彼らは変わっていたのかもしれない。苦しいだけで、馬にさえ乗せてもらえず、無一文で帰ってくることもあるだろう。戻ってきても、もう自分の居場所はないかもしれない。それでも彼らは、競馬社会の文脈に所属することを捨て、自分の文脈を求めて旅立ったのだ。今までは乗り切れなかったような壁を超えるために。

「今ここ」という自分の文脈に没入し、他のことは考えず、まだ登っていない高みを目指す。そして、後悔しない。結局、そうすることが人生における最大のよろこびにつながるのだ。

Special photo by fakePlace

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Comments

ランキングに誘導するやり方は、あなたの評価さげないか

Posted by: k | July 05, 2007 at 11:43 PM

小島太一騎手が抜けていますよ(笑)

ベテランになって、一流馬が何頭もお手馬になってくると
さすがに長期滞在は難しいと思うので、
若手騎手にはどんどん長期遠征してもらいたいですよね。

Posted by: さとし | July 06, 2007 at 12:15 AM

治郎丸さん。「今までありがとう」に掲載していただきましてありがとうございます。「それでも彼らは行くのだ」について自分なりに考えてみました。
自分も会社に所属しており安心感を持って毎日過ごしています。成果主義・リストラ・人間関係でいつどうなるかわからないため、危機感をもって仕事にチャレンジしています。そうすることで自分自身が成長することを信じて。

Posted by: hagi | July 06, 2007 at 02:06 AM

Kさん

ありがとうございます。

私も色々と考えましたが、もはやブログランキングではない今のブログランキングに一石を投じたく、このような形を取っています。

もちろん期間限定ですので、ご了承ください。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 06, 2007 at 02:42 AM

さとしさん

アッ、忘れていました(笑)

私はベテランになってからでも行けると思っていますが、若手にはチャンスが大きいですね。

これは馬にも言えることだと思うのですが、やはり違う環境に身を置くことは、成長のチャンスですから。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 06, 2007 at 02:45 AM

hagiさん

こちらこそありがとうございます。

そうですね、お互いにチャレンジしていきましょうね。

最後の段落は、私の所信表明のつもりでも書きました。

こういうやりとりが出来るのは嬉しいですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 06, 2007 at 02:50 AM

私は履歴書に一瞬だけですが穴が空いた時期がありましたね。後先を考えずに辞表出したりして。若かった。(笑)
その時の不安は計り知れないですし、その時を知っているから穴が空かない様に頑張れるのかも知れません。

プロキオンS
◎ワイルドワンダー(騎手微妙も・・・馬の力信じ)
○オフィサー(展開向けば)
▲ツムジカゼ(休養明けも仕上がり良ければ楽しみ)
△サンライズキング(レコードホルダー力ある)
×リミットレスビッド(自力信じるも年齢的に?)
×ブルーフランカー(穴で一考)
×ボードスウィーパー(1400得意)

夏競馬は放牧だと言いながら、こうやって毎回続けるんかなー

Posted by: はやひで | July 06, 2007 at 08:31 AM

はやひでさん

こんばんは。

穴が開かないように頑張る。

なるほど、そういう考え方もあるのですね。

私は七夕賞を検討するつもりなので、プロキオンSははやひでさんの挙げた馬に注目しておきます。

というか、はやひでさん、いつ放牧に出るのですか~(笑)。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 06, 2007 at 09:39 PM

どうもです~
そろそろようやく、放牧(WINS)に出れそうです(^^;

コイウタ、残念でしたね。
でも、夢を見せてくれた事に感謝したいです(^^
ただ、騎手が松岡騎手で無かったのは残念でした。
私は地方騎手の凄さは大井競馬を見ておりますので
良く分かりますが、コイウタやメイショウサムソンには
違った強さと言うのも感じました。
ミホノブルボン=小島貞博騎手というような感じです。
そういう私にはは及びも尽かない絆のようなものも
大切なのかなとしみじみ思ったり…
最近は騎手替わりも休養明けに近い扱いか?くらいに
思い始めてもおりますが…

これから夏競馬ですが、治郎丸さんにもぜひ応援して
頂きたいお馬さんがおりまして、テンジンムサシというのですが
おそらく関越Sに出走すると思いますが私注目の1頭ですので
ぜひ注目してみてください(^^

ちなみにウインドインハーヘアはアルザオ産駒で
たしかアイルランド産馬でしたよね?
ただ、ヨーロッパ馬は各地で走っておりますので
アイルランドのレースを勝ったかどうかは分かりませんが…
(^^;

Posted by: しゃち | July 09, 2007 at 09:38 PM

しゃちさん

いよいよ夏競馬ですね。

今年は私もゆっくりと夏競馬を楽しもうと思っています。

明後日はJDDを観戦に行く予定です。

コイウタは残念な結果になってしまいました。

勝った馬は異常に強かったですね。

ちょっと、アメリカの芝馬を舐めていた気がしました(笑)

私も松岡騎手が乗って欲しかったですね。

絆を感じさせる騎手が乗るということは、最大のファンサービスのひとつだと思うのですが。

メイショウサムソンにも出来ることなら石橋騎手に乗って挑戦して欲しかったですね。

>最近は騎手替わりも休養明けに近い扱いか?くらいに思い始めてもおりますが…
→なるほど、なるほど。

とても面白い考えですね。

それぐらいのデメリットはあるのかもしれません。

特に大きなレースになればなるほど。

ウインドインハーヘアはアイルランド生産馬でイギリス調教馬です。

でもなぜか勝った唯一のG1はドイツでのものでした。

明後日のJDD楽しみですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 10, 2007 at 01:46 AM

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