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「口笛吹きながら」

Kutibuewohukinagara 1star_1

私にとってはバイブルのような存在の本である。当時、私はここに収録されたエッセイを読むためだけに「週刊Gallp」を購買していた。競馬予想の技術はもちろんのこと、競馬に対する考え方まで、私は野平祐二さんの影響を大きく受けていることは間違いない。

競馬は文化であり、スポーツである。単なるギャンブルではない。ギャンブルだけでは競馬は滅びてしまう。競馬をマネーゲームにしてはいけない。等々。野平祐二氏の言葉には、世界の競馬に飛び込み、その隆盛を見てきたからこそ発することができる真実がある。競馬を見失いそうになった時、この本を開けば、競馬の理想の姿がいつも現れる。

今でも記憶に残っているエッセイがあって、それは若手騎手を育てることについてのものだ。馬の成績が良くなれば、もっといい騎手へと乗り替わるのが日本競馬社会の日常である。そんな中で、テイエムオペラオーに和田竜二騎手、ナリタトップロードに渡辺薫彦騎手、サイコーキララに石山繁騎手を乗せ続けた調教師を、「すごいな」と思って見続けてきたという。

野平氏が若手騎手だった時代は、いい馬に乗れなかったというよりは、いい馬に乗ってはいけなかったらしい。自分より上手い先輩がいっぱいおり、そこには序列というものがあったからである。「ずうずうしく乗ってはいけないんだ」と思っていて、当時は若手騎手には「馬に乗れる喜び」は少なかったという。

こういうガチガチの徒弟制の中で育ってきた叩き上げの人間は、普通ならばこう切り捨てるだろう。「俺らの時代は、馬になどまともに乗せてもらえず、靴磨きしかさせてもらえなかった。今の若手は恵まれている」と。しかし、ミスター競馬こと野平祐二氏はこう言う。

強い馬を作ることも大切だが、いかに素晴らしい人材を育てるかということも大事なこと。強い馬が出てきたら、弟子に乗せて経験させるべきだと思う。(中略)「自分のところで、なんとか、しっかりした騎手を育てよう」という考えを持つ調教師が増えてきたのは本当にうれしい。いい時代になったな、と思う。

当時、このエッセイを読んで、自らの身と照らし合わせ、感激して涙したのを覚えている。こんな考え方をする人もいるんだなと。

外国が地方から腕の立つジョッキーが押し寄せ、若手騎手にとっては不遇の時代になったと言われるが、果たして本当にそうだろうか。昔に比べて今の時代は、若手騎手にとっても、チャンスはたくさん転がっているのではないだろうか。いい時代になったな、と思う。

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