まずは、芝コースの良馬場に限定して話を進めていきたい。芝コースのレースがどのような馬場で行われているかを把握するためには、以下の3つの項目をきっちりと把握しておかなければならない。
(1)どれくらいの重さ(軽さ)か?
(2)馬場の内外で差はないか?
(3)レースで極端な傾向はないか?
■どれくらいの重さ(軽さ)か?
馬場状態を把握するために最も重要なのは、(1)のどのくらいの重さ(軽さ)かであり、それは「芝コースの種類」と「芝の傷み具合」によって大きく違ってくる。
まず、「芝コースの種類」は大きく3つに分けられる。
1、野芝100%の芝コース(新潟競馬場)
2、洋芝100%の芝コース(札幌、函館競馬場)
3、野芝に洋芝をオーバーシードした芝コース(東京、中山、阪神、京都、中京、福島、小倉競馬場)
1の野芝は暖地性の芝草であって、気候が暖かくなる6月から成長を開始し、8月の一番暑い時期に最盛期を迎える。野芝は非常に強靭で、耐久性が高い。地面に地下茎を張り巡らせて横にネットワークを作るため、馬の蹄が当たって多少の衝撃があろうともビクともしない。野芝が生え揃った状態の馬場には、押すと弾き返すといったクッションが感じられ、硬くてスピードが出る。

野芝の弱点は、寒さに弱く冬枯れしてしまうということである。野芝しか使っていなかった昔の中山競馬場の馬場は、暮れになると芝がまるで土のような色になり、見映えは決して褒められたものではなかったことを思い出す。当時、ジャパンカップに来た外国人関係者が、「芝のコースはどこにあるのですか?」と尋ねたという笑い話は有名である。
2の洋芝は寒地性の芝草である。洋芝の葉の密度は野芝よりもずっと濃いため、馬の蹄が芝の上に着地してから、芝が倒れて足の裏が地面に着くまでに時間差があるように感じる。野芝が押すと弾き返すクッションであれば、それとは対照的に、洋芝は押すと凹んで力を吸収するクッションである。それゆえ、洋芝の芝コースは重くて、パワーとスタミナが必要とされる。

また、洋芝の芝コースは極めて美しい。次々に新しい芽が吹いて密度がどんどん高まり、しかも寒い時期でも冬枯れしないため、芝コースを1年中緑に保つことも可能である。野芝に比べ、洋芝はテレビ映りが断然にいいのだ。
しかし、強度と耐久性という点では野芝に劣る。馬の蹄が強く当たると、根こそぎ芝が剥がれてしまうこともあり、ポカっと穴があいてしまい危険である。また、高温の夏には夏枯れしてしまうことがあり、さらに雨が降ってしまうと途端に馬場が悪化することもある。だからこそ、洋芝100%の芝コースは札幌と函館競馬場のみでしか成立しない。
3の野芝に洋芝をオーバーシードした芝コースとは、野芝をベースとして、その上に洋芝のイタリアンライグラスを植えたコースのことである。中央4場(東京、中山、阪神、京都)でオーバーシード芝が必要なのは、開催時期が9月から翌年の6月までと、真冬の季節を含むからである。
前述のように、野芝は暖地性の芝草であり、11月以降は冬枯れして見た目が悪いばかりではなく、枯れている時期に開催が集中すると、芝の発育が阻害され、翌年以降に悪い影響が出ることになる。野芝の強靭さと耐久性をベースとしつつも、見た目が美しく、発育が早い洋芝で上から覆うようにしてサポートしているという構造になる(下図)。


枯れた野芝の上を洋芝が覆っているのが分かる。
そのため、洋芝がいくら茂って見た目が青々としていても、馬場が良好であるということにはならない。特に春になって野芝のネットワークが擦り切れてしまうと、いくら洋芝で取り繕ってみても、馬場が柔らかすぎてクッションが失われてしまう。オーバーシード芝の場合、見た目に騙されてはいけないのだ。あくまでもベースとなる野芝がどういう状態にあるかを見極めることが大切である。
また、春競馬が終了すると同時に、野芝を覆っていた洋芝は根ごと引っこ抜かれる。夏にかけて成長する野芝の上に丈の高い洋芝があると、日光を遮ってしまうからだ。夏の間は野芝100%の状態でゆっくりと養生されるため、10月ぐらいまでの開催では、オーバーシード芝とはいえ野芝100%と考えてもよい。
(第3回へ続く→)
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