夏負けしている馬、していない馬

「普段から気性のカッカしている馬は夏負けしにくい」と、ある調教師がどこかの雑誌で語っていた。気性が大人しい馬ほど、夏は元気がなくなってしまう。総じて牝馬が夏に強いのは、ここにも理由があるのではないか、とのこと。とても興味深く読んだのだが、この話には少し疑問がある。
個体差や牝馬牡馬などの性差を抜きにして言えば、基本的に夏負けするのは、「無駄な動きをする馬」だと思う。普段の運動で突然立ち上がって暴れてみたり、乗り運動の時に乗り手の指示に従わず暴走してみたり、競馬場への輸送車の中でもジッとしていなかったりと、そういう無駄な動きをする馬こそが夏負けしやすいのである。
高齢馬が夏に強いと言われるのはこれゆえである。同じ馬であっても、高齢になるほど夏負けしにくくなるのは、もちろん暑さへの耐性が付いていくということもあるが、気性的に落ち着いて、無駄な動きをしなくなるからという理由が大きい。だからこそ、個体差はあっても、夏には高齢馬を狙えという馬券術には一理ある。
ところで、パドックで夏負けしている馬を見るポイントとして、一般的なところは以下の3つ。
(1)目の周りが黒ずんでいる
(2)大量の汗をかいている、もしくは汗を全くかいていない
(3)牡馬であれば睾丸が垂れ下がってきている
(1)は人間でも寝不足や疲労が重なると目の下にクマが出来るが、そのようなものとイメージしてもらいたい。これは程度問題であって、毛色によっても見分けにくさが違ってくるので、明らかに分かるくらい目の周りが黒ずんでしまっている馬は、夏負けの影響を考えたほうがよい。
(2)は極端に汗の量が多すぎたり、逆に少なすぎたりすることである。夏場だけに、普段より発汗量は多くて当然であるが、異常とも思えるぐらいの汗をかいていたり、反対に全く汗をかいていなかったりする馬は、夏負けを疑ってみたほうがよい。
(3)は牡馬特有の現象であるが、睾丸が普段の2倍以上の大きさに腫れ上がって、垂れ下がってきているということである。わざわざ競馬場まで行って、パドックで馬の睾丸を見るというのも情けない話だが、もし夏場のパドックでこういう馬を見かけたら、夏負けしている可能性が高い。
話を元に戻すと、「普段から気性のカッカしている馬は夏負けしにくい」というのは誤解であって、「普段から落ち着いて無駄な動きをしない馬は夏負けしにくい」の方が正しい。確かに、夏負けしてしまった馬が大人しくなってしまうことも事実なので、おそらくこの調教師が伝えたかったことは、「カッカしているぐらいの馬はまだ夏負けしていない」ということではないだろうか。つまり、普段から大人しい馬と、夏負けして大人しくなってしまった馬の区別はつけ難いが、いずれにせよカッカしているぐらいならまだ夏負けしていないということである。
今年からは、パドックで夏負けしている馬を見分けるポイントとして、(4)カッカしている馬はまだ夏負けしていない、を付け加えて夏競馬に臨みたい。
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