またいつか、どこかで
ウオッカが凱旋門賞を断念したことは、馬のことを考えれば当然の判断だが、やはり心情的に非常に残念である。なぜなら、父母共に日本で走ったことのある純内国産馬ウオッカが、凱旋門賞のような海外のビッグレースに挑戦して勝つことがあれば、これまでの勝利とはまた違った大きな意義があったと思うからだ。
振り返ってみると、日本馬による海外遠征は1958年のハクチカラに始まり、数々の紆余曲折を経て、ようやく1998年にシーキングザパールによるG1モーリスドゲスト賞制覇に至る。その直後、タイキシャトルがジャックルマロワ賞を制し、翌年には鬼門であった凱旋門賞でエルコンドルパサーが僅差の2着と好走した。勝利への扉が開かれるや、堰を切ったように日本馬は海外でG1レースを勝ち始めたのである。
しかし、海外でG1レースを勝ったどの馬も純内国産馬ではない。父か母かどちらかが日本のレースで走った馬ならば、シーザリオ(父スペシャルウィーク)、ハーツクライ(母アイリッシュダンス)、ステイゴールド(母ゴールデンサッシュ)、コスモバルク(母イセノトウショウ)、シャドウゲイト(母ファビラスターン)が挙げられるが、その他の海外で活躍した馬たちの父や母はいずれも海外で生産され、海外で調教を積み、海外のレースで鍛えられた馬なのである。私たちの期待を一身に引き受けて戦った、あのディープインパクトも同じである。
もちろん、彼ら彼女らが海外で走った時には心から応援してきたし、日本の生産、調教技術が世界レベルにまで達していることを否定するつもりは毛頭ない。そもそも血統を遡っていけば、結局は3頭の馬に辿りつくことを考えれば、直近の父母が日本で走ったかどうかにこだわる必要もないかもしれない。が、しかし、どこか借り物のような気持ちがしていたのは私だけではないだろう。その馬は本当に私たちの手だけで作り上げたものなのだろうかと。
その点から見れば、ウオッカは紛れもない純内国産馬である。父タニノギムレットはカントリー牧場で生産され、松田国英厩舎で調教を積み、武豊騎手に導かれて東京優駿を制した。ついでに言うと、タニノギムレットの母系にはタニノクリスタル、タニノシーバードとカントリー牧場のゆかりの血が流れている。ウオッカの母タニノシスターも同じくカントリー牧場で育ち、森秀行厩舎で鍛えられ、5つの勝ち星を挙げた。こちらもついでに言うと、タニノシスターの母系はあの名牝シラオキの血を引いている。
もう一度述べるが、ウオッカが凱旋門賞のような海外のビッグレースに挑戦して勝つことがあれば、これまでとはまた違った意味での快挙となっただろう。もちろん、今回の回避で全てが潰(つい)えたわけではない。しかし、私たちの心のどこかにある空虚が埋まるその時が、まだだいぶ先の話になってしまったようで、非常に残念なのである。ぜひともウオッカには、またいつか、どこかで挑戦して欲しいと切に願う。
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Comments
あくまで個人的な感想なんですが、アドマイヤムーンを
大金をはたいて手に入れた殿下、これでアドマイヤムーンが
海外のレースなどを制したとして・・・嬉しいんでしょうか?
自分のところで生産した馬じゃない馬をお金で手に入れて
それで勝利を飾ったとして・・・
意味合いは違いますが治郎丸さんが純内国産馬以外の海外勝利に
感じておられることにちょっと近いかな、と。
シーザリオの勝利が借り物だとは感じませんが(^^;
ウオッカの勝利に意味があることはわかる気がします。
まだ来年もチャンスがあると思いますので
是非挑戦してもらいたいですね。
斤量優位があるから・・ということを抜きにして
力で勝利をもぎ取ってもらいたいなぁと思っています。
Posted by: けん♂ | August 19, 2007 at 02:51 AM
フジヤマケンザンの名前が出ないのをとても残念に思います。
Posted by: 通りすがり | August 19, 2007 at 03:52 AM
けん♂さん
おはようございます。
殿下は私たちとは全くスケール感覚が異なるのでしょうね。
生産という面にもかなり力は入れていますが、世の中の強い馬は全て手に入れたいという素直な思いを実現させているのではないでしょうか。
将棋で言えば、相手の強い駒を全部取っちゃうみたいな。
それにしても、このエントリーは誤解を受けやすいですよね(笑)。
私もシーザリオの勝利が借り物だとは思いませんよ。
大好きなスペシャルウィークの血が半分流れている、私が知る最強牝馬の1頭ですから。
ウオッカは年内で引退してしまうのではないかという心配がありますが、ぜひまたいつか、どこかで勝つために挑戦して欲しいと思います。
Posted by: 治郎丸敬之 | August 19, 2007 at 10:41 AM
通りすがりさん
そうですね、失礼しました。
フジヤマケンザンはハクチカラ以来の重賞制覇をした純内国産馬ですからね。
ただここでは、海外G1ということで論を進めましたので、彼の名前は載せていませんでした。
フジヤマケンザンについては、またいつかの機会で取り上げたいと思います。
Posted by: 治郎丸敬之 | August 19, 2007 at 10:45 AM
>フジヤマケンザンについては、またいつかの機会で取り上 >げたいと思います。
心から、よろしくお願い致します。
確か3回目の香港遠征で勝利したのですが、2回目までは内に包まれて、外に出させてもらえず脚を余してのレースでした。でも森調教師を初め、誰も一言も騎乗について何も言わないのでそれが「かえってつらかった」って「でも3回も乗せてくれて」って蛯名騎手が言っていたのを思い出します。
Posted by: 通りすがり | August 19, 2007 at 02:03 PM
本気で凱旋門を狙いにいくといいながら、
年内に既に5走もさせているので矛盾を感じます。
チューリップ賞、桜花賞、ダービーだけで十分ですよね。
デビュー戦後10ヶ月ぶりで英ダービーを勝ち、
さらにキングジョージから直行して凱旋門を勝った馬もいるので
ぜひ直行でも挑戦してもらいたかったです。
Posted by: さとし | August 19, 2007 at 06:19 PM
通りすがりさん
分かりました。
いつとはお約束できませんが、
私もフジヤマケンザンは好きなので書いてみたいと思います。
あの時代のある意味パイオニアでしたからね。
名前も古風で格好良かったですよね。
日本でG1を勝って欲しかった。
Posted by: 治郎丸敬之 | August 19, 2007 at 10:48 PM
さとしさん
まあ、馬によって最適なローテーションがあると思いますので、難しいところですがね。
こういう状況になってしまうと、1戦余計だったと言われても仕方ないのかもしれません。
とにかく、年内を国内で走って、そのまま引退というのだけはやめて欲しいなあと、今はそれだけです(笑)。
Posted by: 治郎丸敬之 | August 19, 2007 at 10:51 PM
お久しぶりです。毎日見てはいますが(笑)
残念ながらメイショウサムソンも凱旋門賞断念らしいですね。
サムソンの場合は、馬インフルエンザに感染しているらしいですから仕方が無いとも思いますが・・・、ウオッカには、ぶっつけでも挑戦して欲しかったです。
ウオッカ、秋はどういうローテーションで行くんでしょうね?順当に秋華賞に行くのか、それともまた古馬に挑みに天皇賞へ行くのか、ダンスインザムードのように両方行っちゃうのか。
競馬が開催されてなくても、頭の中ではいつも馬は走ってます(笑)
Posted by: fujimori | August 20, 2007 at 12:10 AM
fujimoriさん
お久しぶりです。
そして、いつもありがとうございます。
メイショウサムソンですが、凱旋門賞は出走しないんですかね?
以下のような記事もあって、私は行くのだと喜んでいますが…。
→ http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2007/08/19/01.html
情報が錯綜していますが、いずれにせよ陣営も慎重に判断して欲しいところです。
おっしゃるように、ウオッカは秋華賞というよりも、古馬に挑戦してもらいたいと思います。
3歳牝馬同士では勝負付けがついていますからね。
私も競馬がなくても馬と妄想が走り続けています(笑)
Posted by: 治郎丸敬之 | August 20, 2007 at 10:56 AM
その情報は知りませんでした。
ありがとうございます。秋の楽しみがひとつ復活しました。
もしこの馬インフルエンザ騒動が長引くようなら秋のG1戦線はぶっつけの馬が多くて悩みそうですね。
Posted by: fujimori | August 21, 2007 at 12:43 AM
fujimoriさん
メイショウサムソンにはぜひとも行って欲しいですよね。
ただ、情報が錯綜していて、違うソースだと断念となっていますので、現時点では正直よく分かりません。
凱旋門賞にしても、秋のG1戦線にしても、今回の影響は特に陣営にとっては大きな悩みになるでしょうね。
なんとか最小限の被害で収まることを願います。
Posted by: 治郎丸敬之 | August 21, 2007 at 01:14 AM