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◎アイルラヴァゲイン

Jiromaru

素晴らしい手紙をありがとうございました。ケイエスミラクルはクラフティープロスペクターなんですね。そう考えると、ケイエスミラクルがまるで今でも走っているようで、とても嬉しくなります。うんうん。私も最近はルドルフおやじさんの影響を受けて、母系の血統を少しずつ勉強し始めています。母系に脈々と流れる血の深さを知れば知るほど、父と母父ぐらいでしか血統を理解していなかった自分が恥ずかしくなります。ぜひこれからもまた色々と教えてくださいね。

「配合の中にある究極のスピードを生かすにはそのバックボーンに異種のステーヤーの血が必要だ」というルドルフおやじさんのご指摘、まさにその通りだと思います。スプリンターズSは中山競馬場の芝の状態が最高に良い時に行われるため、スタートしてから究極のラップを刻み続けるスピードレースになります。そうした中で、最後の最後まで究極のスピードを維持しつづけるためには、どうしても力強いスタミナの血が必要になります。バンブーメモリーもフラワーパークもサクラバクシンオーもそうなんですね。この傾向はスプリンターズSの開催が9月になって、さらに強まった気がします。

この手紙を書いている今、関東ではまだ小雨がパラついています。もしこのまま降り続けば、野芝がしっかりと根を張った馬場とはいえ、レースはパンパンの良馬場というわけにはいかないはずです。現時点ではやや重~重馬場という前提で考えています。とすると、どうしても前に行ける馬、特に逃げ馬にかなり有利なレースになります。平成12年のダイタクヤマト、平成16年のカルストンライトオ、平成18年のテイクオーバーターゲットと、道悪になったスプリンターズSは全て逃げ馬が制しています。ここまで来ると、もはや偶然ではありませんね。必ずしも逃げ馬でなければならないということではないと思いますが、前に行けない馬の勝機は少ないでしょう。

どれだけ行き切れるかということを考えると、アイビスサマーダッシュといレースが大きな意義を持って現れてきます。かつてはカルストンライトオという馬がアイビスサマーダッシュを制した勢いで重馬場のスプリンターズSも連勝しました。今年のアイビスサマーダッシュを振り返ってみると、勝ったサンアディユと2着のナカヤマパラダイスは差した馬なんです。どちらもラスト400mくらいからエンジンが掛かって先行集団を飲み込みました。ということは、前に行った馬にとってはかなり厳しい展開だったということでもあります。レースをよく見ると、最後は差されてしまいましたが、前に行って最後まで粘ったクーヴェルチュールとアイルラヴァゲインはかなり強いレースをしたことになります。重馬場のスプリンターズSということで考えると、この2頭は当然マークが必要です。

本命は◎アイルラヴァゲインに打ちます。もし良馬場であれば、この馬の勝ち目はないと考えていました。たとえ8分の出来だったとしても、前走のセントウルSで勝ち馬と同じ位置からあれだけ離されてしまったレースに不甲斐なさが残りましたからね。たとえ展開や条件が好転するとしても、良馬場ではサンアディユを逆転するのは相当に難しかったのではないでしょうか。しかし、重馬場で行われるという前提で考えると、行き切れるスピードを持っているということ、そして中山の最後の急坂をこなせる牡馬のパワーがあることを評価します。アイビスサマーダッシュ→セントウルSとステップを踏んで、ここに照準を絞って順調に調整されてきています。母系にはこれといって特筆する馬がいませんが、重馬場の凱旋門賞を2着したエルコンドルパサーの血を引く馬ですから、こういった馬場は得意とするところでしょう。松岡騎手には内枠を引いた利を生かして騎乗してもらいたいですね。

同じくらい魅力的なのがクーヴェルチュールです。レースセンスの良い馬で、スタートも抜群、テンも速く、スッと好位につけられますので、自分でレースを作ることができます。サマースプリントシリーズを捨て、セントウルSをスキップしてここに照準を絞ってきただけあって、最終追い切りの動きを見ても完璧に仕上がっています。直線に坂のある中山コースだけが不安材料でしょうが、春当時に比べ気性、馬体共に格段に成長した今なら、という思いがあります。

また、ルドルフおやじさんのおっしゃるように、クーヴェルチュールの母系は種正から出る系統です。種正は下総御料牧場がイギリスから輸入した繁殖牝馬で、第2回ダービー馬トクマサ(父トウルヌソル)の母として有名ですね。種正は7頭の後継牝馬を残していて、その中でも特に成功したのがダイオライトを父に持つ神正です。ダイオライト自身はマイラーでしたが、種牡馬や母の父としては力強いステイヤー血統として成功しました。ダートや重馬場に強い力のある血脈なので、母系にこのダイオライトが入ると大レースでの底力が補強されます。たとえばスペシャルウィークの母系にも、ダイオライトが入っています。このように種正→神正からの血を絶やすことなく繋げてきた結晶がこのクーヴェルチュールでしょう。もちろん、父ブラックホーク(父父ヌレイエフ)からも力の要る荒れた馬場、重馬場、ダートにも強く、単なる早熟ではない成長力を受け継いでいます。まさに雨の降ったスプリンターズSを勝つために生まれてきたような馬です。

サンアディユの音無調教師が「自分の競馬が確立していないので不安はある」とコメントしていましたが、その気持ちはよく分かる気がします。前走のセントウルSは差す競馬を予定していたものの、スタート良く飛び出したために2番手の競馬になってしまいました。それで揉まれずに済んで、結果的に圧勝に繋がりましたが、内心は複雑だったはずです。先行すべきか差すべきか。今回はおそらく出たとこ勝負で、川田騎手としては出来るだけ前に位置取りをしてくるはずです。そうした時、周りの騎手もマークしてくるはずで、前走のようにはスムーズに運べない可能性は高いのではないでしょうか。厳しいペースの中で揉まれて、精神的に嫌気を出して凡走してしまうことも十分に考えられるでしょう。もちろん、前走をあれだけのタイムで走った馬ですのでノーマークには出来ませんが、本命までは打てませんでした。

当初はスズカフェニックスに本命を打つつもりでした。こういうスピードの勝ったマイラーがスプリント戦に狙いを定めてきた以上、そう簡単には負けないからです。本質的には軽い瞬発力で勝負するマイラーですが、高松宮記念では自ら動いて勝負できる持続力もあることを証明しました(スプリント戦だからですが)。安田記念はマイル以上のスタミナを問われて負けてしまいましたが、最後まで伸びてきているように、ようやく本格化してどんな状況でも力を出し切れるようになりましたね。このメンバーでは力が一枚も二枚も上ですので、馬インフルエンザの影響で調整が遅れて急仕上げだとしても、問題なく勝ってくれるはずだと思っていました。

ところが、残念なことに、馬場が渋ってしまいそうですね。これまでのレースが示すとおり、馬場が悪化してしまうと後ろから行く馬にとっては厳しいレースとなります。高松宮記念で勝っているように、決して道悪を苦手とする馬ではありませんが、スプリンターズSはレースの性格上、どうしても雨が降ると前に行った馬が有利になってしまいます。急仕上げで体調が100%でない上に、馬場にも恵まれないとなると、スズカフェニックスにとっては二重苦です。ということで、スズカフェニックスは泣く泣く評価を落としました。

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さよならはなしよサンアディユ 

Rudolf

お返事ありがとうございます。今回は、例の茶番劇のせいで普段にも増して憂鬱になっていたのですが、前回の手紙に対する読者からのコメントで、なんと、なんとですぞ、「自由穴党」党首から激励の言葉を頂戴して少し元気になった次第です。正々堂々、「国民血党」幹事長代理補佐の手下として論戦を繰りひろげてみようかと思いまする。

まずインフルエンザの件、治郎丸さんのおっしゃるとおり!肝心なことを説明しないのがお上なんですな。どうでもよいことはくどくど説明して時間をかせぐ。こうなったら、このおやじが馬インフルに罹患してみせようか?いいのかい?いいのかい?いいのかい?・・・。発生源を突き止めるのは極めて難しいと聞くがそれならそうと正直に説明すればいい。いまだに出走取り消しってえのがやけにめだつじゃないか。

うむ、うむ。ケイエスミラクル、忘れていました。もう16、7年前のお話ですか。ケイエスミラクルが倒れた、第2回G1スプリンターズSの勝ち馬のダイイチルビーはキューピットの末裔でしたね。大好きな血統だったんで迷わず本命にしてました。迷ったのは何万と見た馬名のなかでも、とびっきりの粋を感じたナルシスノワール。ミラクルの勢いをとるかナルシスの粋をとるか、ミラクルの勢いをとってしこたま負けた悔しさだけを覚えている、情けないおやじです。

ちょっと気になってミラクルの血統をのぞいてみました。クラフティープロスペクターの近親で似通った血の配合の持ち主でした。クラフティープロスペクターはAデジタルなどでおなじみになった種牡馬ですが、日本で彼の走りをイメージできる人はまずいないでしょう。これからは血統表にクラフティーの名を見つけたら、奇跡の名馬ケイエスミラクルを思い出せばいいのですね。

唐突な質問でごめんなさいね。ハイペリオン系の母系にエルバジェ系の種牡馬がかけられるとどんな馬が誕生するでしょうか?

春の天皇賞やステーヤーズステークスを悠々と走っていそうな馬を想像しますよね。実はこれ、第1回G1スプリンターズSの勝ち馬、バンブーメモリーの配合なんです。G1スプリンターズSを彩った名スプリンターには、名ステーヤーの血が生かされています。短距離の名牝フラワーパークにはダイクというこれもエルバジェ系の種牡馬がかけられていますし、最強馬バクシンオーにもアンビオポワーズというステーヤーがかけられています。バクシンオー産駒の中にハードルで活躍する馬がいるのもうなずけますね。配合の中にある究極のスピードを生かすにはそのバックボーンに異種のステーヤーの血が必要だということ、ちょっと注目してみたいですね。

クーヴェルチュールはスプリンターズSの申し子のような血統です。父はスプリンターズSの勝ち馬、ブラックホーク。彼も母父にシルバーホークというスタミナのある種牡馬をもっています。そして母系はバンブーメモリーと同じ「種正」から出る一族です。洋芝で力の必要な北海道の競馬で活躍できたのは、まさに血のなせる業。底力血統というのならこの馬が1番。サマーシリーズ組のなかでは、ぜひ買ってみたい1頭です。

サマーシリーズのなかで、というよりも日本のレースの中でアイビスSDというレースのもつ意義は大きいと思っています。それはアイビスが直線だけで競われるレースだからです。欧州にあって日本にないもの、かつてはこの直線だけのレースでしたね。ごまかしの効かないところで競ってこそ、真の実力は磨かれます。アイビスを強い競馬で勝ち上がる馬というのはなかなかの実力者だと思っています。カルストンライトオーを忘れてはいけませんね。アイビスのサンアディユは他馬が外埒を頼って走るのを尻目に、馬場の悪い大内(?)をついて差しきっています。このとき最も馬場の良い大外の埒をたよって先行したのがアイルラヴァゲインです。セントウルSでついた5馬身差は両者の実力の違いを物語る着差ではないでしょうか。

サンアディユの母系はすばらしいですよ。アックアック系の種牡馬ユースがかかっている。この血統こそ貴重な血統です。この手紙でよく出てくるテディー系よりも希少価値はあるんじゃないのかなあ。日本でこの直系をみることはほとんどありません。ブロードアピールという凄まじい末脚を繰り出していた馬が日本での直系の活躍馬です。サンアディユの素晴らしいスピードと爆発力はアックアックに由来してるんじゃあないかしら。

北九州記念の敗因は治郎丸さんのおっしゃるとおり、「揉まれてどうか」です。父のフレンチは母系のプリンスローズの気難しさと勝負強さを両方伝える種牡馬だと思います。よく言われるようにフレンチ産駒が東京コースに良績を残すのはレース中にストレスを感じなくてすむからなんでしょう。サンアディユはプリンスローズのクロスを何本かもっています。狭くコーナーのきつい中山コースのG1はやはり心配です。ただ今回は他の馬も弱みを抱えている馬が多いので、アディユの弱点より強さが目立ちます。

アディユは仏語で「さようなら」サンは前置詞のsansかなあ、withoutと同じような意味なので、「さようならはなしよ」という、今回の茶番劇をチクリと皮肉る馬名だったのですね。じゃあ、おやじの本命はこれで決まり!まだ枠はわからないのですが、内なら2番手につける競馬を、外枠なら思い切って大外を差す潔い競馬を希望します。

アストンマーチャンの前走はマーちゃんの強さを十分に感じさせてくれた内容でした。あのハイペースで飛ばして4角から先頭に並びかけようというのですから。しかし、そこからはさすがに息がもたなかった。今回はひと叩きされて折り合いもつくでしょうし、息ももつはずです。G1マイルでウオッカと接戦を演じた力は、このメンバーだと「格」が違います。かわいい名にふさわしくないゴツゴツした体つきはまさにスプリンターのものですね。4角過ぎで先頭に立ってそのままというシーンもあるのかもしれません。母系にはサンインロー系(エルバジェの祖)の種牡馬がかかっていました。

おやじはSフェニックスの高松宮を高く評価しています。きちんとスピードにのって中段より前目を進み最後に2馬身突き放すとは見事なスプリンターです。ここで宮杯に出走した連中に負けることはないでしょう。ただこれもアディユと同じようにプリンスローズをもっているので東京コースむきではあります。まあ、フェニックスのイメージとは程遠いハゲタカではありますが、どこかの「美しき国」の新首相も復活した政治家ということでちょいと怖くなってきました。

イイクニツクロウカマクラバクフ、なぜか遠い遠いむかし唱えた呪文を思い出しました。
イイクニツクロウカマクラバクフ、
イイクニツクロウカマクラバクフ、政治決着のときが近づいています。投票はお早目に。

◎サンアディユ (さよならはなしよ、前首相)
○Sフェニックス(よみがえるハゲタカ新首相)
▲マーちゃん
△クーヴェルチュール
△アイルラヴァゲイン
×キングストレイル(考えても考えても分かんないときは取り敢えず買っておこう)

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G1シリーズが始まる前に

ようやく沈静化したとされている馬インフルエンザ騒動について、これからG1シリーズを迎えるにあたってどうしても書いておきたいことがある。それは、やはりJRAは疫学調査の結果「陽性」と出た馬については、その実名をファンに公表すべきではないかということである。

正確に述べると、今回の件で私が知りたいのは、「陽性」と反応が出た馬ではない。私が本当に知りたいのは、「陽性」と出た馬の中でも発症した馬である。感染していても発症しなければ競走能力に影響しないという観点からは、検査で「陽性」と出た馬を公表することに意味はないと思われる。しかし、「陽性」と出た馬を公表しないことには、「陽性」と出た馬の中で発症した馬も分からないこともまた事実であろう。

もしJRAが「陽性」と出た馬の名を公表すれば、おそらくメディアはその馬の症状についてのヒアリングを行うだろう。感染していたけれど、発症していないのかどうかと。そこで真実が出てくるかどうかはまた別の話ではあるが、少なくともこれから巨額の金が投じられるG1シリーズに出走する馬たちの体調を占う材料になることは確かである。たとえばメイショウサムソンについては、一時、陽性と出たが、発症することなく既に陰性反応が出たことが報道により分かっている。これを全ての馬に対して行うことは難しいが、まずJRAが陽性反応を示した馬についての情報を開示しなければ何も始まらない話なのである。

なぜ「陽性」と出た馬の中でも発症した馬かというと、馬インフルエンザに感染して発症した馬が、のちに症状が治まり、陰性反応が出てから出走したレースで激走した場合、どうしてもその反動が次のレースに出てしまうからである。この考え方は、「馬体重は語る」で示したものとほぼ同じであり、また熱発した馬に対する考え方とも同じである。

熱発明けは走らないというのは競馬界によくある迷信であって、熱発明けに無理して走った馬は次走で走らないというのが本当である。つまり、競走馬というのはその場ではなんとか我慢して走ってしまうのだが、レースが終わった後にガクッと疲労が出てしまうことが多いということだ。それは目に見える形で出る場合もあるし、そうでない場合もある。

ここ最近の如実な例として、アグネスラズベリとフサイチパンドラがこれに当てはまる。アグネスラズベリはキーンランドCの中間に熱発があったとされた。こちらは馬インフルエンザとは無関係と報道されているため、ここではあくまでも熱発したという括りで捉えたい。しかし、アグネスラズベリはキーンランドCで外を回されながらも2着と好走した。これを“熱発明けでも2着に好走した”と捉えてはいけない。繰り返しになるが、基本的には熱発明けでもそのレースは走るのであって、“熱発明けで2着に激走した反動から次は危ない”と考えるべきなのである。アグネスラズベリは、その後、中1週でセントウルSに挑戦し、マイナス20kgの馬体で9着に惨敗した。

フサイチパンドラは札幌記念に臨む中間に2度熱発し、1度は馬インフルエンザの陽性反応が出た。しかし、熱発明けの札幌記念では、唯一のG1馬の貫禄を見せ、逃げ切り勝ちを収めてみせた。熱発明けだから負けたというのは馬券が外れたときの都合の良い言い訳になるが、そうではなくて、熱発明けでも競走馬はなんとか走ってしまうのであり、心配するのはその後のレースにおける反動なのである。その後、フサイチパンドラはエルムSに出走し、前走同様に気持ちよく逃げたにもかかわらず、4コーナーではすでに手応えがなくなり11着に惨敗した。

もしかしたら、私の知らないところでも、このような激走→凡走が繰り返されているのかもしれない(ちなみに、上の2頭に関しては、メルマガでもあらかじめ警告していたもので、決して後付けではないことはお断りしておく)。検査の正確性自体が疑わしきものであることや、感染馬を公表することによるさらなる混乱を考慮したとしても、馬券を買ってもらう立場であるJRAには、ぜひとも陽性馬を公表してほしい。この騒ぎに乗じて、まことしやかな情報を流す悪質な者が現れてこないとも限らない。何よりも、これから始まるG1シリーズにおいて、人知れず熱発したにもかかわらず前走を激走した馬が、人気を背負ってポロポロと惨敗していく姿を私は見たくないのだ。

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ドメインが元に戻りました。

皆さま、こんにちは。いよいよG1シリーズが始まりました。毎年この時期になると、楽しくて顔がニヤけてしまいます。ニヤけた顔が引きつらないように、馬券もしっかりと当てていきたいところですね。さて、先日のドメイン騒ぎの件では、大変ご心配をお掛けしました。愛着のあるドメインだけに、元に収まることができて本当に良かったと思います。そこで、皆さまにお願いがあるのですが、もしドメイン騒ぎの際にブックマークやリンクを変更していただいた方がいらっしゃれば、ぜひとも以下のドメインに再度お戻しください。そうしないと、リンクが切れたり、画像や過去のバックナンバーが見えなくなってしまう恐れがあります。お手数をお掛けしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

「ガラスの競馬場」正式ドメイン→ http://www.glassracetrack.com/

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クーヴェルチュール絶品:☆5つ

アイルラヴァゲイン →馬体を見る
3歳時に比べ、馬体に柔らか味があり、精神的にも安定してきている。
取り立てて強調する馬体ではないが、バランス自体は悪くない。
Pad4star

アグネスラズベリ →馬体を見る
前走の大幅な馬体減の影響は見られないが、
夏の絶好調期に比べると、今ひとつ馬体から迫力が伝ってこない。
Pad3star

アストンマーチャン →馬体を見る
筋肉量はさらに増えたが、2歳時の連勝時にあった柔らか味が戻り切っていない。
気性的にカッカしている様子が窺われ、これが良い方向に出るかは疑問。
Pad3star

キングストレイル →馬体を見る
このメンバーの中では最も馬体に伸びがあり、スタミナがあることは確か。
あとはG1スプリント戦のペースに対応できるかどうか。
Pad4star

クーヴェルチュール →馬体を見る
スリムでスマートな牝馬らしい体型で力感はないが、全体のバランスは素晴らしい。
気性的にも安定しているため、力を発揮できることは間違いなし。
Pad5star

コイウタ →馬体を見る
元来、硬くなりがちな馬体だが、フックラとして、柔らか味も取り戻している。
ただ、これまで良く見せる時に限って、走っていないのも事実。
Pad4star

サンアディユ →馬体を見る
いかにもスプリンターらしい、マッチョな体型で力強い。
腹が巻き上がり気味に映るが、これはこの馬の体型的なものだろう。
Pad4star

スズカフェニックス →馬体を見る
入厩が遅れた影響か、絶好調時に比べ、馬体の柔らか味が失われている。
表情もぼんやりしていて、現段階では覇気に欠けることは否めない。
Pad2star

プリサイスマシーン →馬体を見る
ドラム缶のような力強い馬体で、年齢的な衰えは微塵も感じさせない。
毛艶も良く、休み明けの不安はなさそう。
Pad4star

ペールギュント →馬体を見る
元々、馬体を良く見せる馬だけに、絶好好調時に比べると若干物足りない。
闘志は失っておらず、あとは休み明けがどう響くか。
Pad3star

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サンアディユは揉まれてどうか

Jiromaru

「ダービー馬のオーナーになることは、一国の宰相になるよりも難しい。その難しさは、ペーパーオーナーとて同じ。しかし、難しいと言われれば、チャレンジしたくなるのは人の常である」として昨年初めて挑戦したPOGですが、1位指名のフサイチオフトラが新馬を快勝し、札幌2歳Sで4着に好走したのがまるで昨日のように感じられます。今年は私たちのPOG指名馬であるポルちゃんが札幌2歳Sで走りますね。大物なんて騒がれていますが、周りに流されることなく、まずは堅実に健康に完走してもらいたいものです。

政界の茶番劇もそうですが、JRAの馬インフルエンザ騒動にしてもお粗末なものでした。まるで何事もなかったかのように流してしまうのは、いかにも日本人らしい解決法だと思いますが、果たしてこのままで良いのかという不安を感じます。マスコミが騒ぎ、情報通が演説をぶっただけで、結局、JRAからの肝心な情報は何一つ流れて来なかった気がするのは私だけでしょうか。

まあ、一番の被害者は、まるっきり予定を崩されてしまった馬とその関係者たちでしょうね。特に、海外に遠征しようと予定していた馬たちは、その心意気が泡となってしまい、大変気の毒に思います。その1頭であるメイショウサムソンは、何としてでも今年挑戦したかったでしょうね。高橋成忠調教師も、まさかこんなことで全てが白紙に帰すとは思ってもみなかったことでしょう。出走回避のコメントからも、無念の思いが伝わってくるようでした。

そういえば、高橋成忠調教師はあのケイエスミラクルも管理していたのですよね。日本脳炎を奇跡的に克服してデビューした馬で、名前はそこに由来しているのですが、レコードを連発して活躍したスーパースプリンターでした。平成3年のスプリンターズSで1番人気に推され、4コーナーを抜群の手応えで回って楽勝かと思った瞬間、左第一趾骨粉砕骨折で予後不良となってしまったレースは今でも伝説です。脚を引きずったケイエスミラクルのすぐ横を、ダイイチルビーがあっと言う間に抜き去っていったシーンを、私は今でも忘れられません。競馬における勝負の世界の厳しさと残酷さを初めて思い知ったのが、あのレースだったような気がします。

スプリンターズSの開催時期が9月の頭に移行したのは、このケイエスミラクルの死がきっかけとなった部分が大きいと思います。実際に移行されたのは9年後になりますが、厳寒期に極限のスプリント戦を行うことの危険性を、多くのジョッキーやファンたちが唱え続けた結果ですね。マイルCSの後にスプリンターズSがある方が、ローテーション的には完成度が高く、面白いのですが、馬の脚元のことを考えると、9月の頭に移行して正解だと思います。

さて、今年のスプリンターズSは外国馬の参戦もなく、どうしても小粒なメンバーであることは否めません。そもそも、スプリンターズSの時期が移行した7年前から、スプリンターとマイラーの分極化が進み、小粒なメンバーしか出て来なくなったのですが、今年はそれをさらに小粒にした感じがあります。フルゲートに38頭が登録したように、混沌としたレースになりそうな雲行きです。

この時期に行われるG1レースにおいては、いかに夏を順調に越せたかが大切になってきます。なんらかの事情があって始動が遅れてしまった馬や、先に目標がある馬では、余程力が抜けていないとこのレースを勝つことは難しいはずです。今年は馬インフルエンザ騒動の影響で入厩が遅れてしまった馬も多く、調整過程が狂ったスズカフェニックスやコイウタ、ペールギュントなどは苦しいレースを強いられそうです。

その点だけで言うと、ルドルフおやじさんの挙げた4頭は順調に来ていますね。キンシャサノキセキはスプリンターだと思っていますので、私も期待していたのですが非常に残念です。出走してくれば、間違いなく勝ち負けにはなっていたはずです。

「信」の馬、サンアディユは前走セントウルSを5馬身差と、まるで別馬かの圧勝でした。この馬は直線競馬でも勝利しているように、揉まれないレースが出来た時は好走していますね。北九州記念は馬群にもまれてしまったことが敗因です。すんなりと先行することが出来れば、パワーに支えられたスピードがありますので、ちょっとやそっとじゃ止まらないでしょう。フルゲートの競馬になりますので、スムーズに走ることが出来るかどうかがポイントです。枠順にも左右されるかもしれません。サマースプリントチャンピオンがG1でどういう走りをするか注目です。

アイルラヴァゲインはスプリンターズSに向けて、最も順調に調整が進んでいる馬なのではないでしょうか。サマースプリントシリーズを叩き台として、休み明け3戦目で本番を迎えることができます。先行力も武器になるコースですし、最後に急坂が待ち受けているコースですので、この馬の持ち味であるパワーが最大限に生かせるはずです。ピリッとした脚はない馬ですので、あとは先行してどこまで持ち応えることができるかどうかでしょう。そのためには、好枠を引いて、ロスなく前半を乗り切ることが条件となります。

1番人気は武豊騎手のスズカフェニックスでしょうか。この馬はマイルの距離でG1レースを勝つには少しだけ底力が足らない馬ですね。マイルをこなせるスタミナは十分にあるのですが、やはりG1レースになると道中の流れも厳しくなりますので、字ヅラ以上のスタミナを要求されることが多く、中距離も走られる強いマイラーとマイル戦で戦うと分が悪いのです。そういった意味で、スズカフェニックスはスプリント戦ではかなり強いスプリンターであるとも言えますね。あとは仕上がりの問題だけでしょう。春は叩いて良くなった馬だけに、調整遅れをどこまで取り戻してくるでしょうか。

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「徳」の馬、「信」の馬

Rudolf

治郎丸さん、そしてガラスの競馬場の読者の皆様、お元気ですか。
おやじは・・・・・・怒ってます。

チャーチル曰く、「一国の宰相になることよりもダービー馬の馬主になることのほうが難しい」。ノーベル文学賞を、第2次世界大戦の戦史で受賞したウィンストン・チャーチルの言葉は名言の宝庫で、有力な馬主でもあった彼ならばいかにも言いそうな言葉です。ここに込められた機知と皮肉の味付けは最高ですね。この言葉を聞くと、このおやじは自分が褒められているように感じられてなぜだかうれしくなってしまいます。おっちょこちょいはいつまでたっても治らない。ところが、どうもこの言葉、チャーチルの言葉ではないようなんですな。

救国の英雄だったチャーチルが無類の選挙下手だったというのは案外知られていません。英国伝統の小選挙区で彼は幾度か落選しているわけなんです。救国の英雄という言葉が出ました。確かに彼は瀕死の英国を卓越した戦略で救った国民的英雄ですが、大戦後すぐに辞任に追い込まれ宰相の座を追われているんです。このことも案外忘れられているんじゃないでしょうか。「ああ、本当に疲れたよ」とうのが彼の末期(まつご)の言葉です。政治の世界で辛酸をなめたチャーチルが「一国の宰相よりも・・・」なんてよもや口にはしますまい。

一方、「美しい国」の宰相の座はなんとも軽いもんですなあ。人気が出ればかつがれて、落ち目になればポポイのポーイの捨て神輿(みこし)。己が保身と出世がすべての亡者がかつぎます。他人様のことなど何処吹くかぜの捨て神輿(みこし)。己が良ければすべてこの世はこともなし。哀れ、今は昔のうまし国。政変の茶番も早、出がらしとはなりぬべし。

第41回スプりンターズステークスの勝者は、今回の茶番とともに思い出されるはめになるのでしょうか。だとすれば余りに可愛そうだぞ。勝者に同情はまったくふさわしくはないのですが。

さて、今回の1番人気はどの馬でしょうか。キンシャサノキセキが出て来れなかったのは残念ですね。この馬は「美しい国」の宰相より人気があるんですから偉いもんです。1番人気にかつがれてはこける。こけてもこけても、またかつがれる。「美しい国」の宰相だったらポポーイのポイってところですがね。まあ「徳」があるってことですわ。

今回出ていれば10回目の1番人気になったはずで、いままで世間様のご期待にこたえたのはわずか3回。それでも人はついてくる。孔子曰く、「徳、孤ならず」と。 徳とは人を惹きつける力のことだそうです。マイルで甘くなるならスプリントでどうだという魅力。桂川ステークスでみせた本物のスピード。夏を休養にあててセントウルSをひと叩きしたという理想のローテ。魅力たっぷりでしたね。

そして何より南半球生まれの彼がいわば遅れてやってきたサラブレットだというのが、彼の魅力の源泉になっているように思います。そこには遅生まれというハンデを背負う者に対する判官びいきの気持ちといつかサラブレットとして完成すればもう負けないぞという期待が込められているんじゃないかと思います。

対してセントウルSの覇者、サンアディユは15戦して1番人気に推されたのはわずか3回。7勝もあげていることを考えると、どうやら彼女は走っても走っても人気の出ない馬の典型のように思われます。かわいそうなアディユちゃん。捨てられても捨てられても健気に走ってるじゃないか。しかも1番人気に推された3戦では3勝。憎まれるいわれはないぞ。きちんと信頼にこたえている。今回の茶番劇で「信の国」を目指す、なんて言う政治家がおられたが、まずアディユちゃんに「信」の意味を尋ねてほしいものですな。がっはははは。でも、やはり夏を走りぬいてきたローテから今回も1番人気に推されることはないのかなあ。しかし+18キロでセントウルSを楽勝した彼女をここで見限るとまた痛い目に遭いそうな・・・・。

アイルラヴァゲインはレースぶりに人柄(馬柄)が滲み出ています。先行していつも一生懸命に走ってくれますね。セントウルSは残念な結果に終わりましたが、3番人気以内に推されて3着以内に入る確率は7割近くになります。金になる馬です。こういう人に税金のことは任せたい。パワータイプのごつごつおやじのように思われがちですが、2歳にして6ハロン1分7秒台の時計を刻んでいることは忘れてはならないような気がします。

夏競馬でも3歳牝馬の勢いは止まりませんでした。春先に3強といわれた、マーちゃんがここに登場するのはとても楽しみです。アイドルってのはちょいと軽薄だけど世間の憂さを忘れさせてくれていいじゃないですか。こんなことを言うのは、マーちゃんは8回走ってまだ4回しか1番人気に推されてないからなんです。世間様はまだマーちゃんの実力を認めてないということ、まだマーちゃんはアイドルにすぎないんです。しかし、アイドルから実力派へというのはよくある話。女の子のマーちゃんには失礼ですが、前走の重戦車のような体つきを見ていると、実力派スプリンターへの脱皮も近いかなあと思いました。

「徳」の馬、キンシャサノキセキ。
「信」の馬、サンアディユ。
走る金庫番、アイルラヴァゲイン。
アイドル、 マーちゃん。

「徳」の馬、キンシャサノキセキは走りませんが、おやじが気になっているのはこの4頭です。待てよ、今回の茶番の主人公たちは皆、首相の息子や孫たちじゃないか、そうすると極めつけの良血、キングストレイルっていうのも考えておくべきか。競馬の神様はチャーチルより皮肉屋ですから、おまえたちがやってることはこんなことなんだぞと思い知らせるかもしれません。

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1cm

1cm。最も接戦だったG1レースでの1、2着馬の着差である。平成8年スプリンターズS。1番人気に推されたフラワーパークは、エイシンワシントンとの火の出るような追い比べをわずか1cmの差で制した。定規を手に取ってみてほしい。1200mを走って、たったこれだけの差で勝敗が決してしまったのだ。そして、この1cmの差を生んだのは、田原成貴騎手の見事な手綱捌きであった。

距離が短ければ短いレースであるほど、ひとつのミスが致命傷になる。たとえば、G1レースであるスプリンターズSにおいては、よほど馬場が悪くならない限り、1分7秒から8秒前半のタイムでの決着となる。そうすると、出遅れてしまったり、前が詰まってしまったり、コーナーで大外をブン回してしまったりすると、もう物理的に間に合わないということになる。過ちをどこかで挽回する時間や空間がないということだ。

それと同じ意味において、距離が短ければ短いレースであるほど、ほんのわずかな「技術」が勝敗を分けることもある。平成8年のスプリンターズSのわずか1cmは、エイシンワシントンに乗った熊沢騎手のミスが生んだわけではなく、フラワーパークを操った田原成貴騎手のハンドルワークに拠るところが大きい。

映像をぜひご覧いただきたいのだが、直線坂を登る前(残り200m)とゴール前数メートル時点で、田原成貴騎手は2度にわたって手綱を短く持ち替えている。直線坂を登る前(残り200m)は映像が途切れてしまって分かりにくいが、ゴール前数メートル時点で、もう一度さらに手綱を短く持ち替えているのが良く分かる。追い比べになった熊沢騎手の手綱の長さと比べてみて欲しい。その違いは一目瞭然だろう。

田原成貴騎手が魅せた「技術」とは、短く持ち替えた手綱を強く“引く”ということだ。“矢は弓を引いてこそ遠くまで飛ぶ”、“ゴムマリは一旦縮むからこそ大きく弾む”と田原成貴騎手は表現する。ゴール前のもうひと伸びを引き出すためには、手綱を押すのではなく引かなければならないという。そのためには、手綱をより短く持って、馬の噛むハミとの距離を詰めておかなければならない。

言うのは簡単だが、実戦で使うのは難しい。まして僅かな失敗が許されないG1レースの土壇場の追い比べで、一旦、手綱を強く引くことはどれだけ勇気が要ることか。普通なら、気持ちばかりが焦って、これでもかと手綱をしごき、ムチを振るって、前へ前へと馬を押すことに躍起になってしまうものだ。そういった気持ちを抑え、ゴールまでの残りの完歩数を確認しつつ、手綱を短く持ち替え、ハミの支点への当たりを強める。そして、強く引く。この“引き”が最後の1cmに繋がったのだ。

平成8年スプリンターズS

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神戸新聞杯の分析

平成12年から菊花賞の開催時期が10月頭に移行されたことによって、京都新聞杯は春に施行されることになり、神戸新聞杯は菊花賞へ臨むための唯一のトライアルとなった。また、今年からは距離が2400mと延長され、より一層、菊花賞との結びつきが強まるレースとなる。

■1■とにかく前走ダービー上位組
過去7年のうち、前走ダービー組から5頭の勝ち馬が出ている。連対馬にまで対象を広げても、14頭中9頭が前走ダービー組である。さらに日本ダービー優勝馬は【2・2・1・0】連対率75%、2着馬は【2・1・2・2】連対率43%と抜群の成績を残している。紛れのない府中2400mで行われるダービーで勝ち負けになった馬は、たとえ休み明けでも確実に勝ち負けになる。とにかく、ダービー上位組を狙うべきレースである。

■2■瞬発力があり、先行できる馬に有利
阪神2400mはスタートしてから最初のコーナーまでの距離も長く、休み明けの馬が多いこともあってスローペースは否めない。緩やかな3~4コーナーをゆっくり回るため、どうしても直線に向いてからのヨーイドンの競馬になる。当然のことながら、先行できる馬にとって有利になり、「折り合いに不安のある馬」、または「瞬発力のない馬」にとっては苦しくなる。枠順としては、スローになる分、どちらかというと内枠有利。

■3■さほどスタミナは問われない
今年から距離が400m延長されたが、阪神2400mコースの特性上、さほどスタミナを問われるレースにはならない。よって、前走ダービー上位組以外を狙うのであれば、夏を越して力をつけてきたステイヤーを狙うのではなく、ただ単純に夏の上がり馬を狙うだけでよい。上がり馬だけに、前走で勝っていることは最低条件になるだろう。

追記
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世界バケンカ旅-シンガポール後編-

Singaporetop03

12頭立てのゲートが音立てて開いた時、ゴール前に陣取る観衆の中の一人が「ジャポーン!」と大きな声を上げた。私たちと同じく、藤井騎手の最後の夜を知り、勝負を賭けてきたに違いない。まったく綺麗なスタートだった。馬群が黒い塊となってゲートから飛び出した。その中から頭ひとつ抜き出てきたのは、人気薄のNINETYFIVE SWORDと藤井勘一郎騎手のPREMIER NIGHTであった。外のNINETYFIVE SWORDがどうしても譲らない構えを見せたため、藤井騎手は無理をすることなく2番手に控えた。この時点で、勝負あったも同然に見えた。あとは前の馬を交わすだけであった。

「フジイー!フジイー!フジイー!」

ラスト200mを切っても、その差は詰まらない。2頭の脚色はほぼ同じになった。追いすがるPREMIER NIGHTには敗北の色がちらつき、勝利を確信したNINETYFIVE SWORDの騎手は手綱を緩め始めた。それでも私たちは叫び続けた。他のどのシンガポーリアンよりも懸命に。藤井騎手も自分の馬のタテガミだけを見ながら、ひたすらにPREMIER NIGHTを追い続けた。

しかし、奇跡は起こらなかった。2馬身差の2着。勝った馬は人気薄の大駆けであった。勝てる馬で勝ちに行く競馬をしたが、それでも勝てなかった。藤井騎手にとっても、高岡調教師にとっても、誰にとっても悔いのない騎乗であった。

それにしても、藤井騎手が騎乗した馬は“動く”。2RのJAVELINも3RのPREMIER NIGHTも、ゲートからしっかりと出し、決して無理をしているわけではなく先行させていた。レース体系のほとんどを短距離が占めるオーストラリアやシンガポールでは、スタートしてから息を入れる間もなくゴールまでなだれ込む競馬がほとんどだ。だからこそ、馬を動かして前に出す技術がジョッキーにまず問われる。

馬を動かすことは、ジョッキーにとっての永遠のテーマである。馬は鞭で叩けば動くのではない。ある騎手が乗ると全く動かないのに、別の騎手が乗ると、何もしなくても自ら動き出すということはよくある。馬を動かすためには、ある種、生まれ持った何かが必要とされるのだ。努力すれば手に入るものではない。それは肉体的なものかもしれないし、精神的なものかもしれないが、藤井騎手はその何かを持っている。

「スタンドに行こうか?」と友人が言った。
悔いがないと思いつつも呆然としていた私は、
「そうするか」とだけ答えた。
わずか3Rにして、本日の勝負馬券を外してしまったのだから無理もない。
「PREMIER NIGHTか…」とつぶやいてみた。

彼の言うスタンドとは、「ハイビスカス」と呼ばれる観光客向けのラウンジのことだ。パスポートが必要で、詰め入りのシャツを着用しなければならず、サンダル、スリッパ等のラフな格好は禁止と厳しい。ハイビスカス以外で楽しむのであれば、Tシャツでも短パンでもスリッパでも別に構わない。実際、現地の人はそのような格好がほとんどであった。

Singapore12

ハイビスカスは既に満員であった。観光客がそれほど来ているのだろうか。入場料が20ドルもするのに大そうなことだ。代わりに私たちはオーナーズラウンジに通された。ここから見えるターフは壮観であった。私が今までに行った日本のどの競馬場の指定席よりも眺めがいい。おそらく建築の構造上の違いなのだろうが、日本のガラス張りのスタンドはコースとの距離があるのに対し、こちらはかなり近く感じた。ここならば、ガラス張りとはいえ、かなり迫力のあるレースが観戦できるだろう。

私たちは立派そうな椅子に腰を下ろした。これでようやく落ち着いて予想が出来る。先ほどのレースで力強く握り締められ変形したレーシングプログラムを、私は机の上にポンと置いた。左手でレーシングプログラムの片隅を押さえ、右手でシワを伸ばしながら、気持ちを落ち着かせるように、4Rの出走表の頁を開いた。

Singapore16
*クリックすると大きくなります。

そこに書いてある文字たちは、まるで何かの暗号のように見えた。ロゼッタストーンを発見したナポレオンのように、一字一句に目を凝らし、私はその意味を解読していった。これほどまでにレーシングプログラムを真剣に見るのはもう何年ぶりだろうか。馬の名前、馬齢、生産国、父母の名前、近走の出走日、走った距離、斤量、その時の騎手の名前ぐらいまではなんとか分かる。しかし、肝心の前走の着順や枠番号などがはっきりしない。ようやく、[6]とカッコの中に入っているのがゲート(この場合6番枠)で、その横に並ぶ3つの数字の一番右が最終着順で、真ん中が4コーナー、左が3コーナーでの位置取りということが分かり始めた時には、4Rの投票は既に締め切られていた。

私は5R以降もこの暗号表を解読することが少々億劫に思えた。不意に出走表をめくり、ボールペンを片手に、藤井騎手の名前を探し出した。5RのKakurei、7RのPrior Viscount、8RのZinly、9RのTitan Funの4頭に赤色のアンダーラインが入った。どの馬も到底勝負になるようには映らなかったが、ここまで来たなら、最後まで藤井勘一郎に付き合ってみたいと思ったのだ。

藤井騎手はこの後、シンガポールを立ち、年内は北海道のノーザンファームで調教に乗るという。大井競馬場の騎手会によって、短期免許の受け入れを拒否されたのである。オーストラリアで184勝を挙げ、シンガポールで重賞を取っているほどの騎手でも、大井競馬場で乗ることは許されないらしい。いや、騎手“でも”ではなく、騎手“だから”許されなかったのかもしれない。

短期免許の受け入れを拒否された日、彼は日記に下のように記した。タイトルは「勝負の世界」である。

「勝負の世界」 騎手という職業は勝つか負けるかの仕事。僕の見習い期間を過ごしたオーストラリアでは、レースに勝たなきゃ仕事がないし未来がないというシビアなものでした。今回、大井競馬に短期免許を拒否されたわけですが、以前川崎競馬場の騎手会長をされていた方に電話でお話したところ、日本はまだ鎖国的で現在既にいるジョッキーを大切にしすぎているとおっしゃっていました。今回、自分が日本の競馬に戻れなかったから嫉んでこの日記を書いているわけじゃありません。海外で経験してたジョッキーが、日本のレースに騎乗できる事で地元のジョッキーの良い刺激になりそしてがんばりさえすれば、海外からでも道は開けるんだと夢を持っている人達に、僕の競馬を見せられなかったのは残念です。でも絶対戻ってきますよ。リベンジしてやる!!!!

私は彼のファイト溢れる騎乗を大井競馬場でも見てみたかった。誰もがその騎乗ぶりに驚いたことだろう。それも今となっては叶わぬ夢だが、私の無念など彼の比ではない。いつか陽の当たる場所に立つことを求めて世界を飛び回り、しかし戻る場所のない藤井騎手に、私はふと今から約20年前に日本を飛び出し、シンガポール、マレーシア、ドバイなど世界を股にかけて活躍した伝説の騎手、道川満彦の姿を重ねた。

Singapore17

「キッチリと差し切ったね」と私は念を押した。
メインレースのクランジSで、友人の買ったCAPABLANCAが、ゴール前で1番人気のWHY BEを見事に捕らえたのだ。CAPABLANCAに騎乗したCALLOW騎手は、シンガポールで78勝を挙げてリーディングジョッキーのトップをひた走っている(9月17日現在)。連対率ではなく、勝率が30%という驚異的な数字である。どれだけ良い馬に恵まれたとしても、勝率30%は尋常ではない。いつの日か、シンガポールから強い馬が現れ、日本に挑戦してくることがあれば、その背にはこのCALLOW騎手が乗っているはずだ。名前を覚えておいて損ではないと思った。「おめでとう」と言いながら、私は友人に握手を求めた。

結局、藤井騎手は残りの4鞍を勝つことが出来なかった。能力的に足りない馬ばかりだったのだろう。シンガポールでの最後の夜は、残念ながら0勝で幕を閉じることになった。それでも7Rでは、人気薄のPrior Viscount(高岡厩舎)を先行させて、3着に持ってきた。複勝は7倍近くもついていた。騎手にとって勝つということはこんなにも難しいものか。そして、彼が勝てなかったということは、当然、私も勝つことは出来なかった。


帰りの車の中で、私たちはシンガポールの競馬について話した。
「日本の競馬と比べると、シンガポールの競馬は馬券的に勝ち目があると肌で感じた」
と私が言うと、
「それを負けた奴が言っても説得力がない」と冷やかされた。
しかし、これは負け惜しみでもなんでもない。ただ単純にオッズが総じて高いと感じたのだ。なぜかというと、これは後で調べて分かったことなのだが、控除率が圧倒的に小さいのである。シンガポールの控除率はわずか10%。日本の控除率(25%)との差がどれぐらい大きなものか、これは実際に馬券を打った者でないと分からない。たとえば単勝を買うとして、日本では3レースに1度、3倍の単勝を当てるのが難しく感じるのに対し、シンガポールでは3レースに1度ぐらいは簡単に3倍の単勝が当たるような気がした。大雑把な言い方ではあるが、私たちが思っているよりも、この体感控除率の差は大きい。

それでも、日本の競馬ではなくシンガポールの競馬をやりたいかというと、そうは思わない。たとえ控除率が高くとも、日本の競馬(特に中央競馬)はやはり面白い。ダートから芝、芝からダートへと様変わりし、距離、コースも多種多様である。逃げ切りがあったかと思いきや、今度は大外から一気の差しが決まる。シンガポールは同じような距離を行ったきりのレースが多く感じられた。変化に乏しいと言おうか。JRAの番組はよく練られて緻密に作られていると改めて感じた。日本の競馬は素晴らしい。

Singapore13_3車の窓から、マーライオンの白い姿が右手に見えた。真夏の夜にポツンと浮かぶその姿は、孤独そのものであった。海に帰ることを許されない海の獅子は、水平線に何を思うのだろう。長旅と敗北の疲れからか、私はふと浅い眠りに落ちてしまった。

嫌な夢を見た。喧嘩の強いあいつに向かっていかなければならなかった夢。中学校時代の記憶のきれぎれが、夢となって蘇ってきた。あいつと俺とじゃ体の大きさが違いすぎる。何発か俺のパンチは当たるかもしれないが、最後は胸ぐらをつかまれて、拳骨で殴られ、ひじ打ちをくらい、鼻をやられて終わりだ。そうなる前に、謝った方がいいのか。いや、それも格好悪い。

ふと我に返った。いかにも俺の考えそうなことだ。最初から負けることを考えている。どうせ勝てるはずないと思っている。正解。正論。もちろん勝てるはずなどないのだが、それでいいのか?どうやって負ければダメージが少ないか、格好がつくか?そんな計算ばかりしている。勝てるチャンスを探せよ。真っ向から戦わなくてもいいんだ。格好悪くてもいいじゃないか。美しい負け方なんてない。勝つためだけに堂々と向かっていけばいい。それでボコボコにされたら仕方ないじゃないか。死ぬわけじゃないだろ。逃げたらエネルギーまで失うぜ。

なぜ盲目的に藤井騎手の単勝だけを買ってしまったのだろうか。3Rは良かったとしても、それ以降のレースでは本当に勝ち目はあったのか?ないと知りつつ、なぜ勝つために賭けようとしなかったのか。藤井騎手に最後まで付き合うといえば理由は付くが、それは格好の良い負け方を選んだに過ぎないのではないだろうか。あれだけしかない情報の中でも、勝てるチャンスはあったはず。シンガポールまで来て、なぜ真っ向から勝負しなかったのか。貪欲に勝ちを求めるために、お前は世界に旅に出たのではないのか。

車の中には、友人が日本で買ってきたモンキーマジックの歌が流れていた。

SOUL SEARCHING IS ALL I NEED TO DO.
WHEN YOU’RE STUCK IN THE MOMENT
IT’S HARD TO KNOW WHAT’S TRUE
ただ今一人夜が 明けるのを待って

果てしないこの道の 青く広がる先に
いつも僕らが望んでた その時は来るさ
そして いつか きっと…

もう逃げることはやめよう。たとえボロボロになっても勝ちに行こうと決めた。そう決めた瞬間、明日が来るのが待ち遠しくなった。明日はマレーシア競馬の場外発売だ!

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集中連載:「Good 馬場!」第7回

■雨が降って、芝コースの馬場が悪化した場合
ここまでは芝の良馬場において、馬場の状態を把握する方法を述べてきたが、次に雨が降って、芝コースの馬場状態が悪化してしまったケースに話を移したい。

良馬場が、ある程度、固定された馬場状態であるのに対して、雨が降り続くことによって馬場は稍重から重、そして不良へと大きく変化する。そして、それに伴い、走破時計は遅くなっていく。

とは言っても、今の芝コースは路盤が砂地であるため排水が良く、多少の雨が降ったとしても、昔のようにコース上に水がたまってしまうということはない。たとえ前日に雨が多少降ったとしても、当日晴れてさえいれば、雨の影響はほとんど考えなくてもよい。または当日の午前中に雨が多少降ったとしても、その後晴れれば、メインレースまでにはほとんど回復しているか、悪くてもやや重でレースは行われるだろう。特に開幕週などで野芝が強靭に根付いている時期は、たとえレースがやや重で行われたとしても、ほとんど良馬場と変わらない速い時計の決着になることが多い。

これは余談になるのだが、排水の仕方によっては、馬場の内外でトラックバイアスが生じて、内枠を引いた馬が有利になることがある。

東京競馬場では平成14年~15年の改修時に、バックストレッチから3~4コーナーにかけて、芝コース内側に排水溝が設けられた。コースで最も低くなる部分に雨が集まってしまい、芝が集中して傷んでしまうことを防ぐためである。この排水溝によって、東京競馬場では雨が降ると、コースの内側から一気に馬場が乾いていくため、そのタイミングによっては、馬場の内側を通ることのできる内枠を引いた馬が有利になることがある。特に午前中で雨が上がった時などは、午後のレースで馬場の内側にトラックバイアスが生じることが多い。

平成15年のジャパンカップは、午前中に雨が降り続き、重馬場で行われた。勝ったタップダンスシチーは本来、道悪が得意な馬ではなかったが、この排水溝によるトラックバイアスを利用して逃げ切ったのである。悪い馬場に脚を取られながら追走する他馬を尻目に、タップダンスシチーは乾いた馬場の内側を気持ちよく走り、後続になんと9馬身の差をつけてしまったのである。タップダンスシチーが究極の仕上がりにあったことや、極端なスローの展開に恵まれたことなどもあったが、雨上がりの東京競馬場は内枠が有利になるということを実感したレースであった。

Goodbabatapdance

話を元に戻すと、かなり極端に雨が降り続ける場合は、正直に言うと、馬場状態の把握は極めて難しいものとなる。いつから降り続いている雨か、当日は芝のどのような時期に当たるか、当日までにどれくらい芝が傷んでいるか、そして当日の天気、季節など幾多の要素によって、馬場の状態が刻々と変化していくからである。前のレースと次のレースの馬場状態が全く異なってしまうことも珍しくない。もし道悪になった場合は、馬場状態を正確に把握することはあきらめて、その日は波乱を前提として馬券を買うべきであろう

(第8回へ続く→)

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集中連載:「Good 馬場!」第6回

■馬場の極端な傾向
次に、(3)の極端な傾向とは、前が止まらない(先に行っている馬が残ってしまう)といった傾向があるかどうかということである。つまり、展開の綾や各馬の能力に関係なく、明らかに馬場状態のみが原因で、単純に前に行っている馬が有利になってしまうといった極端な傾向があるかどうかということである。

このような傾向が現れるのは、馬場が極端に良い場合か極端に悪い場合である。もっと正確に言うならば、極端に上がりが速くなってしまう馬場か、極端に上がりがかかってしまう(遅くなってしまう)馬場のどちらかにおいてである。

■極端に上がりが速い馬場
極端に上がりが速い馬場は、開幕週の馬場によく見られる。直線が長く差し馬に有利にみえる東京競馬場においてすら、開催当初のレースでは逃げ切り、先行押しきりが続発することは珍しくない。開催当初は馬場の傷みが少なく、絶好のコンディションでレースが行われるため、どうしても上がりの速いレースになってしまうからである。

たとえば、前に行っている馬がラスト3ハロン33秒台の脚を使って上がるとすると、後ろから行く馬は33秒もしくはそれを切るぐらいの上がりを使わなければ届かないことになる。サラブレッドの限界という意味も含めて、現実的にそれだけの脚を使うことはなかなか難しく、どうしても前に行けない馬にとって、極端に上がりが速い馬場は不利になってしまうのである。

■極端に上がりのかかる馬場 
極端に上がりのかかる馬場は、開催中に何度も雨に見舞われたため極端に馬場が荒れてしまった場合や、芝の発育不良などが原因となって引き起こされる。こういった馬場は極端に力の要る状態になっているため、ほとんどの馬が直線に向くまでに力を使い果たしてしまい、そこからスパートするだけの脚がなくなってしまうことになる。前に行っている馬もバテているが、後ろから行っている馬も同じようにバテているために、最後の直線で逆転は起こらず、道中で行ったそのままの順位で決着してしまうことになる。

かなり昔の話になるが、平成4年の宝塚記念で、一旦は障害入りもした経験のある伏兵メジロパーマーが、圧倒的な1番人気のカミノクレッセを尻目に逃げ切り勝ちを収めたが、この結果は極端に重い馬場が大きな原因となったことは明白である。勝ったメジロパーマの上がりはなんと39秒8で、カミノクレッセの上がりも39秒7であった。逃げたメジロパーマもバテているのだが、カミノクレッセも同様にバテてしまったため、3馬身もの逃げきりを許してしまったのである。

このレースで3着に入ったミスタースペインの石橋騎手のコメント、「最後はどの馬も脚が上がらない状態でした」がこのことを如実に表している。馬場が悪くなることによって極端に上がりが掛かり、前に行った馬にとって非常に有利になるのである。


最後はどの馬もバテバテです(笑)。

(第7回へ続く→)

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「安藤勝己の頭脳」 亀谷敬正

Andoukatuminozunou02 5star

前作から8年の時を経て、「安藤勝己の頭脳」が私たちの前に再び登場した。「できればこの本だけは紹介したくなかった」と前作時に書いたが、その思いは今回も同じである。安藤勝己騎手の言葉によって競馬の本質が語られ、その本質を見事に引き出す著者・亀谷敬正氏の技量も凄い。ひとりでゆっくりと楽しみながら読んで、こっそりと馬券に生かしたい。そんな内容の本である。前作と並び、必読の競馬本である。

私にとって最も印象的だった部分は、レースの「流れ」に話が及んだ部分である。かなり競馬の核心に触れた部分なので、長くなるが引用してみたい。

亀谷(以下、敬称略)
「ところで、レースの「流れ」というのは展開のことですか?」

安藤
「いや、展開というのではなくて、その馬にとっての理想の時計だね。」

亀谷
「理想のラップタイムのバランスですね。その理想バランスが馬によって違うんですね。」

安藤
「そう。長距離って道中は脚を溜めて最後の切れ味勝負っていう流れが多いけど、どの馬にもその流れが合うわけではない。たとえば瞬発力はないけど同じスピードならどこまでも持続できる馬ならば、道中でペースが落ちてもスピードを落とさない方がいい。こういう馬は3コーナーでもペースを速くして乗るように心がけています。最後に差されて負けると格好悪いけど。」

亀谷
「そういうのは格好悪い負け方という意識はあるもんなんですか?」

安藤
「やっぱり早仕掛けで負けたように見えるとカッコ悪いでしょ。でも、どうせ仕掛けを遅らせても伸びないんだったら、早めに動くしかチャンスはないと思う。」

亀谷
「ということは、平均ペースで押し切るのが理想の馬なら、前にいる馬がペースを落とした場合、そこで勝手に仕掛けていけばいいと思うのですが。」

安藤
「それはいつも考えているよ。でも、それはなかなかできない。たしかに、道中で自分だけ勝手に仕掛けても毎回勝てるならいいよ。でも、もし着外とかになったりしたら、『下手に乗りやがって』って言われるし、他の騎手にも迷惑をかけるわけ。それにハナとか2番手に行った騎手にとっては、途中から変なペースで来られたら頭にくるよ。オレだってそんなことをされたら頭にくるから(笑)。レースの流れを壊すような乗り方をするっていうのは、後々のことも考えるとなかなか度胸がいることではあるんだよね。競馬っていうのはすべてがつながっているわけ。だから、そのレースの結果だけがすべてではないんですよ。」

亀谷
「たとえば、そのレースだけのためにレースの流れを壊すような思い切った乗り方をした場合、たまたまそのときだけうまくいってもトータルの結果は悪くなるとか?」

安藤
「他のレースでは自分がペースを握ったときにそれを壊されることも出てくるだろうね。だから、乗り役はレースのペースがその馬に合わないことが分かっていても動けないことがある。」

亀谷
「ペースというのは、逃げ馬や馬群の先頭に立つ馬が決めるわけですね。」

安藤
「そこの中で競馬をやった方が周りからも悪く見られないし、負けた時は流れが悪かったってことになるから。」

亀谷
「それは外国の騎手が日本で乗るときもそうなんですか?」

安藤
「それなりにその国の競馬の流れの中で対応してるよね。何人も外国の騎手がいればまた違うだろうけど。笠松(当時)でも、中央の騎手と馬1、2頭が来たって流れは変わらないから大体の流れは分かる。つまり、流れっていうのは1頭だけで決まるものではないんですよ。」

まず亀谷氏によって切り出された「レースの流れとは展開のことか?」という疑問に対し、安藤勝己騎手は否と答える。安藤勝己騎手の言う「流れ」とは、その馬にとっての理想の時計である。亀谷氏はそれを理想のラップタイムのバランスと言い換えているが、要するにその馬にとって理想の走るリズムのことである。その馬にとって理想の流れ(リズム)というものが存在し、その流れ(リズム)に沿って走ることが最大限に力を発揮できることにつながる。

たとえば瞬発力に欠ける先行馬にとっては、スローペースに落とすよりも、スピードを落とさずに持続力の勝負にした方が良く、逆に一瞬の切れ味を生かしたい差し馬にとっては、ペースが上がって脚を使わされるよりも、位置取りは後方でもスローの瞬発力勝負になった方が良い。ここまではあくまでも大前提である。

しかし、いつもどのレースでもその馬の理想の流れ(リズム)で走ることが出来るとは限らない。なぜなら、それぞれのレースには、それぞれの流れ(リズム)が存在するからだ。その馬にとっての理想の流れ(リズム)よりも、レースの流れ(リズム)が先に来るのである。そして、その流れ(リズム)は決して1頭の逃げ馬や先行馬が決めてしまうものではない。コース設定や馬場状態、騎手の心理や各馬のコンディションなど、数多の要素が絡み合ってレース全体の流れ(リズム)は決まる。

もちろん、その流れを途中から壊すこともできる。平均ペースで押し切るのが理想の馬なら、前にいる馬がペースを落とした時に、自分だけはペースを落とさずに先頭に立って回ってくればいいのである。しかし、それはなかなかできることではない。自分のリズムで逃げ・先行していた馬にとって、途中から来られることは致命傷になりかねない。サラブレッドは外から来られると追いかけてしまう習性を持ち、精神的にも消耗するものだからだ。

もし自分だけ勝手に仕掛けて、勝てるならばいいが、負けたときには他の騎手に迷惑をかけている以上、文句を言われることは避けられない。極端なことを言えば、以降のレースで、今度は自分の馬がリズムを崩されるような騎乗をわざとされることもあるだろう。ほとんど毎回同じ騎手同士でレースをする以上、やはり暗黙のルールや信頼関係が成立するのである。だからこそ、レースの流れを壊すような乗り方をするのは、後々のことを考えると非常に度胸がいることなのである。

これで私たちの疑問がまたひとつ解消されたのではないだろうか。流れが遅ければマクって行けばいいじゃないかと思うこともあるが、そうはできない事情というものがあるのである。特に実績のないジョッキーはそうである。中堅ジョッキーや若手ジョッキーがなかなかG1レースで勝てない理由も、ここにひとつあると思う。実績のある騎手たちはG1レースであれば、レースの流れを多少壊したとしても勝ちに来ることもあるだろうが、実績のないジョッキーたちにとっては、G1レースだからこそ自ら動いてレースの流れをブチ壊してしまうかもしれないことには大きな恐怖が伴う。そういう無数の駆け引きの中で、レースは行われているのだ。競馬は全てがつながっているのである。

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世界バケンカ旅-シンガポール中編-

Singaporetop02

府中本町や船橋法典の駅がそうであるように、クランジ駅ではそれらしき人たちが大挙して降りる。シンガポール中から同志が集まってきたようで心強い。駅の目と鼻の先に入場門があり、人々はチケットを買い、競馬場に吸い込まれていく。私は入場門の前で友人を待っていた。

まだ1Rが始まる前だというのに、電車が到着する度に、駅の出口から人々が溢れ出てくる。国民のレジャーとして定着しているのを感じた。その勢いは日本の競馬場に優るとも劣らない。ただひとつだけ、女性の姿がほとんど見られないことは気になった。ギャンブル一辺倒から脱却しない限り、女性は競馬場にはやってこない。女性はそのあたりの感覚が鋭敏である。

少し遅れて友人がやってきた。3ドルを出して買った入場券を、自動改札機のようなゲートに通して正門から入場した。はやる気持ちを抑えつつ歩いていると、「ワーッ」と大きな歓声が聞こえた。1Rがスタートしたのだろう。私は気分が高揚し、いつもに増して早足になった。右手にパドックらしき照明がみえた。ようやくたどり着いたのだ。これがシンガポールの競馬だ。

Singapore07

前もって4ドルで買っておいたレーシングプログラムを取り出すと、2Rの出走表には、日本産馬の名前が載っていた。グランドオペラ産駒のJAVELIN、タヤスツヨシ産駒のGassan Racing、フサイチソニック産駒のBiwako である。グランドオペラといえば地方馬として初めてJRAのG1を制したメイセイオペラを思い出す。韓国で元気にやっているのだろうか。Biwakoは琵琶湖だろう。ついつい応援したくなる名前である。

ページを戻して1Rの出走表を見ると、エアジハード産駒の日本産馬の名前が載っていた。Hanauma Bayである。それからもう1頭、ペインティドブラックの産駒Ezee Does itもいた。ステイヤーズSであのテイエムオペラオーを完封したサンデーサイレンス産駒のステイヤーである。ニュージーランド産になっているので、おそらく向こうで種牡馬として頑張っているのだろう。知らなかった。Hanauma BayもEzee Does itも勝ち負けにはならなかったようだった。

他には、ラムタラ産駒が5Rに出走していたが、それでも日本馬は本当に少ない。特に今日はサンドコースでのレースだけに、出走頭数も人気も、オーストラリアかニュージーランド産のサラブレッドに占められてしまっている。近年、日本馬が世界で活躍するようになったとはいえ、まだまだ日本で生産された馬は世界のマーケットでは魅力的ではないらしい。輸送費等の問題を含め、この現状を打開するためには、やはり日本産馬がシンガポールで活躍しなければならない。

パドックでは、まさにこれから藤井勘一郎騎手がJAVELINに跨るところであった。1番JAVELINは少し入れ込み気味ではあったが、堂々と歩いていた。異国の地で日本人ジョッキーが乗っているのを見るだけでなぜか誇らしい。そして、藤井騎手からは国際的ジョッキーとしての自信が満ち溢れていた。

Singapore09

名前すら聞いたことがないという方もいるかもしれないので、簡単に紹介したい。“Joe Fujii”こと藤井勘一郎騎手は、体重が重すぎたためJRAの騎手養成課程に落ちてしまい、15歳の時にオーストラリアに渡ってジョッキーになったという異色の経歴の持ち主である。“Joe”というのは、 “Kanitiro”と呼びにくいオーストラリア人がつけた彼のニックネームだそうだ。

2001年に騎手デビュー。激戦区であるシドニーで実力が認められ、昨年までに通算184勝を挙げた。弱冠23歳。好きな言葉は「Be what you want to be (なりたい自分になりなさい)」。いかにも若者らしい屈託のない笑顔が印象的である。

今年の1月からシンガポールでの短期免許が許可され、延長期間を含め、8ヶ月の間に12勝の成績を残した。3月には、自身初の重賞チェアマンズトロフィー(星G3)をTRIGGER EXPRESSで優勝する。そして、今夜はシンガポールでのラストライドになる。6頭に騎乗予定で、どこまで勝ち星を積み上げることが出来るだろうか。

ジョッキーが跨り、パドックを1周しただけで、11頭の馬たちはコースへと消えていった。追うようにして私も、馬券売り場を横目に人々の間を縫い、スタンドを通り抜け、コースへと到着した。そこには見事な緑のターフが広がっていた。ふとスタンドを振り返ると、ナイターの光が乱反射して美しい。

「藤井の単勝って、一体何倍だ?」と友人がポツリと言った。
私は、彼の視線の先にある電光掲示板を見た。藤井騎手が乗るJAVELINはゼッケン1番で、その1の数字の下には“16”の数字が。
「16倍ってことはないよな…?」
「ないね」
その他の馬のオッズを見ると、24とか50とか113とか高配当のオンパレードである。16より低い数字を探すと、11という数字の馬が1頭いるだけ。20年近く競馬をやってきた私たちが、まるで今日初めて競馬場に来た大学生のようにポカンと佇む姿は、外から見たら可笑しかったに違いない。レーシングプログラムの中を必死に探してみるが、どこにも書いていない。締め切りのアナウンスが流れた。こういう時、無理に買ってもロクなことがないことを知っている競馬歴20年近くの私たちは、とりあえずこのレースは見(ケン)ということにした。

Singapore11

けたたましいベルの音と同時に、ゲートが開いた。JAVELINは藤井騎手に導かれ、抜群のスタートを切った。もう1頭ポンと出た馬を目標にして、JAVELINは2番手に控えた。行きっぷりも良く、もしかしたら楽勝かと思わせられた。

馬券を買えなかったことを後悔したその時、4コーナーを前にして、藤井騎手の手が少しずつ動き始めた。結局、逃げた馬との差は広がるばかりで、最後は自分がバテてしまい、危うく後ろの馬に差されるところをなんとか凌いで2着に入った。

「買えなくて良かったな」
私たち二人は声を合わせて笑った。

オッズに関しての疑問はすぐに解決した。マークシートを見てみると、単勝と複勝のUnit(単位)が5ドル単位で細かく分けてあったからだ。要するに、単勝と複勝は最低5ドルからしか買えないらしい。電光掲示板にあった数字は、5ドル賭けて的中したときの数字ということだ。先ほどのJAVELINは16であったから、3.2倍ということになる。ちなみに、連勝などそれ以外の馬券は2ドルが最低単位であった。

シンガポール競馬を語る上で、知っておかねばらなない日本人がもう一人いる。高岡秀行調教師である。

高岡調教師は昭和54年に騎手として岩見沢競馬場でデビューした。14年間の騎手生活における通算成績は5059戦524勝、うち重賞20勝という素晴らしい戦績を残した。師事していた調教師の事故死を契機として、平成5年に調教師に転向し、その後、調教師として10年間で355勝。平成12年にはホッカイドウ競馬で54勝を挙げてリーディングトレーナーになった。

順風満帆に見える騎手・調教師人生だが、彼はそれで満足することはなかった。日本産馬の販路拡大と、地方騎手の活躍の場を広げるため、さらなる一歩を踏み出した。日本の調教師免許を捨て、外国人免許を持つ最初の日本人調教師として、平成15年からシンガポール競馬を拠点として活動を開始したのだ。18頭の日本馬を引き連れ、彼はどんな思いで海を渡ったのだろうか。

徐々に勝ち星を増やし、2006年にはダイヤモンドダストで重賞を初制覇した。今年も既に15勝を挙げ、リーディングの11位に付けている。それでも、「馬産地のある国はほかの国に馬を送ることが大事。そのためには馬の活躍が必要だが、まだ活躍馬を出せていない」とクールに語る。
 
2Rの余韻も冷めやらぬまま、パドックを3Rの出走馬たちが歩き始めた。藤井勘一郎騎手騎乗のPREMIER NIGHTは8番。2番人気か3番人気ぐらいであろうか。入れ込みと紙一重の気合乗りで周回していた。これが最後のチャンスであることを感じてか、藤井騎手の表情からも絶対に勝ってやろうという無言の気迫が伝ってきた。パドックの周りに立つ、観客の誰もが真剣に馬を見つめている。未来しか見えないのが競馬の魅力のひとつだ。


藤井騎手本人は、先ほどの2RJAVELINに最も期待しているとコメントしていたが、私としてはこの3RのPREMIER NIGHTで勝負するつもりであった。実を言うと、この2頭は高岡調教師の管理馬である。藤井騎手のラストライドである以上、究極の仕上がりにあることは疑う余地はない。PREMIER NIGHTが日本産馬でないことは残念だが、藤井勘一郎騎手が高岡秀行調教師の管理馬に乗って勝利することがあれば、それはまさにPREMIER NIGHT(最高の夜)であろう。そんなこじつけをして、私と友人は50ドルずつ出し合い、8番PREMIER NIGHTの単勝を100ドル買った。シンガポールに来て、初めての馬券であった。

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(シンガポール後編へ→)

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ローズSの分析

平成8年に秋華賞が創設されて以来、9月の阪神に舞台を移し、秋華賞のトライアルレースとして指定された。また、阪神競馬場の馬場改修に伴い、今年から距離が200m短縮され、1800mで行われる。本番とのつながりも強いレースで、過去の勝ち馬からはファレノプシス、ファインモーション、エアメサイアといった秋華賞馬が誕生している。

■1■前走オークス組と夏の上がり馬が五分
過去10年の勝ち馬の前走を見ると、G1オークス以来の馬が5頭、条件戦(もしくはG3)からが5頭とほぼ互角の争い。連対馬に手を広げても、G1オークス(もしくはNHKマイル)以来が4頭、条件戦(もしくはG2・3)からが6頭と、こちらもほぼ互角となる。

これは、牝馬は総じて仕上がりが早いということに理由があるだろう。この時期であれば、基本的には夏にレースを使っていた馬が有利なのだが、たとえ休み明けであっても、春の実績馬がある程度までキッチリと仕上がって出走してくるということである。つまり、春のクラシックを走ってきた実績馬が夏の上がり馬と五分に戦える舞台となっている。

■2■紛れが少なく、内枠有利なコース設定
改修後の阪神1800mは、スタートしてから最初のコーナーまでの距離が長く、直線も長いため、激しい先行争いもなく、極めて紛れの少ないコースといえる。別の言い方をすると、ごまかしが利かないため、スタミナのないマイラーでは苦しい。また、コーナーを緩やかに回るので、馬群が固まりやすく、外枠を引いた馬は外々を回されやすい。内枠を引いた馬が有利である。

■3■瞬発力勝負になりやすい
改修後の阪神1800mコースの特性上、どうしても道中がスローで、最後の直線に向いての瞬発力勝負になりやすい。そういった意味では、前に行ける先行馬にとって有利となるが、後方からでも瞬発力に優れていれば差し切れる。

追記
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集中連載:「Good 馬場!」第5回

■馬場の内外差
(2)のコースの内外での差は、馬場の内側か外側を走るかでどれだけ有利不利が生じるかということである。開催当初は内外均一であった馬場も、レースが行われ、距離ロスをしないように各馬が少しでも内側のコースを走ろうとすると、どうしても内側の馬場、特に3~4コーナーの部分の芝が傷んできてしまう。そのため、馬場の保護を目的として仮柵による馬場の使い分けをしているが、この仮柵の移動によって、どうしても馬場の内と外で大きな有利不利が生まれてしまうことがある。

たとえば、移動柵を最大12m幅で動かせる東京競馬場に比べて、中山競馬場は最大でも6m幅でしか動かせない。中山競馬場は仮柵を移動することによって、内側からA、B、Cの3つのコースが作られる。仮柵を移動する際に、A→B、つまり内側から外側に移動する際には、内外それほど差の無い状態に保たれるが、もしC→A, つまり外側から内側に移動すると、仮柵を移動した部分の内側6mが絶好の状態の芝(グリーンベルトと呼ばれる)になってしまうため、内を通れる馬とそうでない馬とでは圧倒的な不公平が生じてしまうことになる。(下図参照)

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グリーンベルトによる不公平で問題になったのは、平成10年の皐月賞だろう。2枠3番を引いた横山典弘セイウンスカイが、グリーンベルトの上を通って先行し、そのまま押し切ったレースが、1番人気に支持された武豊スペシャルウィークは8枠18番という大外枠のため、終始外を回る羽目になってしまい、3コーナーから強引にマクっていったものの最後の直線ではキングヘイローに差し返されて3着に終わってしまった。弥生賞を勝った反動や当日プラス10kgの馬体重であったことを考慮に入れても、武豊騎手がレース後に指摘した通り、コースの内外の馬場状態の違いは明らかであり、公平な競馬ではなかった。

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こうしたことが考慮されて、最近の皐月賞はAからBコースへの移動(内側から外側への移動)で行われている。昔はG1レースを一番広いコースで行うしきたりのようなものがあったが、最近はグリーンベルトを作らないことを優先してコースローテーションを組んでいる。そのため、G1レースでグリーンベルトが生じることはほとんどない。しかし、その代わりと言ってはなんだが、通常のレースでは内外の差が明らかなケースも多々ある。その他の競馬場でもさまざまな工夫、改善が行われているが、それでも、競馬は毎週休むことなしに開催されるため、馬場の不公平を完全になくすことは難しい。

もちろん公平かどうかは当事者にとっての問題であるので、予想をして馬券を買う私たちにとっては馬券が外れたことの言い訳にはならない。馬券を買う前から内外で差があることは分かっているのだから、それに対応した予想をすることが必要である。

たとえば安田記念は、馬場が最も傷んでくる時期に行われるため、馬場の内外の差が最もでやすいG1レースのひとつである。枠順や通った場所によって勝敗が分かれてしまうことが多く、馬場の内外での差(トラックバイアス)に注目するべきレースである。

東京競馬場
Tokyoturf

Aコース 内柵を最内に設置
Bコース 内柵を3m外側に設置
Cコース 内柵を6m外側に設置

東京競馬場において、CコースからBコースという変更は、内柵を内側に3m移動するということである。つまり、内柵が内側に3m移動することによって、馬場の良いグリーンベルトが3m分出来るということになる。3mといえば馬1~2頭分のスペースであり、このグリーンベルトに各馬が殺到することが予想される。内枠を引いた先行馬はそう簡単には止まらないだろうし、外枠を引いた差し馬は終始馬場の悪いところを走らされるかもしれない。

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たとえば、ブラックホークが大外から差し切った平成13年、アドマイヤコジーンが復活した平成14年は、馬場の内側の傷んだ場所を通らねばならなかった馬が直線で失速し、馬場の外を回ることができた馬にとって有利になった。対照的に、アグネスデジタルがレコードで勝利した平成15年は、仮柵がCコースからAコースに移動されたため、今度は内側の馬場の良い部分を通った馬が有利になった。このように、コースローテーションによって、枠順による有利不利が生まれてくるのである。その年毎にコースは違うので、JRAのホームページの「馬場情報」にて、コースローテーションは常に把握しておかなければならない。

(第6回へ続く→)

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「馬検」を受けてきました。

Baken01

昨日、「馬検(G2)」を受けてきました。思っていたよりもたくさんの人たちが来ていて、ビックリしました。先ほど、記憶を辿って自己採点してみたところ65点でした。合格が70点だから、あと一歩(悔しい!)。

こんな問題が印象に残っています。
Q,ディープインパクトは規定一杯の9文字馬名ですが、勝ったレースで2着馬も9文字馬名だったケースは何回?
①3回
②4回
③5回
④6回

必死に2着馬の名前を書き上げましたよ(笑)。若駒Sの2着馬の名前だけ思い浮かなかったのですが、結果オーライ。答えは③の5回です。一応名前を挙げておくと、以下の通りです。
新馬戦   コンゴウリキシオー 9文字○
若駒S   ケイアイへネシー  8文字
弥生賞   アドマイヤジャパン 9文字○
皐月賞   シックスセンス   7文字
ダービー  インティライミ   7文字
神戸新聞杯 シックスセンス   7文字
菊花賞   アドマイヤジャパン 9文字○
阪神大賞典 トウカイトリック  8文字
天皇賞春  リンカーン     5文字
宝塚記念  ナリタセンチュリー 9文字○
JC    ドリームパスポート 9文字○
有馬記念  ポップロック    6文字

もうひとつ。これは引っ掛け問題だと思うのですが、まんまとやられました。
Q,菊花賞の最多勝調教師は?
①武田文吾
②池江泰郎
③久保田金造
④尾形藤吉

これがなぜ引っ掛けなのか分からない方は、ぜひ勉強して「馬検」を受けてみることをお勧めします。ちなみに、正解は④です。

受けた感想としては、かなりマニアックで難しかったです(受験された皆様、どう思いますか?)。とはいっても、こういう企画自体は非常に面白いと思います。今までとは違った側面から競馬を深く見ることができますし、私自身とても勉強になりました。次回こそはリベンジしてやる~。

第1回の過去問と解答がオフィシャルホームページにアップされていますので、興味のある方はご覧になってみてくださいな(G3もあります)。

■「馬検」のオフィシャルHPはこちら
http://www.kentei-uketsuke.com/baken_info.html

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世界バケンカ旅-シンガポール前編-

Singaporetop

「フジイー!フジイー!」

日本の競馬場でも聞かれることのない藤井コールが、シンガポールの夜にこだました。

私たちの掛け声は、ジョッキーの鞭となり、鞍下の馬を叱咤激励する。それに応えるかのように、藤井勘一郎騎手の操るPREMIER NIGHTは、徐々にポジションを押し上げていった。5番手から4番手。4番手から2番手へ。先頭に立ったNINETYFIVE SWORDとの差を一完歩ごとにジワジワと詰めていった。

残り400m。

あと1頭交わすことができれば、この夜はシンガポールで最高のものになる。

Singapore01_2思っていたよりも蒸し暑さのない、どちらかというと快適な目覚めであった。昨夜遅く空港に到着したことを思うと、もう少し寝ておきたい気持ちはあったが、少し大きめの窓から差し込んでくる明るい日差しがそうさせてはくれなかった。私はエアベッドからゆっくりと起き上がり、ベランダに出た。外に出るとムッとする熱気がまとわりつく。眼下にはプールが広がっていた。水面からの反射光が眩しい。

「シンガポールでは日当たりの悪い方が良い物件なんだ」と部屋の中から友人が言った。彼の住む、このいかにもシンガポールらしい集合住宅の一室には、たしかにそれほど日当たりが良くはなさそうだ。その代わりというか、この部屋にはカビが生えやすいため、一日中冷房を入れておかなければならないらしい。陽の当たる場所の方が悪くて、陽の当たらない場所の方が良い。いつか陽の当たる場所にと思っている私には、少し不思議な感じがした。

「それじゃあ、また後で」と言い残して、友人は仕事に出掛けた。彼は高校時代からの友人で、国内外問わず誰もが知る大手電気メーカーに勤めている。今年の4月、シンガポールに赴任となった。彼とはどれほど多くの時間を掛けて競馬について話してきただろう。人生や青春を語る代わりに、私たちは競馬について語ってきた。

「ケイエスミラクルは勝っていたに違いない。」
「田原成貴のあの騎乗は最高だった。」
「そんな馬、来るわけねぇ。」

彼とは手加減なしで競馬の話が出来る。互いの意見は一致しないことの方が多いが、唯一折り合いがつくのは、最強のスプリンターはサクラバクシンオーということだ。サイレントウィットネスやテイクオーバーターゲットよりも断然に強かったと信じている。

午前中は、シンガポールの競馬について調べて過ごした。シンガポールの在籍馬は8割以上がオセアニア産であること。シンガポールの競馬はマレーシアの3つの競馬場(セランゴール、イポー、ペナン)と密接なつながりがあり、マラヤン競馬協会として統括されていること。今のクランジ競馬場は1999年に新しくオープンしたこと。それまではブキティマ競馬場で行われていたのだが、競馬産業とシンガポールの経済の急激な成長に伴い、交通渋滞や騒音問題などが生じてしまったことによって、シンガポール政府はクランジに世界で最も美しく近代的な競馬場を建設することにしたこと。2000年に、クランジ競馬場のオープニングイベントとして、第1回シンガポール航空国際Cが開催されたこと(2002年には国際G1に認定)。シンガポールの年間の売り上げ(マレーシアも含む)は約1100億円であること。韓国の約4500億円、香港の約8200億円、日本の約3兆円に比べると低い数字だが、その差はいずれ縮まるだろう。それよりも、いかに日本の競馬の売り上げの多いことか。あとどれぐらいJRAは私たちに馬券を買わせたいのだろうか。

そうこうしていると、昼になった。友人が仕事を一旦抜け出して、迎えに来た。読みきれない資料をバックに詰め、私たちは部屋を出た。マンション地下にある駐車場から車に乗り込み、らせん状に地上に出ると、そこは常夏の国シンガポールだった。

「クランジ競馬場の入り口で18時に待ち合わせでいいよね?」
「そうだなぁ。仕事が終わってからすぐに向かうつもりだけど、もしかしたら10分ほど遅れるかもしれない。」

結局、18時10分に集合ということにして、クレメンティ(Clementi)という駅で車から降ろしてもらった。駅前は、電車とバスを利用する人々が行き交い、大変な混雑をしていた。ほとんどが中華系の人々であり、ごく稀にマレー系、インド系の人々の姿が見られる。

特にどこへ行くという当てもなかったので、MRT(Mass Rapid Transit)に乗ることにした。この鉄道は、都市部は地下を、郊外に出ると高架を走る。シンガポール国内を一周するように網羅しているので、交通網の中心となっている。日本で言えば、東京の山手線のようなものだ。

駅の階段を登り、切符を買おうと全体の鉄道マップを眺めると、リトルインディアやチャイナタウンなどの観光名所まではかなり時間を要することが分かった。そこで、空腹を感じていたこともあり、クレメンティ駅の周りを探索してみることにした。

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シンガポールには建設中の土地が目立つ。クレメンティのような郊外だけではなく、オーチャードやシティホールのような都市部でさえも、新しい建物が次から次へと建つのである。先進国でありながら、まだまだ発展し続けているということだ。競馬だけではなく経済的にも、日本が追いつき追い越されてしまうのは、そう遠い日のことではないのかもしれない。

駅前の建物の1Fにあるマクドナルドには目もくれず、さらに奥へと進むと、30以上の屋台が集まった市場のようなところに行き着いた。平日の昼時をだいぶ過ぎた時間ではあったが、たくさんの人々が、せわしなく話しながら、のんびりと食事をしていた。その周りで、背中が奇妙に曲がった男が、テーブルの上に散らかった残飯の片付けをしている。蓋のない大きなバケツに次々と食べ残しを放り込み、飲み物の残りは別のバケツに流し、汚れたテーブルの上を濡れた雑巾で拭く。彼の働きがなければ、この市場はあっという間に食事どころではなくなってしまうだろう。食事に興じる人々は誰もその男の存在すら気に留めず、また男もそれで当然だといった様子で機械的に動き続けていた。片隅では、子供たちが日本のポケモンのようなアニメを小さなテレビで観ている。黄色いTシャツに青の半ズボン。小学校の帰りに違いない。もう夏休みの宿題は終わったのだろうか。どこの国でも子供たちの笑顔は美しい。

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店の看板は中国語で表記してある。パッと見ただけでは、どの店で何を売っているのか全く分からない。私はしらみつぶしに店を見て回り、人々の食べている皿の上の料理に目を凝らした。皆が食べているような一品を食べてみたいと考えていた。しかし、面白いことに、どれひとつとして同じような店もなく、誰一人として他と同じものを食べている者もいなかった。一見、どの店も、どの料理も同じに見えたが、よく観察するとどれも違う。まるでジャングルに生息する生物のように多様であった。これといった決め手もなく、空腹であったことも手伝って、私は目の前にあった店で定番のチキンライスを注文して、3ドルを渡した。少し離れた外のテーブルに自分の場所を確保した。そこで、午前中に調べておいたシンガポールについての資料をバックから取り出し、読みながら待つことにした。

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Singapore05シンガポール競馬はイギリス占領時代の1843年、現在はリトルインディアの一角に造られた競馬場で始まった。「レースロード」というストリート名に今もその名残がある。日本で初めて洋式競馬が行われたのが1861年になるから、ある意味、我々よりも一歩先んじていたことになる。19世紀に入って競馬人口が急激に増加し、馬券人気があまりにも過熱したため、1913年には賭博条例が成立し、不法な馬券発売の取り締まりが行われた。日本でも馬券禁止令が出たのが1924年だったことを考えると、その歩みは驚くほど似ている。

第二次世界大戦中の1942年、日本軍はシンガポールを占領し、競馬だけではなく、数万人以上の命を「粛清」により奪った。シンガポール華僑虐殺事件である。しかし、この頃から日本の競馬も次第に陰りを見せ始める。競馬専門紙・雑誌の相次ぐ休廃刊や競馬場の閉鎖。そして、1944年には競馬がついに停止となった。経緯こそ違え、どちらの国も戦争により一時的に競馬を失った経験を持っている。

「ここに座っていいかな?」

中国語なので全く分からないが、おそらくそう聞かれたのだと思った。顔を上げると、老人が満面の笑みを浮かべて、対面の席を指差していた。私も微笑んで、歓迎の意を伝えた。私のチキンライスがテーブルに並ぶや、老人が注文した料理も運ばれてきた。老人は醤油味のスープにタンメンが入っているような料理を美味しそうに食べ始めた。

私はチキンライスを食べていたが、老人の料理が気になって仕方なかった。そこで、店の人を呼び止め、老人の料理を指差しながら、「この料理が食べたい」と伝えた。これは昔アメリカで生活した時に覚えた、海外で美味しいものにありつくためのコツである。他の人が食べているものを、あからさまに指で差しても構わない。食べている本人は、かえって自分が認められたような気がするのか、まんざらでもない顔をすることが多い。

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チキンライスを食べ終え、遅れてやってきた醤油味のスープにタンメンが入っているような料理に口を運んだ。老人と目が合った。老人は料理と私を交互に見て、何か訊ねた。

「うまいだろう?」

と言ったに違いないと思い、私は親指を立てて答えた。老人は安心したように頷き、また自分の食事に取り掛かった。正直に言うと、チキンライスもこの料理もさほど美味くはなかったが、それが作法であろう。私は市場を出て、MRTに乗り、クランジ駅に向かった。

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セントウルSの分析

平成12年からスプリンターズSのステップレースとして、距離が1200mに短縮され、施行時期も9月の開幕週へと繰り上がった。平成17年からは、グローバル・スプリント・チャレンジの第5戦を構成するとともに、国際競走に指定され、外国馬が出走可能になった。さらに、平成18年にはG2レースに格上げされるとともに、サマースプリントシリーズの最終戦となった。

■夏競馬を使ってきた馬
        勝ち馬          前走時期
平成12年 ビハインドザマスク   8月20日
平成13年 テネシーガール     7月1日
平成14年 ビリーヴ          8月17日
平成15年 テンシノキセキ      8月10日
平成16年 ゴールデンキャスト   8月29日
平成17年 ゴールデンキャスト   8月28日
平成18年 シーイズトウショウ   8月27日

平成13年のテネシーガール以外は、かなり直近のレースを使ってきていることが分かる。ここをステップにスプリンターズSに向かう馬vs夏競馬を使ってきた馬という構図になるが、このレースに限っては後者が有利。舞台が阪神に移ったとはいえ、夏競馬の延長線上にあると考えるべきである。

■牝馬
過去7年の勝ち馬を見ても、ゴールデンキャスト以外は全て牝馬。このあたりにも、夏競馬の延長線上という考え方が当てはまる。直線に坂のある阪神コースではあるが、開幕週だけに馬場も良く、それほど力の要る馬場にならないことも多少は影響しているはず。

■内枠で前に行ける馬
阪神1200mは本来、逃げ切りが難しいコースであるが、この時期だけは馬場が良いために逃げ・先行馬有利になる。また、スタートしてから最初のコーナーまでの距離が短く、4コーナーの角度もきついため、内枠を引いた馬にとって有利になる。

追記
セントウルSの見解、有力馬情報に関しては、メルマガ「馬券のヒント」にて配信させていただきます。日曜日の9時までにご登録いただければ、今回の配信に間に合うはずです。→メルマガ詳細はこちら

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集中連載:「Good 馬場!」第4回

■どのように馬場の重さ(軽さ)を把握するか?
それでは実際に、どのように馬場の重さ(軽さ)を把握すればよいのだろうか。

馬場の重さ(軽さ)を把握するために、最も簡単かつ有効な方法は、「芝の種類」と「芝の傷み具合」を時系列として読み解くということである。「芝の種類」によって異なる馬場の重さ(軽さ)が、開催が進むにつれての「芝の傷み具合」によって変化してくる、その変化から馬場の重さ(軽さ)を把握するという、ごくごく単純方法である。

最初の手順として、レースが行われる競馬場の芝の種類を把握することから始めなければならない。前述したとおり、新潟競馬場は「野芝100%の芝コース」、札幌、函館競馬場は「洋芝100%の芝コース」、東京、中山、阪神、京都、中京、福島、小倉競馬場は「野芝に洋芝をオーバーシードした芝コース」となる。しかし、たとえオーバーシードした芝コースでも、野芝の成長期(6月~9月)には洋芝を取っ払って、野芝100%に近い状態で行われることもあるので、JRAのホームページの「馬場情報」を逐一チェックしたい。

次に、レースが行われる競馬場の芝の「傷み具合」を把握したい。現在のレースが行われている競馬場の芝は、どういう時期で、どれぐらい使われて、どれだけ傷んでいるかをチェックするのだ。野芝の最盛期は7月~9月であって、それ以降は徐々に枯れて重くなっていく。そして、開催が続いたり、開催と開催の間にある芝の養生期間が短かったりすると、野芝の傷みが回復することなく次の開催が始まってしまう。また、運悪く、開催中に連続して雨の日が当たったりすると、芝の傷みは通常よりも早く進行する。そして、これは稀なケースだが、冷夏や暖冬の影響で翌年の野芝の根付きが悪かったり、良かったりすることもある。

馬場の重さ(軽さ)は、『極端に軽い』→『軽い』→『やや軽い』→『やや力の要る』→『力の要る』→『かなり力の要る』という6段階に分けてみた。もちろんこれらの中間に位置する重さ(軽さ)の馬場状態もあり得るが、実際にレースを予想するための材料としてはこの6段階ぐらいで十分である。

かつて、馬場の重さ(軽さ)の段階に数字を当てはめて、より厳密に把握しようと考えたこともあったが、上手くはいかなかった。やはり、馬場というものは、常に変化し続ける生き物のようなものであって、数字に置き換えてしまうと、現実の馬場の重さ(軽さ)の感覚とはズレてしまい、どうもシックリこないことが多い。そもそも、馬場の重さ(軽さ)を数字に置き換えるということ自体がナンセンスなのかもしれない。

前置きはこのあたりにして、野芝の最盛期である9月の開催を起点として、具体的に把握していきたい。
「開催日割(PDF)」を片手にご覧いただけると分かりやすいだろう。

9月
★中山競馬場
この時期の開催は野芝100%の状態で行われる。4月以降の開催になるため、野芝の養生期間が長く、根がしっかりと張った極めて軽い馬場となる。

★阪神競馬場 
7月まで競馬が行われていたため、野芝の養生期間はほとんどなく、全く根付いていない状態。傷んだ芝部分を張り替えただけなので、馬場が良いのも最初だけで、開催が進むにつれすぐに傷みが目立ち始め、やや力のいる馬場へと変化する。

10月
★東京競馬場 
夏の間に十分根を張った、軽いオーバーシード芝。洋芝はまだ芽が出かけた程度で、ほぼ野芝100%の極めて軽い馬場である。

★京都競馬場 
夏の新潟に匹敵する、極めて速い時計の出る芝。東京競馬場同様に、洋芝はまだ芽が出かけた程度で、ほぼ野芝100%の極めて軽い馬場である。

★福島競馬場 
やや力の要る芝。夏の開催からの養生期間が短いため、開催が進むにつれて傷みが目立ち始める。

11月
★東京競馬場 
やや力が要るオーバーシード芝。野芝はすでに成長が止まり、伸びた洋芝が表面を覆った状態となる。

★京都競馬場  
軽いオーバーシード芝。野芝の成長は止まるが、状態が良いため、軽さは維持される。

12月
★中山競馬場 
やや力の要るオーバーシード芝。芝の根付きが良いため、傷みはなかなか進まない。

★阪神競馬場 
傷んで力の要るオーバーシード芝。開催の後半では、内側がかなり傷んで、走りにくい部分が出来てしまう。

★中京競馬場 
軽いオーバーシード芝。養生期間が長く、秋最初の開催になるので、冬の時期に行われる競馬ではダントツに馬場の状態が良い。

1月
★中山競馬場 
秋競馬で使われなかったCコースを使うため、やや軽いオーバーシード芝

★京都競馬場 
秋競馬で使われなかったCコースを使うため、非常に軽いオーバーシード芝

★小倉競馬場
軽いオーバーシード芝から傷んだオーバーシード芝へと、1ヶ月の間に変化する。この時期の小倉には他場で減らされている芝のレースを肩代わりする役割があるため、レース数が多く、後半は傷みが目立ち始める。

2月
★東京競馬場
やや力の要るオーバーシード芝。Dコースを使用して、芝のレース数も少ないため、傷みは最小限に抑えられている。

★京都競馬場
Cコース開催2週目となるため、やや力の要るオーバーシード芝

3月
★中山競馬場
やや力が要るオーバーシード芝

★阪神競馬場
力が要るオーバーシード芝

★中京競馬場
やや力の要るオーバーシード芝

4月
★中山競馬場
力の要るオーバーシード芝。洋芝が伸びて、見た目ではなかなか分からないが、ベースの野芝は相当に傷んでいる。

★阪神競馬場
傷みも目立ち始めて、力の要るオーバーシード芝

★福島競馬場
力の要る芝。昨年の11月から養生期間は長いが、野芝はまだ芽も出ていない段階で、次第に傷みが目立ち始める。

5月
★東京競馬場
やや力の要るオーバーシード芝。野芝はまだ芽が出かけた段階で、根は張っておらず、傷みやすい。ダービーまではなんとか持ちこたえても、それ以降はボロボロになることが多い。

★京都競馬場
やや軽いオーバーシード芝。1、2月は芝のレースが少なかった上に、Dコースに変更されることによって、春の競馬では最も速い馬場。

★新潟競馬場
昨年の夏以来となるため、野芝100%でやや軽い芝。ただし、野芝はまだ成長期にないため、傷みやすい状態の馬場。

6月
★阪神競馬場
力の要るオーバーシード芝。阪神競馬場は宝塚記念があるこの開催に備えて、2回開催終了後に芝を張り替える。そのため、宝塚記念時点の芝の状態は、洋芝100%に近い。

★函館競馬場
洋芝が密に生え揃って絶好の芝の状態。洋芝の性格上、重くて力の要る馬場

★中京競馬場
傷んで力が要るオーバーシード芝。3月の開催から間がなく、かなり傷んだ状態の馬場。

★福島競馬場
傷んで力が要る芝。野芝が成長をし始めるものの、1回開催から期間が短いため、馬場の傷みは回復することなく進行していく。

7月
★新潟競馬場
野芝100%である上に、成長期であるため、極めて軽い馬場

★小倉競馬場
ほとんど野芝100%に近い、軽い馬場

★函館競馬場
かなり力の要る馬場。梅雨の影響で、開催に雨が当たることも多く、洋芝の傷みが目立ち始める。

8月
★新潟競馬場
まだ野芝が成長している時期であるため、馬場が悪くならず、極めて軽い馬場が維持される。

★小倉競馬場
新潟と同じく、まだ野芝が成長している時期であるため、馬場が悪くならず、軽い馬場が維持される。

★札幌競馬場
洋芝が密に生えた絶好の馬場。梅雨の影響を受けないため傷みづらいが、洋芝の性格上、力の要る馬場

以上のように、芝の最盛期の状態を起点としてイメージしつつ、そこから開催が進むにつれて馬場が傷み、重くなって力を要する馬場になっていくという過程を、時系列で把握するということである。最盛期から時間の経過とともに傷んで枯れていくという、生物としての不可逆な1年の営みを利用するのである。もし開催中に連続して雨が降ったり、冷夏や暖冬などイレギュラーなことが起これば、その都度、上記の基準の重さをほんの少し調節すればよい。

これまで私は色々な方法を試してみたが、結局のところ、この方法以上に簡単かつ正確に馬場の重さ(軽さ)を把握することは出来なかった。たとえば、ある競馬ソフトの基準タイムを用いて馬場差を出す方法がある。しかし、そもそも競馬のレースは生き物であり、展開や馬場の内外、メンバーの力関係などがあるにもかかわらず、(たとえ補正したとしても)勝ちタイム等から馬場差を正確に出すのは普通に考えても無理がある。また、開催中の勝ち馬、もしくは2着に好走した馬の血統から馬場状態を読み解く方法は、サンプル数が少なすぎるため、独自のバイアスが掛かってしまうことが多い。

もちろんこれらもある程度は有効であっただが、小難しかったり時間が掛かったりする割には上の方法と同じ、もしくはそれ以下の結果しか出なかったのである。これらの方法の問題点は、すでに終わった事柄(タイム、好走馬の血統等)を材料とするため、全てが後追いになってしまうということである。また、馬場の重さ(軽さ)を把握するために馬場以外の要素を判断材料にしているため、その他の関係ない要素までが紛れ込んでしまうことも問題である。馬場のことは馬場に聞くのが一番なのである。だからこそ、誰にでもスグ出来て、しかも間違いが少ないのだ。

(第5回へ続く→)

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集中連載:「Good 馬場!」第3回

■芝の傷み具合
次に、「芝の傷み具合」については、ごく単純に、開催が進むにつれて傷んでいくということである。今週よりも来週、来週よりも再来週の馬場の方が傷んでいるのが普通である。芝が良くなるという逆向きのベクトルはなく、当たり前のことではあるが、開催が進むにつれて芝は傷んでいくということは「馬場」を把握する上で重要である。

傷みの進行度合は、野芝の成長する時期によって異なってくる。野芝の成長期にあたる6月~9月は、たとえば夏の新潟開催のように、傷んでも次の週までには回復しているということがある。同じオーバーシードされた芝でも、野芝が成長している時期は傷みにくいのに比べ、冬から春先にかけては、ちょっとしたことで傷みが急速に進んでしまう

特に、繰り返し各馬が殺到する3~4コーナーの内側は、最も傷みが進行しやすい部分である。それを補うために、仮柵を外したりしてコース変更をするのだが、これによって生まれる内外のトラックバイアスについては、(3)馬場の内外で差はないか?において後述したい。

また、雨の影響によって、「芝の傷み具合」が急激に早まることもある。開催日(土曜日、日曜日)に雨が降って、重馬場でレースが行われた場合、芝はあっという間に掘り起こされてボコボコになってしまう。特に春の時期は、まだ野芝が芽を出しただけで根が張っておらず、路盤が柔らかい。その上を雨に弱い洋芝が覆っているだけなので、馬場が極端に傷みやすいのだ。開催日に連続して雨が降るようなことがあれば、馬場の性質が一変してしまうこともある。

たとえば、平成18年春の東京開催では、これでもかというぐらい週末に雨の日が集中した。NHKマイルCは当日に雨が降り、ヴィクトリアマイルも降雨の影響でやや重まで馬場が悪化した。それによって、芝の傷み具合は急激に進み、オークスは極めて力の要る馬場で行われることになった。結果はご存知のとおり、カワカミプリンセス(父キングヘイロー)が勝ち、494kgのフサイチパンドラが2着、488kgのアサヒライジングというパワーに優る馬たちが上位を独占することになった。1番人気に推された444kgのアドマイヤキッス、422kgのキストゥへヴンという小柄な馬たちが、4、6着に惨敗したことを考えると、どれだけ力の要る馬場だったかが分かるだろう。

Goodbabakawakami

さらに続くダービーも、前日から雨に見舞われ、パワータイプのオペラハウス産駒メイショウサムソンが、道悪の皐月賞に続く2冠を手に入れた。全体の時計が2分27秒9の時計で、メイショウサムソン自身のラスト3ハロンの上がりは35秒1であった。翌年(平成19年)のダービーの勝ちタイムが2分24秒5で、ウオッカの上がり3ハロンが33秒0と比べると、ペースの差こそあれ、この2つのダービーは全く違う要素を問われたダービーであったと言えるだろう。馬場の傷み具合が違えば、ダービー馬さえ変わってくるのである。

Goodbabasamson

(第4回へ続く→)

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