福永祐一騎手を応援しないわけにはいかない。

お手紙ありがとうございます。まさか落合監督の采配に対する返答をいただけるとは思ってもみませんでした。なるほど、勝利を優先させたのではなく1球に集中していたのですね。そう考えれば、あの采配は誰にとっても納得のいくものになります。私もレースに勝つことばかりではなく、1頭1頭の馬に集中しなければなりません。そして、たとえ孤独であっても、本質を言い当てて実行できる人間にならなければなりませんね。
私が最初にテレビで観た野球選手が王貞治選手でした。その日から、野球と王貞治選手が大好きになりました。小さい頃は、私もボールが見えなくなるまで草野球をやっていましたよ。5時に「カラスが鳴くから帰りましょ~」という放送があってトモダチが皆帰ってしまった後も、壁に向かってボールを投げていました。いわゆる壁当てというやつですね。壁にストライクゾーンを書いて、それに向かってストレート、カーブ、落ちないけど落ちているつもりのフォークなどを投げるんです。この壁当てが私は大好きでした。なぜって、いつでも好きなピッチャーになって、相手バッターをビシバシと三振に取れるのですから。9回2アウト満塁なんていう苦しい状況を勝手に作り上げて、外角低めにストレート、空振り三振!なんてやって一人で楽しんでいました。
その中でも、一番、よくマネをして投げたのは江川だったかもしれません。あの独特のピッチングリズム覚えていらっしゃいますか?両手でシッカリと振りかぶって、左足は90度上げて、右足はつま先まで伸び上がってワンテンポためを作って、それから投げるんです。全盛期の江川のストレートはホップして伸び上がっていましたが、私が壁に向かって投げた球は残念ながら真っ直ぐ下に落ちていました。それでも私にはホップしているように見えたのですけどね。
小学生の私にとって、江川のゴシップは聞いてもよく分かりませんでした。巨人のエースでヒーローということだけで十分だったのでしょう。もちろん、レディゴシップのことも知りませんでした。小林繁氏とのCMはあのぎこちなさがまた良いですね。人って、もっとぎこちなくてもいいと思うのですよ。私も含めた現代人はスマートに生きすぎているような気がします。って、なんの話でしたっけ?そうここはガラスの野球場、ではなかった、ガラスの競馬場です。
ルドルフおやじさんは天皇賞秋でカンパニーに対抗○を打っていましたね。まさに期待通りの走りだったのではないでしょうか。私も注目して見ていましたが、それは間隔を空けた方が走るタイプなのではないかなと考えていたからです。でもそうではないのかも知れませんね。長期休養明けの関屋記念をあれだけのタイムで勝った反動を考慮して、じっくりと乗り込んでいたということでしょう。ルドルフおやじさんは大器が開花したと見ているのですね。我らがPOG馬サバースもデビューを目前にして放牧に出されてしまったようですが、このクラフティワイフの母系は晩成なのでしょうか?
ルドルフおやじさんも福永祐一騎手に注目しているのですね。私は安藤勝己騎手の大ファンですが、彼が引退した後は、福永祐一騎手をつぶさに観て行きたいと思っています。それぐらい魅力のあるジョッキーだと思います。何といっても、父はあの福永洋一騎手ですから。競馬ファンは人間の血統は重んじないところがありますが、血は水よりも濃いのです。そして、彼の祐一という名前の祐は、私が尊敬してやまないあの故野平祐二調教師の祐に由来します。これだけ揃ったジョッキーを私が応援しないわけにはいきません。
父親の福永洋一騎手については、語るまでもないかもしれませんが、日本競馬史上に残る伝説のジョッキーです。伊藤雄二元調教師は、武豊騎手のことを「何千年に1人の名手」と評価しながらも、「日本競馬最高の騎手は福永洋一」と断言しています。福永洋一騎手を乗せると、能力的に足りないと諦めていた馬でも走ってしまったそうです。しかも、レースの内容が他の騎手を乗せていたときとは全く違い、追っ付けても進んで行かなかった馬をスイスイと逃げさせたり、先行してはバタバタになっていた馬を最後方から一気で勝たせてみたりして、周りは呆気に取られました。エリモジョージで逃げ切った天皇賞春などが有名ですよね。同じ騎手の立場から見ても、なぜ福永洋一騎手の乗る馬が走るのか分からなかったそうです。それほどに卓越した技術、もしくは並みのジョッキーとは違う何かを持っていたということでしょう。
その福永洋一騎手を不幸な落馬事故が襲ったのは、福永祐一がまだ2歳の頃でした。頭蓋骨骨折、脳挫傷、舌裂傷という大怪我を負って、それでも奇跡的に一命を取り留めたのですが、それ以降今もリハビリの日々が続いています。福永祐一は中学生になって競馬のことを知るまで、父がなぜ怪我をして、どうしてこんなに頑張っているのかも分からなかったそうです。福永祐一が小さい頃からずっと見てきた父の姿とは、母と一緒に懸命にリハビリに取り組んでいるところだったそうです。「それだけで僕にとって父は尊敬できる存在だった」と福永祐一は言います。
福永祐一が騎手になりたいと言った時、母親はもちろん大反対しました。しかし、福永祐一が「僕も騎手になるよ」と父に耳打ちした時、父洋一はにっこりと笑い返してくれたそうです。この笑顔に支えられて、現在の福永祐一ジョッキーが誕生したのです。
正直に言って、福永祐一騎手はジョッキーとして父ほどの素質を持ち合わせてはいないと思います。近づいては来ていますが、現在のトップジョッキーたちと比べても、まだまだ足りないところがたくさんあります。それは本人が一番分かっているはずです。それでも、父のおかげもあり、たくさんの人々にサポートしてもらいながら、その期待に少しでも応えられるように懸命に騎乗しているのが伝わってきます。手の届かない父の背中と、父のおかげで恵まれている環境と、騎手としての自分の力の間にある蜃気楼をいつも彷徨っているのでしょう。福永祐一騎手の右目と左目は形が違いますよね。葛藤を物語っている彼の目が私は好きです。
さて、マイルチャンピオンシップは大混戦で、どこからでも狙えそうな面白いレースとなりました。
当然のことながら、天皇賞秋でカンパニーに先着したアグネスアークには注目すべきです。レディゴシップと同じ母系に、あのヒッティングアウェーがかかっていますね。いかにも底力のありそうな母系です。この馬は前走の直線で不利を跳ね返して、最後はカンパニーを差し切ったように、見た目からは想像もつかないほど根性のある馬ですね。馬体だけを見ると、とてもG1を勝てるような馬には見えませんが、前走で58kgの斤量も克服してしまいました。
重賞でなかなか勝ち切れていませんが、どのレースも恵まれなかったものです。札幌記念はスローの展開に泣きましたし、毎日王冠は外を回しすぎました。そして天皇賞秋は直線で挟まれる形になってスタミナをロスしてしまいました。それでも大きく負けていないあたりに、この馬の大きな成長を感じます。河内調教師も鞍上を藤田騎手に替えて、必勝体勢で臨んできています。河内調教師に初のG1タイトルをもたらすことができるかもしれません。
ただし、不安材料がないとはいえません。それは夏から使い詰めで来ていることです。馬体重の430kgはこの馬のベスト体重の下限なので心配はないでしょうが、ローテーション的にはピークを過ぎている可能性があります。今回で5戦目となりますので、充実の4歳の秋とはいえ、さすがに上がり目はないでしょう。今の勢いをして、どこまで踏ん張れるかといったところです。
もうひとつ大切なことは、前走の不利が後を引かないかどうかということです。落馬などの大きな事故や不利に巻き込まれた馬は、そのことを必ず覚えています。そのレースではアドレナリンが出て、アグネスアークのように好走する馬はいるのですが、次走では思わぬ惨敗をしてしまったりします。それは精神的にショックを受けてしまうからでしょう。勝負どころで怯むようになってしまい、それ以降、当分の間、走らなくなってしまう馬は結構多いのです。
昨年の覇者ダイワメジャーはどうでしょうか。本命を打っていたから言うのではありませんが、天皇賞秋で最も大きな不利を受けたのはダイワメジャーだと思います。というのは、これはコーナーを回る時にも当てはまるのですが、遠心加速度は外に振られるにつれ2倍、3倍ではなく2乗、3乗と大きくなってきます。つまり、アグネスアークよりもシャドウゲイト、シャドウゲイトよりもダイワメジャーに、2乗3乗のG(重力加速度)がかかったということです。アドマイヤムーンは一番外でしたが、馬体の接触はこの3頭に比べると軽いものだったように見えました。トップギアに入ったところで、2乗3乗のGがかかったのですから、その圧力は想像を絶する大きさだったと思います。ですので、あの結果(9着)を鵜呑みにすると痛い目に遭いそうな気がします。とはいえ、ルドルフおやじさんのおっしゃるように、年齢的なものもあってか、調子、特に精神的なものが下降線を辿っているのは間違いありませんので、積極的には買いたくない馬ですね。
もう1頭、岩田騎手に手替りをするキングストレイルにも注目したいですね。スプリンターズSでは追い込みにくい不良馬場を猛然と追い込んできましたし、しかも外枠を克服してのものだけに価値があります。スワンSは内に閉じ込められてまともに走っていませんので、巻き返しのチャンスは十分にあります。何といっても、藤沢調教師が遂に岩田騎手に騎乗を依頼したところを見ると、今回のレースはなんとしても勝ちたいという気持ちが伝わってきます。関西のトップジョッキーとなった岩田騎手が、関東のトップトレーナーである藤沢調教師の管理馬をどのようにして勝利に導くのか見ものです。

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Comments
こんばんは。
先週の◎ウオッカのスクラッチに続いて、今週の◎も出走出来ないのが分かって、テンション下がり気味のQuinaです。(繰り上がり順の筆頭だったので、てっきり出れると思ってたら…)
まあ、南関さえあれば(現在重賞4連勝中)、十分に幸せなのですが(爆)。
福永洋一…不世出の名ジョッキーです。レースの際、次に騎乗依頼が来ても対応できるように、常に他馬の脚色をも記憶していたという卓越した記憶力。事故の後でもストップウォッチを必ず15秒で止められた体内時計。それらのエピソードが、この名手の凄さの一端を垣間見せてくれます。
福永家のガレージには、たて型ヘッドライトの旧型メルセデスがひっそりと置かれたままでした。再び主人が使ってくれる事を信じてじっと待っているその姿に、心が震えたことを思い出しました。
さて、超一流のプロフェッショナルに宿す能力のひとつが、前述した記憶力だと思います。
全盛時の青木功の凄さを物語るエピソードに、「トーナメントで打ったショットを全て憶えている」というのがありました。
トーナメントの何日目の何番ホールの第○打を、どんな状況で、どんなライで、どのクラブを使って打ったと、すらすらと答えられるのに、たった2、3打前のショットすら覚えていないQuinaは唖然としたものでした。
こちらの勝手なイメージなのですが、福永洋一と青木功、記憶力の凄さという共通項だけでなく、努力型の天才という点でも(少しだけ)重なりませんか?
息子については、何もふれていませんね。すみません。
さあ、マイルCSの予想を組みなおすか…
Posted by: Quina | November 15, 2007 at 07:08 PM
Quinaさん
こんばんは。
あらら、南関東重賞4連勝中でしたか…
ぜひ中央から移籍されることをおススメします(笑)
今は武豊騎手なのかもしれませんが、福永洋一騎手は元祖「歩く競馬四季報」でしたね。
私は映像と活字でしか知らないのが残念でたまりません。
>福永家のガレージには、たて型ヘッドライトの旧型メルセデスがひっそりと置かれたままでした。
→そうだったのですね。
そういう家族の中で育った祐一騎手にも、私は何か他の騎手にないものを感じるのですよね。
青木選手のエピソードは面白いですね。
将棋のプロ棋士が、過去の棋譜を全て再現できるといった凄さにも通じるものがあります。
最近、馬の名前がなかなか出てこなくなった私なんかあやしいなあ。
マイルCSの予想もお待ちしております!
Posted by: 治郎丸敬之 | November 15, 2007 at 11:08 PM