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集中連載:「Good 馬場!」第10回

(3)のスタミナに不安のある馬とは、つまりバテやすい馬のことだ。馬は自ら走っている時よりも、バテてからジョッキーに追われた時にこそノメやすい。スタミナが切れてしまうと、ほんの少しバランスを崩しただけで、体勢を立て直すことが出来ずにバラバラの走りになってしまうのである。スタミナ不足の馬は、どうしても他馬よりもノメやすいのである。

Hisimiracle by shinji

(4)の気性が後ろ向きの馬とは、自らハミを取って前へと進んでいかない馬である。道悪はどの馬にとっても走りづらく、馬はハミを頼って走り、ジョッキーはハミを強く掛けることによって安定して走らせる。そのハミをなかなか取ろうとしなかったり、しっかりハミを受けることができない馬は、騎手が操縦しづらいだけではなく、自身の走行も安定しないものになる。ジョッキーがコントロールしづらいので、気性が後ろ向きでハミを取らない馬はノメりやすいのである。

さて、(5)の精神的に弱い馬がなぜ道悪を苦手とするかというと、道悪では良馬場で走るよりもさらに精神的な負担があるからである。重馬場、不良馬場では下が滑って走りにくい上に、前を走る馬が蹴り上げる泥が直撃する。そういったコンディションの中でもひるまず、ムキにならず、最後まで走り抜くことのできる馬でないと重馬場で自分の能力を発揮することは難しい。泥を少し被っただけで走る気をなくしてしまう馬もいるのである。

先にも述べたように、馬の精神的な面は体調によっても大きく左右されるため、一概に精神的に弱い馬だからといって必ず道悪は走らないとは限らないが、とりたてて(1)のベタ爪でもなく、(2)の大跳びでもない馬が重馬場で凡走を繰り返すといった場合には、その馬に精神的な問題があることを疑ってみなければならない。

(6)の切れ味勝負の馬は牝馬に多いのだが、直線での一瞬の速い脚が持ち味の馬は、道悪になることによって切れ味が半減してしまうことになる。「道悪を苦手」というニュアンスとは少し違うが、良馬場でこそ100%発揮される鋭い末脚が、走りにくい馬場状態のために威力を失ってしまうということである。

■重馬場によって有利になる馬
ところで、最初に「道悪を得意とする馬はいない」という前提があったが、道悪になることによって有利になる馬は確かに存在する。それは当然、道悪を苦手とする馬の反対の条件を持った馬ということになる。つまり、「立ち爪で、ピッチ走法で、スタミナ豊富で、気性が前向きで、精神的にタフで、切れ味で勝負しない馬」ということである。しかし、それ以外でも、以下の3つの場合によっては道悪が有利になる馬がいる。

①時計勝負に対応できない馬
②ノド鳴りのする馬
③馬込みを苦手とする馬、揉まれ弱い馬
④首の高い走法の馬
である。

時計勝負に対応できない馬
①時計勝負に対応できない馬とは、そのクラスで勝つための絶対的なスピードがない馬ということである。良馬場だと、いくらスローペースであったとしても、ある程度の時計で走ることができなくてはレースで勝つことはできない。例えばオープンクラスの1600m戦では、少なくとも1分34秒前後の時計で走ることは出来なくては勝負にならないだろう。しかし、雨が降って道悪になれば、勝つために必要とされる時計は遅くなり、1分35秒台でしか走破できない馬にとっても勝つチャンスが生まれるのだ。このことからも、「道悪は荒れる」という考え方は基本的には正しいことになる。

しかし逆に、道悪になることによってスムーズなレースになることもある。なぜかというと、道悪では「馬群がバラける」傾向があるからだ。どの馬も泥を被りたくないため、他馬から前後左右に通常よりも間隔を開けて走ろうとすることが理由である。これは雨の日に自動車を運転する際に、普段よりも車間距離を多くとることと同じである。このように、道悪になると各馬がバラけて走るため、両脇の馬に挟まれたり、馬群から出られなかったりなどといった不利のないスムーズなレースになることもあるのだ。

平成5年のマイルCSは重馬場で行われ、ニシノフラワーと人気を二分したシンコウラブリィが逃げるイイデザオウを直線で交わし、堂々と勝利を収めた。レース前には雨が降り重馬場となったため波乱も予想されたが、逆に道悪で馬群がバラけたことにより、シンコウラブリィにとっては何の不利もないスムーズなレースになったのである。道悪を苦手としない馬にとっては、よほどの不良馬場にならない限り、道悪で馬群がバラけることによって、かえってスムーズなレースができることもあるのである。

②ノド鳴りがする馬とは呼吸器系に問題がある馬である。ノド鳴りの馬は雨の日に強いとよく言われるが、それは雨が降ると空気中の湿度が高くなるため、呼吸が比較的楽になるからである。しかし、元々能力がない馬が、呼吸が楽になった途端に走るかどうかは疑問であり、最近はノド鳴りの馬が雨が降ったため好走したという話をあまり聞いたことがない。ほんの些細な影響だけであって、あまりレースにおける結果には直接反映されないのではないかと考える。

③馬込みを苦手とする馬、揉まれ弱い馬にとっても、道悪が有利に働くことがある。それは前述の通り、道悪では「馬群がバラける」傾向があるからだ。道悪になって馬群がバラけることは、他馬があまりに近くにいると嫌がってレースに集中できないような馬にとっては好ましい条件となる。ただし、馬込みを嫌う馬は気性的に難しいところがある馬が多く、道悪でのレースではどうしても泥を被ってしまうことがあるため、そちらの方を気にしてレースを止めてしまうといったケースも少なくない。泥を被ることは平気だが、馬込みを嫌う(他馬を嫌がる)、もしくは揉まれ弱い馬にとって道悪は有利に働くことになるだろう

④首の高い走法の馬とは、体全体を使って走らない馬のことである。サラブレッドは首から尻尾までが一直線になって走るのが理想的なフォームであり、首の高い走法の馬はお世辞にも美しいとは言えない。また、手先脚先にかなり力を入れて走ることになるので、体全体を使って走る効率の良いフォームでもない。しかし、道悪になった場合に限っては、手脚に力を入れて走るがゆえに、ノメることが少なく安定して走ることができるのだ。

(最終回へ続く→)

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Comments

キングヘイロー産駆を追いかけ続けていますが、
産駆は全体として重馬場を得意とする傾向があります。
「ノーザンダンサー系は重馬場が得意だからか」と漠然と思っていましたが、
今回の記事で今まで気づかなかったことが説明されていて、
興味深く拝見させていただきました。

①時計勝負に対応できない馬
→産駆の傾向として時計がかかった方が好走しています。
 高速馬場の瞬発力勝負は苦手ですね。

③馬込みを苦手とする馬、揉まれ弱い馬
→父親の現役時同様もまれ弱い馬が多いです。
 だから人気になってマークされるとあっさり負けることが・・・(涙)

④首の高い走法の馬
→カワカミプリンセス、ホッコーソレソレーをはじめ産駆の多くがそうですね!
父親譲りの首が高くて不細工な(失礼)走りをします。

今回の記事で一つ一つの要素をわかりやすく説明されているので、
何故キングヘイロー産駆が重馬場を得意とするのか理解できました。

次回の連載も期待しています!

Posted by: sousuke | November 02, 2007 at 12:52 PM

sousukeさん

こんばんは。

そうです、キングヘイローは典型的な道悪を苦手としない馬でしたね。

もちろん、産駒にもその特徴は伝わっているようです。

ノーザンダンサー系の馬は腐るほどいますし、その中でも道悪が苦手な馬もたくさんいます。

ですので、やはり個々の特性を見てそのあたりは判断するべきだと思います。

もちろん、キングヘイロー産駒の中でも道悪を苦手とする馬もいるはずです。

こう整理してみると、良馬場でプラスに働く要素が道悪ではマイナスに転じるということが良く分かりますね。

Posted by: 治郎丸敬之 | November 02, 2007 at 09:00 PM

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