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こんな名勝負を観てみたい。

Jiromaru

お手紙ありがとうございます。前回の馬インフルエンザ騒動があった年に、有馬記念を制したのが牝馬のトウメイでしたね。トウメイは牝馬として、ガーネット、スターロッチに次ぐ史上3頭目の有馬記念の勝ち馬になったのですが、それ以降、ずいぶん長いこと牝馬から勝ち馬が出ていませんね。やはり、常識的に考えて、古馬の牡馬に混じって、2500mもの距離を走って先頭に立ち続けることは並大抵のことではないのでしょう。また、暮れの中山だけに、通常より力の要る馬場になっていることも関係していると思います。

トウメイという名前は、本当は銘刀(メイトウ)と付けたかったところが使用できず、仕方なくひっくり返して付けられた名前だそうですね。名前のひっくり返しとしては、これは母と子の名前ですが、クモワカとワカクモが思い浮かびます。どっちがどっちだか分からなくなってしまうのですが、テンポイントの母がワカクモで、祖母がクモワカです。クモワカは馬伝染性貧血という、伝貧(でんぴん)とも呼ばれるウイルス性の伝染病であると診断されて、一時は殺処分命令を受けた馬です。

今年の馬インフルエンザどころの騒ぎではなくて、馬伝染性貧血は発熱を繰り返して死に至る病です。当時、治療法はおろか正確な診断法すらなく、伝貧(でんぴん)と診断されてしまったクモワカは処分しなければならなかったのですが、診断に疑いを持っていた関係者は秘かにクモワカをかくまい、子供を産ませました。結局、裁判にもなって感染していないことが認められ、クモワカの仔ワカクモは晴れて競走馬としてデビューし、桜花賞馬になりました。

寺山修司は「ワカクモは幽霊の仔であった。なぜなら死んだ馬から生まれたからである」と書きましたが、まさにそのとおりで、クモワカは当時の規定に従っていれば死んでいた馬でした。その幽霊の仔からテンポイントという名馬が出たのですから、競馬というのは本当に奥が深いというかドラマチックですね。貴公子と呼ばれたテンポイントは幽霊の孫ということになります。

ちょっと強引にトウメイからテンポイントにつなげてしまいましたが、有馬記念といえば、いつもフト思い出すのがテンポイントとトウショウボーイの有馬記念です。もちろん、私はこの名勝負を生で観てはいませんが、それは鳥肌が立つほどの素晴らしいレースだったそうですね。

私がこの名勝負のことを知ったのは、ナリタブライアンとマヤノトップガンがお互いに一歩も引かないマッチレースをした阪神大賞典の時でした。私の周りにいた人たちは皆、立ち上がって感動していて、私が知っている中でもベスト3に入る名勝負でした。そんな名勝負に対して、マヤノトップガンに乗った田原成貴元騎手は、「あれは名勝負なんかじゃない。マヤノトップガンが打てるもんなら打ってみろと真っ直ぐに投げたストレートを、ナリタブライアンが見事に打ち返しただけのレースだ。もしあの阪神大賞典が名勝負だとしたら、テンポイントとトウショウボーイがスタートからゴールまで馬体を併せた、あのマッチレースの有馬記念はどうなるんだ?あれこそが名勝負だ。」とコメントしたのですね。私はそれを聞いて、田原騎手がそれだけ言うテンポイントとトウショウボーイの有馬記念って、どんなレースなんだろうと観てみたのがきっかけです。

レースを観ただけでも、これぞ名勝負というのが伝わってくるのですが、さらにこの2頭のそれまでの生い立ちや戦績を知ると、このガチンコ勝負がどれだけ大きな意味を持っていたか分かるのです。トウショウボーイにとってはこれが引退レースでしたし、テンポイントにとってもこのレースが実質最後のレースになってしまったのですから。それまでトウショウボーイに苦杯を喫し続けてきた貴公子テンポイントが、最後の最後に先着した瞬間でもありますし、また天馬トウショウボーイが生涯初めて、負けたくないという自らの意志を見せて、差し返した瞬間でもあります。こんな名勝負を今年の有馬記念でも観てみたいものです。

さて、いよいよ有馬記念です。粒ぞろいの面白いメンバーが揃いましたが、必ずしも強い馬が勝つとはいえないレースです。それはシーズンの最後であるため、強くてもピークを過ぎている馬がいるということ、そしてもうひとつはスタートしてからゴールまで、なんと6つのコーナーを回らなければならず、展開のアップダウンが激しいということが理由です。

3歳馬であれば、この秋の最大目標は菊花賞や秋華賞であったはずです。古馬であれば、それはジャパンカップやエリザベス女王杯であったりしたはずです。有馬記念が目標でローテーションを組む馬は皆無ですので、最大の目標で最高に仕上げて、そこからおつりが残っていればこれ幸いという感じで仕上げてきます。そして、大抵の場合、おつりが残っていないことが多く、あれだけ強い勝ち方をした馬たちが凡走してきたのはそこに理由があります。

ですので、いささか逆説的ではありますが、最大目標のレースであった前走で好走してしまった馬は、有馬記念ではおつりが残っておらず惨敗して、前走で思わぬ凡走をしてしまった馬の方が平行線以上の上積みが望めるはずです。有馬記念を2連覇したシンボリクリスエスは、ジャパンカップで凡走したからこその走りだったとも考えることが出来るでしょう。

有馬記念が荒れやすいもうひとつの理由として、スタンド前を通ってコーナーを6つ回りながら1周するというトリッキーなコースであることが挙げられます。レースの流れというのは、コーナーを回るところで落ち着きますので、そのコーナーが多いということは、ペースのアップダウンが激しいということになります。ペースが上がったと思ったら落ち着いて、落ち着いたと思ったら急激に上がってという乱ペースになりかねません。

秋華賞→エリザベス女王杯を連勝して、堂々の1番人気に推されて臨んできた牝馬のファインモーションが、タップダンスシチーにハナを奪い返され、惨敗したことは記憶に新しいですよね。あのレース以来、ファインモーションは自分のリズムで走ることが出来なくなってしまいました。

そんなことをアタマに入れながら有力馬を見ていきましょう。

1番人気に推されるのは、当然、メイショウサムソンでしょう。ジャパンカップは負けてしまいましたが、内外を通った分が、ゴール前の差として出てしまったアンラッキーなレースでした。この馬としては、最後まで良く走っていると思います。馬インフルエンザの影響で凱旋門賞に出走することが出来なくなってしまいましたが、秋3戦に目標を切り替えて調整されてきました。逆にジャパンカップで負けているのも好ましいですね。もし勝ってしまっていたら、反動が出たり、おつりのない状態で出走していたかもしれません。

前走のジャパンカップ時に思ったのは、高橋調教師はジャパンカップを獲りに来たというよりも、秋3戦を同じ体調で走られるように作ってきているなということです。私にとっては、その分、ジャパンカップの体調は100%のものではなかったように映りました。ほんの少し余裕残しという感じでしょうか。引退レースとして100%に仕上げたアドマイヤムーンとの差が、ゴール前での着順になって表れたということでもあります。今回は本年最後のレースでもありますので、ビッシリと仕上げてくるはずです。今度こそ、高橋調教師も馬を信じて自信を持って送り出してくるのではないでしょうか。

ポップロックは道中ゆったりと行って、ラストの末脚で勝負する馬ですが、ほんの僅かエンジンの掛かりが遅いことが勝ち味の遅さにつながっています。その分、府中のような直線の長いコースを得意とするはずで、中山競馬場は昨年で2着しているとはいえどうでしょうか。昨年のようにスムーズに回ってくることが出来なければ、直線伸びたものの届かないということにもなりかねません。ペリエ騎手の手綱さばきと、枠順にかかっていると思います。

ウオッカはダービーの疲れが抜けきれていないのか、秋2走は精彩を欠いた走りをしています。四位騎手がこの馬を前に付けられないのは、ウオッカ自身がどこか苦しいところがあって折り合いを欠いてしまうからでしょう。ジャパンカップは満足な体調ではなかったので、そんな中、よくぞあそこまで走っていると思います。この馬が本来の体調を取り戻したら、このメンバーでも正攻法で勝負して勝てるだけの能力を持っています。それが来年になるのか、それとも今回の有馬記念になるのか、見極めなければなりませんね。

ダイワスカーレットは鞍上に安藤勝己騎手を得て、まさに百人力ですね。おそらく、この馬が逃げてまた主導権を握ることになるのでしょう。しかし、私としてはファインモーションと被るのですが、もし道中で絡まれるようなことがあれば惨敗も覚悟しなければならないかもしれません。そうでなく、誰も競りかけてこなければ、この馬は止まらない馬ですので、あわやという見せ場を作ってくれるのではないかと期待しています。

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Comments

毎度です。
私の中では、ブライアンVSトップガンはGⅠでは無かった事もあって名勝負ランク的には下位です。
セキテイリュウオウVSヤマニンゼファーが競馬を始めた頃だったので、かなり印象的です。
エイシンワシントンVSフラワーパークも名勝負でしたねぇ。
今年の有馬記念も馬券当たり外れは別にして、名勝負が見れそうな予感です。

ウオッカ、大外ですね。過去のデータからは外枠不利という事が言われていますが、さてはて?
残念な事に週末雨が降るという予報もありますので、じっくり考えていかなければなりませんね。

個人的にはサムソンは中距離タイプで少々不安。ウオッカは大外+気性+騎手が不安。スカーレットは初遠征+1周目で折り合いがつくか+秋4戦目が不安。ポップロックも秋4戦目というのは不安ですね。メジャーも昨年の臨戦態勢に比べるとやや不安。ロックドゥも南半球産で信頼度では・・・?
どの馬も不安だらけですね・・。

Posted by: はやひで | December 20, 2007 at 06:12 PM

はやひでさん

毎度こんばんは。

確かにあの阪神大賞典はG1じゃなかったところが、唯一の欠点というか、田原成貴騎手に言い訳を作らせてしまったというか、勿体無かったところです。

まあ、私はそんなこと抜きにして、ナリタブライアンの単を持っていたので盛り上がりましたが(笑)

おっしゃる通り、今年の有馬記念は、どの馬にも不安な要素があて、意外と一長一短なレースですよね。

逆に言えば、どこからでも狙えるレースということでしょうか。

週末の雨だけは勘弁してほしなぁ。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 20, 2007 at 10:23 PM

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