メイショウサムソンはなぜ敗れたのか?

マツリダゴッホが楽々とゴールを駆け抜ける中、メイショウサムソンの敗因が走馬灯のように私の頭の中をよぎった。メイショウサムソンは本調子にはなかったか…。凱旋門賞に備え、夏場を厩舎で過ごしたことによるツケが遂に回ってきたか…。前走のジャパンカップで3着と走っていない分、なんとか有馬記念までは余力が残っているのではと楽観視していたが、やはり天皇賞秋がピークの出来であったのだ。
メイショウサムソンの敗因を本調子になかったことに求めた論調は他にもあったが、なぜ本調子になかったのか?という理由のきちんとした説明は意外にも見当たらなかったので、私がここにもう一度書いておきたい。有馬記念でのメイショウサムソンの敗因は、凱旋門賞に備え、夏場を放牧に出さずに厩舎で調整されてきたツケが回ってきたということである。
自厩舎で夏休みを過ごすことにはメリットもあるが、デメリットもある。メリットとしては、放牧に出すよりも自厩舎で過ごした方が調整しやすく、また安全・安心ということでもある。難しい馬の場合、放牧に出してしまうことによって、走る気持ちが切れてしまって戻ってくることもある。今回のメイショウサムソンの場合は凱旋門賞への出走を控えての調整だけに、上のいずれのケースにも当てはまらないが、いずれにせよ、放牧に出されることなく夏休みを自厩舎で過ごしたことは事実である。
デメリットとしては、自厩舎で夏を過ごすと馬はどうしても精神的にリフレッシュされないということである。肉体的には緩められるので楽になるが、ずっと同じ環境にいることによって、馬の気が休まるところがないのである。もちろん馬によって差はあるが、涼しい気候の中、のんびりと走り回れる牧場と違い、自厩舎で夏を越すことは馬にとってはあまり喜ばしいことではない。知らず知らずの間に、身近な人間にも分からないところで、精神的なストレスが蓄積されていくのだ。
精神的にリフレッシュ出来なかったツケは、将来的にいつか回ってくる。途端に調教やレースで走らなくなることもあるし、また精神は肉体と直結しているため、精神的なストレスの蓄積が馬体の細化や怪我にまでつながってしまうこともある。実は、ウオッカもメイショウサムソンと同じく自厩舎で夏休みを過ごした1頭だが、結局、ダービー激走の疲れが抜けなかったばかりか、エリザベス女王杯では脚元に不安が出てしまった。それほどまでに、休ませる時に完全に休ませないことの影響は大きいのだ。
それを承知で、手元に置いておきたいという調教師の気持ちも良く分かる。自分の馬だけは何とか持ちこたえて欲しいという心理は何とも避けがたい。私も自厩舎で夏を過ごすことのデメリットを承知の上で、何とか持ちこたえてくれるはずと思いつつ、メイショウサムソンに印を打ったのだ。もちろん、ジャパンカップでの拙騎乗からの巻き返しという期待もあったし、ジャパンカップで凡走している分、余力が残っているのではないかという欲目もあった。
メイショウサムソンやウオッカのような一流馬は、追い切りでもパドックでも返し馬でも明らかな不調は見せないものだ。それは普段管理している厩務員や調教師にとっても同じで、目に見えない疲れは目に見えない以上、実際に走ってみなければ分からないのだろう。しかし、全てを結果論で終わらせてしまうのは少々勿体ない。自厩舎で夏休みを過ごすことのデメリットを、もう一度問うてみるべきであろう。メイショウサムソンとウオッカに今必要なのは、小手先の休養ではなく、牧場でのんびりとリフレッシュさせてあげることなのではないだろうか。それよりも、私が放牧に出て頭をリフレッシュさせるほうが先か。
関連エントリ
・ガラスの競馬場:「自厩舎で夏を過ごすこと」
・ガラスの競馬場:「変わってゆくことだ」

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Comments
あくまで個人的なイメージですがメイショウサムソンは
ディープインパクトなどに比べて肉体的に頑健でタフな感じが
あったりするのですが(^^;実際には非常に繊細な馬
なのかもしれませんね。
昨年の大阪杯のときには休養明けにもかかわらず
明らかに馬体が細くなっていましたし、
天皇賞春のあとはかなり疲れが出てしまったそうで
宝塚記念までに体を戻すのに苦労したとのこと。
2、3歳時に緊密なローテで走りながら2冠を取った馬ですから
ひ弱ではないはずなんですが・・・
3歳秋に無理をさせた影響が根深く残っているのかもしれませんね。
やはりおっしゃるとおり精神的な問題は大きそうです。
現状では1シーズンに2走程度しかもたない馬に
なってしまっているのかも、という仮定をどこかに
持っておこうかな、と考えています(>_<)
Posted by: けん♂ | January 31, 2008 at 02:34 AM
毎度おおきに。
メイショサムソンは3歳の時にもダービー後も放牧出さずに秋に不調を迎えました。
また、天皇賞春出走後も疲れが出た・・。JC後も疲れが出た・・と調教師がコメントしていた通り、若い頃に使い詰めしたツケが回ってきているのかも知れません。
さて、凱旋門賞プランが出ていますが。
ひょっとしたら欧州のノビノビした調教やらは合うかも知れませんね。
Posted by: はやひで | January 31, 2008 at 08:22 AM
けん♂さん
こんにちは。
私もサムソンは肉体的にはタフだと思うのですが、精神面で繊細なところがあるのでしょう。
特に今回は夏に放牧を挟まずに来ていましたので、一昨年の秋と同じようなパターンになってしまいましたね。
それでも4歳の充実と、JCで負けた分の余力を考えると有馬記念まではなんとか持つと考えていたのですが、あの手応えを見る限り、明らかに調子落ちでしたね。
馬の体調を調整するのは難しいのでしょうね。
だから馬券も難しいのですが…(笑)
Posted by: 治郎丸敬之 | January 31, 2008 at 11:10 AM
はやひでさん
まいど。
サムソンはレースでも力を使いきる馬だけに、夏に放牧に出せなかったことを含め、調整が難しかったのでしょうね。
おっしゃる通り、海外でのんびりと調教をすれば、肉体的にも精神的にもリフレッシュした効果があるのではないでしょうか。
かつてのディープインパクトがそうであったように。
Posted by: 治郎丸敬之 | January 31, 2008 at 11:12 AM
お疲れ様です。
いつも楽しく拝見させていただいています。
今回は馬の調整(休ませる)についてのお話ですが、そこで教えていただきたいのですが
サムソンに限らず、よく2ヶ月ほどレースに出走せず間を空ける馬がいますが(短期放牧を含めて)こういった疲れの取り方を行う馬と、3ヶ月以上(普通は半年程だと思いますが)長期間放牧に出すのとでは、後者の方が馬にとって疲労回復、リフレッシュの度合いが大きいという理解で良いでしょうか。
同じ休養明け3・4戦目であれば後者の方が体調的に勝っているということで良いのでしょうか。もちろん個体差があるのでそれが勝ち負けに直結しないということは十分理解していますが、よりどちらが本来の自身の力を発揮できる状態にあるかを判断するひとつの判断材料にはなるかなと思いまして質問させていただきました。
あとひとつ、調整放牧と新聞等に記載されている放牧は牧場ではなくトレーニングセンター等の調教施設に長期滞在させているといたという意味なのでしょうか?
知識がいないので長々と質問してしまい申し訳ありません。ひとつ教えていただければ嬉しいです。
Posted by: ミラクルヤン | February 01, 2008 at 10:30 PM
ミラクルヤンさん
こんばんは。
質問していただきまして嬉しいです。
そうですね、放牧の期間は長ければ長いほど馬にとっての疲労回復、リフレッシュの度合いは大きいでしょう。
ただ、放牧の期間が長ければそれだけ筋肉も落ちますし、馬によっては気持ちが抜けて帰ってくる馬もいて、再び以前の走りを取り戻すのに時間が掛かってしまうこともあります。
競走馬はレースに出てナンボですので、怪我などでなければ、なるべく早く厩舎に戻したいと考えるのは馬主も調教師も同じです。
また、休養に入る前の体調も大きく関係してくるので、ミラクルヤンさんのおっしゃる通り、個体個体で見ていかなければならないというのが正直なところです。
こちらにそのことは書いていますので、よろしければ参考にしてみてください。
→ http://www.glassracetrack.com/blog/2005/06/post_0944.html
それから、調整放牧という書き方を見る限り、おそらくそれはトレーニングセンターのことでしょうね。
山元トレセンであったり、グリーンウッドであったり、いま流行りのやり方ですよね。
もちろん、トレセンに放牧しても、厩舎にずっといるよりはリフレッシュになるでしょう。
私が今回書いたのは、精神的なリフレッシュのことで、厩舎に置いておいても肉体的な疲労回復はあっても、目に見えないところの精神的な疲労が回復しないということです。
もちろん、トレセンに放牧するのも、期間は長いほうがリフレッシュできるはずです。
うまく答えられたかどうか分かりませんが、他にも何かあれば遠慮なくご質問くださいね!
Posted by: 治郎丸敬之 | February 02, 2008 at 12:08 AM
早速の回答ありがとうございます。
とても参考になりました。まだまだ素人なので色々教えてください。
宜しくお願いします。
Posted by: ミラクルヤン | February 02, 2008 at 11:33 PM
ミラクルヤンさん
そう言っていただけると嬉しいです。
私も知っていることしかお答えできませんが、ぜひ遠慮なく質問してくださいね。
どうぞよろしくお願いいたします。
Posted by: 治郎丸敬之 | February 03, 2008 at 01:06 AM