「キャッチボール」

イチローの言葉には自分の頭で考えてきた重みがあり、だからこそ私にとっても考えるきっかけになったり、ヒントになったりもする。他にもイチローの言葉を集めた本はたくさんあるが、中でも糸井重里が引き出した生のイチローを感じられるこの本が一番面白いと私は思う。
イチローは他の誰よりも道具にこだわり、大切にすることで知られている。「手入れをしたグラブで練習をしたことは、体にかならず残る。記憶が体に残ってゆく。汚いグラブでプレイしていたら、その練習は記憶に残らない」という言葉の意味は、科学的には何の根拠もないのかもしれないが、野球少年、そして野球青年であった私にはよく分かる。グラブは体の一部であり、グラブを手入れすることは自らの体を手入れすることである。グラブを手入れしない人間が自分の体を手入れすることなど出来ない。また、練習後にグラブを手入れしている時こそ、今日のプレーを顧みて、記憶に残していく貴重な時間なのだ。
イチローには、バットに対するこんなこだわりもある。
糸井「そういえば、イチローさんは、バットもすごく細いままですよね。スイートスポットがものすごく小さくて。ホームランなんか、大当たりみたいなことでしか、打たないようなバットなんですって?」 イチロー「スイートスポットは小さいです。扱いはむずかしいですし、細いバットなんですけど…、人が勘違いしているのは、『太いバットだと、たくさん当たる』と思っていることなんですね。」 糸井「そりゃ、そんなことはないわ。羽子板じゃないんだからねぇ。」 イチロー「たくさん当たるってことは、ミスショットも多くなるんですよ。そりゃ、バントするならでっかいバットでもいいかもしれないけど、ふつうに打つときに、太いものでは、当たってはいけないところにも当たる可能性がある。ぼくはそれがイヤなんですね。確実に当てたいから、細いバット、なんです。確実にとらえようと思ったら、でっかいバットじゃダメですよ。」 糸井「ミスショットだったら、空振りしたほうがマシなんだ。」 イチロー「そういうことです。」
確実にとらえたいから細いバットという思想は、野球でもゴルフでもスイートスポットを少しでも大きくしようという時代の流れから逆行していて、非常に興味深い。ここでイチローの言う、確実にとらえるとは、バットの真芯に当てて強く打つということだろう。強く打つためには、スイートスポットを大きくするのではなく、小さくするということである。スイートスポットが大きければ、もちろん当たる可能性は高くなるが、強く打つことは出来ない。
競馬の賭けにも同じことが言えるだろう。最近はフォーメーションやボックスなど、スイートスポットを大きくするような賭けを助長するシステムが整ってきていて、ファールチップを打つJRAのお客さんのような打者が見事に育ちつつある。たとえ当たったとしても、それは強く打ったことにはならないということだ。ミスショットをするならば、空振りをしたほうがマシなのである。
スイートスポットの小さい細いバットで強く打つこと。
自分自身を省みて、戒めの意を込めて、上の言葉を取り上げてみた。この他にも、胸の奥に響く珠玉の言葉たちがこの本には溢れている。ちなみに私は、「ヒット1本って飛びあがるぐらいに嬉しいんですよ」というイチローの言葉に心を打たれた。イチローファンならずとも、一度は手にとってもらいたい一書である。

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Comments
んども。ミノルくんはすくすく育ってますか?
イチローは自分以外の野球道具は全く触らないそうですね。
感覚に狂いが生じるからだとか。
と、これは年末のNHKプロフェショナルでの1場面ですが。
単勝が獲れなきゃ馬単は獲れません。ましてや3単も。
だからいつも◎にこだわっていたいし、
買い目に強弱のない馬券では、
何のために印を打っているのかを自分に問うてないことになるでしょう。
当たり前ですが、競馬は直接自分の手を介すことはできません。
成績、数字、馬場状態、過去のレースと、
そこから導き出せることを信じるだけですので、
予想そのものには必ず限界がありますが、
馬券の選択はセンスだし、押すことも引くこともできます。
外すときは潔く外し、
当てるときは展開から馬券の選択までこれでもかというぐらい
もらっときたいもんですね。
更に理想を求めれば、外すときは思ったとおりのように外し
馬券は買ってないってとこですな。(* ̄∇ ̄)ノ
私は深いとこまで考えないから、
細くて長いバットぶんぶん状態ですけども何か?w
ではでは。
Posted by: あらた | January 09, 2008 at 09:10 PM
あらたさん
こんばんは。
長いこと放置プレイで失礼いたしました。
今、田舎の岡山から帰省してきましたよ。
1週間以上、ネットのない環境で、よく寝て、よく遊びました(笑)
やっぱり、インターネットは肩が凝りますね…
さて、私もプロフェッショナル観ましたよ。
他の人の道具を触らないを競馬で言うと、他の人の赤ペンを触らないということでしょうか(ツキが落ちる爆)。
冗談はさておき、
>外すときは潔く外し、当てるときは展開から馬券の選択までこれでもかというぐらいもらっときたいもんですね。
→これって本当に大切なことですよね。
馬券が当たらないことよりも、チビッタ時に当たった方がショックを受けるようになりました。
たとえ負け続けても、たった一回の大当たりを引ける人間こそが本当の勝者なのかなと最近思います。
私に足りない勝負強さを問われているようで、最近頭抱えています。
それでもミノルはスクスクと育っていますよ。
アムちゃんもそうですよね。
お互いに父親として、しっかりと打ってる背中を見せていきましょうね!
Posted by: 治郎丸敬之 | January 14, 2008 at 10:54 PM