チークピーシズ
先週の日経新春杯で1、2着したアドマイヤモナークとダークメッセージが、共に「チークピーシズ」という馬具を着けていたのをご存知だろうか?2002年のジャパンカップでイギリスのストーミングホームが着けていたことが話題になり、日本でも少しずつ普及し始めたのだが、最近ではオープン馬でも装着してくることが珍しくなくなってきている。
チークピーシズは頬(チーク)の部分に装着する馬具で、素材はシャドーロールと同じものである。後方への視界を遮るため、周りを気にしたり、怖がったりして集中できない馬をレースに集中させる、浅いブリンカーとほぼ同じ効果が見込まれる。また、ブリンカーと違い、チークピーシズは事前に装着の届出をしなくてもよいため、その時の馬の状況に応じてチークピーシズを使うかどうかの判断が出来る。
たとえば、これはブリンカーの話ではあるが(考え方は同じ)、1997年の安田記念を制したタイキブリザードは、前哨戦の京王杯スプリングCでブリンカーを装着して圧勝していた。本番である安田記念に臨む際、タイキブリザードを管理する藤沢和雄調教師は、再度ブリンカーを着けるかどうかの判断を最後の最後まで迷ったという。1400mの京王杯スプリングCならば、ブリンカーを着けてちょうど良かったのだが、1600mに距離が延びる安田記念で着けると、馬がレースに集中しすぎて、行きっぷりが良く、かえって折り合いを欠いて引っ掛かってしまうのではないかという心配があったのである。
藤沢和雄調教師は、ギリギリまで悩んだ末、安田記念ではタイキブリザードにブリンカーを装着しないことに決めた。結果的にはその判断は正しかったのだろう。タイキブリザードはレースの流れに乗りながら中団を進み、ゴール前では見事にジェニュインを差し切った。もしブリンカーを着けていたら、行きっぷりが良すぎて、道中で折り合いを欠き、最後の最後で伸びを失って負けていたかもしれない。そう考えると、ブリンカーを装着するかどうかは勝敗を左右する重要な判断であったとも言える。
チークピーシズの場合、枠順や馬場状態に応じて装着の判断ができ、極端に言うと、当日のパドックでの馬の様子を見てから、着けたり外したりすることも現状では可能なのである。たとえば、当日、馬に気合が乗りすぎていて、チークピーシズを着けたままだと行き過ぎてしまうと判断すれば外すことも出来るし、また初コースなどの理由で周りに気を遣ってしまっていると思えば着けることも出来る。このように状況に応じて装着の判断が出来るということは、陣営にとっては大きな安心材料となる。そのため、ブリンカーではなくチークピーシズを使う陣営が増えてきているのだ。
それからもうひとつ、これもブリンカーと同じ考え方だが、初めて装着する時の効果が最も大きいということも覚えておきたい(良い意味でも悪い意味でも)。初めてブリンカーやチークピーシズを使う馬が、刺激を受けたことによりまさかの激走(または凡走)をすることがある。しかし、その効果は、馬が馬具に慣れてしまうことにより、次第に薄くなっていく。
アドマイヤモナークもダークメッセージも、今回初めてチークピーシズを装着した馬ではないので、チークピーシズが直接の好走理由ではないだろう。しかし、チークピーシズに一定の効果があることが明らかな以上、当日に装着しているかどうかは、馬券を買う私たちも、少しだけ気に掛けておくべき事実ではないだろうか。
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