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競馬はいつでも血の滾る

Demuro_2 by fake Place

友人同士の企画で「なんでもベストテン2007」を提出することになったので、少し考えて、私は「名騎乗ベストテン2007」を書くことに決めた。競走馬ではなく、ジョッキーに焦点を当てつつ、これは!と思わされた手綱捌きを10レース、あくまでも私の独断と偏見で選んでみた。そのうちのベスト5を掲載していきたい。

まず、第5位はミルコ・デムーロ騎手の有馬記念である。デムーロ騎手といえば、中日新聞杯での“ヒコーキポーズ”や2003年の皐月賞のゴール後、田中勝春騎手の頭を思いっきり叩いた事件が記憶に新しい。当時、私は皐月賞の件については言及しなかったが、ゴール後に嬉しさの余り、相手の頭をブッ叩いたデムーロ騎手の心理もなんとなく分かる気がしていた。今回の“ヒコーキポーズ”に関しても、危険極まる行為である以上、処分がデムーロ騎手に課せられたのは当然だが、私はいち競馬ファンとして、「デムーロよ、またやってくれたか、ありがとう。」と思っている。

この過激なまでの動物的本能が、デムーロ騎手の魅力なのである。日本の競馬はヌル過ぎるよ、とデムーロ騎手が暗に示してくれているように私には思えてならない。競馬ってもっとエキサイティングで、もっと血の滾る(たぎる)ようなスポーツじゃなかったのかい、とイタリアから来たこの若者は教えてくれているのだ。

そもそも日本のジョッキーは少し大人しすぎるのではないか。フェアプレーが最も大切であることに疑問の余地はないが、それをある程度前提にした上で、もっと暴れても良いのではないだろうかと思う。もちろん、それはターフの上でのことであって、一歩馬から下りたら誰よりも謙虚でなくてはならない。外で暴れてターフでは優等生的な騎乗をするジョッキーがいるが、それでは暴れる場所が逆なのである。ソツのない騎乗ばかりではなく、もっともっと貪欲に勝ちを目指して欲しい。

デムーロ騎手のジョッキーとしての技術は極めて高い。数字だけを見ても、勝率22.5%という数字はあの安藤勝己騎手(23.8%)に次いで第2位である(2007年度データ)。他のジョッキーと比べると分母(騎乗回数)が少ないのは確かだが、それでも100鞍以上乗っての数字であり、それほど大きな誤差はないはずである。武豊騎手の21.9%や後藤騎手の13.5%よりも上だし、ペリエ騎手(14.7%)やルメール騎手(8.2%)など他の外人ジョッキーたちと比べても、圧倒的である。もちろん、数字上だけではなく、実際に巧い。

その中でも、最も特徴的なのは、馬をしっかりとコントロールして走らせられる技術だろう。騎座が安定していることが大きな理由だが、ハミや手綱を通して、騎乗馬との意志の疎通をキッチリと図り、手の内に見事に入れてしまっている。馬は行けと言えば行くし、行くなと言えば行かない。右に行きたいときは右に、左に行きたいときには左に。当たり前のようなことだが、馬をしっかりと真っ直ぐ走らせることは一流ジョッキーでも案外難しいものだ。ほとんどの馬がテン乗りであるにもかかわらず、デムーロ騎手はその難しいことをいとも簡単にやってのける。

だからこそ、馬と馬との間のわずかな隙間にもデムーロ騎手は入って行ける。デムーロ騎手は何でもかんでも入って来て危ないと言われることがあるが、その多くは馬群の隙を突けない未熟な騎手たちの僻み(ひがみ)であろう。そもそも世界の競馬では、少しでも隙があれば突っ込まれてしまうのであり、突っ込まれたのは隙を作った騎手の責任でもある。

そんな馬をしっかりとコントロールして走らせられる技術が見事に発揮されたのが、ダイワメジャーに騎乗した有馬記念ではないだろうか。このレースでの位置取りとコース取りは本当に素晴らしい。わずかに距離不安のあったダイワメジャーを少し下げた位置で息を抜きながら追走させ、しかも馬場のわずかに良い内ラチ沿いギリギリの部分を敢えて走らせている。ダイワメジャーの馬体がラチにこすってしまうのではないかと思わせる見事なコーナーリングである。あれだけパワーの溢れた大型馬のダイワメジャーを、ここまでコントロールしてしまう手綱捌きに、他のジョッキーはグウの音も出ないだろう。

「もう少し早めに攻めれば2着はあった」というデムーロ騎手の言葉からは、ジョッキーとしての矜持が感じられた。安藤勝己騎手が選んだダイワスカーレットとは競り合わない、潰しにいかないというのはオーナーサイドからの要望ではあったが、それでもデムーロ騎手としては、もうひとつ上を狙いたかったのだろう。頭では分かっていても、彼の動物的本能がそれを許したくなかったのだ。年の瀬に不完全燃焼を感じ、彼は日本を後にしたに違いない。彼にとって、競馬はいつでも血の滾るエキサイティングなスポーツなのだ。

■デムーロ騎手の見事な手綱捌きを全周映像でご覧ください(内から4頭目)。
http://www.jra.go.jp/JRADB/asx/2007/06/200705060809a.asx

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Comments

ダイワスカーレットの壁紙ありがとうございました。
会社の先輩に聞いた話しですが、イタリア等ではモータースポーツの方が関心が高いらしく、デムーロもあまり知られていないらしいです。

そういう意味では日本では競馬人気は一時より翳りは見せているとは言え、人気が依然あり、その前で騎乗出来るのに喜びを感じているのかも知れません。

日本人騎手もアグレッシブで魅力的な騎乗をして欲しいです。最近は消極的な騎乗が良く見受けられます。

Posted by: はやひで | January 17, 2008 at 08:27 AM

はやひでさん

どういたしまして。

おっしゃる通り、外国のジョッキーは日本の競馬人気の高さに驚き、魅了されているのでしょうね。

まあ賞金の高さということもありますが(笑)

それでもデムーロクラスの一流ジョッキーが知られていない、そんな世界もあるのですね。

彼はまだ28歳ですから、これからどんどん日本の競馬でも活躍するジョッキーになると私は思っています。

日本のトップもうかうかしていられませんね。

Posted by: 治郎丸敬之 | January 17, 2008 at 09:13 AM

某横綱で散々問題になっていますが、
スポーツにおける品格は永遠のテーマですよね。

松井秀がHR後にガッツポーズをしないのは、
相手投手に失礼だから、という理由のようです。

武騎手も、ほかの騎手に失礼、
勝ったのはあくまで馬、
という理由で基本的にガッツポーズはしませんが、
ディープのときはファンのために小さくガッツポーズしていましたね。

デットーリのパフォーマンスは最初は違和感ありでしたが、
最近は文化の違いと考えています。

遅くなりましたが、壁紙、ありがとうございます。

Posted by: さとし | January 17, 2008 at 06:45 PM

さとしさん

どういたしまして。

ガッツポーズひとつ取っても、色々な意見がありますよね。

あの岡部騎手はゴール後が一番危ないということで、ガッツポーズには否定的だったことを思い出します。

ただ、デットーリ騎手のフライングディスマウントで馬が壊れたという話は聞きませんし、どの程度の危険があるかは分からないところです。

文化の違いとは面白い意見ですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | January 17, 2008 at 09:49 PM

やはりゴール後直ぐにガッツポーズするのは馬に対して負担をかけますよね。小さなガッツポーズ、減速してからのガッツポーズならまだマシかも知れませんね。

的場騎手がガッツポーズには否定的だったと聞きます。
馬の力なんだから・・・という姿勢だったと聞き、
そう言えば、ライスシャワー、エルコンドル、グラスワンダーとどの時もガッツポーズはしてなかったですよね。

ちなみに飛行機ポーズは騎手でも「やれと言って出来るものでも無い」と言う話しもあるそうです。

私的には馬に負担がかからないのであれば、ガッツポーズも否定しませんし、飛行機ポーズも否定しません。
ガッツポーズは馬との喜びの共有であり、他の騎手への心配りは必要無いという観点からですが。。

Posted by: はやひで | January 18, 2008 at 08:21 AM

はやひでさん

そうでした、的場騎手は絶対にガッツポーズはしませんでしたね。

岡部騎手はトウカイテイオーでジャパンカップを勝った時に、うれしくてついガッツポーズしてしまいました。

そんな岡部騎手が私は好きですが。

>ガッツポーズは馬との喜びの共有であり、他の騎手への心配りは必要無いという観点からですが。。
→私もそう思いますね。

嬉しくてつい出てしまうものは止めようがないでしょう。

飛行機ポーズがつい出てしまったものかどうかは分かりませんが(笑)

Posted by: 治郎丸敬之 | January 19, 2008 at 01:15 AM

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