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◎スズカフェニックス

Jiromaru

ドバイワールドカップが行われていますね。一度は行っておくべきと思いながら、一度も行ったことがないのですが、ドバイはぜひとも行ってみたい国です。ライブリマウントが挑戦した当時(1996年)は、まるで違う惑星で競馬が行われているような隔世の感がありました。しかし、ここ最近は日本馬の挑戦も多くなり、ドバイが遠い異国のことではないような気がするから不思議です。個人的にはヴァーミリアンの走りに注目しています。フェブラリーSを勝ったことがかえって不安材料(あの時点で仕上がっていた?)に思えますが、カーリンを筆頭とする化け物たちが集まったドバイワールドカップで、どこまで勝負になるか楽しみでなりません。

さて、日本では高松宮記念が行われます。サンアディユだけではなく、昨年のスプリンターズSの覇者アストンマーチャンのリタイアもあり、少し寂しいメンバー構成になってしまったことは否めません。まあ、そんなことばかり言っていても始まりませんので、スプリント界に新星が誕生することを期待しましょう。

1番人気は昨年の覇者スズカフェニックスでしょうか。昨年は4コーナー手前から動き、他馬を強引にねじ伏せるような形での圧勝でした。これまで何度も書いてきたことですが、スズカフェニックスはマイル戦の重賞を勝っているように、決して生粋のスプリンターではありません。しかし、G1レベルのマイル戦となると底力(スタミナ)不足を露呈してしまうため、G1レースであればスプリント戦の方が向きます。別の言い方をすると、マイルのG1ではわずかに勝ち切れないのですが、こういう馬がスプリントのG1レースに矛先を向けてくると、負かすのは容易ではないということです。素直にこの馬に◎を打ちたいと思います。

ただ、ひとつだけ気になることがあります。それは口向きの悪さです。体調が優れなかったこともあるのでしょうが、特に昨年のマイルCSの直線ではササるような面が目立っていました。前走でローレルゲレイロを負かせそうで負かせなかったのも、口向きの悪さゆえかもしれませんね。武豊騎手は簡単に乗っているように見えますが、案外と操縦の難しい馬だと思います。そういう意味もあって、福永騎手がどうこうということではなく、テン乗りがプラスになる馬ではありません。もしこの馬が勝ったら、その時は福永騎手に惜しみない拍手を送りたいですね。また、サニングデールで勝ったようなレースが出来れば、最内枠は決して悪い枠ではないと思います。

ファイングレインは3歳時にNHKマイルCを2着しているように、この馬も決して生粋のスプリンターではありません。しかし、マイル戦では最後に詰めの甘さが出てしまうため、今年から思い切ってスプリント戦で終いを生かす競馬をしたのが功を奏し、想像以上の爆発力があることが証明されました。しかも、マイル戦を走られるだけのスタミナに支えられた末脚は、まず不発に終わることはありません。淀短距離Sはスプリント戦にしてはスローに流れましたが、それでも先行集団を一気に飲み込んだように、どのような展開でも安定して伸びてくることが出来ます。

もちろん、中京競馬場は直線が短いので、脚を余してしまう恐れもあり、乗っている方も観ている方もヒヤヒヤさせられるかもしれません。ただ、G1レースともなると速い馬が集まっていますので、自然とペースは速くなり、遅くてもミドルペースには流れるはずです。たとえミドルペースになったとしても、最終週で時計も掛かってきていることも味方して、ゴール前ではギリギリ届くはずです。幸騎手も道中は内枠から馬群の中でレースを進め、4コーナーまでに少しずつ外に出しながら位置取りを上げ、最後の直線は大外に持ち出してくるはずです。おそらく、スズカフェニックスよりも外に出す形になるでしょう。そうなれば、勝機は訪れるのではないかと考えています。

スーパーホーネットの最終追い切りは絶好の動きでした。ラスト1ハロンを12秒1とまとめて、最後までしっかりと伸びていました。動きを見る限り、休み明けによる仕上がりの悪さは全く心配ないでしょう。あとは久々のレースで、いきなりスプリントのペースに対応出来るかどうかということでしょう。追走するだけでレースが終わってしまうということも往々にしてありますから。

ローレルゲレイロは、ようやく良い頃の粘り強さが戻ってきました。阪急杯は展開に恵まれた面もありましたが、最後までバテることなく走り抜き、スズカフェニックスの追撃を抑えました。最終追い切りも持ったままで上がってきたように、究極の仕上がりにあります。雨が降って馬場が悪くなれば、この馬で仕方ないのではないでしょうか。ただ、良馬場であれば、末脚が弱い分、よほど良いペースで行けなければ、勝ち切ることは難しいと思います。

キンシャサノキセキは、中間にザ石のアクシデントがあったこともあり、最終追い切りは坂路コースで目一杯に追われる、一か八かの調教を課されてきました。これまでの走りを見る限り、成長力に疑問がありましたが、究極の仕上がりであれば、道中ピタリと折り合って、突き抜ける可能性もあるのではないでしょうか。この馬がG1を獲るとすればスプリント戦しかないと昔から考えていましたし、真ん中から少し外の絶好枠を引きましたので、今回狙い目は十分にあると思います。ただ、どうしても当日にならなければ仕上がりは分かりませんので、現時点で本命を打つことは出来ません。

*このエントリーをアップした時はファイングレインに◎を打っていましたが、前半でモタつく感のあるファイングレインに比べ、スズカフェニックスの方が前のポジションでレースを運べる可能性が高いと思い直し、本命を変更しました。ファイングレインも捨てがたいのですが、ヴィクトリーロードを通られるスズカフェニックスに期待します。

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競馬考察ブログ:高松宮記念
けいけん豊富な毎日:高松宮記念最終予想

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集中連載:「調教のすべて」第9回

それでは、④の芝コースについて説明していきたい。当然のことながら、ウッドチップコースやダートコースに比べ馬場が硬く、馬の脚元に負担が掛かることは避けられない。そのため、何か理由がない限り、芝コースでしっかりとした時計を出す追い切りは行われることは珍しい。その代表的な理由としては、以下のものが考えられる。

1、他のコースの馬場状態が悪い
2、馬体を絞りたい
3、右回りだとモタれて仕方ない

1は降雨で馬場が悪くなったり、冬場に馬場が凍ってしまったりして、他のコースの馬場状態が極端に悪くなってしまったときのことである。たとえば、2007年のセントライト記念に臨むにあたって、ロックドゥカンブの最終追い切りは芝コースで行われた。前日から降り続いた激しい雨の影響で、どのコースの馬場も軒並み芳しくない状態であった。その中でも、堀調教師が実際に歩いてみて「一番良かった」という芝コースを選択したのである。このような特殊な状況においては、芝コースが最も安全な馬場になることもあるのである。

2はレアケースと考えてもらってもいいだろうが、馬体を絞りたい時に芝コースで追い切りを掛けることもある。レースの1週間前になっても、思いのほか馬体が絞れてこない時など、最後の策として芝コースを使うということだ。芝コースは速い時計が出るので、脚元だけでなく、馬の肉体面に対する負荷は最も大きい。そのことを逆に利用して、冬場などに体が絞りきれない馬を一気にシェイプアップさせるということだ。

2006年のフェブラリーSの最終追い切りにおいて、カネヒキリは珍しく芝コースで併せ馬を行った。 その理由として、角居調教師は「芝でのスタートに失敗が多いので…。あとJCダートの時とは仕上げが違います。フェブラリーSは最近、芝馬が好走している。パンと弾くような走りの方がいいと思います」とコメントしているが、おそらくそれだけではなかっただろう。直前に1本芝コースで追い切っただけで、芝コースのスタート部分の走りが速くなるはずがなく、芝を走るための走法にチェンジできるはずがないからだ。

それぐらいのことは、角居調教師が一番良く分かっているはずで、この芝コースでの調教の真の目的は、カネヒキリの絞り切れない馬体をなんとか間に合わせるためだったのではないかと思う。その甲斐もあってか、JCダート以来、3ヶ月の休み明けにもかかわらず、カネヒキリはわずかプラス2kgの馬体重で出走し、見事に勝利を収めた。

Tyoukyou10 by Ichiro Usuda

3はそれほど多くない例だろうが、右回りではどうしてもモタれてしまう馬を、本馬場に入れて左回りで追い切ることがある。鞭で矯正したり、馬を右に置いたりと工夫することも出来るが、右にモタれる癖のある馬を右回りで繰り返し追い切っていると、どうしてもその癖を助長してしまうことになりかねないのだ。そこで左回りのコース(芝であることは関係ないが)で追い切ることによって、悪い癖をなるべく出さないようにするということだ。

たとえば、シンボリクリスエスは苦しくなると右にモタれる馬であった。3歳時の有馬記念では、タップダンスシチーを差し切ったものの、最後の直線で右にササってしまった。次走の宝塚記念でも、休み明けということもあったが、直線で右にモタれてしまい失速した。この癖を出さないように、藤沢調教師はなるべくシンボリクリスエスを左回りの本馬場で追い切ることを心掛けたそうだ。その効果もあってか、ラストランとなった有馬記念では、ペリエ騎手に目一杯に追われても、シンボリクリスエスは真っ直ぐに走り、2着のリンカーンになんと9馬身もの差をつけて圧勝した。

(第10回へ続く→)

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重量感溢れるファイングレイン:5つ☆

エムオーウイナー →馬体を見る
7歳とは思えない、力強く、迫力のある馬体を誇る。
切れ味は感じさせない分、どこまで粘りこめるかが鍵となる。
Pad3star

キンシャサノキセキ →馬体を見る
ここにきての馬体の成長が意外に感じられない。
全体のバランスは悪くないが、若干物足りなさを残す馬体。
Pad3star

スーパーホーネット →馬体を見る
まだ馬体に余裕を感じさせるが、力を出せないほどではない。
2歳時と比べ、全体のバランスも改善され、充実期に入っている。
Pad4star

スズカフェニックス →馬体を見る
馬体も若々しく、リラックスして立っている姿も良い。
柔らか味を感じさせた昨年時よりは劣るが、特にマイナス材料は全くない。
Pad4star

ファイングレイン →馬体を見る
体全体からパワーが溢れていて、重量感を感じさせる好馬体。
胴部にもゆとりがあり、スタミナが十分にあることを示している。

プレミアムボックス →馬体を見る
若干メリハリに欠ける馬体で、パワーは感じさせない。
かといって悪い部分もなく、可も不可もない馬体。
Pad3star

ペールギュント →馬体を見る
スラリと伸びた脚は、短距離馬のそれではないが、
気性的にスプリント戦が合っているのだろう。
Pad3star

マイネルシーガル →馬体を見る
もうひと絞り出来そうな馬体に映り、
2歳時の頃に比べて、迫力やメリハリに欠ける。
Pad2star

マルカフェニックス →馬体を見る
前後肢の実の入りが良く、4連勝したのも頷ける好馬体。
外見からは、連勝が途切れた疲れも感じさせない。
Pad4star

ローレルゲレイロ →馬体を見る
毛艶も非常に良く、良い頃のローレルゲレイロに戻ってきた。
スピードも十分にある体型なので、スプリント戦でも十分に通用するはず。
Pad4star

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ミステリーの匂い

Jiromaru

いよいよ春のG1シリーズが始まりました。春と秋のG1シリーズのどちらが好きかと問われれば、春になれば春のG1シリーズが、秋になれば秋のG1シリーズが好きと答えます。1年の間に、最高の季節を2回も過ごせるのですから、私たち競馬ファンは幸せですね。

と、ワクワクした気分でもあるのですが、今年の高松宮記念を前にして、私の胸の中にモヤモヤした晴れない霧のようなものがあります。本来であれば今回のレースで1番人気になっていたかもしれない1頭の牝馬のことが引っ掛かっているのです。そう、サンアディユの件です。

今年の3月8日、中山競馬場のメインレースとして行われたオーシャンSにて、スタート直前に1番人気のサンアディユがゲート内で暴れ始めました。係員と厩務員らがゲートの下に潜ろうとしたサンアディユをなんとか押し戻し、しばらく気持ちの悪い時間が流れた後、スタートが切られ、サンアディユは大きく出遅れました。終始、最後方を追走したサンアディユは、直線に入っても前との差を詰めることなく最下位でゴールしました。そして、レースの翌日、サンアディユは馬房で倒れているところを発見されました。JRAより発表された直接の死亡原因は心不全とのことでした。

なんだか、ミステリーの匂いがしませんか?

競馬史上、最大のミステリーとされているのは、シャーガー誘拐事件でしょうか。シャーガーはエプソムダービーを歴史上最大の着差(10馬身)で勝ったことよりも、種牡馬入りしてから誘拐され、アイルランドの暗い森の中に埋められたことで、その名を最も知られているはずです。犯人グループであるIRA(アイルランド共和国軍)は身代金を200万ポンド要求しましたが、最大の株主であったアガ・カーンが支払いを拒否たため、やがて接触が途絶えてしまいます。犯行グループの声明によると、シャーガーを誘拐したものの、馬運車に乗るなり暴れ出したため、すぐに射殺してしまったということです。しかし、結局のところ、シャーガーの遺体は発見されていませんので、事の真偽は未だに分からないままです。一説によると、シャーガーは実はアラビア半島で生きていて、その子孫がいつの日にか現れて、競馬ファンを驚かすのではという噂もあります

もうひとつ、これもまた有名な事件ですが、ダイナマイトホースと呼ばれ人気を博したアリダーの死にまつわる話です。アメリカの3冠レースの全てをアファームドの2着と後塵を拝したものの、種牡馬としては、イージーゴア、アリシーバ、クリミナルタイプ、カコイシーズなど数々の活躍馬を出して大成したアリダーですが、突然、悲運に襲われます。1990年の11月13日、カルメット牧場の馬房の中で右後肢を骨折しているところを発見され、緊急手術を受けたものの、再度暴れ出したため、最後は安楽死の処分がとられました。骨折の理由としては、アリダーが扉を強く蹴ったからだ、と発表されましたが、数ヶ月後に、カルメットファームが1億ドル以上の負債を負って倒産すると、実はアリダーは保険金目当てに殺害されたのではないかという疑惑が浮上しました。実際にアリダーの保険金としては3650万ドルが支払われたのですが、そのうち2050万ドルはファーストシチー銀行へ返済されていました。この事件の真相も、結局のところ明らかになっていません。

これらは人間のエゴのためにサラブレッドの命が犠牲になり、迷宮入りしてしまったミステリアスで残酷な事件です。幸いにして、日本の競馬では競馬にまつわる犯罪がほとんど目に付きませんが、まるでディック・フランシスの書くようなミステリーが世界のあちこちで起こっていることを私たちは知っておくべきだと思います。もしかしたら、日本の競馬では、ミステリーが何者かによって闇に葬り去られているだけなのかもしれませんからね。

サンアディユ怪死事件には不可解な点がたくさんあるような気がします。なぜサンアディユはオーシャンSから始動したのでしょうか?なぜ内田博幸騎手に乗り替わったのでしょうか?なぜ圧倒的な1番人気を背負ったサンアディユの体勢が整っていないにもかかわらず、スタートは切られたのでしょうか?そもそも、夏に使い詰めてスプリンターズSで2着した馬を京阪杯に出走させたことも疑問がありますし、川田騎手とも手が合っていたように見えました。また、スタートは、基本的に1番人気の馬の体勢が整ったのを確認してから切られるはずです。

なんだか、ミステリーの匂いがしませんか?

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高松宮記念のラップ分析

Takamatumiya

春のスプリント王決定戦。1996年にG1に格上げされ、2000年より3月の最終週に移行された。過去12年間のレースラップをみてみたい(一番下が最新)。

11.8-10.3-11.0-11.1-11.3-11.9(33.1-34.3)H
11.8-10.2-11.0-11.3-11.7-12.0(33.0-35.0)H
12.0-10.5-11.2-11.7-11.7-12.0(33.7-35.4)H
11.7-10.1-10.8-11.8-11.7-11.9(32.6-35.4)H
11.9-10.5-10.7-11.4-11.8-12.3(33.1-35.5)H
11.8-10.5-11.2-11.2-11.9-11.8(33.5-34.9)H
11.8-10.2-10.9-11.5-11.7-12.3(32.9-35.5)H
11.9-10.3-10.7-11.2-11.9-12.1(32.9-35.2)H
11.8-10.3-10.8-11.2-11.6-12.2(32.9-35.0)H
11.8-10.3-11.2-11.4-11.6-12.1(33.3-35.1)H
11.9-10.5-11.3-11.3-11.3-11.7(33.7-34.3)M
12.0-10.6-11.2-11.4-11.8-11.9(33.8-35.1)H

「差し馬有利」の状況は、ラップタイムからも一目瞭然である。ほぼ毎年、前半が速くて後半が掛かるという、典型的な前傾ラップである。「短距離の差し馬」という格言があるように、基本的にスプリント戦は差し馬有利な前傾ラップになることが多い。特にG1のスプリント戦となると、スピードのある馬が揃い、前半のポジション争いが厳しくなるため、どうしても上がりの掛かる展開となるのは避けられない。

中京競馬場は小回り、直線に坂がなく平坦であるため、本来は圧倒的に先行馬が有利なコースであるが、最後の1ハロンでスピード自慢の先行馬の脚が止まり、スタミナを備えた差し馬がゴール前で逆転するという展開のレースになりやすい。つまり、高松宮記念は見た目以上に差し脚が生きるコースである。G1スプリント戦の性格に加え、コース形態がスピードとスタミナを兼ね備えた強い差し馬に有利に働くということだ。直線が短く、坂がない先行馬有利なコースというイメージを捨て去って予想に臨むべきである。    

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夕陽よ、急ぐな

Jiromaru

突然のお手紙ありがとうございます。私も今週のスプリングSを前にモヤモヤしていたところでしたので、なんというタイミング!と驚いてしまいましたよ。遠く離れていても、競馬テレパシーで繋がってしまうのでしょうね。有難いことです。

血統評論家でもない限り、ブリガディアジェラードは聞き慣れない名前ですね。かくいう私も記憶の片隅の片隅に知っていた程度です。そこで、ブリガディアジェラードについてちょっと調べてみたのですが、もの凄く強い馬だったのですね。18戦17勝。エプソムダービー馬ロベルトに逃げ切りを許すまで16連勝をして、6ハロンから12ハロンまでのG1レースを6つ勝利しました。

大きく見せるゴツイ馬格や、レースに行っての凄まじいばかりの闘志は、まさにショウナンアルバに受け継がれている気がします。ちなみに、ブリガディアジェラードは重馬場を嫌うことはなかったそうです。唯一、違う点としては、ブリガディアジェラードは後ろから追い込む馬だったのに対し、ショウナンアルバは逃げ・先行するタイプであることぐらいでしょうか。

ウォーエンブレム産駒ということで注目されていますが、毛色や風格から見ても、ルドルフおやじさんのおっしゃる通り、ショウナンアルバはブリガディアジェラードなのでしょうね。そう考えると、ショウナンアルバの連勝はどこまで続くのか楽しみになってきます。ここに新しい物語が生まれましたね。

私もまた別の物語を見ています。ルドルフおやじさんは寺山修司が好きでしたよね?私も好きです。寺山修司の書く物語は傑作揃いですが、その中でも私の大好きな「夕陽よ、急ぐな」という競馬エッセイがあります。ルドルフおやじさんもご存知かもしれません。私は何度も読み返しました。

主人公は李という男です。李は祖国の韓国にいた頃、貧しくてかっぱらいを働き、少年院にブチ込まれて以来、ずっと逃げることだけを青春として生きてきた男です。「オレは弱いから逃げてばかりいた」というのが李の口癖でした。「夕陽よ急げ」という言葉が好きで、下宿の壁に大きく書いていたのですが、寺山がその意味を尋ねても教えてくれなかったそうです。この李という男が、キーストンという希代の逃げ馬に己を投影して、馬券を買い続けるという話です。

デビューしてからのキーストンは連勝街道まっしぐらに進み、一方の李も警察から逃れ続け、キーストンの馬券のおかげで貯金も少しずつ増えていきました。ところが、スプリングSを境目として、キーストンと李の運命は少しずつ変わり始めます。彼らの前に立ちはだかったのは、ダイコーターというスゴイ追い込み馬でした。このダイコーターにキーストンは4コーナーであっさりと捕まってしまいます。あまりの強さにショックを受けたのか、キーストンは続く皐月賞でも14着と惨敗を喫してしまいます。

そして、ダービーの朝、どしゃぶりの雨の中、激しくドアを叩く音に目を覚ますと、玄関のところに李がレインコートを着て立っていました。「どうした?」と聞くと、警察に追われていて、これから海峡を渡って祖国である韓国に密航するのだと言う。そして、李は「今日のダービーで、俺の残していく金全部で、キーストンの単勝を買ってくれ」とだけ言い残して、雨の中に消えて行きました。寺山は無茶だと思ったのですが、李の切迫した何かを感じたそうです。

レースでは、評価のガタ落ちしたキーストンが、1番人気のダイコーターを振り切って、捨て身の逃げ切り勝ちを収めたのです。このレース以来、キーストンは再び連勝を続けました。キーストンが逃げ切るたびに、寺山は警察から逃れている李の身を思って安心したといいます。キーストンの逃げ切りと李の逃亡生活を、二重写しにして考えないわけにはいかなかったのです。

Keystone_2暮れの阪神大賞典の4コーナー。キーストンは突然もんどりうって倒れます。折れた肢を引きずりながらも、気を失った騎手のもとまで歩き、鼻づらを押しつけて無事を心配したシーンはあまりにも有名です。寺山修司はキーストンの骨が折れた音が、遠い異国にいる李が拳銃で撃たれた音に聞こえたそうです。キーストンには安楽死処分が採られ、李の消息もそれ以来プッツリと途切れてしまいました。

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

寺山修司による名歌が哀しく響きます。「8頭のサラブレッドが出走するならば、そこには少なくとも8編の叙事詩が内包されている」と寺山は言いましたが、まさにその通りですね。

さて、今週のスプリングS、そしてクラシックに、キーストンの影を見てしまう馬がいます。サダムイダテンという馬です。韋駄天のイメージからはほど遠い、フォーティナイナー産駒らしからぬ細身の体躯は、まるで盗みを働いた少年が必死で裏町を逃げていくような、悲劇的なムードを漂わせていたキーストンを思わせます。繊細な馬でもあり、前走は初の輸送で気を遣ってしまい、力を出し切れませんでした

そもそもサダムイダテンは逃げ馬なのではないかと私は思っています。道中の耳の動きや、走り方、そして華麗なる一族の血統背景を見ても、あり余るスピードを生かして小細工なしの競馬をした方が、この馬に合っているのではないでしょうか。直線で他馬と叩き合うような競馬は本質的には向かないはずです。安藤勝己騎手は将来のことを考えて、抑える競馬をしてきたのだと解釈しています。急がず逃げて、最後まで無事に逃げ切って欲しいですね。

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気まぐれルドルフおやじからの特別寄稿

Rudolf

忙しそうですね。凄い嗅覚でしょ。お元気ですか。
おやじは元気でもやもやしてますよ。

さよならはなしよ、のサンアディユのさよならで少しめげていたところです。サンアディユ怪死事件として後世に語り継がねばなりませんね、治郎丸さんが。相もかわらぬ無責任なおやじですが、今週のスプリングSが楽しみでメールさせてもらいました。

1971年の2000ギニーは、昨秋の秋華賞のようなレースだったのでしょうか。ゲートが開くのが待ちきれないほどワクワクさせられるレースはめったにありませんね。2強対決は見ていて胸が痛くなりますが3強は楽しい。

1番人気 マイスワロー
2番人気 ミルリーフ
3番人気 ブリガディアジェラード

2008年に生きているおやじは、この人気を見て英国の競馬ファンの目は節穴か、なんて偉そうに思うわけです。どうみても力はジェラード、ミルリーフ、スワローの順ですよね。がっははは、競馬は終わってみればすべてがわかる。ミルリーフはマイスワローにミドルパークSで負けていたから、素人には少しわかりにくかったかな、がっははは。

この3頭に逆らう馬鹿者は3頭。いつでもこういう人がいるのでなぜかおやじも心強い思いをしています。その中の1頭がニジンスキーの弟、ミンスキー。

で、結果は。
1着 ブリガディアジェラード
2着 ミルリーフ
3着 マイスワロー
ついでに4着がミンスキー

71年のギニーレースで3強と讃えられた3頭ですが、その血脈を残せたのはミルリーフだけだというのが競馬の辛いところです。ミルジョージはたいそう良い種牡馬でしたね。最近ではフジキセキがミルリーフの面影を伝えています。

3着に敗れたマイスワローはその後、勝ち星に恵まれず、種牡馬としても完全に失敗してしまいます。この脱落者を敢えて輸入したのがテンポイントの吉田牧場。すぐにワカクモの娘と交配させダービー2着のワカテンザンを送り出しています。恐るべし吉田牧場。ハギノカムイオーの時代です。ミンスキーも輸入され良血ぶりを発揮しましたが早逝してしまいました。71年の史上最高のギニーレースは意外なことに我々の身近なところにありました。

最強馬のジェラードはロベルトのタフネスに屈するまで連勝を重ね続けます。世紀の敗北として有名な一戦でしたが、素人にはロベルトの強靭さが見えにくかったのですね。競馬はゴールするまで何もわからない、がっはははは。

種牡馬として失敗し、亜国へ追い払われたジェラードの血を日本で見つけ出すのは至難のわざです。ミルリーフを最強馬という方は今でもたくさんいらっしゃいますが、ジェラードを語る人は少なくなりました。ちょいとさびしい結末。

ところが・・・。人生には「ところが」はないのですが、競馬にはある。Sアルバには5×3の強烈なジェラードのインブリード。なるほど史上稀な混戦を演出しながら、ジェラード准将が名誉を取り戻しにきたのかも知れない今年のクラッシック。

配役は以下の通りです。
主演   Sアルバ(ブリガディアジェラード)
助演   Aダンディー(ミルリーフ)
友情出演 Mチャールズ(ロベルトクレメンタイン)
共演   Sイダテン(マイスワローが敗れたカムイオーにちなんで)
監督   武豊

というような馬鹿を考えて、もやもやをはらしているおやじでありました。
来週からの治郎丸さんの予想、はやくはやくと心待ちにしておる次第です。


関連エントリ
ガラスの競馬場:さよならはなしよサンアディユ

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集中連載:「調教のすべて」第8回

Tyoukyou09

次は、坂路に対して平地で行われる②ウッドチップコースと③ダートコースに話を移したい。

平地調教と前述の坂路調教の違いは、厳密に言うと、平地調教は有酸素運動的な効果がより多く見込まれるということだろう。たとえば、ダイエットをする時に、激しい運動を短い時間で行うのではなく、比較的緩やかな運動を長い時間をかける方が効果的だとされるが、平地調教はどちらかと言うと後者の運動である。実際に長い距離を、息を入れながらジックリ時間をかけて調教していくため、その疲労度は高く、馬体を絞る効果もある。冬場のレースで、坂路コースで調教された馬が大幅な馬体増で凡走することがあるのは、つまりこういうことだ。

さらに、平地調教だけで鍛えられた馬を、坂路調教だけで鍛えられた馬を比べると、筋肉の付き方が違ってくることが分かる。前者は長距離馬らしいスリムな体型になり、後者は短距離馬らしい筋骨隆々の体型になる。

たとえば、アドマイヤムーンを管理した松田博資調教師は、平地のウッドチップコースを中心として調教するが、その管理馬にはベガ、タイムパラドックス、アドマイヤドンなど、たとえ短距離血統の馬でも、絞り込まれたスリムな体型の馬が多い。対して、坂路コースを中心として馬を仕上げる松田国英調教師の管理馬には、タニノギムレット、キングカメハメハ、クロフネ、ダイワスカーレットなど、たとえ長距離血統の馬であっても、筋骨隆々のマッチョな体型の馬が多い。

坂路コースでもスタミナを強化することは出来るが、やはり長距離戦向きの肉体やスタミナを養うという点については、平地コースの方に一日の長があるということだ。

また、同じ平地調教であっても、やはりウッドチップコースとダートコースでの調教には違いがある。

ウッドチップコースは木片が敷き詰められているため、馬の脚にダートコースで追い切るほどの負担が掛からない。よって、ウッドチップコースでは追い切ることが出来ても、ダートコースでは難しいという馬もいて、現状としては、ダートよりもウッドチップコースを使う調教師の方が圧倒的に多い。脚元に掛かる負担を少なくしつつ、体全体には負荷を掛けながら、長距離馬としての筋肉やスタミナを作っていくという点において、極めて効果的な調教コースなのである。

血統的、体型的にスタミナに不安のある馬がウッドチップコースで調教されたことによって、距離をこなせるようになることもある。上に挙げたアドマイヤムーンなどは、典型的な例だろう。3歳時(天皇賞秋)の馬体と、最後のジャパンカップ出走時の馬体を見比べてみて欲しい。拳1個か1個半分ぐらいは馬体(胴部)が伸びていることが分かる。

3歳時(天皇賞秋)
Admiremoon01
引用元:競馬ブック

ジャパンカップ時
Admiremoon02
引用元:競馬ブック

父エンドスイープ、母父サンデーサイレンスという血統で、かつ3歳時は胴の詰まった体型をしていた同馬が、ウッドチップコースを中心として調教されたことによって、最後は2400mのジャパンカップを勝つのだから驚きである。調教によって馬は造ることが出来るということの証明でもあり、この年の優秀技術調教師に松田博資調教師が選出されたのも当然の結果だろう。

しかし、ウッドチップコースにも欠点はあり、ダートコースに比べて走りにくいため、馬が力を入れて走らなければならず、馬によっては筋肉や腱に負担が掛かりすぎてしまうこともある。実際に地方競馬でダートだけを使ってこれまで調教されてきた馬が、中央に移籍し、ウッドチップコースで調教をされたら、ガタガタになってしまったという例もある。

たとえば、骨が弱い馬がいるとすると、ダートならソエで済むところが、ウッドだと骨折という憂き目に遭うこともあるという。脚元に負担が掛からないはずのウッドチップコースも、ハードな調教に堪えられる馬でなければ、その激しさゆえに、馬を傷めてしまったり、大きなアクシデントに繋がってしまう可能性もあるということである。つまり、走られる体がしっかり出来ていない馬に関しては、比較的負荷の少ないダートコースで追い切るほうが良策ということだ。

もう一つ、ゴスホークケンのように、ウッドチップコースでは木片で蹄の裏を傷めてしまうという馬にとっては、ダートコースで調教することもあり得る。ウッドチップ以外にも、歩いていて金属片が刺さったり、思いっきり小石を踏んずけたりして、蹄の底を痛めてしまうことを「挫石」といい、蹄の弱い馬がなりやすい。それほど重症にはならず、1~2週間ほどそっとしておけば治るのだが、その間はもちろん調教が出来ない。

これは余談だが、藤沢和雄厩舎の馬房前の砂地には、常に箒(ほうき)の目が立てられている。馬は厩舎の外に出る時には必ずこの砂地を通るため、そこに釘などの異物が落ちていた時にはすぐに誰かが気付くようになっていなければならないという理由である。馬や人の足跡が付きっぱなしの状態では、異物が落ちていても誰も気付かず、馬がそれを踏んで挫石してしまってからでは遅いのだ。サラブレッドの蹄にはそれほどに慎重にならなければならず、つまり「蹄なくして馬なし」ということである。

以上がウッドチップコースとダートコースの使用上の違いだが、1周距離の違いによっても2つのコースが使い分けられることもある。たとえば、栗東トレセンのBコース(ダートコース)は、小回りで砂が軽く、時計が出やすいので、古馬にとっては負荷の掛からないコースだが、新馬にとってはコーナリングの練習にちょうど良いという。Bコースの1周は1600mで、京都競馬場のダートコースとほとんど同じなのである。そのような用途としても、調教のコースは使い分けられることもあるということだ。

(第9回へ続く→)

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集中連載:「調教のすべて」第7回

6の「後躯(腰)の強化につながる」は、坂路コースは後肢に負担が掛かりやすいので、自然と腰から尻にかけての強化につながっていくということだ。坂路に入れたての頃は、後肢に負担が掛かりすぎて、どうしても腰に疲れが出てしまうのだが、腰は一気には壊れることはない。腰に疲れが出てきたときには調教を軽めにする、ということを繰り返していると、グングンと腰が強くなっていく。腰が強くなれば、坂路コースは腰に疲れが出やすいという欠点はあるが、それを乗り越えていけば、逆に欠点が長所となるのである。

腰が強くなれば、当然のことながらレースで成績は上がる。たとえば、ハーツクライは5歳の秋にして、ようやく本格化したのだが、それまでは腰が甘くて、道中でレースのペースについて行くのがやっとの馬であった。最後は素質で追い込んで来ても、時すでに遅しというレースを繰り返していた。5歳の夏休みを経て、腰がパンとしたハーツクライは、ジャパンカップではレコード決着の2着、続く有馬記念ではあのディープインパクトに土を付け、ドバイシーマクラシックでは逃げ切り勝ちを演じ、キングジョージでは歴史に残る名勝負を繰り広げた。

Tyoukyou08

最後のジャパンカップはノド鳴りの影響で惨敗してしまったが、腰がパンとしてからのハーツクライは、ディープインパクトに匹敵するだけの強さを持っていた。それもこれも、橋口厩舎のノウハウが詰まった坂路調教の賜物であったように思う。もしハーツクライを平坦コースでしか調教できなかったとすれば、果たしてG1レースを勝てるだけの馬になっていたかどうか疑問であるし、あれだけの本格化はまず望めなかっただろう。

7の「頭が低くなる」は、坂路コースは前のめりのフォームでなければ上がれないため、自然とそういうフォームになるということである。頭が低くなるということは、首をうまく使い、前脚の伸びが良くなることにもつながる。もちろん、生まれつき首の高いフォームで走る馬を、その欠点を少しでも矯正するため、坂路コースに入れることも多い。

次に、美浦トレセン(関東)と栗東トレセン(関西)における、坂路コースの違いについて説明したい。同じ坂路コースでも、両者では全体距離や勾配までが違ってくるのである(下図参照)。

栗東トレセン
Rittouhanro

美浦トレセン
Mihohanro

まず大きく異なる点は、何といっても高低差である。栗東トレセンの坂路コースが32mの高低差があるのに対し、美浦トレセンのそれは18mしかない。それに対し、坂路コース全体の距離は栗東トレセンが1085m、美浦トレセンが1200mであるから、その勾配の違いは歴然としている。

また、調教タイムを計測する区間(800m)までの助走距離も異なる。栗東トレセンは、スタートしてわずか70mの助走距離で坂路を駆け上がっていくのに対し、美浦トレセンでは270mもの助走距離があってから坂路を登ることが出来る。総じて美浦の坂路コースの計時タイムの方が速いのは、これが大きな理由である。

つまり、勾配が強いことに加え、助走距離が短いことも手伝って、美浦に比べ、栗東の坂路コースでは競走馬にとって厳しい調教が課せられることになる。美浦に坂路コースが出来ても、一向に関西馬との力差が埋まらなかったのは、この坂路コースの規格の違いによるところが大きい。なるべく助走をつけずに駆け上がるなどの工夫をしても、いかんせん勾配の違いだけは避けがたい。

(第8回へ続く→)

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フィリーズレビューの分析

Filiesreview

■本番・桜花賞との結びつきが弱い
過去10年間で、フィリーズレビューを使って本番・桜花賞を制したのはラインクラフトのみ。1週間前に行われたチューリップ賞からは6頭の桜花賞馬(ファレノプシス、チアズグレイス、テイエムオーシャン、スティルインラブ、ダイワスカーレット)が出ており、その差は歴然としている。

その理由はたったひとつ。チューリップ賞とフィリーズレビューを天秤にかけた場合、本番へのつながりを意識すれば前者をステップにする方が望ましいのは明らかで、にもかかわらずフィリーズレビューを選択するのは、陣営が馬のスタミナに不安を抱えているからである。僅かでも距離に不安を感じている馬が、さらに厳しい流れになるG1レースのマイル戦を勝つのは難しい。

■粘り込むスタミナも要求される
スプリント色の濃いメンバーが集まるからこそ、かえってレースの流れは厳しくなることが多い。過去5年間のラップタイムを見てみると(下参照)、スローに流れてしまいがちなチューリップ賞よりも、ミドルからハイペースに流れやすいレースの傾向が浮かび上がってくる。そのため、スピード一辺倒のスプリンターでは勝ち切れず、ハイペースを好位で追走して最後は粘り込めるスタミナが要求される。

フィリーズレビュー過去5年ラップタイム
12.1-11.1-11.4-11.6-11.7-12.0-12.8(34.6-36.5)H
12.2-10.7-11.3-11.9-12.0-11.6-11.6(34.2-35.2)H
12.1-11.0-11.3-11.7-11.5-11.3-12.3(34.4-35.1)M
12.6-10.9-11.3-11.7-11.8-12.2-12.6(34.8-36.6)H
12.5-10.9-11.4-11.7-11.4-11.7-12.2(34.8-35.3)M

■阪神1400m
スタート後、3コーナー過ぎまでの距離はおよそ440mと十分にあり、テンはそれなりに速くなる。そして、3~4コーナーが複合カーブであるため、スピードが落ちない。そのため、緩急のない全体的に速いペースで道中は流れる。しかし、3コーナーからゴール前に至るまで下りが続くため、そのまま流れ込むことの出来る先行馬が有利。

とはいえ、3~4コーナーの間に偽直線を挟んでいるため、差し馬もペースに応じて先行集団との差を詰めることが出来る。先行馬が有利なコースではあるが、決して差し馬に不利なコースではない。むしろ道中のペースが速くなりすぎると、直線の急坂で先行馬が総崩れということも十分にあり得るので注意。


関連リンク
ハイブリッド競馬新聞:フィリーズRの見解
ロブ・ロイッⅡ:報知杯フィリーズレビュー

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集中連載:「調教のすべて」第6回

4の「運動時間が長くなる」については、坂路コースで調教するにはどうしても時間が掛かり、それが運動量の増加につながるということである。従来のコースでの調教では、コースで15分間、厩舎から調教馬場への行き帰りで20分間として、合計しても40分もかからなかった。ところが、坂路では一度駆け上がったら、ダクで坂を下り、逍遥馬道を15分~20分くらいかけて歩いて坂路のスタート地点に戻らなければならない。これを何度も繰り返すのだから、1頭につき1時間以上の時間をかけて調教していることになる。

前述した森秀行厩舎では通常1本しか追い切られないが、準備運動として1時間歩かせてから坂路コースに入り、調教が終わると、クーリングダウンとしてまた1時間歩かせるという。時計になる調教は変わらなくても、それ以外の部分での運動量が多いということである。西高東低の理由として、坂路コースが出来たことは目に見えるそれだが、坂路コースを使うことに伴う運動量の増加が本質的な理由だと森調教師は言う。馬にとっては、歩くことも大切なトレーニングになるのだ。

Tyoukyou02これは余談になるが、馬を歩かせることを常歩(なみあし)というが、常歩は意識して歩くことなので、馬はこれが好きではない。しかし、人に引かれて歩くときは必ずそうするのだと教えておくと、馬は勝手な行動をしなくなり、人間の指示に素直に従うようになる。それによって、人も馬もより安全になるだけではなく、レースに行ってもジョッキーの合図にきちんと応えて走られる馬になる。

また、常歩は足腰の筋肉を鍛えるのに良い。馬の足腰は走ることによっても鍛えられるが、常歩ではそれとはまた違った筋肉の使い方をするので、毎日きっちりと常歩を続けていると、筋肉の付き方が変わってくるのだ。コースを走るだけの調教ではアンバランスになりがちな筋肉の発達を、常歩で歩くことによって防ぐことが出来るのである。

つまり、きちんと歩けない馬はレースでも走らないのである。競馬場のパドックでも、きちんと歩けているかどうかは常にチェックしておくべきだろう。特に若駒戦や未勝利戦でよく見られるが、脚を引きずってダラダラと歩いたり、きちんと足を上げてリズミカルに歩けていないような馬は、レースに行っても気性の悪さを出してあっさり負けてしまうケースが多い。

5の「ピッチ走法をマスター出来る」については、坂路コースは大股では上れないので、小股で脚を速く出そうとするため、自然とピッチ走法をマスターできるということだ。ピッチ走法を覚えると、ゲートから出て、すぐにスピードに乗れる、つまりスッと良いポジションを取られるようになるという利点がある。短距離が中心の新馬戦で、坂路コースで調教された馬が活躍するのは、スタートダッシュの力を養うことが出来るからでもある。

最近でいうと、アストンマーチャンは典型的なピッチ走法である。普通の馬なら31歩で駆け上がってくるところを、35歩かかると言われている。それでも、51秒台で登坂してくる以上、よほど脚の回転数が多いのだろう。究極のピッチ走法であるアストンマーチャンが、速さ自慢の猛者たちが集まるスプリンターズSでも楽にハナを切れたのは、決して不思議なことではない。

Tyoukyou07 by gradeone

それから、ピッチ走法をマスターすることによって、瞬発力を養えるということもある。ここで言う瞬発力とは、上がり3ハロン33秒といった俗に言う“切れる”という意味とは少し違う。勝負どころの直線で騎手がゴーサインを出した時に、即座に反応して伸びることが出来るかどうかということである。瞬時に脚の回転を速くしなければならないが、その際、ピッチ走法をマスターしていることが瞬発力につながるということだ。

たとえば、ポップロックはなかなかG1レースを勝ち切れない馬だが、この馬には瞬発力がないという欠点がある。勝負どころで器用な脚が使えないからこそ、他馬よりもエンジンの掛かりが遅くなってしまい、ジワジワとは伸びるが最後は届かないというレースを繰り返すことになる。府中や京都の外回りのコースであれば克服可能だが、小回りや直線の短い競馬場では苦戦を強いられる。実際に、ポップロックも坂路コースで調教されることはあるが、ピッチ走法で走ることが出来ないため、速い時計が出ない。

(第7回へ続く→)

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集中連載:「調教のすべて」第5回

それでは、コースについて話を進めて行きたい。

具体的なコースの種類は以下のとおりである(カッコ内は代表的な表記方法)。

①坂路コース(美坂、栗坂)
②ウッドチップコース(南W、CW、DW、函W)
③ダートコース(南D、北C、北B、栗B、栗E、札ダ、函ダ、小ダ)
④芝コース(南芝、栗D)
⑤ニューポリトラックコース(美ポもしくは南P)
⑥プール(プール)

①の坂路コースは、ご存知のとおり、競馬界に大きな革命をもたらした調教コースである。昭和62年に栗東トレセンに新設されるや、確実に効果を上げ、それまでの関東馬優勢の潮流を一気にひっくり返し、その西高東低の流れは現在に至るまで続いている。一方、美浦トレセンでも平成5年に坂路コースが新設されたものの、直線部分の短さなどの問題もあり、未だ関西馬優勢の流れを変えるまでには至っていないのが現状である。

ちなみに、2007年度の年度代表馬および部門別最優秀馬は、かろうじてゴスホークケン、ダイワメジャー、コイウタの3頭の関東馬が選出されたものの、年度代表馬のアドマイヤムーンを筆頭に、11頭中8頭を関西馬が占めている。今でこそそのような状況だが、坂路コースが出来る直前までは、なんと年度代表馬の各部門に関西馬が1頭も選出されない年もあったというから驚きだ。もちろん、坂路コースが全てではないが、強いサラブレッドを作る大きな要素となっていることには異論はないだろう。

坂路コースの利点として、思いつくところを順に挙げてみたい。

1、故障が少なくなる
2、心肺機能が鍛えられる(スタミナがつく)
3、引っ掛かる馬を落ち着かせる
4、運動時間が長くなる
5、ピッチ走法をマスター出来る
6、後躯(腰)の強化につながる
7、頭が低くなる

1の「故障が少なくなる」については、馬場がウッドチップなのでクッションがよくて柔らかいということと、もっと単純に、坂路なので平坦で走るようなスピードが出ないことが理由である。競走馬はスピードが出れば出るほど故障しやすくなり、骨折するケースも多くなる。

また、坂路を走る時の走り方は、後脚に掛かる負担が大きく、前脚のそれは平坦コースに比べ、かなり軽くなる。競走馬の故障のほとんどは前脚の部分なので、前脚に負担の少ない坂路コースで故障が少ないのは当然のことであろう。

2007年度こそ不振に終わったが、栗東で坂路コースを中心として調教を行う森秀行厩舎の馬は、滅多に故障しないことで有名である。レースに出走するような馬でも、騎手が乗って怖くなるような脚元がおぼつかない馬もいるが、森厩舎の馬は安心して乗っていられるという。それはやはり坂路で前脚に負担を掛けないように乗られているということが大きい。だからこそ、たとえばノボトゥルーやシーキングザダイヤのように、高齢まで走り続けることの出来る馬が森厩舎には多いのだ。

Tyoukyou05 by sashiko

故障が少なくなるということは、坂路コースは少し脚元に不安のある馬やソエが出てきた馬に対して使うこともあるということだ。これまで平地コースで追い切られていた馬が、急に坂路コースのみで調教をし始めたら、脚元に不安があるのかもしれないと疑ってみても良いだろう。

2の「心肺機能が鍛えられる」は、坂路調教がインターバルトレーニングになるからである。駆け足で登り、常歩で下るという繰り返しをすることによって、心肺機能の強化につながるのだ。また、同じ距離を走るのでも、平地より坂路の方がキツいのは当然で、坂路コースでの4F(800m)は平地のコースの2000m以上に相当すると言われている。坂路コースでは長距離戦に必要なスタミナはつかないという説もあるが、そんなことはないだろう。

思いつくところでは、坂路を中心として調教されたダインスインザダーク、エアシャカール、ザッツザプレンティ、ソングオブウインドが菊花賞を勝ち、スズカマンボは天皇賞春を勝ち、ビワハヤヒデ、ヒシミラクルはそのどちらにも勝利している。坂路コースは、長い距離をゆったり走るトレーニングではないが、心肺機能を高めることでスタミナを強化することも出来るということの証明である。

Tyoukyou06 by sashiko

3の「引っ掛かる馬を落ち着かせる」は、インターバルトレーニングと大いに関係がある。激しい運動をしたあと、林の間の馬道を常歩で歩くことによって、精神の沈静化をうながし、馬が落ち着くということだ。平坦コースの場合、コースに入ってから出るまで、ずっと走っているので馬がカッカしてしまうのである。引っ掛かって行ってしまうような馬は、平坦コースではますます引っ掛かるが、坂路に入れると落ち着くことが多い。また、坂路コースは一気に行ってしまうと最後まで持たないので、引っ掛かる馬にとっては、息を入れながら走る練習にもなる。

(第6回に続く→)

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馬の声を聞いていますか?

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スタート直後、フィールドルージュの走りから異常を察した横山典弘騎手はレース途中(3コーナー手前)で馬を止めた。ヴァーミリアンに次ぐ2番人気に支持されていたほど馬は充実しており、横山典弘騎手にとっても待望の中央G1勝利に手が届く所だっただけに、フィールドルージュ絡みの馬券を買っていなかった私でさえ、その迅速な決断と対応には驚きを隠せなかった。

そして、あるやりとりをフト思い出した。そのやりとりとは、「週刊ギャロップ」誌上で行われた横山典弘騎手と四位洋文騎手の対談中の、馬を止めることについてのこんな会話である。かなり長くなってしまうが、とても大切な部分だと思うのでお付き合いいただきたい。

横山
この前も土曜にアドマイヤカイトを止め、日曜にメイショウオウテを止め、自分の中ではおかしいと思って止めてみる。でも、意外となんともなかったりする。馬運車で運ばれて、診療所で獣医に見せると、なんともないって言う。なんともないって本当かって。その時は止めないで行ったほうがよかったのかって思うけど、2日してやっぱり脚が腫れてきた。そういうのあるからね。オレも若くはないから、いい加減、年食ってくると経験がそういうこと(行かせること)をさせない。経験で出来ないことがいっぱいある。でも、結果を見せなきゃダメ、勝ち負けじゃない結果ね。(脚が)折れるか、ひっくり返るか。そこが一番イヤだ。

四位
昔、カッちゃん(田中勝春騎手)が馬を止めて騎乗停止になったじゃないですか。あの時、すごい違和感があった。馬がなんともなかったから騎乗停止になったんですよね。でも、ジョッキーって馬の走りを分かっているわけだし、おかしいと思ったら止めてあげるのもジョッキーの仕事。あそこで止めておけば死ななくて済んだのにって思うのいっぱいあるから。

横山
あるね。

四位
たしかに止めてなんともなかったら、ファンや関係者は何でって思うかもしれない。でも、ボクは怒られてもいいと思った。ボクはこいつ(馬)の声を聞いたから。ノリちゃんもカイトやオウテの声を聞いたんでしょ。馬の声を聞いている、そういう騎手であり続けたい。

横山
数勝つのも素晴らしいけど、そういう声を聞けるジョッキーでありたい。言葉を換えると、繊細すぎて情けないかもしれないけど、違うんだって。

四位
競走馬は細い脚で全力で走るから、故障するのは仕方ないけど、自分らで食い止めることができるんであれば、やっぱりそこで馬の心の声を聞いてあげてね。最後はちゃんと牧場に帰してあげたいよね。

横山
そうね。仕方のないところもあるかもしれないけど、オレの見える範囲、手の中にいる範囲でそうはさせたくない。

(中略)

四位
馬を大事にしようってことは、ずっとこの世界にいると麻痺して、そういう感覚がなくなってくる。競馬ではダメでも、そのあと、乗馬や繁殖として大きな可能性があるかもしれないし。最後は牧場に帰してあげたいっていうのはありますよね。

横山
岡部さんもそうだったけど、四位に教わったな。やっぱり愛情だよ。大事にしていれば、(馬が)助けてくれるんだって。人もそうだと思うよ。

馬をレースの途中で止めることは、ジョッキーにとって非常に勇気の要る行為である。もしどこにも異常が認められなかったとしたら、騎乗停止とまではいかないにしても、巨額のお金が動いている以上、批判は避けられないだろう。八百長を疑われることもあるかもしれない。しかし、そのようなリスクを背負ってでも、やはり止めるべき時には止めるのもジョッキーの仕事だと彼らは主張する。

勝ちたいという人間のエゴが馬を殺してしまうことを、横山典弘騎手はホクトベガに学び、馬に愛情を持って大事にしていれば、いつか馬が助けてくれることがあることも多くの馬たちから教えてもらったのだろう。もちろん、ジョッキーだけではなく、競走馬に携わる全ての人々が、馬の心の声を聞こうとする気持ちを忘れないことが大切である。

そして、当たり前のことではあるが、私たち競馬ファンも、自分が買った馬がレースの途中で止められても仕方ないだけの馬券を買うべきである。そもそも私たちは、運という最も理不尽で不平等で矛盾したものに身を委ねて馬券を買っている以上、いかなる理由であろうとも、たとえそれが不公平・不公正であろうとも、自分の買った馬券が紙くずになることを前提に私たちは賭けなければならない。だからこそ、ジョッキーには遠慮することなく馬を止めてもらいたい。そうすれば、馬券が外れる以外の、悲しい出来事は少なくなるはずだから。

関連リンク
ナルトーンの大好き!競馬ブログ:サンアディユまで…
BABOOからの手紙:こんなことって…

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「21世紀の馬券戦略ライブCD」の受付を終了しました。

「21世紀の馬券戦略ライブCD」のお申し込みが規定数に達しましたので、とりあえず受付を終了させていただきます。早速、メールにてご質問、ご感想等お寄せいただきましてありがとうございました。このような形で、全国各地の皆さまとやりとりさせていただけることを本当に嬉しく思います。この春にもまた新しいチャレンジをしていきたいと考えておりますので、これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
治郎丸敬之

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弥生賞の分析

Yayoi

皐月賞と同じ舞台で行われるものの、過去10年間で弥生賞と皐月賞を連勝したのはアグネスタキオンとディープインパクトという2頭の名馬のみ。その理由について、ラップタイプから考察してみたい。

過去10年で弥生賞の過去5年間のラップタイムは以下のとおりである。

12.6-11.0-11.8-12.3-12.0-12.0-12.7-12.7-12.5-12.7(59.7-62.6)H
12.6-11.8-12.1-12.2-12.2-12.3-12.5-11.6-11.3-11.9(60.9-59.6)S
13.0-11.9-12.5-12.3-12.5-12.6-12.5-11.6-11.4-11.9(62.2-60.0)S
12.4-11.3-12.5-12.6-12.4-12.0-12.7-12.3-11.7-11.6(61.2-60.3)S
12.3-10.6-11.6-12.8-12.5-12.6-12.9-11.8-11.7-11.7(59.8-60.7)M

前半3ハロンとラスト3ハロンを除いた中盤のラップ(赤字)に焦点を当ててみると、例外なく12秒台が続いていることが分かる。以前、中山金杯の分析をした際、皐月賞は中盤が緩むという指摘をしたが、それに輪をかけるように弥生賞はその傾向が顕著である。

そこで、今度は、過去5年間の皐月賞のレースラップを見てみたい。

12.5-11.3-12.4-12.9-12.6-12.6-12.2-11.4-11.5-11.8(61.7-59.5)S
12.5-11.3-12.4-12.9-12.6-12.6-12.2-11.4-11.5-11.8(59.7-58.9)M
12.1-11.0-11.9-12.2-12.4-12.6-12.5-11.8-11.4-11.3(59.6-59.6)M
12.3-11.3-12.0-12.1-12.3-12.0-12.2-11.8-11.7-12.2(60.0-59.9)M
12.2-11.2-12.1-11.6-12.3-12.3-12.3-11.6-12-12.3(59.4-60.5)H

中盤が緩む傾向は同じだが、ひとつだけ弥生賞との相違点がある。それはレース全体のペースである。どちらかというとミドルペースになる皐月賞に比べ、弥生賞はどちらかというとスローに流れやすい。つまり、弥生賞はスタミナの裏づけがないマイラーでも乗り方次第ではこなせてしまう可能性があり、ラスト3ハロンの瞬発力勝負に強い馬に圧倒的に有利なレースになるということである。過去、サンデーサイレンス産駒の活躍が目立ったのもこれゆえである。

結論としては、弥生賞の勝ち馬を見つけるためには、皐月賞を占うレースであるにもかかわらず、皐月賞では勝てそうにないタイプの馬を探すべきということである。どういう馬かというと、サンデーサイレンスの血を受け継いだ、スピードタイプの瞬発力に優った馬だ。

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モーゼの奇跡のように

Iwatajc「名騎乗ベストテン2007」栄光の第1位は、岩田康誠騎手がアドマイヤムーンで制したジャパンカップである。岩田康誠騎手は馬が道中で引っ掛かってしまったことを反省し、松田博調教師は最後の直線で仕掛けたタイミングが速かったと指摘するが、それでも私はベストレースだったと思う。スタートからゴールまで徹底的に攻め抜いて、アドマイヤムーンを紙一重で勝利に導いた、岩田康誠騎手の真骨頂とも言うべき騎乗であった。ほんのわずかでも守りに入る気持ちが出てしまえば、その分だけポップロックとメイショウサムソンの餌食になっていたはずである。

アドマイヤムーンが道中で折り合いを欠いたのは、岩田騎手がゲートからシッカリと出したからこそである。折り合いを欠く可能性のある馬や距離が少し長いと思われる馬にハミを当ててゲートから出すことは、とても勇気の要る行為である。府中のチャンピオンディスタンス(2400m)ということを考えても、ポップロックほどにスタミナの裏づけのないアドマイヤムーンを、ゆったりとゲートから出したかったに違いない。しかし、岩田騎手は迷うことなく好位を取りに行ったのだ。あのポジションが取れていなければ、勝ちはなかっただろう。

最後の直線でゴーサインを出したタイミングも、あれはあれでベストだったのではないだろうか。4コーナーを回って直線を向いた瞬間、まるでモーゼの奇跡のようにアドマイヤムーンの進路が大きく開き、馬が行く気になったのだから、あれ以上我慢させてしまえばかえって伸びあぐねてしまうことも考えられる。結果的にゴール前でクビ差だけ残ったのではなく、あのタイミングで仕掛けたからこそ、僅かに残すことが出来たのではないだろうか。それにしても、当日の馬場状態を正確に把握し、他の騎手が外を回す中、ピッタリと内を決め打ったコース取りも見事であった。

ところで、岩田康誠騎手を含め、ここ数年は地方から移籍してきた騎手たちの台頭が目立つ。そして、彼らが活躍するのは、強力なエージェントの後ろ盾があるからと揶揄されることもあるが、そうではないと私は思う。彼らには毎日の競馬で培った馬を勝たせる技術や判断力があり、何よりもその人となりが優れている。最初から大企業に入って周りからチヤホヤされながら育った人間よりも、光の見えない深い井戸の中から必死に這い上がってくる中で磨かれた人間を、少なくとも私は尊敬する。エージェントの力が強いから彼らが勝つのではなく、彼らに卓越した技術があって、さらにその人間性が優れているからこそ、多くの騎乗依頼が集まる。ただそれだけのことだ。

サラブレッドには多くの人々の血と汗と涙と愛情が注ぎ込まれていて、騎手は最後の襷を受けたアンカーにすぎない、とは多くの騎手が語ることである。周りの人々の力添えがなければ、ジョッキーは馬に跨ることさえ許されない。しかし、体でそのことを知って、心からそう思える騎手は意外に少ない。

「すいません、前を通ります!」

Photostud(私の友人でもあるプロカメラマン)が内ラチギリギリの所でカメラを構えていた時、岩田康誠騎手はそう声を掛けて、目の前を駆け抜けて行ったという。普通ならば、「どけどけ!」とか「アブねえぞ!」とか怒声を上げられることもある場面だが、岩田康誠騎手は大舞台を前にしながらも、路上のカメラマンに対する心遣いを忘れなかった。アドマイヤムーンの背で見せた岩田康誠騎手の涙も本物であった。


2007年ジャパンカップ

special photo by fake Place

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集中連載:「調教のすべて」第4回

次に、追い切りが行われた「コース」について述べていきたい。

中央競馬では馬1頭1頭に必要な調教を施すことが出来るように様々な種類の施設が設けられていて、関東(美浦トレーニングセンター)と関西(栗東トレーニングセンター)ではわずかに施設が異なる。具体的なコースの種類に話を進める前に、まずは美浦トレセンと栗東トレセンについて説明しておきたい。

★美浦トレーニングセンター★

北馬場
Mihokitababa

・Aコース 内がダートコース(1370m)、外が障害専用の芝コース(1447m)
・Bコース ダートコース(1600m)
・Cコース ダートコース(1800m)

南馬場
Mihominamibaba

・Aコース ダートコース(1370m)
・Bコース ウッドチップコース(1600m)
・Cコース 内が芝コース(1800m)、外がニューポリトラックコース(1858m)
・Dコース ダートコース(2000m)

美浦トレーニングセンターは昭和53年に開設され、北と南に2つのトラックコースを持つ。しかし、南馬場にはウッドチップコースや坂路コース、そしてニューポリトラックコースがあるのに対し、北馬場には障害コースやダートコースしかない。この施設の差からも分かるように、現在、美浦トレセンでは北馬場と南馬場で調教を行う馬の数に大きな差がついてしまっている。北馬場所属でも、南馬場で調教をつける厩舎がほとんどである。

もちろん、北馬場にも存在意義がないわけではなく、たとえば前の週にレースを使った馬や追い切った翌日の木曜日にダク(速足のこと)を踏んだり、キャンター(駈足のこと)で流したりする時には北馬場を使う厩舎もある。その程度の調教であれば、北馬場でも行うことが出来るので、わざわざ混雑を極める南馬場に出て行って、馬にストレスを強いること必要がないからである。


★栗東トレーニングセンター★

フラットコース
Rittoubaba

・Aコース 芝コース(1450m)
・Bコース ダートコース(1600m)
・Cコース ウッドチップコース(1800m)
・Dコース 内が芝コース(1950m)、外がウッドチップコース(2063m)
・Eコース ダートコース(2200m)

坂路コース
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栗東トレーニングセンターは昭和44年に開設され、広大な土地に、6つのフラットコースに坂路コースを併せ持つ。美浦トレセンと大きく違うところは、坂路コースがフラットコースとは別の場所に設けられており、直線的に駆け上がることが出来るということである。坂路調教が終われば、逍遥馬道を通ってスタート地点に戻ってくるという、完全に一つの施設となっている。

ちなみに、栗東トレセンは交通の便が良く、小倉へは約7時間半、新潟へも約6時間で行くことが可能である。美浦トレセンはというと、新潟へは約6時間で行くことが出来るが、小倉へ行くにはなんと19時間もかかってしまうのである。関東馬が夏に小倉へ遠征することが極めてリスキーであるのに対し、関西馬は栗東トレセンにいながら小倉か新潟かを選ぶことが出来るのだ。このあたりの地理的格差も、関西馬が躍進しているひとつの理由でもあるだろう。

第5回に続く→

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Photostudの連載がスタートしました。

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「優駿」3月号より、Photostudの連載がスタートしました。待ちに待ったというべきか、遂に真打ちが登場しましたね。競馬の写真とデザインを融合した、かつて私たちが見たことのない作品が、こういう形で多くの競馬ファンの目に触れることに深い喜びを感じます。今回はディープインパクトの作品です。153ページを開いた途端、独特な質感を持ったディープインパクトの姿に、私の目は釘付けになってしまいました。皆さまも、ぜひ「優駿」3月号を手に取って見てみてください。

また、同号では「感動のレース」特集も組まれています。各ライターさんが選んだ珠玉の25レースがDVDと連動している、昨年の「マイベストレース」以来の心躍らされる企画だと思います。個人的には、その25レースの中でも、『オグリキャップの有馬記念』を感動のベストレースに挙げたいですね。何度も書いてきましたが、オグリキャップの有馬記念は私がちょうど競馬を始めた年の暮れの出来事で、あれほど感情を揺さぶられたレースはありません。須田鷹雄氏の書くように、その瞬間に競馬ファンであったことは本当に幸せだと思います。

ちなみに、江面弘也氏が選んだミスターシービーが2着した毎日王冠と、編集部のAozo氏が挙げたライデンリーダーの報知杯4歳牝馬特別は、DVD映像で再度観て感動を覚えました。11ヶ月ぶりのミスターシービーが3コーナーでマクってきた瞬間のスタンドからの大歓声には心を打たれますし、当時笠松の騎手であった安藤勝己騎手を背に直線を切り裂いたライデンリーダーの脚力には驚かされます。今では想像もつかない、安藤勝己騎手の鬼のような追いっぷりは必見ですね。その他も感動的なレースばかりです。Photostudの連載だけでなく、「感動のレース」をDVDで楽しむこともできますので、今号の「優駿」はとにかくお勧めですよ。

関連エントリ
ガラスの競馬場:「馬は誰のために走るか」
ガラスの競馬場:若手カメラマンが魅せるサラブレッドの世界
ガラスの競馬場:2006年度JRA受賞式

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中山記念の分析

Nakayamakinen

中山記念の過去5年間の勝ち馬とラップタイムを見てみたい。

12.8-11.7-11.9-11.6-11.5-11.8-11.8-11.9-12.6(48.0-48.1)S ローエングリン
12.4-11.5-11.4-11.2-11.1-12.0-11.9-11.5-11.9(46.5-47.3)M サクラプレジデント
12.6-12.2-11.9-11.3-11.2-11.8-11.9-11.7-11.9(48.0-47.3)M バランスオブゲーム
13.3-11.8-12.0-12.0-11.8-12.4-12.0-11.6-12.0(49.1-48.0)S バランスオブゲーム
12.9-11.7-12.0-11.6-11.3-11.7-11.7-11.4-12.9(48.2-47.7)M ローエングリン

ローエングリンとバランスオブゲームが共に2勝を挙げている。ローエングリンはその2勝が3年間のブランクを挟んでのものであるだけでなく、実はサクラプレジデントが勝ったレースでも3着していることに驚かされる。このことからも分かるように、中山記念は中山記念を得意とするリピーターが強いG2レースなのである。

全体のラップタイムを見ると、平均~スローな流れになりやすく、当然、前に位置した馬が有利になる。なぜこうなるかというと、レースの展開というのは最初の2ハロンまでの流れで決まることが多いからである。

中山1800mコースは、スタンド前の上り坂からのスタートとなり、最初のコーナーまでの距離は205mと極めて短い。そこから1~2コーナー中間まで上り坂が続くため、最初の2ハロンがどうしても遅くなってしまうのである。よって、各騎手がスローを過度に意識しない限り、平均~スローペースに落ち着くことが多く、前に行った馬が有利になる

さらに、ハロンごとのラップタイムを見ると、最初の1ハロンと最後の1ハロンを除き、11秒台が続いているように、全体的に淀みのないレースになりやすい。どこかで急激に緩んだり、どこかで急激に速くなったりということがないレースということだ。

つまり、爆発的な脚を使えるような馬ではなく、どちらかというと同じ脚を長く続けることの出来る持続的なスピードのある馬にとって有利なレースとなりやすいのである。言い換えれば、瞬間的なスピードよりもスピードを支えるスタミナが優先されるということで、1800m以上のレースで活躍してきたような馬を狙いたい。

追伸
今週からG1レースの週まで、「治郎丸敬之からの手紙」と「観戦記」のエントリーはお休みさせていただきます。今年に入ってから、「ガラスの競馬場」としてのあり方を少し見失ってしまっていましたが、これからは従来どおり、予想と観戦記はG1レースに絞ってお届けしたいと思います。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。


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増田屋@競馬:中山記念予想

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