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馬の声を聞いていますか?

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スタート直後、フィールドルージュの走りから異常を察した横山典弘騎手はレース途中(3コーナー手前)で馬を止めた。ヴァーミリアンに次ぐ2番人気に支持されていたほど馬は充実しており、横山典弘騎手にとっても待望の中央G1勝利に手が届く所だっただけに、フィールドルージュ絡みの馬券を買っていなかった私でさえ、その迅速な決断と対応には驚きを隠せなかった。

そして、あるやりとりをフト思い出した。そのやりとりとは、「週刊ギャロップ」誌上で行われた横山典弘騎手と四位洋文騎手の対談中の、馬を止めることについてのこんな会話である。かなり長くなってしまうが、とても大切な部分だと思うのでお付き合いいただきたい。

横山
この前も土曜にアドマイヤカイトを止め、日曜にメイショウオウテを止め、自分の中ではおかしいと思って止めてみる。でも、意外となんともなかったりする。馬運車で運ばれて、診療所で獣医に見せると、なんともないって言う。なんともないって本当かって。その時は止めないで行ったほうがよかったのかって思うけど、2日してやっぱり脚が腫れてきた。そういうのあるからね。オレも若くはないから、いい加減、年食ってくると経験がそういうこと(行かせること)をさせない。経験で出来ないことがいっぱいある。でも、結果を見せなきゃダメ、勝ち負けじゃない結果ね。(脚が)折れるか、ひっくり返るか。そこが一番イヤだ。

四位
昔、カッちゃん(田中勝春騎手)が馬を止めて騎乗停止になったじゃないですか。あの時、すごい違和感があった。馬がなんともなかったから騎乗停止になったんですよね。でも、ジョッキーって馬の走りを分かっているわけだし、おかしいと思ったら止めてあげるのもジョッキーの仕事。あそこで止めておけば死ななくて済んだのにって思うのいっぱいあるから。

横山
あるね。

四位
たしかに止めてなんともなかったら、ファンや関係者は何でって思うかもしれない。でも、ボクは怒られてもいいと思った。ボクはこいつ(馬)の声を聞いたから。ノリちゃんもカイトやオウテの声を聞いたんでしょ。馬の声を聞いている、そういう騎手であり続けたい。

横山
数勝つのも素晴らしいけど、そういう声を聞けるジョッキーでありたい。言葉を換えると、繊細すぎて情けないかもしれないけど、違うんだって。

四位
競走馬は細い脚で全力で走るから、故障するのは仕方ないけど、自分らで食い止めることができるんであれば、やっぱりそこで馬の心の声を聞いてあげてね。最後はちゃんと牧場に帰してあげたいよね。

横山
そうね。仕方のないところもあるかもしれないけど、オレの見える範囲、手の中にいる範囲でそうはさせたくない。

(中略)

四位
馬を大事にしようってことは、ずっとこの世界にいると麻痺して、そういう感覚がなくなってくる。競馬ではダメでも、そのあと、乗馬や繁殖として大きな可能性があるかもしれないし。最後は牧場に帰してあげたいっていうのはありますよね。

横山
岡部さんもそうだったけど、四位に教わったな。やっぱり愛情だよ。大事にしていれば、(馬が)助けてくれるんだって。人もそうだと思うよ。

馬をレースの途中で止めることは、ジョッキーにとって非常に勇気の要る行為である。もしどこにも異常が認められなかったとしたら、騎乗停止とまではいかないにしても、巨額のお金が動いている以上、批判は避けられないだろう。八百長を疑われることもあるかもしれない。しかし、そのようなリスクを背負ってでも、やはり止めるべき時には止めるのもジョッキーの仕事だと彼らは主張する。

勝ちたいという人間のエゴが馬を殺してしまうことを、横山典弘騎手はホクトベガに学び、馬に愛情を持って大事にしていれば、いつか馬が助けてくれることがあることも多くの馬たちから教えてもらったのだろう。もちろん、ジョッキーだけではなく、競走馬に携わる全ての人々が、馬の心の声を聞こうとする気持ちを忘れないことが大切である。

そして、当たり前のことではあるが、私たち競馬ファンも、自分が買った馬がレースの途中で止められても仕方ないだけの馬券を買うべきである。そもそも私たちは、運という最も理不尽で不平等で矛盾したものに身を委ねて馬券を買っている以上、いかなる理由であろうとも、たとえそれが不公平・不公正であろうとも、自分の買った馬券が紙くずになることを前提に私たちは賭けなければならない。だからこそ、ジョッキーには遠慮することなく馬を止めてもらいたい。そうすれば、馬券が外れる以外の、悲しい出来事は少なくなるはずだから。

関連リンク
ナルトーンの大好き!競馬ブログ:サンアディユまで…
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Comments

四位騎手と横山騎手の会話には馬に対する愛情が感じられますね。
ブログのお友達から教わったのですが、名手岡部騎手もガッツポーズをしたために
馬が予後不良になり、その後は派手なガッツポーズはしなくなったとか。
我々は、何もすることが出来ないのかもしれませんが、競馬サークルの方々には事故から学んで欲しいです。
先日のオーシャンSでも「開けるよ」の言葉の意味を取り違えてレースにならなかったと聞きます。
こんなことは絶対に止めて欲しいです。買った馬券が紙くずになるのは仕方なないと思いますが
人為的なものは公正の観点から言って問題です。

事故を前提とした馬券は買えませんから・・・

ところで、前に紹介して頂いた優駿3月号買いました。レースDVDは面白いですね。
ミスターシービーは改装後の東京だったら勝っていたと思っちゃいます。(直線が延びたから)
過去のレースの当事者にはなれませんが、未来のレースの当事者になれると思うと「競馬っていいな」
とふと思いました。

Posted by: ナルトーン | March 12, 2008 at 07:19 PM

ナルトーンさん

こんばんは。

岡部さんがガッツポーズをしないのは、過去に馬を殺めてしまったからなのですね。

それは知りませんでした。

オーシャンSのスタートの件は多くの競馬ファンに不信感を与えました。

その後のサンアディユの件もあり、競馬の暗い部分が衆目に晒された感じがしました。

競馬があまりにもビジネスに傾いてしまうと、犠牲になるのは声を聞いてもらえない馬たちなのではないでしょうか。

優駿の3月号買われましたか!

レースDVDはかなり貴重な映像もあって楽しめますよね。


全てのレースの当事者でいたい自分がいますが、ナルトーンさんのおっしゃる通り、未来のレースの当事者にこれからずっとなれればいいなと思います。

競馬っていいですよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | March 13, 2008 at 12:57 AM

治郎丸さん はじめまして
初書きこみさせていただきました この所少々涙もろい
競馬歴一年ちょっとの 一姫三太郎と申します。

競馬という枠だけにとどまらず、常に多方面からのアプロ-チで 競馬を楽しく 鋭く 真摯に語る次郎丸さんのメッセ-ジに いつも感銘を受けています。

今回のお話については、当日 就寝前に拝見して 床につきそして それまで数日間に起こった悲しい出来事を思い出し不覚にも涙が止まらなくなってしまい、翌日 不細工に腫らした目で仕事に行くことになってしまいました。

四位騎手の ‘最後はちゃんと牧場に帰してあげたい’
なんて優しく 愛情に満ちた言葉でしょうか。
‘馬の心の声を聞く’競馬にたずさわる全ての人が こういう気持ちを持っていてくれる事を願います。

競馬のことを知れば知る程 反比例するかのように 競馬を楽しむ事が辛くなる時があります。馬が走るのをみて 悲しくなる事があります。
サラブレッドは この地上で 一番美しい生き物であると同時に、一番悲しい生き物であるのかもしれません。
サラブレッドの光と影 その全てを受け入れる事ができなければ 競馬を楽しむ資格などないのかもしれませんね。

 

Posted by: 一姫三太郎 | March 17, 2008 at 01:11 AM

一姫三太郎さん

はじめまして。

コメントありがとうございます。

私の書いたエントリーから、そこまで深く考え、こうした心温まる書き込みをして頂いたことに感謝しております。

一姫三太郎さんのような方がいる限り、競馬はもっともっと良いものになっていくと思います。

おっしゃる通り、競馬というスポーツは光と影が極端に入り組んでいますよね。

そもそも、サラブレッドはある意味人間の道楽の道具として生み出された生き物ですから。

それでも、いや、だからこそ、彼ら彼女らの心の声を聞こうとする気持ちを決して忘れてはいけないのだと思います。

馬券が当たることも素晴らしいことですが、私たち競馬ファンも、まずはサラブレッドの心の声を聞ける人間でありたいですよね。

横山騎手の言葉を借りると、これは繊細すぎるということではなく、競馬を本当の意味で楽しむためには必要な想像力のひとつなのだと思います。

失われたものは帰ってきませんが、私たちにできることは、こうして改めて競馬について考えてみることですよね。

これからもよろしくお願いいたします。

Posted by: 治郎丸敬之 | March 17, 2008 at 01:41 AM

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