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集中連載:「調教のすべて」第7回

6の「後躯(腰)の強化につながる」は、坂路コースは後肢に負担が掛かりやすいので、自然と腰から尻にかけての強化につながっていくということだ。坂路に入れたての頃は、後肢に負担が掛かりすぎて、どうしても腰に疲れが出てしまうのだが、腰は一気には壊れることはない。腰に疲れが出てきたときには調教を軽めにする、ということを繰り返していると、グングンと腰が強くなっていく。腰が強くなれば、坂路コースは腰に疲れが出やすいという欠点はあるが、それを乗り越えていけば、逆に欠点が長所となるのである。

腰が強くなれば、当然のことながらレースで成績は上がる。たとえば、ハーツクライは5歳の秋にして、ようやく本格化したのだが、それまでは腰が甘くて、道中でレースのペースについて行くのがやっとの馬であった。最後は素質で追い込んで来ても、時すでに遅しというレースを繰り返していた。5歳の夏休みを経て、腰がパンとしたハーツクライは、ジャパンカップではレコード決着の2着、続く有馬記念ではあのディープインパクトに土を付け、ドバイシーマクラシックでは逃げ切り勝ちを演じ、キングジョージでは歴史に残る名勝負を繰り広げた。

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最後のジャパンカップはノド鳴りの影響で惨敗してしまったが、腰がパンとしてからのハーツクライは、ディープインパクトに匹敵するだけの強さを持っていた。それもこれも、橋口厩舎のノウハウが詰まった坂路調教の賜物であったように思う。もしハーツクライを平坦コースでしか調教できなかったとすれば、果たしてG1レースを勝てるだけの馬になっていたかどうか疑問であるし、あれだけの本格化はまず望めなかっただろう。

7の「頭が低くなる」は、坂路コースは前のめりのフォームでなければ上がれないため、自然とそういうフォームになるということである。頭が低くなるということは、首をうまく使い、前脚の伸びが良くなることにもつながる。もちろん、生まれつき首の高いフォームで走る馬を、その欠点を少しでも矯正するため、坂路コースに入れることも多い。

次に、美浦トレセン(関東)と栗東トレセン(関西)における、坂路コースの違いについて説明したい。同じ坂路コースでも、両者では全体距離や勾配までが違ってくるのである(下図参照)。

栗東トレセン
Rittouhanro

美浦トレセン
Mihohanro

まず大きく異なる点は、何といっても高低差である。栗東トレセンの坂路コースが32mの高低差があるのに対し、美浦トレセンのそれは18mしかない。それに対し、坂路コース全体の距離は栗東トレセンが1085m、美浦トレセンが1200mであるから、その勾配の違いは歴然としている。

また、調教タイムを計測する区間(800m)までの助走距離も異なる。栗東トレセンは、スタートしてわずか70mの助走距離で坂路を駆け上がっていくのに対し、美浦トレセンでは270mもの助走距離があってから坂路を登ることが出来る。総じて美浦の坂路コースの計時タイムの方が速いのは、これが大きな理由である。

つまり、勾配が強いことに加え、助走距離が短いことも手伝って、美浦に比べ、栗東の坂路コースでは競走馬にとって厳しい調教が課せられることになる。美浦に坂路コースが出来ても、一向に関西馬との力差が埋まらなかったのは、この坂路コースの規格の違いによるところが大きい。なるべく助走をつけずに駆け上がるなどの工夫をしても、いかんせん勾配の違いだけは避けがたい。

(第8回へ続く→)

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Comments

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