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集中連載:「調教のすべて」第5回

それでは、コースについて話を進めて行きたい。

具体的なコースの種類は以下のとおりである(カッコ内は代表的な表記方法)。

①坂路コース(美坂、栗坂)
②ウッドチップコース(南W、CW、DW、函W)
③ダートコース(南D、北C、北B、栗B、栗E、札ダ、函ダ、小ダ)
④芝コース(南芝、栗D)
⑤ニューポリトラックコース(美ポもしくは南P)
⑥プール(プール)

①の坂路コースは、ご存知のとおり、競馬界に大きな革命をもたらした調教コースである。昭和62年に栗東トレセンに新設されるや、確実に効果を上げ、それまでの関東馬優勢の潮流を一気にひっくり返し、その西高東低の流れは現在に至るまで続いている。一方、美浦トレセンでも平成5年に坂路コースが新設されたものの、直線部分の短さなどの問題もあり、未だ関西馬優勢の流れを変えるまでには至っていないのが現状である。

ちなみに、2007年度の年度代表馬および部門別最優秀馬は、かろうじてゴスホークケン、ダイワメジャー、コイウタの3頭の関東馬が選出されたものの、年度代表馬のアドマイヤムーンを筆頭に、11頭中8頭を関西馬が占めている。今でこそそのような状況だが、坂路コースが出来る直前までは、なんと年度代表馬の各部門に関西馬が1頭も選出されない年もあったというから驚きだ。もちろん、坂路コースが全てではないが、強いサラブレッドを作る大きな要素となっていることには異論はないだろう。

坂路コースの利点として、思いつくところを順に挙げてみたい。

1、故障が少なくなる
2、心肺機能が鍛えられる(スタミナがつく)
3、引っ掛かる馬を落ち着かせる
4、運動時間が長くなる
5、ピッチ走法をマスター出来る
6、後躯(腰)の強化につながる
7、頭が低くなる

1の「故障が少なくなる」については、馬場がウッドチップなのでクッションがよくて柔らかいということと、もっと単純に、坂路なので平坦で走るようなスピードが出ないことが理由である。競走馬はスピードが出れば出るほど故障しやすくなり、骨折するケースも多くなる。

また、坂路を走る時の走り方は、後脚に掛かる負担が大きく、前脚のそれは平坦コースに比べ、かなり軽くなる。競走馬の故障のほとんどは前脚の部分なので、前脚に負担の少ない坂路コースで故障が少ないのは当然のことであろう。

2007年度こそ不振に終わったが、栗東で坂路コースを中心として調教を行う森秀行厩舎の馬は、滅多に故障しないことで有名である。レースに出走するような馬でも、騎手が乗って怖くなるような脚元がおぼつかない馬もいるが、森厩舎の馬は安心して乗っていられるという。それはやはり坂路で前脚に負担を掛けないように乗られているということが大きい。だからこそ、たとえばノボトゥルーやシーキングザダイヤのように、高齢まで走り続けることの出来る馬が森厩舎には多いのだ。

Tyoukyou05 by sashiko

故障が少なくなるということは、坂路コースは少し脚元に不安のある馬やソエが出てきた馬に対して使うこともあるということだ。これまで平地コースで追い切られていた馬が、急に坂路コースのみで調教をし始めたら、脚元に不安があるのかもしれないと疑ってみても良いだろう。

2の「心肺機能が鍛えられる」は、坂路調教がインターバルトレーニングになるからである。駆け足で登り、常歩で下るという繰り返しをすることによって、心肺機能の強化につながるのだ。また、同じ距離を走るのでも、平地より坂路の方がキツいのは当然で、坂路コースでの4F(800m)は平地のコースの2000m以上に相当すると言われている。坂路コースでは長距離戦に必要なスタミナはつかないという説もあるが、そんなことはないだろう。

思いつくところでは、坂路を中心として調教されたダインスインザダーク、エアシャカール、ザッツザプレンティ、ソングオブウインドが菊花賞を勝ち、スズカマンボは天皇賞春を勝ち、ビワハヤヒデ、ヒシミラクルはそのどちらにも勝利している。坂路コースは、長い距離をゆったり走るトレーニングではないが、心肺機能を高めることでスタミナを強化することも出来るということの証明である。

Tyoukyou06 by sashiko

3の「引っ掛かる馬を落ち着かせる」は、インターバルトレーニングと大いに関係がある。激しい運動をしたあと、林の間の馬道を常歩で歩くことによって、精神の沈静化をうながし、馬が落ち着くということだ。平坦コースの場合、コースに入ってから出るまで、ずっと走っているので馬がカッカしてしまうのである。引っ掛かって行ってしまうような馬は、平坦コースではますます引っ掛かるが、坂路に入れると落ち着くことが多い。また、坂路コースは一気に行ってしまうと最後まで持たないので、引っ掛かる馬にとっては、息を入れながら走る練習にもなる。

(第6回に続く→)

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