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集中連載:「調教のすべて」第10回

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⑤のニューポリトラックコースについては、現状で分かっている限りの利点を挙げてみたい。

1、馬の脚元に優しい
2、馬場の悪化が少ない
3、目に外傷を負うリスクが少ない
4、人馬の健康にとっても良い

何といっても、ニューポリトラックコースの最大の利点は、1の「馬の脚元に優しい」ということである。クッション性としては、現状ではダートコースよりも柔らかく、ウッドチップコースよりも硬いといったところだろうか。これは材質の厚さを変えることで調整できるので、将来的にはウッドチップコースと同じくらいの柔らかさになるかもしれない。また、砂にゴムや繊維等を混ぜ込んだものだけに、グリップ性にも優れ、滑る危険も少なく、安心して走ることが出来る。

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2の「馬場の悪化が少ない」のは、ダートコースやウッドチップコースに比べ、ニューポリトラックコースが優れた排水性を持っているからである。素材自体が水分を吸収することが少ないため、すぐに流れて出てしまい、雨が降っても馬場が極端に悪化しない。ポリトラックコースがよく全天候型と呼ばれるのはそれゆえである。天候によって追い切りの予定を変更する必要がほとんどないのだ。

3の「目に外傷を負うリスクが少ない」は、前を走る馬が蹴り上げる木片が目に直撃しやすいウッドチップコースに比べ、ニューポリトラックコースの馬場は素材の関係でキックバックが少ないということである。馬が目に外傷を負ってしまえば、たとえ仕上げが完璧に進んでいたとしても、しばらく休ませざるを得ない。ウッドチップコースで追い切る時には、木片が馬の目や顔に直撃しないように、前の馬との間隔や位置取りには気を遣うものだが、ニューポリトラックコースでは、その心配がほとんどないということだ。

4の「人馬の健康に良い」とは、競馬や馬の競走能力とは直接に関係はないが、走る度に砂や埃が舞い散るダートコースとは違い、ニューポリトラックコースは乾燥時でも埃がほとんど立たないので、乗り役や競走馬がそれを吸い込むことが少ないということだ。当たり前のことではあるが、競馬に携わる人間も馬も健康でなければ、レースに行って好成績を収めることは難しいだろう。

さらに、実際にニューポリトラックコースが用いられるようになり、以下のようなメリットがあることも発見されている。

5、ハローがけの時間のロスがない
6、実戦形式での追い切りが出来る
7、長めの追い切りが出来る

5の「ハローがけの時間のロスがない」とは、通常、ダートコースやウッドチップコースであれば、ある一定の時間の間隔おきに、ハローがけといって、専用の車両を使って、馬の足跡や穴が掘れてしまった馬場をほぐして均一にしなければならないところを、ニューポリトラックコースはその必要がないということである。ハローがけは競走馬の安全を確保するためには必要な作業で、避けられないのだが、どうしても時間が掛かってしまい、特に追い切りが集中して行われる水曜日の朝の時間帯などは、追い切り待ちの馬の渋滞が起こるほどである。馬によっては、待たされることで精神的に疲労してしまうこともあるだろうし、このハローがけの時間がなくなることによって、予定通りのタイミングで追い切りが行われることになるのだ。

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6の「実戦形式の追い切りが出来る」とは、3の「目に外傷を負うリスクが少ない」と大きな関係があり、ニューポリトラックコースでは前を走る馬の蹴り上げを気にしなくてもよいので、馬を後ろに置いた調教が出来るということである。

もう少し厳密に述べると、ウッドチップコースで追い切る時には、前を走る馬の真後ろにつける縦の追い切りはなかなか難しく、どうしても馬を横に置いた併せ馬の形を取らざるを得ない。そもそも、競馬は実戦に行けば、横だけではなく前後ろにも馬がいる形で展開することになる。そのような実戦に即した調教がウッドチップコースでは実現することは難しいのだ。

それでも縦の追い切りをしたい場合はどうするかというと、前の馬との距離を、蹴り上げた木片が馬の顔に当たらず、胸に当たるような間隔に保つのだ。ただし、一定間隔を保って走ることは案外難しく、当然、ひとつ間違えば木片がモロにぶつかってしまうというリスクがある。もうひとつは、後ろから追走する馬を少し内側に置くということだ。なぜ外側ではないかというと、コーナリングの際に、前の馬が蹴り上げた木片は遠心力で外に向かって飛び散ってくるからである。それを避けるために、前を走る馬の内側を走り、コーナーでは内側から抜き去るのだ。とはいえ、やはりレースでは外から抜いて行くことの方が多いため、どうしても実戦的ではない。

以上の点をニューポリトラックコースでの追い切りは克服することができる。併せ馬を行うにしても、前を行く馬の真後ろにつけて折り合いを教え、コーナーでは前の馬の外をキッチリと回りながら抜いていくという実戦さながらの追い切りをかけることが出来るのだ。これは坂路コースにもないメリットであり、レースを経験したことのない新馬や、折り合いに難のある馬を教育するためにはもってこいの調教コースである。

7の「長めから追い切りが出来る」とは、ニューポリトラックコースは美浦トレセンの南馬場、ウッドチップコースと芝コースのさらに外に作られたため、全周が1858mもあり、2つのコーナーを使うだけで6ハロンの追い切りが出来るということだ。これまで6ハロンの追い切りを行うには、ウッドチップコースでは4つのコーナーを回りながらになってしまい、どうしてもスピードを落とさざるを得ず、ビッシリ長めから追い切ることが出来ないでいた。それが脚元に負担の掛からないニューポリトラックコースで、6ハロンの追い切りがビッシリできるようになるのだから、馬のスタミナを鍛える効果は非常に大きい。

(第11回へ続く→)

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