◎エアパスカル

華やかなオークスの週にこんなことを書くと怒られるかもしれませんが、人間と同じように馬にも性豪と呼ばれる馬がいます。その中でも最も有名なのが、ハイセイコーやアカネテンリュウ、タケシバオーなど数々の名馬を輩出したチャイナロックではないでしょうか。通常、種付けの前には、アテ馬が繁殖牝馬を発情させて種付け行為を可能な状態にするのですが、チャイナロックはアテ馬に任せるのではなく、自ら進んでこの行為を行い、しかも相当に上手かったそうです(笑)。現在ほど獣医学が発達していなかった時代に、29歳の高齢まで種付けを行い、生涯で1300頭以上の繁殖牝馬と交配を行ったと記録されています。
もちろんその逆もあって、たとえ種牡馬であっても種付けに淡白な馬もいます。ザテトラークやブランドフォードは、種付けに淡白な馬は種牡馬として成功しないという定説を覆し、わずかな頭数しか誕生させていないにもかかわらず、種牡馬として子孫を大繁栄させた馬です。
ザテトラークは芦毛のアイルランド産馬で、現役時代は7戦無敗の最強スプリンターでしたが、種牡馬としては苦しい日々を送ることになりました。とにかく種付けが嫌で、スタッフにうながされて繁殖牝馬の背中に乗るや、1、2回ピストン運動をしただけで発射せずに降りてきてしまうのが当たり前でした。また、馬は射精をすると尻尾の付け根を痙攣させるため、スタッフはその仕草を見て種付け完了を確認するのですが、ザテトラークは頭も良かったのでしょう、尻尾を痙攣させて射精したフリをすることもあったそうです。結局、年間で6、7頭前後、生涯で130頭ほどしか産駒を誕生させることが出来ませんでした。
ブランドフォードも同じく種付けに興味を示さなかった種牡馬です。興奮した繁殖牝馬を目の前にしても、ボーっとしながら周りを歩き、30分から1時間ほどしてようやく行為に及ぶといった始末でした。いつまで経ってもその気にならないこともしょっちゅうで、いつも種付けスタッフを困らせていたそうです。それでも、産駒が誕生するやもの凄い勢いで活躍し、イギリスの3冠馬バーラムを筆頭にたくさんの名馬を輩出しました。
日本の競馬を席巻したノーザンテーストやサンデーサイレンスにも、実はこの2頭の血が色濃く流れています。サンデーサイレンスはマムードの4×5のクロスを持ちますが、このマムードの祖母の父がザテトラークで、祖父がブランドフォードです。マムードはその名こそ目立ちませんが、サラブレッドの血統を裏で取り仕切っているような種牡馬界の裏番です。種付けに淡白だったザテトラークやブランドフォードからマムードが誕生し、そこからさらにノーザンテーストやサンデーサイレンス生まれたという事実は本当に面白いですね。
私は3年ほど前、社台スタリオンステーションを見学させてもらいましたが、シンボリクリスエスやマンハッタンカフェ、クロフネなど、今をきらめく種牡馬たちと同じ厩舎の一番隅の馬房で、物音ひとつ立てず申し訳なさそうに暮らしている馬がいました。スタッフの方にその馬の名前を尋ねたところ、「ウォーエンブレムです」という答えが返ってきました。とても鳴り物入りで日本に輸入されたアメリカの2冠馬には見えませんでした。種牡馬としての評価がガタ落ちしただけではなく、毎日嫌いなことばかりやらされて、サラブレッドとしての自信を失ってしまっていたのでしょう。馬房の中から目だけが光っていたシーンは今でも忘れられません。
2003年には40頭の牝馬を受胎させ、ようやく復調気配を見せたのですが、翌年の2005年には再び9頭と激減しました。そして、2006年は僅か1頭になり、あらゆる策が講じられたものの、ついに2007年以降はウォーエンブレムの仔が生まれてくることはありませんでした。
それでも、2005年に誕生した33頭の中から、キングスエンブレムがすみれS、ショウナンアルバが共同通信杯、エアパスカルがチューリップ賞、ブラックエンブレムがフラワーCを制しました。産駒全体の勝率は18.8%と、サンデーサイレンスの12.1%を大きく上回っています。もの凄い遺伝能力ですよね。もしウォーエンブレムが、サンデーサイレンスのように年間200頭もの産駒を誕生させることが出来ていたら、果たしてどうなっていたのでしょうか。
さて、今年のオークスにも、ウォーエンブレム産駒が2頭登場します。ブラックエンブレムも魅力があるのですが、思い切って本命は◎エアパスカルに打ちます。前走の桜花賞では9着に惨敗してしまいましたが、先手を奪えなかっただけではなく、厳しいペースを前で追走した割には、最後まで良く頑張っていました。スローに流れたチューリップ賞と正反対のペース(展開)だっただけに、いきなりの速い流れに戸惑い、自分のペースで走られませんでしたね。今回はこれといって行きたい馬も見当たらず、外枠からスムーズに逃げもしくは先行できるのではないでしょうか。イメージで言うと、ダイワエルシエーロが勝った時のような位置取りです。オークスは桜花賞組から狙うのは基本ですが、その中でも巻き返しが期待できるエアパスカルに妙味があります。
また、藤岡佑介騎手の勢いも見逃せません。先週の日曜日は4連勝して、安藤勝己騎手を抜いて関西リーディングの第3位に上がってきました。技術的な部分での向上はもちろんのこと、常に馬のリズムに合わせて騎乗しているのが藤岡騎手の素晴らしいところです。いつも楽しく誇らしげに乗っている姿を見ると、家族からもしっかりと応援されているんだろうなと思います。
これはジョッキーだけに限ったことではありませんが、やはり家族からの応援があるのとないのとでは大きな違いがあります。昔は一人前になるまで帰ってくるな!と言って世間に送り出したものですが、今は違いますよね。イチロー選手や石川遼くんのように、トップに立つアスリートの陰には、必ずといっていいほど、自分たちの子供のやりたいことを心から応援している家族の姿が見え隠れします。あの岩田康誠騎手のお父さんも、熱烈な岩田康誠騎手の追っかけだそうですね。藤岡佑介騎手には、これから日本を背負って立つジョッキーのひとりになって欲しいものです。
押し出される形で1番人気になるのはリトルアマポーラでしょうか。牡馬を相手の重賞でも僅差の4着と健闘したように、このメンバーでも能力は上位です。東京競馬場を経験していることもプラス材料です。前走はクイーンSから間隔が空いて、仕上げが難しく、少し重めが残った体調での出走となったのではないでしょうか。道中から行きっぷりが悪く、追い出してからの反応もイマイチでした。今回は馬体を回復させながらもキッチリと調教が施され、前走に比べてもさらに上向きです。ただ、後ろから行く脚質に加え、大外枠を引いてしまい、外々を回されてしまう可能性があります。また、切れ味が特徴な馬だけに、重馬場になりそうな雨模様も心配です。先頭で駆け抜けるだけの能力はありますが、極めて乗り難しい状況でもあるという理由で、この馬を本命にはしませんでした。
桜花賞で1番人気を集めたトールポピーは、なぜか馬体重を大幅(-10kg)に減らしてしまい、惨敗してしまいました。この馬向きの展開になっただけに残念でしたが、ここに来て、本番が近いことを悟ると馬が自分で体を作り始めるようになったということです。周りの状況や人間の行動から本番が近いことを知ることが出来るほどに頭が良いということですが、そのことがかえってトールポピーにマイナスに働いてしまったのですね。今回も輸送があり心配ですが、体つきを見ると前走に比べ、ふっくらと仕上がっています。この馬は決して早熟タイプではありませんので、普通に走れば、このメンバーでも一枚上の底力を秘めています。ただ、追い切りで引っ掛かる仕草をしていたのが気になったのと、道悪が得意なフットワークではないという点で、本命は打ちませんでした。
桜花賞で3着した関東馬ソーマジックは、今回、長距離輸送をしなくても済むメリットがあります。その分、シッカリと調教が施されていますし、前走からの上り目もかなり大きいはずです。普通に走れば勝ち負けになるはずですが、私としては、馬体に硬さを感じるというか、パワー型の馬であるように思えて、芝の時計の速い馬場での決着に不安を感じていました。特にスローの瞬発力勝負になりやすいオークスは、この馬向きのレースにはならないということで、あまり評価はしていませんでした。しかし、馬場が重くなることがこの馬にとってはプラスに働くはずで、そのことによって勝ち切るシーンもあるかもしれませんね。
桜花賞組以外では、フローラSを勝ったレッドアゲートに注目しています。人気になりそうな馬たちの中では好枠を引きましたね。道中は内々で折り合って、最後の直線で末脚を爆発させるにはちょうど良い枠です。内田博幸騎手を鞍上に迎え、お膳立ては整った感はあります。馬群の中で泥を被って、嫌気を差してスムーズさを欠いてしまうなんてことがなければ、前走の再現をすることも可能でしょう。ただ、馬体的にはまだ幼さを残した未完成の印象を受けますので、将来性はともかくとして、現時点では完成度の高さで桜花賞組の方が有利だと評価しています。
菊花賞2
有馬記念
阪神大賞典
天皇賞春1
天皇賞春2
宝塚記念1
宝塚記念2
宝塚記念3
凱旋門賞1
凱旋門賞2
ジャパンカップ
ファイナルフライト1
引退式
ハーツクライ
伝説のウオッカ
メイショウサムソン
スイープトウショウ引退記念
アドマイヤムーン
ダイワスカーレット桜花賞
ディープスカイ
ウオッカ安田記念
伝説の天皇賞秋
ダイワスカーレット有馬記念
ロジユニヴァース
Strongest Vodka
カンパニー
Keiba is beautiful
Comments
昔むかし、素人女性(もちろん競馬のですよ)に「勝負服」って何ですか?と質問され、勝負パンツみたいにここ1番の時に着るものと答えて顰蹙をかったQuinaです。すみません、次郎丸さんのエントリーに煽られちゃいました(笑)。
さてと…オークスですね。
我が国ではこのレースの勝馬を「樫」の女王と言いますが、「oak」って本家英国では「楢」(ナラ・ミズナラ)の事ですよね。何で「樫の木」になっちゃったんでしょうね。今更変えられないし…
Aの印は
◎ライムキャンディ
○オディール
▲リトルアマポーラ
△エアパスカル となりました。
◎ライムキャンディは母マルカキャンディ(01府中牝馬S勝ち)×父タニノギムレットから東京コースで大仕事をしてくれそうなので。前走12着には目をつぶります。
○オディール…理由は分かりませんが、何故かオークスは1000mも短い芝1400mで良績をあげた馬の好走実績があります(特に紅梅S)。
07 ローブデコルテ(紅梅S1着)
06 カワカミプリンセス(新馬・君子蘭Sと連勝)
04 紅梅S1・2着→オークス2・1着 ということで1400m(1-1-0-0)のオディール指名。
▲リトルアマポーラ…桜花賞で消えた「ひなげし」のリベンジ。でも前日1人気の幸四郎と大外を嫌って(笑)▲。
△エアパスカル
01年のテイエムオーシャンを最後に、チューリップ賞の勝馬は、全て本番の桜花賞では敗れていますが、それらの馬の過去5年でのオークスの成績を振り返ってみますと。②④④⑩着とウオッカのダービー①着と何とも微妙。それで4番手評価が丁度良いかなと思って△に指名します。紅梅Sも2着ですし。
藤岡佑介ジョッキーも、同期の川田ジョッキーのGⅠ初制覇に刺激されているかと。
以上です。
Bは今回お休みです。何かピンと来るものがありませんでした。
そういえば次郎丸さんと初めてお会いしたのは昨年のオークスの前日でしたね。
一年間ありがとうございました。
Bは1周年記念で次郎丸さんの◎をAに加えて買おうかと思っていたら…おやおや被りましたね(笑)。
たまには二人揃って笑いましょう!記念でもあるし…
Posted by: Quina | May 25, 2008 at 01:21 AM
Quinaさん
素人女性に勝負服ですか!(笑)
でも確かに語源は同じ気がする…
Aがライムキャンディとは随分思い切りましたね。
今回は私も思い切った方なのですが、その上を行っています。
Quinaさんの印どおりの3連単で決まれば、大変なことになりそうです。
紅梅Sのデータは面白いですね。
直接の関連性は見出せませんが、それだけオークスがスタミナを問われるレースではないということでしょうか。
三浦皇成騎手が騒がれていますが、藤岡佑介騎手も伸び盛りの騎手ですね。
中央のベテラン騎手と若手騎手、そして地方の叩き上げジョッキーが切磋琢磨している現状は、なかなか面白いのではないかと思っています。
さて、昨年のオークスからもう1年も経ったのですね。
Quinaさんとは随分前から親しくさせて頂いているような気がします。
おかげさまで、この1年、たくさんの素晴らしい経験をさせていただきました。
本当にありがとうございました。
またこれからも末永く競馬を一緒に楽しんでいきましょうね!
今日は共に笑えることを願って。
Posted by: 治郎丸敬之 | May 25, 2008 at 03:05 AM
リトルアマポーラは首が高い気がする。武幸四郎も3年周期でしかGⅠを勝っていないとの事なので、軽視したくなる。
レッドアゲートは調教が良かったですが、信頼まではしにくいですね。フローラSのレベルも少し疑問だったりして。
トールポピーはショックウェーブ療法はどうだったんですかね?馬が言葉をしゃべれたら感想を聞いてみたい所です。
今回はどこからでも買えそうですが、桜花賞のゴール前でリトルに並ばれて差し替えしたソーマジックを上位に獲りたい。
◎ソーマジック
○アロマキャンドル
▲トールポピー
△ムードインディゴ
×リトルアマポーラ
×シャランジュ
で現在は考えています。
Posted by: はやひで | May 25, 2008 at 04:05 AM
はやひでさん
こんばんは。
昨年と同じく、オークスにしては珍しい淀みのない流れで、最後の直線の攻防は見所がありましたね。
審議にはなりましたが、全体的には素晴らしいレースだったと思いました。
池添騎手がかなり見事に乗っていたのが印象的でした。
ソーマジックは前がふさがってしまい残念でしたね。
こういう馬場が合うと思っていただけに、あれがなければ上位には来ていたと思います。
さて、来週はいよいよダービーですね!
Posted by: 治郎丸敬之 | May 26, 2008 at 12:07 AM
うーん。オークスよりも東海Sの方が残念で。
ヤマトマリオン軸で3連複を手広く流したのですが、
ラッキーブレイクは買ってないよー ってな感じ。
ラッキーブレイクも一昨年位は強かったんですが、完全にピーク過ぎたと思って軽視してしまいました。
しかし、ヤマトプリティ産駒の馬を追いかけているのに、なぜか馬券は取れず・・・。寂しい限りです。
東海Sで叫びすぎて、オークスの時には既に燃え尽きていて 「もうどーでもええわ」ってな感じでした。
あそこまで冷めてGⅠ見たのも珍しい。
Posted by: はやひで | May 26, 2008 at 08:16 AM
はやひでさん
えぇぇぇ、ヤマトマリオン買っていたのですか!
そういえばヤマトプリティ産駒を追っかけていましたもんね。
それでラッキーブレイク抜けとは…
だいぶ古いですが、同情するなら金をくれ、といった心境なのではないでしょうか。
今年のオークスはなかなか激しいレースでしたが、はやひでさんにとってはどーでも良かったのでしょうね(笑)
ぜひとも気持ちを立て直してダービーへ向かいましょう!
Posted by: 治郎丸敬之 | May 27, 2008 at 01:29 AM
嫁からも馬券のツメが甘いと駄目ダシ喰らいました。
(;´Д`)
安田記念ウオッカ出走みたいですね。
何を考えているんでしょうか?あの陣営は?
最初から安田記念直行したのなら判るのだが、武豊の騎乗を断りたい(スズカフェニックスがいてる)から走らすのかな?意味が判らん。
歴史的牝馬は人間のエゴで輝きを無くすのかも知れません。
Posted by: はやひで | May 27, 2008 at 08:30 AM
はやひでさん
現実のレースでもダメを出されつつ、嫁さんにダメだしされるのきついですね(笑)
私なら「お前に何が分かるんじゃー」ってちゃぶ台ひっくり返しますけど(ウソ)。
ウオッカは安田記念に出走ですね。
ゆっくり休ませて、安田記念からで良かったのではないかと思います。
もしかしたら宝塚まで考えていたりして…
Posted by: 治郎丸敬之 | May 27, 2008 at 10:54 AM
東海ステークス ラッキーブレイクの複勝で
フクフクのオニキスです♪
**********************
角居厩舎 ならびに 谷水オーナーの考えていることが
わかりません。
なぜダービー馬を大切にしない??
故障させるつもり??
谷水オーナーは ウオッカ出走のレースで
応援幕が出ていないことに気がついていないのでしょうか??
ウオッカファンは
応援したい!(期待に応えられる馬だから)
だけど・・・・このローテーションは・・・・危ない。
そう思っているのが まだ わからないのでしょうか?
Posted by: onyxkiss | May 28, 2008 at 08:24 PM
onyxkissさん
東海Sの的中おめでとうございます!
ラッキーブレイクとは凄いですね…
>角居厩舎 ならびに 谷水オーナーの考えていることが
>わかりません。
もしかしたら何か大きな秘密があって、引退後に明かされるのかもしれませんが、普通に考えて、誰が見ても考えられない使い方だと思います。
常識を打ち破ってダービーを勝ったという成功体験から抜けられないのでしょうか。
ウオッカの横断幕が出ていないとは知りませんでした。
そういうウオッカファンの気持ちをぜひ汲み取って欲しいですね。
Posted by: 治郎丸敬之 | May 29, 2008 at 12:35 AM