何も死ぬことはない

最近、悲しい出来事が続きますね。私たちの誰もが知っている馬たちが、次々とこの世を去っていきました。走るために生まれてきたサラブレッドにとっても、競馬のレースは激しく厳しいものです。特に現代の競馬は経済的になってきていることもあり、悲しいかな、私たち人間と同じく、サラブレッドも心身に大きなストレスを抱えて走っています。胃潰瘍を患っていない競走馬はいないとも言われています。明日、別の馬が倒れることがあっても何ら不思議はありません。
人や馬の死を想う時、私はいつも映画「エレファントマン」の最後のシーンで用いられた一編の詩を思い出してしまいます。イギリスの詩人テニソンの「何も死ぬことはない」という詩です。組織が変形・膨張する難病に侵された主人公のジョセフ・メリックが、薄れていく意識の中で、変わりゆく自分を愛し続けてくれた母親が朗読するこの詩を聞くラストシーンです。
Never, oh! never, nothing will die;
The stream flows,
The wind blows,
The cloud fleets,
The heart beats,
Nothing will die.
とんでもない。何も、死ぬことはない
川は流れる
風は吹く
雲は空を行く
心臓は鼓動する
何も死ぬことはない
誰にとっても、明日が訪れるという保証などどこにもありません。今日こうして生きていることと、明日も生きていることの間には明確なつながりなどなく、彼我の間には深く広い川が流れているわけではありません。私たちの人生は、あたかも一本の線で出来上がっているように思えますが、そうではなく、ほとんど奇跡的な一瞬によってのみ存在し、これからも存在するのでしょう。
競馬のレースがそうであるように、私たちの人生も、必然的にこうなったのではなく、偶然が重なり続け、たまたまこうなっただけなのです。もしかすると、ほんのわずかな一瞬の違いで、私たちはここにいなかったかもしれません。ひとつ何かが違っていれば、全く別の人生を生きていたはずです。そして、今ここからさえも、全く別の人生を歩むことが出来るのです。
何も死ぬことはありません。私たちの人生は私たちが考えているほど、今ここにある絶対的なものではなく、川が流れたり、風が吹いたり、雲が空を行ったり、心臓が鼓動したりするように、もっと流動的なものなのです。全ては流れ、変化し続けていくのです。消えることはありません。
私たちにできることは、彼ら彼女らの個別の死を受け入れつつ、生をその全体において抱きしめることです。明日は何が起こるか分からないという根源的な不安と期待と喜びを抱きながら生きていくことです。今、頑張って走っている馬たちを応援することです。もちろん馬券も当てなければなりませんね。今週も競馬を思う存分に楽しみましょう!
映画「エレファントマン」のラストシーンです。興味ある方はどうぞ。(約4分間)
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