世代の強さ(弱さ)はあるのか?

競馬界でよく使われる「この世代は強いから(弱いから)」という世代間の力差を表す概念に、私は昔から違和感を持っていた。そこで、かつてルドルフおやじさんと手紙のやりとりをさせてもらった際、思い切って私の素直な疑問を投げかけてみたことがあった。2006年のエリザベス女王杯のことである。
治郎丸
「便宜的に世代をひと括りにすることもありますが、基本的に世代間での力差という概念には疑問があります。サラブレッドにはワインのような豊作の年という考え方は当てはまらないのではないでしょうか?やはり、馬1頭1頭の実力が全てであって、この世代が強いからこの馬も強いという捉え方は、どうもシックリきません。今年の4歳世代は、シーザリオは別格にして、確かにラインクラフト、エアメサイアあたりまではトップクラスの実力を持っていたと思います。ディアデラノビアもそれに次ぐ馬ですが、G1クラスだとワンパンチ足りないかなという印象です。」
ルドルフおやじさん
「3歳世代のおかげで、エリザベス女王杯のレベルが高くなったと思います。世代の強さというのはやはりありますね。農作物にも豊作年というのがあるでしょ?それだけの話です。人間にだってあるはずですよ。サラブレッドを特別な動物と見てはいけませんね。総じて強いというのは、何かあるはずです。総じて弱い世代の中にも、強烈に強い1頭はいます。カブラヤオーのように。」
このようなやりとりが行われた後、私は当時5歳馬であったスイープトウショウに本命◎を打ち、ルドルフおやじさんは◎カワカミプリンセス○ディアデラノビア▲スイープトウショウ△アサヒライジング×フサイチパンドラと印を打った。ご存知のとおり、結果は3歳馬カワカミプリンセスが先頭でゴールを駆け抜けたものの降着となり、2着に入った同じく3歳馬のフサイチパンドラが繰り上がりで優勝、私が本命を打った5歳馬スイープトウショウはクビ差の2着に終わった。
もしカワカミプリンセスの降着がなければ、3歳馬のワンツーで終わっていたわけで、ルドルフおやじさんの言う通り、総じて強い世代というものが存在することになる。しかし、強い世代であったはずの4歳馬ディアデラノビアが4着に敗れてしまった以上、この世代が強いからこの馬も強いではなく、馬1頭1頭の実力が全て、という私の考え方も正しいことになる。結局のところ、世代の強さはあるようでなく、ないようであるといった具合に、はっきりと結論が出ず仕舞いで2006年のエリザベス女王杯を私は終えた。
ところが、およそ1年半の年月を経た今年の天皇賞春にて、私は世代間の力差という概念の存在を目の当たりにすることになったのだ。私はアサクサキングスの敗因を、「前半1000mが思いのほか遅く流れてしまったことにより、上がりの速い競馬になってしまい、スタミナ勝負に持ち込めなかったため」と観戦記に書いたが、今振り返ってみると、それだけではなかった。アサクサキングスの最大の敗因は、今年の4歳馬と古馬の間にある厳然とした力差にあった。「スパートをかけた際も、さすがにサムソンはとりついてくるのが早かった。(上位2頭には)古馬一戦級の貫禄がありました」という四位騎手のレース後のコメントが、そのことを如実に物語っている。
さらに、今年の宝塚記念に至っては、過去10年間で4歳馬が8勝というレースの傾向にもかかわらず、勝ったのは6歳馬のエイシンデピュティで、2着は5歳馬のメイショウサムソンであった。4歳馬で最先着したのはアサクサキングスの5着、故障を発生してしまったロックドゥカンブの12着は度外視したとしても、3番人気に推されたアルナスラインはなんと10着。7歳馬であるエアシェイディやカンパニーにも先着を許すという情けなさである。雨が降って道悪になったことを考慮に入れても、あまりにも今年の4歳牡馬世代は弱すぎる。
世代の強さ(弱さ)というものは確かにある。
これが今の私の結論である。もちろん、強い世代に属する全ての馬が強いのではなく、弱い世代に属する全ての馬が弱いのということではない。世代間の力差とはつまり、これまで戦ってきたレベルの問題である。特に3歳馬と古馬、4歳馬と5歳以上の馬の間には、戦ってきたメンバーによるレベルの違いが生じるため、世代間の力差があって当然なのである。世代間の力差とは、タイムやラップだけでは分からない、レースの密度の濃さや厳しさを大局的に把握するためのツールのひとつと考えてよいだろう。

菊花賞2
有馬記念
阪神大賞典
天皇賞春1
天皇賞春2
宝塚記念1
宝塚記念2
宝塚記念3
凱旋門賞1
凱旋門賞2
ジャパンカップ
ファイナルフライト1
引退式
ハーツクライ
伝説のウオッカ
メイショウサムソン
スイープトウショウ引退記念
アドマイヤムーン
ダイワスカーレット
ディープスカイ
ウオッカ安田記念

Comments
世代間の格差はあると思うのですが、総じて古馬になり一定の期間後には拮抗した力関係になっていると思います。
例えば、春先まで4歳世代が弱くてもその世代が4歳秋、5歳春になった時に突然強くなって活躍する馬が現れ、結果平均した強さになるのでは無いでしょうか。
(あくまで憶測)
しかしながら、3歳クラシック時点で強豪が揃ったレースを味わった馬は、総じてその実力も高くなるのかな?という気はします。それが世代間の差になるのかなぁ?
Posted by: はやひで | July 09, 2008 at 08:40 AM
はやひでさん
こんばんは。
おっしゃる通り、4歳秋、5歳になるにつれ、力差は少しずつ拮抗してくるはずです。
ただ、それでも世代間の力差というのは大局的に見てあるかなと。
それにしても、平均した強さとは面白いですね。
キンカメの世代とディープの世代を比べると、明らかにキンカメ世代の方が上なのですが、それはディープ1頭が強すぎたのかもしれませんね(笑)
>3歳クラシック時点で強豪が揃ったレースを味わった馬は、総じてその実力も高くなるのかな?
→そうかもしれません。
私もまだはっきりとした理由は分かりませんが、レベルの高いレースを走った経験は大いにその後の成長と関係があると思います。
そういう意味では、今年のクラシックは牡馬が中の下で、牝馬が上といったところでしょうか。
Posted by: 治郎丸敬之 | July 11, 2008 at 01:04 AM
世代の力差というのはあると思いますが、その使われ方には疑問を感じています。
よく目にするのは、「A馬は○○世代、B馬は××世代。○○世代の方が強いからA馬を穴馬としておさえる」ような使い方です。
G1予想でもこのような論理をみるのですが、G1の舞台では大雑把すぎると思います。
G1は極限の能力を問うレースであり、個々の馬の能力がぼぼ全てであると思います。
G1にでてくる馬が世代を代表する馬であることは否定する気はありませんが、G1での力差はあくまでも戦ったメンバー内での個々の力差に過ぎないと思います。
(馬券の予想においては)世代という概念を適用するのはG3や1600万下のレースが適当だと思います。
1頭の強豪をものさしにするのではなく、ある程度のサンプル数になる上位レースにおける勝ち負けの差が世代間の差ではないでしょうか。
Posted by: 勝負師N | July 12, 2008 at 01:33 AM
勝負師Nさん
ご無沙汰しております。
週末にもかかわらずバタバタしており、お返事が遅くなりました(すいません)。
実は私もNさんとほぼ同じように考えていました。
ただ、今回のようなケースからも、世代の強さは大局的に競馬を俯瞰するひとつのツールになるかなと感じました。
もちろん、ミクロの視点で見れば、おっしゃる通り、個々の能力が全てだと思います。
ある程度のサンプル数となるG3や1600万下のレースい適用できるという考え方もよく分かりますよ。
どれだけのレース数をサンプル数となると考えるかは難しい問題ですが(笑)
それにしても、勝負師Nさん、今年は絶好調ですね!
また一緒に大勝負できる日を楽しみに待っています。
Posted by: 治郎丸敬之 | July 14, 2008 at 12:55 AM