(前回の続き)
しかし、実は、最終追い切りの全体時計がレースでの結果に直結しなかったケースもまた多い。
2006年毎日王冠(1着)
2006/10/04(水) 南W 良 助手 63.7-49.2-37.3-12.6 6 G強
2006年天皇賞秋(1着)
2006/10/25(水) 南W 重 助手 63.7-48.7-36.0-12.6 1強め
2006年マイルチャンピオンシップ(1着)
2006/11/15(水) 南W 稍 助手 63.9-49.6-36.6-12.3 2馬也
2006年安田記念(4着)
2006/05/31(水) 南W 稍 安藤 61.9-48.0-34.6-11.2 3 G強
上の3つの時計は、ダイワメジャーの2006年秋シーズン時の最終追い切りである。馬場の違いこそあれ、南ウッドコースで全体時計(5ハロン)が63秒台であれば、ダイワメジャーにとってはそれほど速い時計ではない。それでもレースに行くと、圧倒的な力を見せ付けて3連勝した。
by mighty
逆に、2006年の安田記念(1番下の時計)では、全体時計(5ハロン)が61秒台の好タイムを出しているにもかかわらず、最後の直線では伸び切れずに4着に敗れてしまっている。
上記の例からも分かるように、最終追い切りの全体時計の速い・遅いが、レースでの結果に必ずしも直結するわけではない。レースに行けばその他諸々の要素が絡み合ってくることもあり、体調が良いからといって必ずしも勝てるわけでもない。
確かに、最終追い切りの全体時計の速い・遅いがレースでの結果につながることもあるにはある。体調が悪ければ、追い切りで速い時計を出すことは難しく、体調が良いからこそ、追い切りでも自然と速い時計が出るということだ。
しかし、最終追い切りの全体時計の速いからといって、イコール体調が良いかというと疑問である。
たとえば、外国産馬としては唯一の10億円ホースとなったタップダンスシチーは、、凱旋門賞から帰国初戦の有馬記念で2着と好走した後、十分な休養を挟み、金鯱賞を3連覇した勢いを駆って宝塚記念に出走してきた。ハーツクライ、ゼンノロブロイ、リンカーン、スイープトウショウという錚々たるメンバーが揃ったにもかからず、タップダンスシチーは1.9倍という圧倒的な1番人気に推されることになった。前年の覇者だったことに加え、最終追い切りの動きがバツグンに良かったからである。
しかし、結果的には、前年同様早めにスパートをかけたにもかかわらず、直線では後続に次々に交わされて7着に破れてしまった。タップダンスシチーの型に持ち込んでの惨敗だっただけに、本来の走りが出来るだけの体調になかったことが敗因と考えられる。
そこで、宝塚記念に臨む際の最終追い切りと、金鯱賞におけるそれを比べてみたい。
金鯱賞(1着) 快勝!
2005/05/25(水) CW 良 助手 77.5-62.6-49.0-36.9-12.0 8 一杯
宝塚記念(7着) 惨敗…
2005/06/22(水) CW 良 助手 77.6-63.8-50.6-37.9-12.5 9 一杯
6ハロンでわずか0.1秒の差しかない、ほとんど同じ速さの全体時計であることが分かる。宝塚記念時の最終追い切り時計(77秒6)は、確かその日の1番時計であったように、栗東のCWコースでは相当に速い時計の部類に入る。それだけの動きを見せていたにもかかわらず、レースでは本来の走りが出来るだけの体調になかったということになる。
これには2つの理由が考えられる。ひとつは、一流馬になればなるほど、たとえ体調が少しぐらい悪くても、追い切りでは速いタイムで走ってしまうということである。1ハロンを13~14秒のペースで走ることなど、たとえ本来の体調になかったとしても、タップダンスシチーのような一流馬にとっては苦もないことなのだ。それにもかからず、私たちは1番時計が出ると「絶好調!」と囃し(はやし)立て、過剰な人気を作り上げてしまう。一流馬の動きには騙されてはいけないのだ。
もうひとつは、1番時計を出した時点をピークとして、体調が下降線を辿り始めたということである。追い切りで速いタイムで走ることは、体調の良さの表れである一面、あまりにも体調が良すぎると、レースが行われるまでにかえって調子が下向きになってしまうこともある。水曜日には英気が漲っていた馬が、レース当日には抜け殻のような状態になってしまうことなど、よくある話である。
このように考えると、調教の全体時計が速ければ速いほど、必ずしも体調が良いということではないとうことだ。最終追い切りの全体時計がレースでの結果に直結することもあるし、直結しないこともある。つまり、時計が速い=良い追い切りとは限らず、あくまでも「タイム」とは“どのような速さの追い切りが行われたか”という目安にすぎないのだ。
(第16回へ続く→)
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