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集中連載:「調教のすべて」第18回

■藤沢調教論の本質
さて、今度は反対に、馬は鍛えても強くなることはないという考えを紹介したい。リーディングトレーナーの座に10年以上にわたって君臨し続けている、藤澤和雄調教師である。当時は革命的でさえあった馬なり調教を貫き、広く認めさせた師は、以下のように語る。

ご存知よくパドックの解説で「うっすらとアバラが浮いた、ギリギリの仕上げ」という言葉を耳にするが、私に言わせれば、やりすぎである。仮にそれでいつもより少しばかり速く走れたとしても(私は速く走れるとは思わないが)、そういう体で目一杯のレースをしたら、馬はそのあと、どうなるのか。そんな競走生活を、二年三年と続けさせられる馬は、はたしてハッピーだろうか。レースのときさえ速く走れれば、そのあとはどんな状態になってもよいという考え方には賛成できない。

(中略)

たしかにレースに出走する馬は、体が出来上がっていなければならないが、痩せていてはダメである。レースで勝ち続けるには、力強い馬体に、元気が満ちていなければならない。(「競走馬私論」より)

まさに、これぞ藤沢調教論の本質である。藤沢調教師と、他の多くの調教師との間にある、たったひとつの大きな違いがここにある。目一杯に仕上げてしまうか、そうでないか、の違い。目一杯に仕上げてしまうことを、藤沢調教師は「やりすぎ」とする。

Tyoukyou25_2

その後のことを考えずに100%に仕上げてしまってはいけない。肉体的にも精神的にもダメージを受けた馬は、次第に走ることが嫌になり、それを強いる人間に対しても反抗的になる。果たして、その馬の成績は尻すぼみとなり、競走期間は短いものとなる。

もちろん体が出来上がっていなければレースにならないので、80%程度の仕上げでコンスタントに競走に臨ませることになる。肉体的にも精神的にも、多少の余裕を持たせた状態で出走させるのである。馬に力があればそれでも勝てる。果たして、その馬の能力に相応しい成績を残すことができ、競走期間は長く充実したものとなるのだ。

(第19回へ続く→)

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キーンランドCを当てるために知っておくべき3つのこと

Keenland

■1■牝馬の活躍
第1回、2回と牝馬が上位(ワンツー)を独占した。ゴール前直線が平坦で266mと短いため、一瞬の脚を要求される軽いレースになり、牝馬にとっては有利なレースになる。この時期の札幌競馬場の芝は、洋芝とはいえ、まだそれほど重くなっていないため、函館で活躍できたパワータイプの牡馬にとっては厳しいレースとなる。

■2■外枠が有利
札幌競馬場の1200m戦は、向こう正面を延長したポケットからのスタート。最初のコーナー(3コーナー)までの距離は406mと長く、オープン以上のクラスであればペースは速くなりがち。そして、3~4コーナーは緩やかなスパイラルコースであるため、ここで差を詰めるのは難しく、勝つためには4コーナーである程度の位置にいなければならない。この時期は馬場の内外で大きな差はなく、内外のトラックバイアスはないが、スムーズにレースが運べる分、若干外枠が有利か。

■3■差し馬に妙味
重賞に格上げされる以前は、逃げ・先行抜け出しが決まり手のほとんどであったが、クラスが上がったことや多頭数になったことで、道中のペースが上がり、差しが利くようになった。本質的には逃げ、先行馬に有利なコースだが、このレースに関しては差し馬を狙ってみるのも面白い。

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新潟記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Niigatakinen

■1■トニービンもしくはグレイソブリン系
過去7年間の新潟記念の勝ち馬の父もしくは母父は以上のとおり。

サンプレイス(父トニービン)
トーワトレジャー(父トニービン)
ダービーレグノ(父トニービン)
スーパージーン(父サッカーボーイ)
ヤマニンアラバスタ(父ゴールデンフェザント)
トップガンジョー(母父ゴールデンフェザント)
ユメノシルシ(母父トニービン)

驚くべきことに、トニービンを父もしくは母父に持つ馬が4頭も勝利している。また、トニービンと同じグレイソブリン系のゴールデンフェザントを父もしくは母父に持つ2頭もいる。これだけ血統の偏りが見られるレースも珍しく、新潟記念が行われる舞台(コース、馬場、距離)があらゆる意味で最適であるということに他ならない。トニービンの血を引く馬、そうでなければグレイソブリン系の馬を素直に狙え。

■2■トップハンデ馬は疑ってかかれ
新潟競馬場が新装となった2001年以来、トップハンデ馬は【0・0・2・7】と勝ち星どころか連対すらない。速いタイムの出る軽い馬場だけに、斤量がこたえているということではないだろう。ただ単に、トップハンデを振られた馬たちが、それに相応しい走りが出来ていないだけのことである。

なぜかというと、トップハンデ馬が好走した近走と今回の新潟記念では、全く条件が違うからである。パワーや瞬間的な脚が要求された七夕賞や小倉記念などで好走してきた馬が、重いハンデを強いられ、スピードの持続力を問われる新潟記念で凡走してしまうのは当然といえば当然だろう。全てのトップハンデ馬が適性を欠くということではないが、まずは疑ってかかった方が得策か。

■3■アウトインアウトのコース取りが出来る外枠の馬
過去7年間のレースラップは以下のとおり。

13.0-11.2-11.1-11.3-12.2-11.8-11.8-11.6-10.9-12.1(58.8-58.2)M
12.8-11.1-11.6-11.9-12.4-12.0-11.6-11.7-11.1-11.8(59.8-58.2)S
12.7-11.1-11.7-12.0-12.4-12.2-11.8-11.5-10.8-12.5(59.9-58.8)S
12.9-10.8-11.3-11.6-12.5-12.6-11.8-11.7-10.4-12.1(59.1-58.6)M
13.2-11.8-12.2-12.2-12.8-12.5-11.4-11.3-10.4-12.3(62.2-57.9)S
12.6-10.9-11.5-11.5-11.8-12.3-11.9-11.7-10.6-12.4(58.3-58.9)M
12.8-11.2-11.1-11.1-11.9-12.3-11.9-11.8-10.9-12.8(58.1-59.7)H

ヤマニンアラバスタが勝った3年前は極端なスローペースになったが、それ以外の年は、3~4コーナーの地点でややペースダウンするものの、11秒台のラップが淀みなく続いている。また、最後の直線が659mと長いため、異常なほどに速い上がり3~4ハロンのタイムが計時される。このようなレースでは、スピードよりも、それを持続させるスタミナや渋太さが問われることになる。

また、新潟競馬場は押し潰された長円形の形状で、JRAの競馬場では最もコーナーの曲がりのきついコースである。スタート後の長い直線で勢いがついたままコーナーに突っ込んでいくため、なかなかスピードが落ちず、コーナーが曲がりにくい。そのため、減速することなく内ラチに沿ってコーナーを回るのは難しい。外から切れ込むようにしてコーナーを回り、直線では再び外に出す(アウトインアウト)のコース取りが出来る外枠の馬を狙いたい。

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◆最終指名◆エグズマキーの06(牡)父シンボリクリスエス

私がシンボリクリスエスに初めて出会ったのは、東京競馬場で行われた青葉賞であった。ダービーと同じ舞台で行われるにもかかわらず、なかなかダービーと直結しない重賞として有名であったが、シンボリクリスエスが勝った時には、これでようやく青葉賞からダービー馬が生まれるとほとんど確信したものだ。

それぐらい、シンボリクリスエスの青葉賞での勝ちっぷりは大物感に溢れていた。いかにも東京競馬場に合いそうな大きなフットワークもそうだし、前進意欲を表面に出しつつもジョッキーの指示に素直に従う気性もそうだし、何よりも直線を向いてゴーサインを出されたときのアクションと俊敏な反応はダービー馬に相応しいと思われた。

2002年青葉賞

3番シンボリクリスエスの勝ちっぷりにダービー馬の誕生を確信したが…

しかし、さすがにダービーでは上には上がいた。青葉賞でシンボリクリスエスに跨った武豊騎手が鞍上にいなかったことも驚きだったが、その武豊騎手が操るタニノギムレットが大外からもの凄い勢いでシンボリクリスエスを差し切ったことも衝撃的だった。今から思えば、シンボリクリスエスはあの時点では未完成だったのだろう。「引退レースの有馬記念の時点でも、まだ成長を続けているような馬だった」と藤沢和雄調教師が語っていたように、晩成型の馬の典型だったのだから。

シンボリクリスエスとの再会の機会は、彼の引退後、社台スタリオンステーションで訪れた。ある方の厚意によって、私は歴代のスターたちが暮らす社台スタリオンステーションの馬房内を覗かせてもらう幸運を得た。トウカイテイオーやクロフネ、ダンスインザダーク、ウォーエンブレム、マンハッタンカフェなど、引かれてくる名馬たちの姿を目の当たりにして、私は圧倒され、身動き一つ出来なかった。その中でも、ひときわ神々しい存在感を示していたのがシンボリクリスエスであった。一線を退いてきたばかりということもあったのだろうが、それでも黒々とした毛艶の素晴らしさや柔らかな身のこなしには、サラブレッドとしての活力が溢れていた。

そんなシンボリクリスエスから、サクセスブロッケンという名馬が生まれたのも当然と私には思える。最初は産駒がなかなか勝ち上がれなかったり、2勝目を挙げるのに苦労したりしていたが、種牡馬としての未来も明るいことが証明されたのだ。もっとも、サクセスブロッケンはヘイルトゥリーズンの4×4という妙があったからこそ、早い時期からあれだけの活躍を出来たということもある。残念ながら、このエグズマキーの06にはヘイルトゥリーズンのクロスは生じていないが、馬体から放つ大物感ならばサクセスブロッケンにも劣らない。まずはデビューしてくれることを願いつつ、ダービーに間に合うことを夢みてみたい。

Egzmaky

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集中連載:「調教のすべて」第17回

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“強め”や“一杯”の調教は、馬を鍛えたり、馬体を絞ったりして、レースで全力を出し切れるように仕上げるために施される。当然のことながら、馬にとっては肉体的、精神的に負荷が掛かるため、無理な追われ方をしてしまうと、体調が下降線を辿ってレースで凡走するだけではなく、下手をすると怪我にもつながってしまう恐れもある。それでも、サラブレッドが速く走るために生まれてきた経済動物である以上、狙ったレースに向けて、ギリギリの調教を施されることは避けて通れない。

ところで、馬は強く追うことで本当に走るようになるのだろうか?別の言い方をすると、馬は鍛えることで果たして強くなるのだろうか?おそらくこれは私だけではなく、ほとんど全ての調教師が抱えている疑問であり、悩みなのではないだろうか。あまりにも本質的すぎて、正しい答えというものがあるとは思えないが、それでも考えないよりはましだろう。

まずは鍛えることで強くなるという考えを紹介したい。この連載の冒頭で登場した、2冠馬ミホノブルボンを管理した故戸山為夫調教師である。通常1日2~3本の厩舎が多い中で、1日4本、多い時には1日に5本も登坂することもあり、「スパルタ調教」とも揶揄されたトレーニング方法を確立した。故戸山為夫調教師は、自身の調教理論についてこう語る。

戸山流ハードトレーニングは、いわば必要に迫られてのことであった。天才的に速い馬がどんどん厩舎に入ってくれば、私もハードトレーニングなど考える必要はなかったかもしれない。しかし、発足したばかりの厩舎のジョッキーとして育ち、勝てない悔しさを重ねた。調教師としても天才的な馬には恵まれない悔しさがあった。

ではどうするか。鍛えて鍛えて、鍛え抜いて勝つしかない。ボクサーにしても、力士にしても、練習に練習を重ねたものが強い。100mランナーもマラソンランナーも、人一倍練習するものが最後には栄冠をもぎとるのだ。馬にもそれが当てはまらないはずはない。(「鍛えて最強馬をつくる」 かんき出版)

故戸山為夫調教師はここで、「天才的に速い馬がどんどん厩舎に入ってくれば、私もハードトレーニングなど考える必要はなかったかもしれない」と皮肉を込めているが、本当にそうだとは思っていないだろう。そもそも天才的に速い馬がどんどん厩舎に入ってくることなど、どの厩舎においてもあり得ないことなのだから。それを承知の上で書いている以上、どの厩舎にとってもハードトレーニングは必要だというのが真意であろう。

もう一人、鍛えることで強くなるという考えを持つ調教師を紹介したい。ダンスパートナー、スペシャルウィーク、アグネスデジタルなど、数々のG1ホースを育て上げ、究極の仕上げの上手さは誰もが認める白井寿昭調教師である。白井寿昭調教師は強い調教について、こう語っている。

マラソンでも日々の努力、毎日のハードトレーニングの結果が反復練習となって厳しい試合で活かされるわけですよね。軽い調教をやっていて厳しいレースを勝てるならそれに越したことはないけれども、そういうわけにはいかないのが勝負の世界ですから。

やはり持ったままの調教で競馬に通用するかというと疑問ですね。我々の場合、厳しいレースに対応するにはハードなトレーニングが必要だと思うからこそ、あれだけの調教を課すわけです。かといって馬の競走生命が短かったかというとそうではないと思います。もちろん、なんでもかんでも無我夢中にやってしまうとパンクするでしょうから、待つ時は時期が来るまで待つべきでしょう。(「G1勝利の方程式」白夜書房)

白井寿昭調教師も、故戸山為夫調教師と同じく、毎日の厳しいトレーニングがレースに行って生きてくるという信念を持って馬を鍛えていることが分かる。だからこそ、持ったままの馬なり調教を施された馬が、いきなり厳しいレースで結果を出すことが出来るかどうかには大いに疑問を呈している。

Tyoukyou23 by sashiko


(第18回へ続く→)

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攻めるか守るか、それが問題だ。

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最後までブラックシェルとディープスカイの2頭で悩みに悩んだ。どちらの馬にもそれぞれ強みと弱みがあって、レースが始まる前の時点では、勝つ可能性はほぼ同じに私には思えたのだ。前日のオッズはブラックシェルの単勝が10倍以上、一方のディープスカイは3倍台の1番人気であった。こういう時、人気薄に賭けるか、それとも人気のある方に賭けるのか、つまり、攻めるか守るかの判断は非常に難しい。攻めれば人気馬があっさりと勝ち、守れば人気薄が突っ込んで来るといった経験など、競馬をやっている者ならば数知れないだろう。

どこかの本で読んだことがあるのだが、人間は追い詰められた状況で二者択一をすると、確率以上に間違った方を選んでしまうという。たとえば、極端な例を挙げると、カードが2枚あって、片方の1枚を引くと命を奪われてしまい、もう片方の1枚を引けば無事に解放されるとする。そうすると、最後の最後まで悩み抜いた末に、普通に引けば2分の1の確率にもかかわらず、なぜか前者のカードを選んでしまうということだ。私の経験からいっても、確かに迷えば迷うほど誤った選択をしてしまうことが多い気がする。

そこで私は自分の中であるルールを決めている。もし最終的に2頭の勝ち馬候補が残り、どうしても優劣をつけることが困難であった場合、どちらを買うべきか。人気のある方の馬を買うのか、それとも人気薄の方を買うのか。攻めるべきか、守るべきか。私はそのレースが行われるコースを基準として、その決断をしている。あまり具体的には述べられないが、各馬が実力を出し切れるコース設定で行われるレースにおいては、人気のある方の馬を買う(守る)というルールである。その逆もまた然りである。

なぜなら、各馬が実力を出し切れるコース設定で行われるレースは、当然のことながら、力のある馬が勝つ確率が高いからである。逆に、各馬の実力が正直に反映されにくいコース設定で行われるレースにおいては、展開などの紛れやレースの綾によって、力のない馬が強い馬に勝利することが少なくない。だからこそ、人気のない方の馬を狙った方が妙味なのだ。

もちろん、人気=実力ではないことは百も承知の上である。人気のある馬がない馬に比べて、常に力があるということにはならない。人気のなかった方が実は強かったなんてことは歴史上、山ほどあった。一方で、ウェブ2.0的な考え方でいうと、人気(オッズ)とは見えざる民衆の集合知であるともいえる。普通に走れば、人気のある馬の方が勝つ確率は高い。ひとつの目安として人気というファクターを用いて、人気とコース設定という客観的な要素に拠って、攻めるか守るかを決断するということである。

しかし、私はそのルールを破ってしまった。東京のマイル戦で行われるNHKマイルCは、各馬が実力を出し切れるコース設定なのだから、人気のある方のディープスカイを素直に買うべきレースであった。守るのが正解のレースだったのだ。自分で作ったルールにもかかわらず、なぜブラックシェルを買ってしまったのかと問われれば、ただ単に人気のない方に印を打ちたいという虚栄心や見栄を張ったばかりの欲目だったのかもしれない。毎日杯→NHKマイルCというパターンのディープスカイに印を打つのは、あまりにもヒネリがないと考えたのかもしれない。後藤浩樹騎手がそろそろ久しぶりにG1レースを勝ってもいいと思ったのかもしれない。思い返してみると、そのどれもであったような気もするが、いずれにせよルールを守れなかった私が悪い。

競馬は、攻めるか守るか、それが問題だ。

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札幌記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Sapporo

■1■G1馬もしくはG1級の馬
過去の勝ち馬を見ると、2つのタイプがいることが分かる。エアグルーヴ、セイウンスカイ、テイエムオーシャン、ファインモーション、フサイチパンドラなどのG1馬と、ヘヴンリーロマンス、アドマイヤムーンなど札幌記念を勝利した後にG1を勝った馬である。つまり、札幌記念はG1級の力がないと勝つのが難しいレースである。

札幌競馬場はヨーロッパの馬場に近いタフな馬場であり、本当に能力がないと勝てない。さらに札幌記念には古馬の一戦級が集まってくるため、このレースを勝つことはG1レースを勝つだけの能力が優にあることの証明でもある。札幌記念はG2レースではあるが、G1馬もしくはG1級の能力がある馬を狙ってみたい。

■2■牝馬

牡馬(セン馬含む)【5・8・9・88】 連対率12%
牝馬         【5・2・1・8】  連対率44%

過去10年間で牝馬が5勝しているだけでなく、連対率も44%と驚異的な数字を残している。平坦コースが牝馬にとってプラスに働くということに加え、前述のようにG1級の能力がなければ勝てないレースに出てくるということは、それだけ体調が良いということである。古馬の一戦級を相手に回して、勝負になる手応えがあるからこそ出走してくる牝馬には要注意。

■3■外枠の差し馬は苦しい
スタートから第1コーナーまで400mほどの距離があるため、内枠外枠での有利不利はほとんどない。それでも、4つコーナーを回る小回りの競馬場である以上、第1コーナーまでに内のポジションを取れないと、終始外々を回らされる羽目になる。特に外枠を引いた差し馬は、スローになると苦しいレースを強いられるだろう。そうった意味も含めて、札幌競馬場は騎手の技術が問われるレースであり、過去10年で武豊騎手が5勝しているように、ジョッキーの腕も問われることになる。

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集中連載:「調教のすべて」第16回

例)6/21(木) DW 良 助手 (7)95.6-66.5-52.5-38.3-11.5  一杯

「タイム」の隣にある数字(赤字)は、「走ったコースの内外」である。すなわち、コースのどのあたりを走ったかを表している数字であり、内ラチ沿いが②、外ラチ沿いが⑨となり、その間を順に③から⑧までに分けている。当然のことながら、外を回った方が長い距離を走ることになるので、同じタイムの調教であったとしても、その価値が違ってくるのだ。

最後は、「追われ方」である。「追われ方」は、“馬也(うまなり)”と“強め”と“一杯”の3つに大別される。“馬也(うまなり)”→“強め”→“一杯”の順で強く追われていることを示す。もちろん、“馬也”でもなく“強め”でもないような微妙なさじ加減の追われ方もあるのだが、あくまでも表記方法として、これら3つの「追われ方」が用いられている。

だからこそ、その調教での「追われ方」が“馬也”であったのかそれとも“強め”であったのかは、トラックマンの判断によるとことが大きい。ある夕刊紙では“馬也”となっていたのが、別の専門紙では“強め”となっていることがあるのはそういうことである。何が正しいという基準はないので、自分が買った競馬新聞のトラックマンを信用するか、もしくはあなたが実際に調教を見て判断しなければならない。

「追われ方」についてもう少し詳しく説明していくと、“馬也”とは、読んで字のごとく、馬の気持ちに任せて走らせることである。手綱を通して全体的なタイムの調節はするものの、基本的に騎乗者には大きな動きはなく、ただつかまって乗っているだけである。当然のことながら、馬にとっては肉体的にも精神的にも最も負担の掛からない調教となるため、今の体調を維持したいといった状況においては最適な「追われ方」となる。

たとえば、最近で言うと、宝塚記念を勝ったエイシンデピュティの最終追い切りは、体調を維持するための“馬也”であった。エイシンデピュティは、昨年の毎日王冠以来、ほぼ月1のローテーションで休むことなく走り続け、今年に入ってすでに4戦を消化していた。しかも、京都金杯と金鯱賞を制し、産経大阪杯でもあのダイワスカーレットの2着と激走していたのだから、もはやギリギリの体調であったに違いない。宝塚記念に臨む最終追い切りと、その他のレース時の最終追い切りの「追われ方」を比べて見てみれば一目瞭然であった。

毎日王冠
2007/10/03(水) 栗坂 稍 野元 53.1-37.6-24.3-12.1 一杯
天皇賞秋
2007/10/24(水) 栗坂 良 野元 53.0-38.0-24.7-12.5 一杯
鳴尾記念
2007/12/05(水) 栗坂 良 助手 51.0-38.3-26.0-13.5 一杯
京都金杯
2008/01/03(木) 栗坂 良 岩田 52.8-38.7-25.4-12.6 一杯
京都新聞杯
2008/01/30(水) 栗坂 重 岩田 53.8-38.7-25.2-12.7 一杯
産経大阪杯
2008/04/03(木) 栗坂 重 岩田 53.1-38.1-24.3-11.9 一杯
金鯱賞
2008/05/28(水) 栗坂 良 岩田 54.1-38.8-25.4-12.8 一杯
宝塚記念
2008/06/26(木) 栗坂 良 内田 57.5-40.5-26.1-12.4 馬也

いつもならば最終追い切りは一杯に追われてレースに臨むエイシンデピュティであったが、野元調教師もさすがにギリギリの体調であることを察し、仕上がり切っていると判断して、“馬也”の追い切りを掛けてきたのだ。馬也なので57秒5と時計は掛かったが、内田博幸騎手を背にしてスムーズな動きであった。幸いにしてレースまでに体調を落とすことなく、エイシンデピュティは宝塚記念で悲願のG1制覇を成し遂げたわけだが、もし最終追い切りで“強め”または“一杯”に追われていたら果たしてどうなっていただろう?最終追い切りを境に、体調が下降線を辿ってしまい、レースでは惨敗を喫していたかもしれない。それほど、サラブレッドの体調とは繊細で移ろいやすく、そんなサラブレッドが集まって走るレースの結果もまた移ろいやすいのである。

Tyoukyou22

(第17回へ続く→)

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「Photostudポスター展Part5」を観に行ってきました。

彼らの作品を初めて観に行った時のことは、今でも忘れない。西武新宿駅から歩いて案内されたのは、仲間たちとお金を出し合って借りた小さなギャラリーであった。当然のことながら、お客さんはまばらで、たまにやってきたかと思えば知り合いか身内だったりした。そんなどこにでもよくある小さな展覧会ではあったが、それでも彼らの作品は他の作品とはどこか違って見えた(友人としての贔屓目があったにせよ)。今までに観たことのない競馬の写真がそこにあった。

あれから数年を経て、彼らのポスター展はついに5回目を迎えた。その間にも、JRA賞のパンフレットの表紙を飾ったり、優駿で連載が始まったり、ガラスの競馬場で壁紙をプレゼントしたり(笑)、競馬博物館のホースフォトグラフ展で巨匠らに伍して作品を並べたりと、彼らの快進撃はとどまるところを知らなかった。私も筆舌の限りを尽くして彼らを褒め称えてきたつもりだったが、彼らの活躍は私など遥かに超えて行ったのだ。

今回の「ポスター展PART5」には、そんな彼らの勢いがそのまま現れていた。全てが新作というラインナップで、「今回はかなり自信あるよ」と珍しく彼らが言い放っていた通りのクオリティ。こんな独創的な作品は見たことがないという圧倒的なオリジナリティ。競馬ファンならば、ふと足を止めて見ずにはおられないリアリティ。と韻を踏んでみたくなるほどの素晴らしいポスター展であった。

Photostudposter02

個人的に心に残ったのは、ミスタープロスペクターの墓の作品である。アメリカのクレイボーンファームに行った時に撮ってきた写真なのだろう。まさかこのような作品に仕上がるとは驚きであった。人によっては見向きもされないのではないかという地味な作品ではあるが、その前からしばし動けなくなってしまったほどの何かを感じた。ぜひ皆さまにも一度見て頂きたい。

その他、当然のことながら、ディープインパクト、キングカメハメハ、ウオッカ、ダイワスカーレット、ヴァーミリアン、渋いところではファイングレイン、レジネッタ、ゴスホークケンなど、数々の名馬と名シーンが見事に切り取られていて、他の観客も食い入るようにして観ていたのが印象であった。

Photostudposter01

実は今回のポスター展は、遠路はるばる関東まで遠征してくれたルドルフおやじさんと一緒に観に行ったのだが、ルドルフおやじさんはディープインパクトのラストランの4コーナーの作品と、高松宮記念のファイングレインの作品が特にお気に入りだったようだ。私たち二人は大満足でプラザエクウスをあとにした。

「Photostudポスター展 Part5」
期 間 8月13日(水)~9月1日(月) *火曜日休館
時 間 11:30~19:00
場 所 プラザエクウス渋谷(東京都渋谷区宇田川町31-2 渋谷ビーム3F)
入場料 無料

☆詳細はこちら
http://www.jra.go.jp/news/200808/080805.html

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夏競馬は内国産馬を狙え

Natukeibanaikokusannba_320世紀の後半、世界の血統勢力図をもの凄い勢いで塗り替えたノーザンダンサーは、夏は高温多湿で、冬は氷点下30度前後まで冷え込むというカナダの牧場で生まれ育った。それだけでなく、神経をイラつかせるハエやアブにたかられるため、特に夏は炎天下の狭い馬房の中に閉じ込められて過ごさざるをえなかった。もちろん、エアコンや扇風機のようなものはない。そんな過酷な環境の下で育ったノーザンダンサーが、並はずれた精神力や環境への適応能力を身につけていったのは当然のことである。

ノーザンダンサーの血を持つ馬は夏競馬に強いと言われるが、私に言わせると少し違う。暑さに強いのでもなく、パワーを要する馬場に強いのでもなく、他の系統の産駒たちが暑さや力の要る馬場を苦手とする中で、総じてノーザンダンサー系の馬はそれらを苦にしないということである。ノーザンダンサーの血を引く馬たちは、芝、ダート、道悪馬場、スピードの出る硬い馬場、小回りコースなど、いかなる条件にも適応できる万能性を持っている。だからこそ、ノーザンダンサーの血は世界をあっという間に席巻することが出来たのだ。

サンデーサイレンスの血もこれと同じような万能性を持っている。どのようなコース、馬場、展開であろうが、ありとあらゆる条件を克服し、圧倒的な結果を出してきた。もちろん夏競馬にも強い。サンデーサイレンスのあら探しをする血統予想家がいつも恥をかかされるのは、この万能性ゆえである。後継種牡馬を通して、これから世界へと広がっていくサンデーサイレンスの血が、どれだけの影響力を持つことになるのか、今から楽しみで仕方がない。

夏競馬における内国産の種牡馬についても、これと同じような論理が当てはまる。内国産の種牡馬は、厳しい日本の夏を経験したうえで、選抜されて種牡馬になっている。日本の気候風土に順応し、猛暑にも耐えて生き残ってきたエリートたちである。夏に弱ければ、自分自身の代で淘汰されてしまうか、もしくは運よく生き残ったとしても、自分の仔の代で息が絶えてしまうことになるだろう。だからこそ、外国産馬や父外国産馬と比べ、内国産馬は厳しい暑さに耐えられる強さを備えているのである。

たとえば、サクラユタカオーの後継種牡馬であるサクラバクシンオーの産駒は、夏競馬になると圧倒的な力を発揮し始める。スピードを生かせる馬場や小回りコースが合っているのも確かだが、蒸し暑い夏を苦にしないという点も代々受け継いでいるのだろう。函館スプリントSを2連覇したシーズトウショウの強さは忘れられないし、最近ではカノヤザクラがアイビスサマーダッシュで復活した。

また、サンデーサイレンス系ということであれば、フジキセキがその筆頭格であろうか。もっともフジキセキを経由したサンデーサイレンスの血は、今年サンクラシークがドバイシーマクラシックを制したように、日本の夏競馬を飛び越えて、既に世界へと広がっているのであるが。

8月も半ばになったが、うだるような暑さはまだまだ続く。そんな暑さを吹き飛ばすためにも、暑い夏は内国産馬を狙ってみたい。

photo by fake Place

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クイーンSを当てるために知っておくべき3つのこと

Queens

■1■スロー必至で先行馬有利
過去7回の脚質別の成績は以下のとおり。
逃げ【5・0・0・3】 連対率63%
先行【3・3・4・30】 連対率20%
差し【0・5・2・34】 連対率10%
追い込み【0・0・2・21】 連対率0%

逃げ馬の連対率が63%という驚異的な数字だけではなく、逃げ、先行馬以外から勝ち馬が出ていない。とにかく前に行けなければ勝負にならない。

これだけ先行した馬に有利になる理由として、札幌1800mのコース形状が挙げられる。スタートしてから1コーナーまでの距離が185mと短すぎて、かえってポジション争いがなく、スローペースになる。そして、コーナーが4つもあるため、後続がなかなか差を詰めることが出来ないまま3コーナーに突入してしまう。さらに、ゴール前直線も266mしかなく、平坦であることも手伝って、前が止まらない。よほどジョッキーたちが意識して早めに動かない限り、前残りのペースになることは避けられないだろう。

また、札幌競馬場は洋芝100%の芝コースであって、パワーだけではなく底力とスタミナが必要とされる。しかし、このレースに限って言えば、開幕週ということもあって馬場がほとんど傷んでおらず、まず何よりも勝つためには先行できる軽快なスピードが要求される。

■2■4歳馬有利
3歳馬  【1・2・3・12】 連対率17%
4歳馬  【6・2・1・25】 連対率24%
5歳馬  【1・4・3・29】 連対率15%
6歳以上 【0・0・0・11】 連対率0%

競走馬としてのピークが短い牝馬の別定戦である以上、最も充実するはずの4歳馬の活躍が目立つのは当然のこと。3歳馬にとっては、未完成のこの時期に古馬と3kg差で戦うのはなかなか厳しい。だからこそ、逆に、この時期に古馬相手に好走した3歳馬は高く評価してよい。また、自身のピークが過ぎてしまっている5歳以上の馬は軽視しても構わないだろう。ただ最近は、調教技術が進歩して、高齢でも力が衰えていない馬もいるので要注意。もちろん個体差はあるが、この傾向はクイーンSがこの時期に行われる限り続いていくはず。

■3■内枠有利
前述のとおり、道中がスローで流れる可能性が高いのであれば、当然のことながら内枠が有利になる。スタートしてから1コーナーまでの距離が185mと極端に短く、1コーナーまでの位置取りは枠順によって決まることが多いので、逃げ・先行馬は是が非でも内枠を引きたい。ロスなく好位を確保できた馬にこそ、勝つチャンスが訪れる。

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北九州記念を当てるために知っておくべき2つのこと

Kitakyuusyuukinen

■1■軽ハンデ馬
北九州記念は一昨年より、距離が1200mに短縮され、ハンデ戦となった。過去2年間を振り返ってみると、勝ち馬が背負った斤量はいずれも52kgである。昨年は2、3着にも52kg、51kgの軽ハンデ馬が突っ込んだ。

軽ハンデ馬が台頭する理由は、ひとえに北九州記念が行われる時期の馬場状態の悪さにある。Aコース使用10日目であり、いくら夏の野芝とはいえ、芝の傷み方は相当なものである。「馬場が重ければ重いほど、斤量増はこたえる」という斤量の考え方があり、これだけ馬場が荒れていると負担重量の重い馬はこたえるのである。重賞で実績のない馬、近走で惨敗している馬を狙うのは気が引けるが、それでも軽ハンデ馬を狙い打ちたい。

■2■外を回す差し馬

11.9-10.1-10.9-11.3-11.5-12.3(32.9-35.1)H
11.5-10.0-10.6-11.4-11.6-12.6(32.1-35.6)H

上は過去2年間のラップタイムである。前半が32秒台で後半が35秒台という、ほとんど同じ推移の仕方で、おそらく今年も同じような流れになるだろう。前後半の落差が3秒という、いかにも短距離戦らしいハイペースになる。小倉競馬場の直線が短いとはいえ、前に行く馬には厳しい、差し馬に向きの展開になる。

芝の傷み方が相当なものだと書いたが、特に内ラチ沿いの馬場は、走ると土煙が上がるほど極端に悪い。当然のことながら、内側を通らざるを得ない馬よりも、比較的馬場の悪くない外に進路を取れる馬に有利なレースになる。外枠を引いて、外にポジションを取れる馬から狙ってみたい。

ただし、例外として、開催中に雨が降り続いたりして馬場全体が荒れてしまっているような場合は、外を回す差し馬は届かないため、少しでも前に行くことのできる逃げ先行馬を狙いたい。

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「ジョッキー」 松樹剛史

Jockey 1star

第14回小説すばる新人賞を受賞した、痛快な競馬小説である。主人公の中島八弥は、朝の調教手当てだけで糊口を凌ぐフリーのジョッキー。とある理由で目の前から姿を消した兄弟子の、「自分の技術を安売りするな」という言葉を信じ、営業活動を一切しない骨ばった信念のおかげで、乗り鞍を減らしてしまっている。それでも、たまにおこぼれのような騎乗依頼があれば、あらん限りの技術と知恵を振り絞り、たとえ惨敗続きの未勝利馬であっても勝ち負けにまで持ち込んでくる。そんなどこかにいそうでどこにもいない中堅ジョッキーが、ひょんなことから桁違いの能力を持つ新馬オウショウサンデーの騎乗を依頼される。そんなプロローグから物語は始まる。

ネタバレになるのでここでは書かないが、ラストの天皇賞秋でオウショウサンデーを敵に回した主人公が、スターティングゲートで使った作戦は微笑ましい。この小説を象徴しているかのようである。そして、特筆すべきなのは、サラブレッドや厩舎に住む人々の様子、レース中のジョッキーの心理から技術的なことまで、わずかな参考文献をもとにして、微に入り細に入り実に見事に描写していることだろう。私の友人が、「競馬の世界を外から見てあそこまでのものを書いたのは凄い。JRAはもっとこういう若い才能に競馬世界の中に入るチャンスを与えるべきだ」と語っていたことも改めて頷ける。

しかし同時に、ある種、漫画のような安っぽさを感じたのも確かである。というのも、この小説を読みながらにして、私はあるジョッキーのことが頭から離れなくなってしまったからだ。事実は小説よりも奇なりと言うように、私は競馬の世界で実際に起こったドラマにいつの間にか思いを馳せてしまっていた。そのジョッキーの名は中島啓之。そう、この小説の主人公と同じ名字を持つ、昭和49年のダービーをコーネルランサーで制した実在のジョッキーである。このダービー勝利は、父時一との親子2代制覇としても知られる。

「万馬券男」と競馬ファンからは親しまれ、「あんちゃん」という愛称で仲間からは慕われていた中島だが、デビューしてから10年ほどは勝ち星も少なく、リーディング争いをしたのは36歳になった年の1度だけという苦労人でもあった。ちょうど保田隆芳や加賀武見といった当代きっての敏腕ジョッキーたちと時代が重なってしまったことも、不遇といえば不遇であった。それでも、コクサイプリンスで菊花賞、アズマハンターで皐月賞を制して、史上10人目の3冠ジョッキーとなった。

そんな遅咲きのベテランジョッキーを病魔が襲ったのである。42歳になった昭和60年の春、トウショウサミットというお手馬を擁して、中島啓之はクラシック戦線を戦おうとしていた矢先の出来事であった。末期の肝臓ガン。無類の酒好きであったが、本質的には酒豪ではなかった中島の肝臓は知らず知らずのうちに蝕まれていたのである。思うように動かない体にムチを打ちながら、中島とトウショウサミットはNHK杯を逃げ切った。

「ダービーだけは乗せてください」と中島は懇願したという。まさに決死の覚悟を抱いてダービーに臨んだのである。中島は自らの運命に抗うように、トウショウサミットを駆って逃げに逃げた。たとえ他馬が競りかけてこようとも、頑としてハナを譲ることはなかった。中島とトウショウサミットは先頭で4コーナーを回る。しかし、次の瞬間、あっという間に馬群に飲み込まれてしまった。この小説の主人公・中島八弥が天皇賞秋を逃げ切ったように、中島啓之は最後のダービーを逃げ切ることは出来なかった。現実はなかなか小説や漫画のようには行かないものだ。ダービーの9日後に入院した時には、もはや治療の施しようのない状態だったという。中島啓之はダービーからわずか16日後に急逝した。

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◆第5位指名◆プラチナチャリス(牝)父ロックオブジブラルタル

先週負けてしまった馬を指名するのは気が引けるが、6月の時点で既に選んでしまっていたのだから仕方ない。そして、もうひとつ正直に言っておくと、プラチナチャリスは当初、指名から外す予定であった。雑誌「優駿」の『ゆうしゅんPOGノート選手権』に応募するつもりで、6頭から4頭に絞込みをかけた中、選外にした1頭なのである。6頭を指名できる「Gallop POG」に参加することになり、この馬を再浮上させたのである。

Silverchalis

プラチナチャリスを外した理由は、馬体の線が細いからである。もちろん、他の馬たちと比べて、馬体全体のラインが非常に美しいので6頭の候補には入れたのだが、そこから敢えて2頭を外す理由として、線の細さを挙げたということになる。別の言い方をすれば、力感がないということになるが、これがプラチナチャリスの本質的なものなのか、それとも成長途上ゆえのものなのか。おそらくどちらでもあると思うのだが、いずれにせよ、少しずつ力をつけていくタイプと見て間違いないだろう。

さて、今回、プラチナチャリスを指名するにあたって、この馬の父であるロックオブジブラルタルについて少し調べてみた。恥ずかしながら、G1レース6連勝というミルリーフの世界記録を塗り替えたこと以外に、ロックオブジブラルタルについてほとんど知らなかったからである。これまではイギリスとオーストラリアで種牡馬入りしたのでそれほど馴染みがなかったが、2007年度は日本軽種馬協会静内種馬場で供用されたので、来年はおそらくたくさんの産駒たちが日本のターフで活躍することになるだろう。知っておいて損はない。

ロックオブジブラルタルの血統背景としては、父がご存知デインヒルであり、もはや日本競馬への適性は説明するまでもないだろう。母系としては、母父はビーマイゲストで、曾祖母のリバーレディからはあの名種牡馬リバーマンが出ている名門である。自身もマイル戦で圧倒的な強さを誇ったように、短い距離で爆発力を発揮できるようなマイラーを輩出する血統である。個人的にはビーマイゲストの血が好みではないが、気ムラな面が産駒に伝わらなければと思う。

主な産駒としては、フランスの2歳G1クリテリウムインターナショナル(芝1600m)を制したマウントネルソンがいる。ちなみに、この年のクリテリウムインターナショナルでは、3着にもロックオブジブラルタル産駒のイエローストーンが入っている。これらのことに、ロックオブジブラルタル自身の競走成績を含めて考えても、産駒は総じて仕上がりが早く、3歳になって完成され、マイルまでの距離を活躍の場にすることが分かる。

■ロックオブジブラルタル競走成績
2歳時
メイドン(芝5F) 1着
コヴェントリーS(G3・芝6F) 6着
レイルウェイS(G3・芝6F) 1着
ジムクラックS(G2・芝6F) 1着
シャンペンS(G2・芝7F) 2着
グランクリテリウム (G1・芝1400m) 1着
デューハーストS (G1・芝7F) 1着
ジムクラックS (G2・芝6F) 1着
レイルウェイS (G3・芝6F) 1着

3歳時
英 2000ギニー (G1・芝8F) 1着
愛 2000ギニー (G1・芝8F) 1着
英 St.ジェームズパレスS (G1・芝8F) 1着
英 サセックスS (G1・芝8F) 1着
仏 ムーランドロンシャン賞 (G1・芝1600m) 1着
米 BCマイル (G1・芝8F) 2着

実はプラチナチャリスの母系には、偶然にも私の大好きなブラックホークがいるので、この馬の距離適性はどう転んでもマイル前後だろう。“ザ・ロック”と呼ばれた父の名を日本で轟かせるためにも、プラチナチャリスには少しずつ力をつけて、ぜひとも阪神ジュべナイルFか桜花賞を勝ってもらいたい。勝ち出したら止まらない馬になってくれたらもう最高である。まだ先は長い。

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函館2歳Sを当てるために知っておくべき3つのこと

Hakodate2s

■1■パワーとスタミナが問われる
ただでさえパワーとスタミナを要求される洋芝100%の函館競馬場は、開催が進み、馬場が傷むことによって、ますますその傾向は強くなっていく。JRAの2歳最初の重賞であり、キャリアわずか1、2戦の仕上がり早の馬たちによって争われるスプリント戦にもかからず、意外なことに、スタミナとパワーが問われるレースになりやすい

道営馬(ホッカイドウ競馬所属の馬)が【2・1・1・2】と堅実に駆けているのも、現時点での完成度が高いだけではなく、パワーが要求される馬場になっていることもあって、ダートを走る能力や走った経験がプラスに出ているようだ。それでも人気にならないことが多いので、1番人気を買うのであればこちらを買った方が美味しいか。

■2■1番人気は危険!?
1番人気は過去11年で【0・4・1・6】と、2着こそあれ、勝ち切れていない。函館開催当初に、新馬戦を好タイムで圧勝したスピード馬が1番人気になるからであろう。しかし、上にも書いたように、開催が進むにつれ、素軽いスピードだけではなく、パワーとスタミナも問われる馬場へと変貌する。これによって、スピードを武器に圧勝して1番人気に祭り上げられた馬は苦戦するのだ。

■3■外枠有利
函館1200mはスタートから第1コーナーである3コーナーまでの距離が長いため、内枠と外枠での有利不利はほとんどない。あえて挙げるとすれば、開催が進むにつれ、内の方の馬場が悪くなってきているケースが多いので、馬場の良いところを走ることが出来る外枠を引いた馬が有利か。

また、キャリアわずか1、2戦の馬たちによる争いとなるため、馬群の中で揉まれてしまうよりは、多少のコースロスがあろうとも、馬群の外をゆったりと走られる方が力を出し切ることが出来るだろう。そういった意味においても、外枠からスムーズにレースを進められた馬が有利となる。

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関屋記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Sekiyakinen

■1■2000m以上の距離に実績のある中距離馬
スタートしてから最初のコーナーまでの距離、そして最後の直線が圧倒的に長いため、どの馬にとっても息の入らない厳しい流れになる。そのため、スピードよりも、スピードを持続させるためのスタミナがまず問われることになる。全体のタイムや速い上がりタイムが出ることに惑わされることなく、2000m以上の距離に実績のある中距離馬を狙いたい。

■2■ノーザンダンサー系
新潟1600mのコース形態上、スピードの持続を問われることは前述したとおりだが、そのような舞台を最も得意とするのがノーザンダンサー系の馬たち。一瞬の脚で勝負するようなレースでは惜敗を喫してきたノーザンダンサー系の馬たちが、コースを味方にして台頭する。また、ノーザンダンサー系の馬は厳しい気候にも強く、新潟の酷暑にも耐えることが出来ることも、関屋記念を得意とする理由のひとつ。

■3■先行馬もしくはアウトインアウト
12.6-10.8-11.3-11.5-11.8-11.2-10.8-11.8(46.2-45.6)M
12.5-10.6-11.3-12.0-11.6-11.1-11.0-11.7(46.4-45.4)S
12.2-10.7-11.4-11.7-11.1-11.9-10.9-11.9(46.0-45.8)M
12.5-10.8-11.5-12.0-11.6-11.2-10.6-12.1(46.8-45.5)S
12.3-10.7-11.6-11.9-12.0-11.3-10.6-11.9(46.5-45.8)M
12.9-11.0-11.7-11.7-11.7-11.3-10.1-12.1(47.3-45.2)S
12.8-10.6-11.0-11.2-11.7-11.8-10.3-12.4(45.6-46.2)M

前半よりも後半の方が速い、全体としてスローに流れるレースが多く、また最後の直線が659mと長いため、異常なほどに速い上がり3ハロンのタイムが計時される。これだけ上がりが速いと、当然のことながら、前に行っている馬にとっては有利なレースとなる。

新潟競馬場は、押し潰された長円形の形状で、JRAの競馬場では最もコーナーの曲がりのきついコースとなる。新潟のマイル戦では、スタート後の長い直線で勢いがついたままコーナーに突っ込んでいくため、意外とスピードが落ちず、コーナーが曲がりにくい。そのため、減速することなく内ラチに沿ってコーナーを回るのは難しい。外から切れ込むようにしてコーナーを回り、直線では再び外に出すような、アウトインアウトのコース取りが理想的。

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集中連載:「調教のすべて」第15回

前回の続き)
しかし、実は、最終追い切りの全体時計がレースでの結果に直結しなかったケースもまた多い。

2006年毎日王冠(1着)
2006/10/04(水) 南W 良 助手 63.7-49.2-37.3-12.6 6 G強

2006年天皇賞秋(1着)
2006/10/25(水) 南W 重 助手 63.7-48.7-36.0-12.6 1強め

2006年マイルチャンピオンシップ(1着)
2006/11/15(水) 南W 稍 助手 63.9-49.6-36.6-12.3 2馬也


2006年安田記念(4着)
2006/05/31(水) 南W 稍 安藤 61.9-48.0-34.6-11.2 3 G強

上の3つの時計は、ダイワメジャーの2006年秋シーズン時の最終追い切りである。馬場の違いこそあれ、南ウッドコースで全体時計(5ハロン)が63秒台であれば、ダイワメジャーにとってはそれほど速い時計ではない。それでもレースに行くと、圧倒的な力を見せ付けて3連勝した。

Tyoukyou20 by mighty

逆に、2006年の安田記念(1番下の時計)では、全体時計(5ハロン)が61秒台の好タイムを出しているにもかかわらず、最後の直線では伸び切れずに4着に敗れてしまっている。

上記の例からも分かるように、最終追い切りの全体時計の速い・遅いが、レースでの結果に必ずしも直結するわけではない。レースに行けばその他諸々の要素が絡み合ってくることもあり、体調が良いからといって必ずしも勝てるわけでもない。

確かに、最終追い切りの全体時計の速い・遅いがレースでの結果につながることもあるにはある。体調が悪ければ、追い切りで速い時計を出すことは難しく、体調が良いからこそ、追い切りでも自然と速い時計が出るということだ。

しかし、最終追い切りの全体時計の速いからといって、イコール体調が良いかというと疑問である。

たとえば、外国産馬としては唯一の10億円ホースとなったタップダンスシチーは、、凱旋門賞から帰国初戦の有馬記念で2着と好走した後、十分な休養を挟み、金鯱賞を3連覇した勢いを駆って宝塚記念に出走してきた。ハーツクライ、ゼンノロブロイ、リンカーン、スイープトウショウという錚々たるメンバーが揃ったにもかからず、タップダンスシチーは1.9倍という圧倒的な1番人気に推されることになった。前年の覇者だったことに加え、最終追い切りの動きがバツグンに良かったからである。

しかし、結果的には、前年同様早めにスパートをかけたにもかかわらず、直線では後続に次々に交わされて7着に破れてしまった。タップダンスシチーの型に持ち込んでの惨敗だっただけに、本来の走りが出来るだけの体調になかったことが敗因と考えられる。

そこで、宝塚記念に臨む際の最終追い切りと、金鯱賞におけるそれを比べてみたい。

金鯱賞(1着) 快勝!
2005/05/25(水) CW 良 助手 77.5-62.6-49.0-36.9-12.0 8 一杯

宝塚記念(7着) 惨敗…
2005/06/22(水) CW 良 助手 77.6-63.8-50.6-37.9-12.5 9 一杯

6ハロンでわずか0.1秒の差しかない、ほとんど同じ速さの全体時計であることが分かる。宝塚記念時の最終追い切り時計(77秒6)は、確かその日の1番時計であったように、栗東のCWコースでは相当に速い時計の部類に入る。それだけの動きを見せていたにもかかわらず、レースでは本来の走りが出来るだけの体調になかったということになる。

これには2つの理由が考えられる。ひとつは、一流馬になればなるほど、たとえ体調が少しぐらい悪くても、追い切りでは速いタイムで走ってしまうということである。1ハロンを13~14秒のペースで走ることなど、たとえ本来の体調になかったとしても、タップダンスシチーのような一流馬にとっては苦もないことなのだ。それにもかからず、私たちは1番時計が出ると「絶好調!」と囃し(はやし)立て、過剰な人気を作り上げてしまう。一流馬の動きには騙されてはいけないのだ。

もうひとつは、1番時計を出した時点をピークとして、体調が下降線を辿り始めたということである。追い切りで速いタイムで走ることは、体調の良さの表れである一面、あまりにも体調が良すぎると、レースが行われるまでにかえって調子が下向きになってしまうこともある。水曜日には英気が漲っていた馬が、レース当日には抜け殻のような状態になってしまうことなど、よくある話である。

このように考えると、調教の全体時計が速ければ速いほど、必ずしも体調が良いということではないとうことだ。最終追い切りの全体時計がレースでの結果に直結することもあるし、直結しないこともある。つまり、時計が速い=良い追い切りとは限らず、あくまでも「タイム」とは“どのような速さの追い切りが行われたか”という目安にすぎないのだ。

(第16回へ続く→)


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「無痛化」する競馬予想界のゆくえ

「無痛化」とは、森岡正博氏(生命学者)によって提唱された概念であるが、今あるつらさや苦しみから、我々がどこまでも逃げ続けていけるような仕組みが、社会の中に張り巡らされていくことである。

たとえば今、私はこの文章を、電気に煌々と照らされた、冷房の利いた部屋で、アイスコーヒーを片手に書いている。そして、この文章を読んでいるあなたも同じ。ほんの1世紀も前であれば考えられない光景である。暑ければ冷房のスイッチを押せばよく、暗ければ電灯を点ければよい。苦しみから我々が次々と逃げ続けるために、テクノロジーは発展し、文明が進歩したのは紛れもない事実である。文明の進歩とは「無痛化」の歴史に他ならない。

「無痛化」は、競馬予想界においても避けては通れない。「どうやって予想していいか分からず、馬券を外してお金を失う」というつらさや苦しみから手っ取り早く救ってくれる仕組みが、我々の周りのあちこちに転がっている(ように見える)。

私の個人的な見解ではあるが、日本の競馬予想界における「無痛化」の先駆けは、1969年の柏木久太郎のコンピューター予想ではないだろうか。コンピューターを駆使した予想で的中率84%を標榜したが、いつの間にか消えていなくなった。その後、アンドリュー・ベイヤーによって「スピード指数」が発見され、西田和彦や石川ワタルもそれに続いた。それ以来、今に至るまで、科学文明の発展に歩みを合わせるように、~の法則、~理論、~システム、~値といった必勝法のゴールドラッシュの勢いは止まるところを知らない。

しかし、本当のところ、馬券で損をするというつらさや苦しみからは決して逃れることはできない。簡単で確実なはずの必勝法は、手にした途端、使い勝手の悪い、たまにしか的中することのないゴミと化す。たとえ的中しても、あまりにも買い目が多すぎて結果的にマイナスになってしまうこともあるだろう。それでも、必勝法は当った勝ったと大騒ぎする。これまでの負けを全て忘れ、水に流したと言わんばかりに。馬券で損をするという病に効く薬はないし、必勝法を生み出す詐欺師、それにすがる愚か者に付ける薬もない。

何よりも悲しいのは、競馬予想界の「無痛化」によって、我々が考えることからも逃げてしまうことだ。もし万が一、苦しみから次々に逃れて行くことの出来る必勝法があるとしても、その後に何が残るかというと、快楽、快適さ、安楽さしか残らない。するとどうなるかというと、当たって気持ちがいいけれどもよろこびのない予想になる。

必死になって考え、答えを導きだそうというつらさや苦しみから逃げてはいけない。よろこびは自分の頭で考えることでしか生まれない。競馬好きが100人いれば100通りの予想があるべきで、自分の予想が当たることも外れることもあるだろう。たとえ当たっても外れても、その予想が自分の頭で考えられたものであれば、そこには何ものにも代え難いよろこびがあるのではないだろうか。

seimeigaku


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◆第4位指名◆ラスリングカプスの06(牝)父クロフネ

本日、嬉しい知らせが届いた。POG第2位指名馬であるガンズオブナバロン(牡)が、2戦目にして未勝利を勝ち上がったのだ。スタートから絶好のポジションを確保するや、スムーズに折り合い、直線では他馬を突き放す一方で1.1倍の圧倒的人気に応えた。レコード勝ちというオマケまでついてきたのだ。馬体だけで選んだ馬が、早速結果を出してくれて素直に嬉しい。

さて、第4位指名はラスリングカプスの06(牝)である。もちろん、この馬も馬体だけで選んだ1頭であるが、あのアストンマーチャンの妹であることを知って驚いた。その愛くるしい容貌を知りつつも、一度も馬券を買って応援したことがなかったことを後悔していた馬だけに、その妹とPOGで繋がったことは驚くべき縁である。さらに、馬体だけを見ると、アストンマーチャンとは似ても似つかないことにもまた驚かされた。

アストンマーチャンはとにかく柔らかい筋肉がギュッと詰まった、肉厚の典型的なスプリンター体型であった。2歳時はなんとかマイル戦までこなしたが、3歳になり、スプリント色が濃くなっていったのは当然とも言える。距離適性が年齢によって変化するのは、年を重ねるごとにその馬の血統的な肉体面が強く出てくるため、長距離が得意になったり、反対に短距離の方がレースがしやくなったりするからだ。また、気性面の成長により、長距離でも折り合いが付くようになったり、逆に我慢が利かなくなって、短距離でしか力を出せなくなったりすることもある。

アストンマーチャンに関して言えば、肉体的には2歳時から短距離馬のそれであったし、究極のピッチ走法であることからもスプリンターの資質は見え隠れしていた。それでもマイル戦の阪神ジュべナイルFでウオッカを最後まで苦しめたように、2歳時は走ることに対して余裕があったため、距離がなんとか持った。ところが、3歳時になると、とにかく前へという気持ちが抑えられず、ムキになって走る傾向が顕著になってきたのだ。競馬(レース)の苦しさが分かってきたからこそ、少しでも早くこの状況から回避したいという本能が強く働くようになり、気持ちがはやってしまうようになったのである。スプリンターの資質を強く持った馬が、気持ちに任せて突っ走るのだから、マイルの距離でバタバタになってしまっても何ら不思議ではない。「スプリンターの色が濃くなってきたね」、と桜花賞のレース後に武豊騎手が語ったのはそういうことだ。

Laslingcaps

しかし、妹においては、父がアドマイヤコジーンからクロフネに変わったことにより、馬体に十分な伸びが感じられる。「この馬体の見た目どおりにパワーがあり、スピードの乗った走りを見せています。クロフネの産駒らしく、気は優しくて力持ちといったところですね」という関係者の言葉も心強い。筋肉の質・量ということであれば姉が上だが、全体的なスケールということであれば、妹に軍配が上がるだろう。マイル以上の距離をこなせるスタミナを感じさせるように、姉が桜花賞に近い馬であったことを思えば、オークス、いやその先までも夢を抱くことのできる馬である。

姉が走り残した分まで、この馬には走り切って欲しい。


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