集中連載:「調教のすべて」第18回
■藤沢調教論の本質
さて、今度は反対に、馬は鍛えても強くなることはないという考えを紹介したい。リーディングトレーナーの座に10年以上にわたって君臨し続けている、藤澤和雄調教師である。当時は革命的でさえあった馬なり調教を貫き、広く認めさせた師は、以下のように語る。
ご存知よくパドックの解説で「うっすらとアバラが浮いた、ギリギリの仕上げ」という言葉を耳にするが、私に言わせれば、やりすぎである。仮にそれでいつもより少しばかり速く走れたとしても(私は速く走れるとは思わないが)、そういう体で目一杯のレースをしたら、馬はそのあと、どうなるのか。そんな競走生活を、二年三年と続けさせられる馬は、はたしてハッピーだろうか。レースのときさえ速く走れれば、そのあとはどんな状態になってもよいという考え方には賛成できない。(中略)
たしかにレースに出走する馬は、体が出来上がっていなければならないが、痩せていてはダメである。レースで勝ち続けるには、力強い馬体に、元気が満ちていなければならない。(「競走馬私論」より)
まさに、これぞ藤沢調教論の本質である。藤沢調教師と、他の多くの調教師との間にある、たったひとつの大きな違いがここにある。目一杯に仕上げてしまうか、そうでないか、の違い。目一杯に仕上げてしまうことを、藤沢調教師は「やりすぎ」とする。

その後のことを考えずに100%に仕上げてしまってはいけない。肉体的にも精神的にもダメージを受けた馬は、次第に走ることが嫌になり、それを強いる人間に対しても反抗的になる。果たして、その馬の成績は尻すぼみとなり、競走期間は短いものとなる。
もちろん体が出来上がっていなければレースにならないので、80%程度の仕上げでコンスタントに競走に臨ませることになる。肉体的にも精神的にも、多少の余裕を持たせた状態で出走させるのである。馬に力があればそれでも勝てる。果たして、その馬の能力に相応しい成績を残すことができ、競走期間は長く充実したものとなるのだ。

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天皇賞春2
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凱旋門賞2
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