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スプリンターズSを当てるために知っておくべき3つのこと

Sprint02

■1■サマースプリントシリーズの最終戦として
1990年にG1レースに昇格し、それ以降、師走のスプリント決戦として定着していたが、2000年から秋の中山開催へと時期が変更された。この変更によって、夏に行われるサマースプリントシリーズとの結びつきが強くなった。夏競馬を使ってきた勢いを、ほとんどそのまま持ち込めるようになったということだ。そういう意味において、スプリンターズSはサマースプリントシリーズの最終戦と考えて良いだろう

とはいえ、サマースプリントシリーズで目一杯走り切ってしまった馬は苦しい。昨年のサマースプリントチャンピオンに輝いたサンアディユがそうであったように、夏に3走もしてしまっていると、最後のスプリンターズSではガス欠を起こしてしまうことになる。また逆に、なんらかの事情があって、ここがブッツケになってしまった馬では、余程力が抜けていないとこのレースを勝つことは難しいであろう。つまり、サマースプリントシリーズを使いつつ、スプリンターズSを最終目標に定めてきた馬を狙うべきである

■2■基本的には差し馬が有利も
中山1200mのコースは先行馬にとって有利な形態となっているが、これだけハイペースになってしまうと、前に行けるだけのスピード馬にとっては苦しいレースになる。「短距離の差し馬」という格言もあるように、ハイペースについて行けて、なおかつ末脚もしっかりとしている差し馬が狙いとなる

ただし、雨が降って道悪になった際は、考え方を180℃変えなければならない。平成12年のダイタクヤマトや平成16年のカルストンライトオ、平成18年のテイクオーバーターゲット、平成19年のアストンマーチャンが逃げ切ったように、道悪になると先行できる馬が圧倒的に有利になる。

スプリンターズSはパンパンの良馬場で行われても、重・不良馬場で行われても、前半の800mのタイムはほとんど変わらない。たとえば、平成17年に良馬場で行われたスプリンターズS(勝ち馬サイレントウィットネス)と、不良馬場で行われた昨年のスプリンターズSのラップをご覧いただきたい。

平成17年 12.1-10.1-10.7-11.1-11.5-11.8 良馬場 
平成19年 12.0-10.3-10.8-11.1-12.0-13.2 不良馬場

これほど異なる条件下で行われた2つのスプリンターズSだが、テンの4ハロンのラップタイムはほとんど同じであることが分かる。平成17年がスローペースで流れたわけではない。どちらかというとハイペースで道中は進み、中団から進出したサイレントウィットネスが最後の急坂で差し切り、2着には最後方からデュランダルが32秒の脚で追い込んできた。パンパンの良馬場をハイペースで流れたスプリンターズSと、ドロドロの不良馬場のスプリンターズSの前半800mがほぼ同じラップなのだ。これはどういうことだろう?

これこそが雨のスプリンターズSは800mのレースであるということに他ならない。つまり、スタートしてから800mで究極のラップを刻むため、ラスト400mはどの馬もバテてしまい、レースどころの騒ぎではないということである。また、競走馬はスタミナが切れたところを追い出されるとフォームを崩してノメるという特性があるため、4コーナー手前からはどの馬も真っ直ぐ走らせるだけで精一杯という状況にもなる。勝負は800mで決まってしまうのだ。雨が降った場合は、スタートよく飛び出して、ハミをしっかりと噛みながらガンガン前に行ける馬を狙うべきである

■3■1200m以上のスタミナ
スピード自慢の馬たちが揃うため、前半3ハロンは32秒~33秒前半というハイペースになり、さらに直線に急坂が待ち受けていることも加わって、後半3ハロンは35秒台の消耗戦となる。前半と後半で2秒以上の落差が生まれることによって、一本調子のスピード馬にとっては厳しいレースになり、このレースを勝ち切るためには1200m以上のレースを走るだけのスタミナが要求される

■参考データとして
1、G1レース出走経験がないと×
2、前走オープン特別で敗れていた馬、または条件戦出走馬は×
3、1200m戦で連対率50%、かつ勝ち星があることが望ましい

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サムソンよ、いざ凱旋門賞へ

Meishosamson

来月5日、メイショウサムソンが凱旋門賞に出走する。一昨年のディープインパクトの時のような熱狂はないが、日本のトップホースが昨年の悔しさを乗り越えて海を渡るのだから、注目しないわけにはいかない。フォア賞でひと叩き出来なかったのは残念だが、仕上がりの早い馬だけに、満を持して臨んでくれるだろう。あとはこの馬が本番一発でヨーロッパの競馬にアジャストできるかどうかである。1年越しの思いを胸に、怪力サムソンの走りを見せつけてきて欲しい。

と、ここまではあくまでは一般的な応援であり、実際には、メイショウサムソンの気持ちの部分を大いに心配している。今年に入ってからの負け方、アドマイヤジュピタに差し返された天皇賞秋、そしてエイシンデピュティを差し切れなかった宝塚記念、どちらのレースを観ても、もしかしたら気持ちが切れてしまったのかという思いを拭い去ることが出来ない。肉体的な能力が高いので好走はするが、最後の一歩を踏ん張り切るだけの気持ちが失われている、そんな感じだ。

もともとメイショウサムソンは、他馬よりも前に出ようという強い気持ちで頂点に上り詰めた馬である。皐月賞にしても、ダービーにしても、昨年の天皇賞春にしても、一滴の体力も使い果たしてしまった中で、最後の最後でグッと前に出ることが出来たのは、メイショウサムソンの心の底に宿る狂気のようなものが爆発したからに他ならない。思えば、父を同じくするテイエムオペラオーも同じようなタイプの馬であった。僅かな差で勝つということは、身体的な能力が他馬よりも秀でているのではなく、一歩でも先へ出ようとする気持ちが僅かに勝っていることの証明である。

そういうタイプの馬は、気持ちが切れてしまうと惜敗を繰り返すことになる。あれだけ強かったテイエムオペラオーも、天皇賞春連覇を最後に勝てなくなってしまった。宝塚記念でメイショウドトウの2着負けてからは、その年の秋シーズン、天皇賞秋はアグネスデジタルの2着、ジャパンカップはジャングルポケットの2着と惜敗を繰り返し、最後の有馬記念は完全に気持ちが切れたのか、5着と惨敗してしまった。気持ちで勝ってきた馬の気持ちが切れてしまえば、勝利に手が届かなくなるのは偶然ではなく必然である。メイショウサムソンの春2走を観ると、晩年のテイエムオペラオーの姿が重なる。

だが、わずかな希望の光もある。フランス・シャンティの静かで広大な土地で、自然の空気に身を任せてリラックスした生活を送ることにより、かつてディープインパクトもそうだったように、肉体的にも精神的にもリフレッシュされることもあるかもしれない。ディープインパクトの場合、凱旋門賞には立派すぎる体で走ることになってしまったのだが、そのおかげで帰国後のジャパンカップと有馬記念では最高の体調で臨むことができた。メイショウサムソンも帰国後の有馬記念あたりが狙い目なのかもしれないが、フランスでの新しい環境は、もしかすると燃え尽きてしまったかつての闘争本能にもう一度火を灯す可能性があるということだ。

そうなれば、父オペラハウス、父の父サドラーズウェルズ、母の父ダンシングブレーヴというヨーロッパのヨーロッパによるヨーロッパのために血脈が黙っていないだろう。母系には名牝ガーネットを通じてフローリスカップに至る、日本古来の血統というスパイスもある。ヨーロッパの重い芝をこなせるだけのパワーもあるし、どちらかというと脚に力を入れてはしるピッチ走法もヨーロッパ向きである。かつて凱旋門賞に挑戦した日本馬たちの中でも、適性という面であれば1、2を争うと言っても過言ではないだろう。個人的には、凱旋門賞というレースは、メイショウサムソンのような適性のある馬が、何気なく挑戦した時にポロっと勝ってしまうような気がして仕方がないのだ。

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神戸新聞杯を当てるために知っておくべき3つのこと

Koubesinbunhai

■1■とにかく前走ダービー上位組
過去10年のうち、前走ダービー組から6頭の勝ち馬が出ている。連対馬にまで対象を広げても、20頭中11頭が前走ダービー組である。さらに日本ダービー優勝馬は【2・2・1・0】連対率75%、2着馬は【2・2・2・2】連対率50%と抜群の成績を残している。紛れのない府中2400mで行われるダービーで勝ち負けになった馬は、たとえ休み明けでも確実に勝ち負けになる。とにかく、ダービー上位組を狙うべきレースである。

■2■瞬発力があり、先行できる馬に有利
阪神2400mはスタートしてから最初のコーナーまでの距離も長く、休み明けの馬が多いこともあってスローペースは否めない。緩やかな3~4コーナーをゆっくり回るため、どうしても直線に向いてからのヨーイドンの競馬になる。当然のことながら、先行できる馬にとって有利になり、「折り合いに不安のある馬」、または「瞬発力のない馬」にとっては苦しくなる。枠順としては、スローになる分、どちらかというと内枠有利。

■3■さほどスタミナは問われない
今年から距離が400m延長されたが、この時期の芝は軽いことや、阪神2400mコースの特性上、さほどスタミナを問われるレースにはならない。よって、前走ダービー上位組以外を狙うのであれば、夏を越して力をつけてきたステイヤーを狙うのではなく、ただ単純に夏の上がり馬を狙うだけでよい。上がり馬だけに、前走で勝っていることは最低条件になるだろう。

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競馬の神様はいずこに?

Wtderby08

私にとっては痛恨の馬券であった。競馬の祭典ダービーだというのに、当日にどうしても外せない仕事が入り、現地で観戦できなかっただけでなく、前日に馬券を買わなければならない羽目になってしまったのだ。前日に購入することは慣れているのだが、その日、雨が降っている場合だけにはどうしても慣れることができない。このまま雨が降り続き、重馬場になるのか、それとも当日には降り止んで、良馬場での戦いになるのか。ここの見極めは難しい。

今年のダービーに限っては、雨が残るだろうという憶測(臆病な観測)のもと、良馬場であればかなりの自信があったディープスカイへの賭け金を下げた。ただでさえ何が起こるか分からない中で、さらに何が起こるか分からないのが重馬場の競馬というものだからだ。ディープスカイの切れすぎるほど切れる末脚も、あまりにも馬場が悪ければ削がれることもあるだろう。今年のダービーは控除率が5%も引き下げられるプレミアムレースで、大きく賭けるつもりだっただけに、なおさら忸怩たる思いではあったことは確かだ。

そんな私の暗澹たる思いとは裏腹に、ディープスカイに跨った四位騎手の騎乗は見事なものであった。スタートしてから全くの馬任せで第1、2コーナーを回り、向こう正面に至って先頭を走る馬との差が大きく開いているにもかかわらず、全く慌てることなくディープスカイのリズムで走らせていた。四位騎手の隣をフロテーションに乗って走っていた藤岡祐騎手が、「1コーナーで四位さんは笑っているように見えた」と言う気持ちもよく分かる。いくら末脚に自信があっても、おそらく中団でレースを進めるのではと考えていた私にとって、四位騎手の揺るがない騎乗には身の引き締まる思いがしたものだ。昨年のダービーをウオッカで勝った自信と余裕からなのか、それとも腹を括っているのか。おそらくどちらでもあったのだろう。一世一代のダービーで、勝ちたいという思いを完全に消し去ることの出来た四位騎手は、ダービージョッキーの称号に相応しかった。

しかし、勝利ジョッキーインタビューでの言動は褒められたものではなかった。以前、こちらのエントリで評価しただけに裏切られた気持ちもあった。私は勝利ジョッキーインタビューには特別な思いがあって、この場でいい加減なことをする騎手は断固として許せないのである。個人的には、佐藤哲三騎手の人をバカにしたような受け答えには肝を冷やすし、後藤騎手がかつてやっていたオチャラケもあまり好きではない。テレビで放映されるということは、不特定多数の人々の目に触れるということであり、その受け答えひとつで競馬ファンではない一般の方々の見る目も変わってくるからだ。

ジョッキーたちが、レースが終わって興奮しているのも分かるし、次のレースのことで頭が一杯なのも分かる。競馬のことを知らないインタビュアーの下らない質問に怒りを感じるのも分かるし、神聖なるダービーの勝利ジョッキーインタビューの場をぶち壊すような輩に心底腹が立つのも分かる。それでも、あなたは運良く特別な場を与えられて、競馬を代表するひとりのジョッキーとして、世界の人々に対してメッセージを語っているということだけは忘れないで欲しい。

日本一のジョッキー武豊騎手が偉大なのは、たくさん勝っているからではなく、馬乗りの技術が優れているからでもなく、日本の競馬のことを常に考えて生きてきたからである。「去年も勝たせてもらって、まさか2年連続でダービーを勝てるとは思わなかった。競馬の神様が今日も僕のところに降りてきたようだ」と四位騎手は話したが、ダービーの神様はもう二度と彼のところには降りてこないのではないかと思う。

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集中連載:「調教のすべて」第21回

Tyoukyou28

■併せ馬をすることの意味
「追われ方」は、“馬也(うまなり)”と“強め”と“一杯”の3つに大別されると述べたが、さらに実際の調教では、“単走”なのか“併せ馬”なのかが加わってくる。“単走”であれば特に表記はないが、“併せ馬”であれば、どの馬とどう走ってどれぐらい先着した(もしくは遅れた)のかが表記される。

たとえば、角居厩舎のウオッカが桜花賞に臨む前の最終追い切りは“併せ馬”で行われた。

2007/04/04(水) CW 良 四位 67.9-52.5-39.1-12.3 ⑦ 馬也
中マヒオレ馬也を5Fで0秒4追走1F併せで併入
外エキゾーストノート馬也を5Fで0秒8追走1F併せで併入

この表記が意味するところは、3頭の併せ馬においてウオッカは、中を馬なりで走るマヒオレに0.4秒、外を馬なりで走るエキゾーストノートに0.8秒遅れたところから追走して、内側に併せて、ほぼ同時に(併せ馬の形で)ゴールしたということである。残念ながらダイワスカーレットの2着に敗れてしまったが、追い切り自体の内容は、手応え十分の素晴らしいものであった。

併せ馬のメリットは、馬同士が互いに競い合って、様々なことを学習することにある。たとえば、3頭併せでスタートして、道中をきちんと折り合って、直線に向いてから目標の馬を交わす練習であったり、自分よりも能力の高い馬の後ろについてその走り方を学ぶなど、併せ馬のメンバーや設定を工夫することによって、実戦に近い形での経験が積めるということである。

これから伸びようという2歳馬を、古馬のオープン馬と走らせることもある。まともに併せたのでは勝負にならないので、2歳馬は内ラチ一杯のコースを走り、古馬のオープン馬は大外を回るというハンデをつけるのである。そうやって年上のオープン馬と互角に走っているうちに、2歳馬は自信をつけてくる。ハナの差を争うような厳しいレースでは、こういった精神面での優劣が大きくものをいうから、馬に自信を与えていくことの意味は大きい。

また、一流馬にはそれぞれ、並の馬にはない何かがあるため、人には決して教えることのできないその何かを、成長過程の馬は一流馬と一緒に走ることで学び取ることがある。主として集団調教を行う藤澤和雄厩舎からタイキブリザード、タイキシャトル、スティンガー、そして角居勝彦厩舎からデルタブルース、ポップロック、ウオッカ、トールポピーなどの一流馬が次々と出るのは、併せ馬という模擬レースの中で、後輩が先輩から何かを学習しているからである。たとえば、スティンガーはタイキシャトルと一緒に走ることによって、タイキシャトルはタイキブリザードと走ることによって、様々なことを学び取ったのである。

それでは、自分よりも格下の馬に胸を貸す一流馬のメリットはなんであろうか?それは、「精神的に燃え尽きない」ということである。強い馬は己の限界を超えて走ってしまうことがあるので、強い馬を強い馬と一緒に走らせてしまうと、お互いが頑張りすぎて最後には精神的に参ってしまうのだ。精神的に燃え尽きさせないために、せめて調教だけでも、なるべく走る馬と走らない馬を一緒に走らせるのである。

(第22回へ続く→)

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ルドルフおやじさんと競馬を語りました(前編)

今年の夏休みに、ルドルフおやじさんと久しぶりの再会を果たしました。ウインズ渋谷で軽く遊んだ後、近くの居酒屋にて、競馬についてとことん語り合いました。

ちょうど北九州記念が行われた日でしたので、勝ったスリープレスナイトのスプリンターズSに向けての展望から話は始まりました。そこから、アメリカンオークスを制したシーザリオ、ダービーであのディープインパクトの2着に敗れたインティライミ、種牡馬としても頂点に立ったアグネスタキオン、そして秋に復帰予定の最強牝馬ダイワスカーレットへと話は広がっていきました。

そんな競馬談義の一部を収録しましたので、まずは前編をお届けします。二人とも録音しているという緊張感が全くなく(笑)、お酒を飲みながら、好き勝手なことを、まったりとしたテンションで話していますので、ぜひ皆さまも肩の力を抜いてお聴きくださいな。

音声ファイル(MP3、28分)
*録音状況から音が小さいかもしれませんので、ご自身でご調整ください。

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セントライト記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Sentolite

■1■上がり馬に注目
9月競馬全般に言えることだが、この時期はまだまだ暑く、休み明けの馬にとっては調整が難しく、レースに行っていきなり能力を発揮しづらい。セントライト記念も最近の傾向として、夏にレースを使っていた馬が強く、ダービー以来の休み明けで好走したのは、ホオキパウェーブ(2着)とゴールデンダリア(2着)だけである。また、過去5年間、全ての勝ち馬は前走で連対しているように、夏の上がり馬に注目すべきレースである。

■2■切れよりもスタミナ
中山2200mは、2コーナーが丘の頂上となっていて、そこからゴールまで緩やかな下りが続く。3コーナーが軽く舵を切るだけで曲がれるため、2コーナーから4コーナーまでは500mの擬似直線と考えることも出来る。そのため、3コーナー付近からロングスパートのレースになりやすく、距離以上のスタミナを要求されることになる。一瞬の切れを武器にする馬ではなく、良い脚を長く使える地脚の強い馬を狙うべきである。

■3■前に行ける馬を狙え
これも9月競馬全般に言えることだが、この時期だけは夏の間にしっかりと養生されたことで、芝がしっかりと根を張った野芝100%の状態になっているため、多少のハイペースで行ってもなかなか前の馬は止まらない。これに中山競馬場の直線の短さが加わって、差し・追い込み馬にとっては苦しいレースになる。ただし、ロングスパートでスタミナが問われることがこたえるのか、逃げ切りも意外と難しい。つまり、前に行ける先行馬、もしくは3~4コーナーまでに好位を確保できる馬にとって有利なレースになるのだ。

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ローズSを当てるために知っておくべき3つのこと

Roses

■1■前走オークス組と夏の上がり馬が五分
過去10年の勝ち馬の前走を見ると、G1オークスもしくは桜花賞以来の馬が5頭、条件戦(もしくはG3)からが5頭とほぼ互角の争い。連対馬に手を広げても、G1オークス(もしくはNHKマイル)以来が5頭、条件戦(もしくはG2・3)からが5頭と、こちらも互角となる。

これは、牝馬は総じて仕上がりが早いということに理由があるだろう。この時期であれば、基本的には夏にレースを使っていた馬が有利なのだが、たとえ休み明けであっても、春の実績馬がある程度までキッチリと仕上がって出走してくるということである。つまり、春のクラシックを走ってきた実績馬が夏の上がり馬と五分に戦える舞台となっている。

■2■紛れが少なく、内枠有利なコース設定
改修後の阪神1800mは、スタートしてから最初のコーナーまでの距離が長く、直線も長いため、
激しい先行争いもなく、極めて紛れの少ないコースといえる。別の言い方をすると、ごまかしが利かないため、スタミナのないマイラーでは苦しい。また、コーナーを緩やかに回るので、馬群が固まりやすく、外枠を引いた馬は外々を回されやすい。内枠を引いた馬が有利である。

■3■瞬発力勝負になりやすい
改修後の阪神1800mコースの特性上、どうしても道中がスローで、最後の直線に向いての瞬発力勝負になりやすい。そういった意味では、前に行ける先行馬にとって有利となるが、後方からでも瞬発力に優れていれば差し切れる。

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「競馬の血統学」

Keibanokettougaku 4star

ボロボロになるまで読んだ競馬の本は数えるほどしかないが、「競馬の血統学」はその中の1冊である。「血統について勉強したいのですが、どの本を読めばよいですか?」と聞かれた時に、私は迷わずこの本を薦めることにしている。もし無人島に1冊だけしか血統本を持っていけないとしたら(そんな状況ありえないか…)、私はこの本を手に取るだろう。それほどまでに、この本に書かれている内容は奥が深く、何度読み返してみても新しい発見と驚きがある。

著者の吉沢譲治氏は、雑誌「優駿」にて重賞勝ち馬の血統ページを担当するようになり、十数年の間、血統表とファイルを整理する作業を続けた後、あるひとつの結論に達する。それ以来、血統についての全ての謎が解けていき、日本に戦前から伝わる在来の地味なサラブレッド血統と、それら多くを支える零細牧場と地方競馬の重要性を、深く認識するようになったという。

その結論とは、「近親繁殖の行き詰まりで活力、生命力、遺伝力を失いつつあった“同一品種”の名門血統が、“異品種”の雑草血統によってよみがえる」ということだ。

そして、その結論に基づいて、吉沢氏はサラブレッドの血統の流れを4つの波に喩える。「近親繁殖で走る大きな波」と「異系繁殖で走る大きな波」、「特定の血統が猛威をふるう波」、「血統の飽和で異父系が台頭する波」である。サンデーサイレンスやブライアンズタイムが日本で活躍したのも、4つ目の「血統の飽和で異父系が台頭する波」にうまく乗ったからだと吉沢氏は考察する。

爆笑問題の太田光が、大好きな作家カート・ヴォネガットについて、ヴォネガットはタイムスリップをテーマにした小説で「人は過去に行ける、思い出せばいい」と語った。それは我々が元々知っていることだった。しかし、誰もが当たり前と思うことを言葉に出来る天才と凡才の間には途方もない開きがある、と書いていたが、まさにその通りだと私も思う。吉沢氏が手にした結論は、言われてみれば当たり前のことだが、凡人の私にとって、世界観を揺さぶられるほど衝撃的であった。

随分と大仰に書いてしまったが、これから血統について詳しく学びたいという人たちにとっての入門書となるべき本でもある。セントサイモンから発した物語は、ハイペリオン、ネアルコ、ナスルーラ、ノーザンダンサー、ネイティブダンサー、トウルビオン、ロイヤルチャージャーと、時空間を超えながら紡がれていく。この物語を読み終えた後には、あなたはもっと血統について知りたいと思うだろう。もしかすると、それが血統を知るということなのかもしれない。

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9月競馬を攻略する2つのポイント

September夏競馬が終わり、ようやく開催が中央に戻ってきた。もう来月にはG1シリーズが始まるのだから、サラブレッドたちも忙しい。この9月いう時期は、秋のG1シリーズに向かうにあたっての過渡期にあたるシーズンである。そこで、期間限定ではあるが、9月競馬の攻略法について少し考えてみたい。

まずは、休み明けの馬よりも夏競馬を使ってきた馬を狙うということだ。この時期はまだまだ暑く、休み明けの馬にとっては調整が難しく、レースに行っていきなり能力を発揮しづらい。ところが、休み明けの馬は実績のある馬であることが多いため、たとえ仕上がりが悪くても、どうしても人気になってしまう面は否めない。私たちは春競馬での強い姿を覚えているので、ある程度の期待と幻想を持って、休み明けにもかかわらず実績馬を人気に祭り上げてしまうのだ。

実績馬がひと叩きされた後(10月以降)では、夏競馬を使ってきた馬の力関係は逆転する。夏に酷使された馬たちは力を使い果たし、夏を休養にあてていた実績馬たちの体調が上向いてくるということだ。つまり、9月いう時期は秋のG1シリーズに向かうにあたっての過渡期にあたるシーズンではあるが、厳密にいうと、夏競馬の延長線上にあるということになる。確かに休み明けの実績馬の取捨は難しいが、人気的な妙味を考慮すると、夏競馬を使ってきた馬を狙う方が妙味だろう。

さらに、前に行くことの出来る逃げ・先行馬を狙うということだ。普段は酷使されることの多い阪神競馬場や中山競馬場の芝だが、この時期だけは夏の間にしっかりと養生されたことで、芝がしっかりと根を張った野芝100%の状態になっている。どの馬にとっても走りやすい絶好の馬場であり、それゆえ速い時計が出やすい高速馬場でもある。マイル戦で1分32秒台の時計など当たり前で、全馬の上がり3ハロン時計が33秒台であるレースも珍しくない。

このような極めて速い上がりで決着するレースにおいては、多少のハイペースで道中が流れたとしても、前に行った馬はなかなか止まらない。たとえ後ろから行った馬が32秒台の強烈な脚を使って突っ込んできたとしても届かないということが頻出する。さすがにサラブレッドの使える脚には限界があるので、後ろから行ってしまうと物理的に届かないということである。もちろん、前有利をジョッキーたちが意識しすぎてオーバーペースになり、前崩れが起きることもあり得るが、それでも、私たちが思っている以上に、スムーズに前に行くことの出来る馬に妙味がある。

以上2つのポイントは、ごく当たり前のことではあるのだが、どんなテクニックよりも9月競馬においては効果的なので書き留めておくことにした。私たちが思っている以上に、休み明けの馬よりも夏競馬を使ってきた馬の方が優勢であり、また前に行くことの出来る逃げ・先行馬に有利であるということだ。これらのポイントを頭のどこかで意識しておくことで、危険な人気馬や意外なダークホースを見つけることが出来るかもしれない。競馬は私たちが考えるよりも複雑なゲームであるが、意外と単純な文脈から結果が出ることもあるのだから不思議である。

photo by fake Place

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京成杯オータムHを当てるために知っておくべき3つのこと

Keiseihaiautumnh

■1■瞬発力ではなく持続力が問われる
4月以降の開催となるため、野芝の養生期間が長く、根がしっかりと張った野芝100%の極めて軽い馬場で行われる。そのため、スタートからゴールまで速いラップが刻まれ、一瞬の脚ではなく、どれだけスピードを維持できるかという持続力が問われるアメリカ型のレースになりやすい。アメリカ血統の馬が意外な好走を見せるものここに理由がある。

■内枠を引いた逃げ・先行馬有利
過去5年のレースラップを見てみると、道中で速いラップを刻み続けるだけではなく、前が止まりにくいことを意識して各馬が良いポジションを取りに行くため、前半が後半に比べて速い前傾ラップになることが多いことが分かる(下記)。

12.3-11.3-11.6-11.8-11.9-11.8-11.2-12.0(47.0-46.9)M
12.9-11.2-11.6-11.5-11.6-11.6-11.0-11.4(47.2-45.6)S
12.1-11.2-11.1-11.3-11.5-11.7-11.5-12.9(45.7-47.6)H
12.4-11.1-10.8-11.0-11.4-11.8-11.6-11.9(45.3-46.7)H
12.7-10.9-11.5-11.2-11.5-11.5-11.6-11.7(46.3-46.3)M

前傾ラップになって前に行った逃げ・先行馬にとっては苦しい展開になるにもかかわらず、逃げ・先行馬が残って上位を占めることが多い。それだけ馬場が絶好であるため、前が簡単には止まらないということである。ペースが速くなることを承知で、それでも逃げ・先行馬を狙うべき。もちろん、中山の1600mコースは内枠有利が定説で、逃げ・先行馬が内枠を引けば大きく有利になることは間違いない。

■3■牡馬優勢
同じ日に阪神で行われるセントウルSとは対照的に、牡馬が【9・8・7・65】と牝馬【0・1・2・19】を圧倒している。牝馬の連対は2004年のシャイニンルビーただ1頭で、過去10年間で勝ち馬は出ていない。前述のとおり、どれだけスピードを維持できるかという持続力が問われるアメリカ型のレースになりやすいため、一瞬の脚で勝負したい牝馬にとっては苦しい戦いになるのである。

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セントウルSを当てるために知っておくべき3つのこと

Centauruss

■1■内枠の逃げ、先行馬
阪神の開幕週ということもあり、馬場の傷んでいない内の経済コースを通られる馬は当然ながら有利になる。また、馬場が軽くて前が止まらないことや、阪神1200mコースは最後の直線が356mと比較的短く、逃げもしくは先行馬にとって有利なレースとなる。内枠に入った逃げ・先行馬がいたら、とりあえず狙ってみるのも面白い。

■2■牝馬の活躍
1200m戦で行われるようになった過去8年間において、牡馬(セン馬含む)が【2・5・8・59】とわずかに2勝(連対率10%)に対し、牝馬は【6・3・0・28】と6勝(連対率24%)を挙げ、圧倒的な成績を残している。サマースプリントシリーズの最終戦であり、スプリンターズSの前哨戦でもあるという、複雑な思惑の絡んだレースではあるが、夏競馬の勢いそのままに牝馬の活躍が目立つ。開幕週で馬場が軽いということが理由のひとつであろう。

■3■夏場に使っていた馬
過去8年の勝ち馬は、全て7、8月の夏場にレースを使っている。9月のこの時期は、中央開催に戻ってきてはいるものの、まだまだ暑く、休み明けの馬は調整が難しい。どれだけ力のある実績馬であっても、仕上がり途上の段階で、重い斤量を背負いながら、いきなりトップギアでの走りを期待するのは難しい。実績馬よりも、夏場を使っていた馬の方に妙味がある。

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もっと褒めろよ、お前たち。

Wtoaks08

私の見当外れな馬券は傍らに置いておいて、今年のオークスにおける池添謙一騎手の騎乗について。審議の対象となったのは、最後の直線、ラスト400mあたりからの攻防である。池添騎手はトールポピーを馬場の中央に出したが、前が完全に壁になってしまい、わずかに内側に空いたスペースに馬を突っ込ませた。その際、小牧太レジネッタを押し込む形となり、直後にいた安藤勝己オディールは手綱を引っ張り、その内にいた後藤浩樹ソーマジックはレジネッタに接触され弾き飛ばされた。池添騎手はレース後に裁決室に呼ばれ、失格・降着には至らなかったものの、2日間の騎乗停止処分が課された。

結論から述べると、今回の処分は極めて妥当なものだと思う。トールポピーの反応が抜群だったため斜行の度合いが大きく見えたことや、レジネッタなど4頭もの有力馬を巻き込んでしまったことから、多くの競馬ファンにとって後味は悪かったことに違いはないが、そもそも「斜行の大きさ」や「被害馬の頭数」は走行妨害の要件にはならない。「被害の大きさ」やトールポピーと被害馬との脚勢の違いが考慮されて、走行妨害には至らないと判断されたということである。

また、「走行妨害」による失格や降着にならなかったにもかかわらず、池添騎手が2日間の騎乗停止処分を科せられたのは、抜け出した後も立て直しを図らず、必要以上に継続的に右ムチを使ったからであって、他馬との絡みの問題ではない。

G1レースでの降着というと、最近では2006年のエリザベス女王杯が思い出される。このレースでカワカミプリンセスが降着になったのは、ヤマニンシュクルに対して著しく大きな被害を与えたからである。さらに、カワカミプリンセス自身の手応えも良くなく、4コーナー手前から本田騎手が左ムチを連打していたように、他馬との脚勢にも大きな違いがなかったことも印象を悪くした大きな理由だったろう。

大きなレースでこのような事件が起きると、必ずといってよいほど、公正競馬を標榜してJRAを盲目的に批判したり、社台系の馬だったからセーフになったなどという裏世界を語る輩が現れる。もちろん、JRAの審判・裁決にJRAの職員ではない第三者を審判に迎え入れるという建設的な意見には賛成だし、競馬の世界における政治の存在を私は完全には否定しない。しかし、今回のレースに限っては、たとえ誰が審判したとしても、池添騎手の行為は「走行妨害」には至らなかったはずである。裏も表もないのだ。

それよりも、池添騎手の騎乗を褒めた人がほとんどいなかったことが悲しかった。誤解を恐れずに言えば、これほど勝つということにこだわり、まるで針の穴を通すように実現された騎乗は珍しい。特にスタートから1コーナーにかけての進路の取り方などは、神がかり的でさえあった。素晴らしい騎乗は素晴らしいと認められるべきで、それがなされていないことが日本の競馬にとって最も大きな病だと思う。褒めるには知識や技術がいるのである。私たち競馬ファンはともかくとして、悪いことを悪いと言えない以上に、良いことを良いと正しく評価できない競馬メディアにひと言だけ言わせてもらいたい。予想もいいけど、もっと褒めろよ、お前たち。


関連リンク
JRAホームページ:「走行妨害および制裁について」
ガラスの競馬場:「もっと褒められていい」
ガラスの競馬場:「どうぞやめてもらいたい」

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集中連載:「調教のすべて」第20回

■限界まで仕上げられたサラブレッドの激走
ただし、厳しい調教を課されて極限に仕上げられた馬が、己の能力の限界を超えて120%の力を出してしまうことも確かにある。目の前のレースに照準を絞り、考えうる限りの強い追い切りをかけられた馬が、あっと驚く激走をするところを幾度となく私は見てきているのだ。だからこそ、私はこう考える。

「サラブレッドは鍛えれば(少しばかりは)強くなるし、ギリギリに仕上げると(少しばかりは)速く走ることができる」

あくまでも(少しばかりは)という括弧付きではあるが、その(少しばかり)が勝負の行方を左右するのも事実である。サラブレッドの競走は0,1秒を争うものであり、わずか鼻の差でレースの勝敗が分かれてしまうことは少なくない。相手よりも鼻の差だけでも前に出ることができれば、勝負に勝つことができる。そのわずかな差を埋めるために、(少しばかり)速く走ることが必要になるのである。

同じサラブレッドが80%に仕上げられた時と、100%に仕上げられた時で、一緒に走ったと仮定すると、間違いなく100%に仕上げられた時の方が勝利を収める。最後のひと踏ん張りが違ってくるからだ。これまで、限界まで仕上げられたサラブレッドの激走を数多く見てきた経験からも、このことは自信を持って言える。

たとえば、これは皮肉にも藤澤和雄調教師のケースであるが、平成11年のNHKマイルカップを勝った時のシンボリインディはギリギリの仕上げであった。いつもならばゴール前も馬なりのままフィニッシュする藤澤流だが、このレース前の最終追い切りに限っては、シンボリインディをゴール前強めに追い切ったのだ。当日の体つきを見て、もうひと絞り必要だと考えたのかもしれない。それでも、当日のマイナス12kgの馬体重は、藤澤調教師の思惑に反して仕上がり過ぎてしまったはずである。100%に仕上げられたシンボリインディは、己の能力を極限まで出し切って、シンボリ牧場に14年ぶりとなるタイトルをもたらした。

Tyoukyou27 by sashiko

しかし、100%に仕上げられた馬は、肉体的にも精神的にも大きな反動に襲われる。その後のシンボリインディは14着、9着、9着、5着、10着、5着と、G1ホースとはとても思えない惨敗を繰り返した。そのレースが最後であれば、それでいいかもしれないが、ほとんどのサラブレッドの競走は1回で終わるわけではなく、その後も続いてゆくものだ。目先の勝ちだけを追って、馬の成長や将来を考えない調教は、長い目でみるとマイナスの効果しか生まない。

藤沢調教師は、誰よりもそのことを身に染みて分かっている。だからこそ、たとえ仕上げてしまえば勝てるかもしれないレースであっても、ギリギリの仕上げを施すことなく、余裕を持たせて出走させる。我慢をすることができるのだ。だからこそ、藤沢調教師の管理馬は、故障が極端に少なく、高齢までコンスタントに走り続ける馬が多い。

■目に見えない部分
馬は鍛えることで強くなるのかという問いに対して、トップトレーナーたちそれぞれの考え方を紹介してきたが、いずれにせよサラブレッドの調教は「質×量」であるということに落ち着くのではないだろうか。サラブレッドがアスリートである以上、本番で能力を最大限に発揮できるような状態に持っていくことが調教の目的であり、調教師の仕事である。その持っていき方(仕上げ方)に、調教師の思想や技術、ひいては個性が表れていくのである。

実は藤沢調教師や角居調教師の馬は、たとえばグリーンウッドや山元トレセンなどの育成牧場(施設)で乗り込まれて来ているからこそ、それほど速い時計を出さなくても仕上がるという事情もある。調教師一人あたりの馬房数に制限がある現在の制度上では、1頭の馬をずっと厩舎に置いておくのではなく、当面レースに使う予定のない馬はすぐに短期放牧に出し、レース直前に入厩させることによって、馬房の回転数を良くしていくことが厩舎の好成績につながるのだ。こうして育成牧場を効率的に使っている厩舎の馬には、短期放牧先でもしっかり乗り込まれてきているからこそ、レース前に強い追い切りをかける必要はないということである。

また、追い切り以外の引き運動や常歩運動などの運動をどれだけしっかりと行っているかに関しても、数字としては表に出てこない、目に見えない部分である。だからこそ、藤沢調教師や角居調教師の調教は楽で、戸山調教師や白井調教師の調教が厳しいとは一概には言えないのである。運動量という意味においては、もしかすると藤沢調教師や角居調教師の調教の方が馬にとってはハードなのかもしれない。

(第21回へ続く→)

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2歳戦のツボ

2saisennnoneraikata by fake Place

競走馬の持ち時計を参考にして予想をする人など、今や珍しいだろう。今まで速いタイムで走ったことのない馬(持ち時計のない馬)が、条件が違えばあっと驚くタイムを出してしまうことなどよくある話だ。レースの全体時計に差が生まれにくいスプリント戦であっても、たとえば今年の高松宮記念馬であるファイングレインは、持ち時計をなんと2秒も縮めて勝利した。距離が伸びれば、もっと簡単に大きな差が生まれるのは自明の理である。つまり、レースの全体時計は道中のペースや馬場などによって大きく違ってくるため、持ち時計はほとんど参考にはならない。

それでも、持ち時計を唯一信じることのできる時期がある。2歳馬、特に2歳の牝馬である。なぜ2歳牝馬かというと、この時期の牝馬は特に、レースの駆け引きなどは一切関係なく、スタートしてからゴールするまで、一本調子でバテるまで一生懸命走るからである。手を抜いて、常に楽をして走ろうと考えている古馬とは大違いなのである。だからこそ、2歳馬、特に2歳牝馬は、持ち時計が純粋にその馬のスピード能力の証明であることが多い。

さらに、この時期の牝馬は早熟であり、牡馬に比べて7分の調教で仕上がる。桜花賞の頃になればどの陣営も悩まされるフケの心配もまだない。幼さゆえのポカがある牡馬に比べ、この時期の牝馬は早熟であるがゆえに、安定して力を発揮することが出来るのだ。秋以降になると、素質馬が台頭してくることによって尻すぼみになることも多いのだが、この時期に限っては牝馬に注目すべきであろう。

夏競馬は2歳馬のデビューの舞台でもある。ここ最近、素質のある2歳馬は早々と夏にデビューする傾向がますます強くなっている。調教施設の充実や調教技術の向上によって、現役で活躍する馬の数が多くなり、それに伴い、2歳馬も早くから使わなければクラシックに間に合わない状況になってきているのである。

もちろん今年も例外ではなく、素質に溢れる2歳馬たちが今週の新潟2歳S、小倉2歳Sで鎬を削ることになるだろう。レコード決着を制した実績を持つガンズオブナバロンやツルマルジャパンなどの牡馬に、強い内容で新馬戦を圧勝したダイワバーガンディやデグラーティア、エリモプリンセスなどの牝馬が、どう勝負を挑んでいくのか見所は尽きない。個人的には、私のPOG馬であるガンズオブナバロンや、センス溢れるレース振りに大いなる素質を感じさせるデグラーティアを応援したいと思う。

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なんとか持ってしまう。

Wtvictoriam08

府中のマイル戦はタフなコースであることは、オールドファンならずとも、ほんのわずかばかり前に競馬を始めた初心者でも知っているだろう。コーナーを2つしか回らないため、全体的に淀みの少ないペースになり、そのコーナーも複合カーブであるため息が入りにくい。それに加え、何といっても直線が長い。字ヅラ上は1600mという距離であっても、実際のところは、それ以上のスタミナが問われる舞台ということである。

だからこそ、関係者は府中のマイルでの走りを見て、2400mでも距離は大丈夫ではないか、もしくは3歳限定戦であれば持つかもしれないが、本質的に2400mの距離は長いのではないかと判断する。たとえば、今年のダービー馬であるディープスカイは、NHKマイルで圧倒的な勝ち方をした時点で、ダービーにおける距離に対する不安はほとんどなかったと言える。それぐらいに、府中のマイル戦は、スタミナと底力を問われるタフなコースであるということだ。

しかし、同じ府中のマイル戦でも、ヴィクトリアマイルというレースにおいては、そういったイメージを捨て去って臨んだほうが良いようだ。主な理由としては、牝馬限定であるこのレースは、G1であるにもかかわらず、あまりにも道中のペースが遅いからである。ヴィクトリアマイルが新設されてから3年間のレースのラップタイムを見てみたい。

12.6-11.2-11.6-12.1-12.2-11.4-11.3-11.6(47.5-46.5)S
1:34.0 ダンスインザムード
12.3-10.8-11.7-11.8-11.6-11.2-11.2-11.9(46.6-45.9)M
1:32.5 コイウタ
12.4-11.3-12.0-12.2-12.1-11.2-11.0-11.5(47.9-45.8)S
1:33.7 エイジアンウインズ

どのレースも、前半の800mの方が後半のそれに比べて遅い。コイウタが勝ったレースは比較的引き締まったペースであったが、特にエイジアンウインズが勝った今年のレースは、前後半のタイム差が2.1秒という究極のスローペースであった。軽くて走りやすい馬場で、これだけ前半が遅いペースになれば、ラスト3ハロン勝負のレースになることは目に見えている。もはやマイルを走るだけのスタミナは必要とされていないのだ。

一昨年のダンスインザムードはともかくとして、昨年のコイウタや今年のエイジアンウインズという、私にとっては府中のマイル戦では若干距離が長いのではと思わせる馬たちが、ヴィクトリアマイルの勝者となっているのはそういうことなのである。スピードには溢れているが、本質的にはマイルよりもスプリント戦寄りのスタミナと底力しかない牝馬が、遅いペースを味方につけて、なんとか持ってしまうのである。つまり、ヴィクトリアマイルは、スタミナと底力に富んだタイプではなく、どちらかというと短距離寄りの馬を狙うべきレースなのだ。

長く競馬をやっていると、圧倒的な人気を背負っているウオッカが復調一歩手前であることが見える一方で、エイジアンウインズにとって府中のマイル戦は長いと無意識のうちに決め付けてしまうことがある。それは経験や知識の成せる業であり、また怖いところでもある。人が生きていくために経験や知識は欠かせないが、人が新しい何かに挑むとき、最大の壁になるのはしばしばその経験や知識なのだ。ヴィクトリアマイルはまだ3回目を迎えたばかりの新しいG1であるからこそ、私たちはまず常識を捨ててかかるべきだろう。

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集中連載:「調教のすべて」第19回

■角居勝彦調教師の極意
続いて、もう少し具体的に、馬は鍛えても走らないという考えを実践している調教師のケースを紹介したい。牝馬のウオッカで日本ダービーを制し、シーザリオ、デルタブルースで海外のG1レースを勝つなど、驚くべき挑戦をしてかつ結果を出し続ける、日本を代表するトレーナー角居勝彦調教師である。師にいたっては、馬は鍛えても走らないだけではなく、馬は鍛えなくてもよいという考えを持っている。

馬は、自分で強くなる。レースを使えば、本能的に120%の力を出し尽くし、その中から何かを学習して成長してゆく。また、レースで酷使した筋肉は、超回復の原理によって、いったん組織が壊れても、適切な休養さえ取ってやれば、よりたくましくなって回復する。調教師は、それを我慢強く見守り、あせらずにじっと待ちながら、その時点での彼らのベストパフォーマンスを引き出すような、管理の工夫をしていればいい。

鍛えなくていいのである。

違う言い方をすると、それぞれの馬が持って生まれた能力というのは、調教師がつくり変えられるような甘いものではない。私にできるせめてものことは、彼らの能力をできる限り減らさないことくらいだろう。目先の勝ち負けにこだわって、馬に無理をさせるようなことはできないのだ。

わずか10年ぐらいの間に、これほどまで馬を調教することに対する考え方が変わることにまず驚かされる。故戸山為夫調教師も角居勝彦調教師も共に、ミホノブルボンやウオッカといった、時代の最強馬を作り上げたダービートレーナーであるのだ。決してミホノブルボンがウオッカに比べ、素質が劣っていたとは思えない。ミホノブルボンは戸山厩舎に入厩したときから凄い馬だったという説もある。それでも、故戸山為夫調教師はミホノブルボンを鍛えることで、一方、角居勝彦調教師はウオッカを鍛えないことでダービー馬となさしめたのだ。

角居勝彦調教師にとって初めてのG1制覇となったのは菊花賞のデルタブルースだが、このレースに臨むにあたっての調教においても、角居勝彦調教師はデルタブルースを鍛えることはなかった。最終追い切りは、芝コースを馬なりで流したのみという極めて軽い調教であった。これから3000mという過酷な距離のレースをする馬が、これだけの調教で息が持つのかどうかという心配の声も少なくはなかった。従来の考え方であれば、長距離のレース前にはビッシリと追っておくのが常であった。それでも角居勝彦調教師は勇気を持って鍛えなかったのだ。

Tyoukyou26 by fake Place

大丈夫さ、と私は信じていた。デルタブルースはその菊花賞の3週間前に、中山競馬場で2500mの九十九里浜特別を勝っていた。長距離レースの経験がある馬は、よほど長いブランクがない限り、実戦で一度息をつくってさえやれば、調教は軽くてもかまわない。というより、レースに行ったときの息と調教でつくる息は違うので、どんなに厳しい調教を積んでもあまり意味はない、とさえ言えるだろう。
悪影響の方が大きいかもしれない。サラブレッドの腱や関節は消耗品だからである。大きな負荷をかけるのはレースだけでいい。毎日のように長い距離を走らせれば馬は傷むものだし、大事な本番直前に強い追い切りをかけるのも、せっかく高まっている心身のテンションを台無しにする恐れがある。

マラソンランナーや野球の投手、ボクサーなど、人間のアスリートに置き換えて考えてみてほしい。ピークを本番に持っていくために、逆算して、激しいトレーニングを積むのは本番よりかなり前に済ませて、直前には微調整くらいしかしないはずである。

サラブレッドもまったく同じだ。使うレースの距離に関係なく、3000mのレースだろうが1200mのレースだろうが、同じである。トレセンでの調教は、稽古というより、心身の調整程度に考えておいたほうが良いのだと思う。(「勝利の競馬、仕事の極意」より)

随分と長く引用してしまった。いずれにせよ、この両者の考え方において、大きく異なるのは、調教で馬を鍛えることによって能力が上がるかどうかという点である。故戸山為夫調教師や白井寿昭調教師は調教で馬を鍛えることによって走る能力が高くなると考え、藤澤和雄調教師や角居勝彦調教師はそうはならないと考えている。鍛えれば速く走られるようになるのであれば厳しい調教を課すだろうし、そうでなければ調教は心身のコンディションを整える程度のものとするだろう。

私は後者の考えに一日の長があると思っている。もちろん、現代を代表するトップトレーナーたちが実行して結果を出しているというのが何よりの証拠だが、それ以上に、馬の走る能力はサラブレッドが厩舎に入ってくる時点ではほとんど決まっていると考えるからだ。

角居勝彦調教師の言う、「それぞれの馬が持って生まれた能力というのは、調教師がつくり変えられるような甘いものではない」という言葉は、まさにその通りだと思う。競走馬としてトレセンに入ってきた時点で、調教師及びその関係者たちに出来ることといえば、その馬が本来持っている能力を最大限に発揮できるよう、あらゆる手段や方策を工夫してケアすることぐらいなのではないか。

(第20回へ続く→)

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