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集中連載:「調教のすべて」第21回

Tyoukyou28

■併せ馬をすることの意味
「追われ方」は、“馬也(うまなり)”と“強め”と“一杯”の3つに大別されると述べたが、さらに実際の調教では、“単走”なのか“併せ馬”なのかが加わってくる。“単走”であれば特に表記はないが、“併せ馬”であれば、どの馬とどう走ってどれぐらい先着した(もしくは遅れた)のかが表記される。

たとえば、角居厩舎のウオッカが桜花賞に臨む前の最終追い切りは“併せ馬”で行われた。

2007/04/04(水) CW 良 四位 67.9-52.5-39.1-12.3 ⑦ 馬也
中マヒオレ馬也を5Fで0秒4追走1F併せで併入
外エキゾーストノート馬也を5Fで0秒8追走1F併せで併入

この表記が意味するところは、3頭の併せ馬においてウオッカは、中を馬なりで走るマヒオレに0.4秒、外を馬なりで走るエキゾーストノートに0.8秒遅れたところから追走して、内側に併せて、ほぼ同時に(併せ馬の形で)ゴールしたということである。残念ながらダイワスカーレットの2着に敗れてしまったが、追い切り自体の内容は、手応え十分の素晴らしいものであった。

併せ馬のメリットは、馬同士が互いに競い合って、様々なことを学習することにある。たとえば、3頭併せでスタートして、道中をきちんと折り合って、直線に向いてから目標の馬を交わす練習であったり、自分よりも能力の高い馬の後ろについてその走り方を学ぶなど、併せ馬のメンバーや設定を工夫することによって、実戦に近い形での経験が積めるということである。

これから伸びようという2歳馬を、古馬のオープン馬と走らせることもある。まともに併せたのでは勝負にならないので、2歳馬は内ラチ一杯のコースを走り、古馬のオープン馬は大外を回るというハンデをつけるのである。そうやって年上のオープン馬と互角に走っているうちに、2歳馬は自信をつけてくる。ハナの差を争うような厳しいレースでは、こういった精神面での優劣が大きくものをいうから、馬に自信を与えていくことの意味は大きい。

また、一流馬にはそれぞれ、並の馬にはない何かがあるため、人には決して教えることのできないその何かを、成長過程の馬は一流馬と一緒に走ることで学び取ることがある。主として集団調教を行う藤澤和雄厩舎からタイキブリザード、タイキシャトル、スティンガー、そして角居勝彦厩舎からデルタブルース、ポップロック、ウオッカ、トールポピーなどの一流馬が次々と出るのは、併せ馬という模擬レースの中で、後輩が先輩から何かを学習しているからである。たとえば、スティンガーはタイキシャトルと一緒に走ることによって、タイキシャトルはタイキブリザードと走ることによって、様々なことを学び取ったのである。

それでは、自分よりも格下の馬に胸を貸す一流馬のメリットはなんであろうか?それは、「精神的に燃え尽きない」ということである。強い馬は己の限界を超えて走ってしまうことがあるので、強い馬を強い馬と一緒に走らせてしまうと、お互いが頑張りすぎて最後には精神的に参ってしまうのだ。精神的に燃え尽きさせないために、せめて調教だけでも、なるべく走る馬と走らない馬を一緒に走らせるのである。

(第22回へ続く→)

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