もっと褒めろよ、お前たち。

私の見当外れな馬券は傍らに置いておいて、今年のオークスにおける池添謙一騎手の騎乗について。審議の対象となったのは、最後の直線、ラスト400mあたりからの攻防である。池添騎手はトールポピーを馬場の中央に出したが、前が完全に壁になってしまい、わずかに内側に空いたスペースに馬を突っ込ませた。その際、小牧太レジネッタを押し込む形となり、直後にいた安藤勝己オディールは手綱を引っ張り、その内にいた後藤浩樹ソーマジックはレジネッタに接触され弾き飛ばされた。池添騎手はレース後に裁決室に呼ばれ、失格・降着には至らなかったものの、2日間の騎乗停止処分が課された。
結論から述べると、今回の処分は極めて妥当なものだと思う。トールポピーの反応が抜群だったため斜行の度合いが大きく見えたことや、レジネッタなど4頭もの有力馬を巻き込んでしまったことから、多くの競馬ファンにとって後味は悪かったことに違いはないが、そもそも「斜行の大きさ」や「被害馬の頭数」は走行妨害の要件にはならない。「被害の大きさ」やトールポピーと被害馬との脚勢の違いが考慮されて、走行妨害には至らないと判断されたということである。
また、「走行妨害」による失格や降着にならなかったにもかかわらず、池添騎手が2日間の騎乗停止処分を科せられたのは、抜け出した後も立て直しを図らず、必要以上に継続的に右ムチを使ったからであって、他馬との絡みの問題ではない。
G1レースでの降着というと、最近では2006年のエリザベス女王杯が思い出される。このレースでカワカミプリンセスが降着になったのは、ヤマニンシュクルに対して著しく大きな被害を与えたからである。さらに、カワカミプリンセス自身の手応えも良くなく、4コーナー手前から本田騎手が左ムチを連打していたように、他馬との脚勢にも大きな違いがなかったことも印象を悪くした大きな理由だったろう。
大きなレースでこのような事件が起きると、必ずといってよいほど、公正競馬を標榜してJRAを盲目的に批判したり、社台系の馬だったからセーフになったなどという裏世界を語る輩が現れる。もちろん、JRAの審判・裁決にJRAの職員ではない第三者を審判に迎え入れるという建設的な意見には賛成だし、競馬の世界における政治の存在を私は完全には否定しない。しかし、今回のレースに限っては、たとえ誰が審判したとしても、池添騎手の行為は「走行妨害」には至らなかったはずである。裏も表もないのだ。
それよりも、池添騎手の騎乗を褒めた人がほとんどいなかったことが悲しかった。誤解を恐れずに言えば、これほど勝つということにこだわり、まるで針の穴を通すように実現された騎乗は珍しい。特にスタートから1コーナーにかけての進路の取り方などは、神がかり的でさえあった。素晴らしい騎乗は素晴らしいと認められるべきで、それがなされていないことが日本の競馬にとって最も大きな病だと思う。褒めるには知識や技術がいるのである。私たち競馬ファンはともかくとして、悪いことを悪いと言えない以上に、良いことを良いと正しく評価できない競馬メディアにひと言だけ言わせてもらいたい。予想もいいけど、もっと褒めろよ、お前たち。
関連リンク
・JRAホームページ:「走行妨害および制裁について」
・ガラスの競馬場:「もっと褒められていい」
・ガラスの競馬場:「どうぞやめてもらいたい」

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Comments
たくさんの人馬に迷惑かけてるんだからほめられるはずねえだろ。
下手すりゃ死ぬんだぞ?
Posted by: take | September 11, 2008 at 01:55 AM
takeさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。
そうですよね、競馬はジョッキーにとって命を賭けた戦いでもあります。
彼らもそれを承知で、それでも勝つためにギリギリの騎乗をしてくるのだと思っています。
もちろん、諸手を挙げて褒められるものではなかったかもしれませんが、褒めるべきところは褒めないと、結局は競馬の魅力を伝えていないのと同じなのではないでしょうか。
そういう思いで、あえて強い表現をさせていただいたことをご理解ください。
Posted by: 治郎丸敬之 | September 11, 2008 at 02:35 AM
うーん池添自体が余りにも「この馬が一番強い!俺が巧くエスコートしてやれば勝てる!プライドを取り戻すんだ!」という意識が強すぎてまわりが見えてなかった気がします。
結果馬は本当に強かっただけに残念。横山典ちゃんなんかもああいう内に潜るのは天才的だけど直線はあのような事はしない。
普通に失格でいいのに。JRAはあの事件以降逆にやたら厳しくなっている気がする。貫くのなら貫き通してほしい。
そう言えばヨシトミ先生が日刊スポーツであれはセーフと言ってましたよ。
オディールがもし斜行がなければ3着以内に入れたかは神のみぞしるところだがその可能性がはっきりとある時点でアウトにするべきだと思います。
でしゃばりました。
Posted by: らてぃーる | September 11, 2008 at 07:33 PM
らてぃーるさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、池添騎手は勝とうという意識がかなり強かったのが伝わってきますよね。
結果論で言うと、あれだけの勝ち方が出来たのだから、もう少し待って、馬群が空いてから追い出しても勝っていたのではないかとも思います。
ただ、あくまでもタラレバなので、もし待っていたら負けていたかもしれません。
私はセーフだと思いましたが、この件に関しては色々な意見があって当然だと思います。
どう基準を作っても、完全に公平な基準などありませんから難しいですよね。
>貫くのなら貫き通してほしい。
私もそう思います。
そして、競馬の魅力を伝えるべきメディアの人たちには、池添騎手の上手かった部分もぜひ伝えてほしいなと。
あと全然関係ないですけど、ラティールって懐かしい名ですね。
私も好きでしたよ。
Posted by: 治郎丸敬之 | September 12, 2008 at 01:08 AM