ああゆうこと

天皇賞秋が行われる週になると、いつも決まってあいつのことを思い出します。あいつなんて言うと少々乱暴に聞こえるかもしれないので、ここではAと呼ぶことにします。彼とは高校の同級生であり、よく一緒に授業をさぼって、公園で弁当を食べたりパチンコに行ったりしました。私はこの頃から競馬が好きで、週末になると休み時間には友達と予想を披露し合ったりしていました。
Aは競馬にはあまり興味を示さなかったのですが、なぜかその年の天皇賞秋の前日に私の予想を聞いてきたのでした。私は間髪入れずに、「武豊の乗るメジロマックイーンからプレクラスニーとカリブソングの2点で間違いないね」と断言しました。メジロマックイーンは天皇賞春を連覇したような名ステイヤーですが、ごまかしの利かない東京の2000mならば、距離が短くて負けるということはないと思っていたのです。Aは「そうか」とひとことだけ言うと、くるりと私たちに背を向けて、それ以上は競馬の話には参加しようとしませんでした。
第104回天皇賞秋。メジロマックイーンが不良馬場をものともせずに他馬を6馬身以上も千切った、と思われたのも束の間。進路妨害のためになんと18着に降着となってしまったのです。競馬ファンのどよめきは鳴り止まず、武豊騎手の蒼白な顔と江田照男騎手の戸惑いを隠せない勝利ジョッキーインタビューが印象的でした。
翌日の月曜日、彼は私の顔を見るなり、「何だよあれは!」と食って掛かってきました。私が「競馬にはああいうこともあるんだ」と言うと、彼は「ああゆうことってどういうことだよ?納得できねえよ」と突っかかってきたのですが、「ああゆうことっていうのは、ああゆうことだ」としか私は答えることが出来ませんでした。あれ以来、彼との会話で競馬の話題が登場することは絶対にありませんでした。Aにとって、競馬といえばあの忌々しい天皇賞秋のことで、彼が賭けた最初で最後のレースになったのでした。
その後、私は大学に進学するという安易な道を選び、Aは四輪のレーサーになるという夢を胸に高校を卒業しました。それからも私たちの関係は続き、Aはガソリンスタンドでアルバイトをしながら、お金が貯まるとサーキットに出て練習をするといった月日を繰り返し、一方の私は、競馬漬けの自堕落な学生生活を送っていました。自分が何をしたいのかさえ分からなかった私は、ひとつの道を歩み始めているAがとても羨ましかったのを覚えています。
私が海外に競馬を観に行っている間に、Aはこの世を去りました。アルバイト中の交通事故だったそうです。私は結局、彼にああゆうことを説明することが出来ませんでした。ああゆうことは競馬のレースだけではなく、人生にも起こるということは少しずつ分かるようになってきましたが、ああゆうことがどういうことなのかを説明できる自信はありません。もしあの時メジロマックイーンが降着していなければ、Aと競馬はどういう関係になっていたのだろうかと今でも思います。もしああゆうことがなければ、Aと私は今年の天皇賞秋の凄さについて語り合えていたのかもしれません。
今年の天皇賞秋は凄いレースです。全馬が重賞勝ち馬ということだけではなく、歴史的な名牝2頭が牡馬に胸を貸すという、過去にも未来にもないであろう対決の構図が描かれています。また、もしかすると3世代のダービー馬が揃うかもしれませんよね。ウオッカとダイワスカーレットとのガチンコ勝負も見物のですし、そこに割って入るのはどの馬かにも興味があります。私としては3歳馬のディープスカイではなく、札幌記念を制したタスカータソルテがその1頭になるのではと秘かに期待しています。

菊花賞2
有馬記念
阪神大賞典
天皇賞春1
天皇賞春2
宝塚記念1
宝塚記念2
宝塚記念3
凱旋門賞1
凱旋門賞2
ジャパンカップ
ファイナルフライト1
引退式
ハーツクライ
伝説のウオッカ
メイショウサムソン
スイープトウショウ引退記念
アドマイヤムーン
ダイワスカーレット桜花賞
ディープスカイ
ウオッカ安田記念
伝説の天皇賞秋
ダイワスカーレット有馬記念
Comments
次郎丸さん、こんばんわ
先日はどうもでした。まさかあそこで会うとは^^;
今週の天皇賞も師匠のツテで馬主席で観戦出来ます。
楽しみ、楽しみ^^
メジロマックィーンの降着事件はよく覚えてますよ~
次郎丸さんより、競馬歴だけは長いオヤジなんで。
メジロの馬主さんが執拗に抗議してましたが
リプレイをみるかぎりは仕方ない結果ですね。
競馬には「ああゆうこと」はついてまわります。
今年はメイショウサムソンが出走を取り消し、
3世代のダービー馬対決は夢と終わりましたがウオッカ対ダイワスカーレットという目玉がありますね。
休みあけのダイワに対し、一回叩かれたウオッカはこの府中2000mという舞台で勝てなかったら生涯ダイワには敵わないダービー馬ということになってしまいますね。
今年のG1で目立たない成績の武豊騎手も期するものがあることでしょう。
とにかくつまらないスローなレースにならないことを祈ります(まあ、安藤勝ダイワがいるんで大丈夫と思いますけど)
Posted by: 山人 | October 29, 2008 at 09:46 PM
山人さん
こんばんは。
先日は声を掛けていただいて本当に嬉しかったです。
今週も馬主席なのですね。羨ましい。
競馬を始めたばかりの私にとって、メジロマックイーンの降着事件は衝撃的でした。
あの頃から色々なことを競馬から教えてもらっているんだなあと実感しています。
さて、メイショウサムソンは回避ですか…
私もそうするべきだと思っていたので、良かったです。
世間で言われているほど府中コースが合うとは思わないので、有馬記念でラストランが一番良いような気がします。
サムソンがいなくとも、女傑2頭が出てきますので、たとえスローでもつまらないレースにはならなそうですが、出来ればガチガチの勝負を見たいですよね。
>休みあけのダイワに対し、一回叩かれたウオッカはこの府中2000mという舞台で勝てなかったら生涯ダイワには敵わないダービー馬ということになってしまいますね。
私もまさにそう思います。
あともう少しでライブと天皇賞秋だと思うと、夜もおちおち寝ていられません(笑)
Posted by: 治郎丸敬之 | October 30, 2008 at 12:54 AM