競馬で泣けることもある
by Deliberation
スプリンターズS2008-観戦記-
心配された雨の影響もなく、スプリンターズSが久しぶりに良馬場で行われた。それにもかかわらず、前半33秒6―後半が34秒4、全体が1分8秒0という時計は、スプリンターズSとしては少々物足りない。折り合いを欠いた馬が目立ったように、前に行った馬にとって有利な、非常に落ち着いた流れであった。差し・追い込み馬にとっては、直線の短いコース設定も含め、非常に苦しいレースであった。
スリープレスナイトが真っ先にゲートを出て、レースの主導権を握った時点で、勝負の半分はあった。あとはスリープナイトの行く気とペースに合わせて、位置取りの上げ下げをすれば良いだけだ。ペースがもっと速ければ、もう少し後ろに下げることも上村騎手は考えていたに違いない。それぐらい余裕を持った手綱の握り具合で、鞍下との呼吸もピッタリと合っていた。キンシャサノキセキに外から来られて早めに動いたが、直線に向いてグイッと伸びた時点で勝利を確信したに違いない。上村洋行騎手にとって初めてのG1タイトルであり、これまでの苦難の道のりを思うと、他人事ではなく、嬉しい。
スリープレスナイトは久しぶりに出た生粋のスプリンターである。速いだけのスプリンターではなく、スタミナとパワーに溢れている。褒めすぎかもしれないが、サクラバクシンオーやサイレントウィットネスに感じたような迫力がある。今回のレースでも、1馬身ほど抜け出してからは遊んでいたように、着差以上の力を秘めている。父クロフネからはスピードとパワーを、ヒシアマゾンを辿る母系からはスタミナと底力を受け継いだのだろう。牝馬だけに、この強さのピークをどこまで維持できるかは未知数だが、次は海外にぜひ挑戦して欲しい。そのためにも、この後は休養を挟み、夏に走ってきた疲れを癒してもらいたい。
キンシャサノキセキは、4コーナーでは一瞬やったかに見えたが、最後は勝ち馬に突き放されてしまった。ペースを考えると、早めに仕掛けた岩田騎手の判断は結果的に正しく、もし待っていれば2着はなかったかもしれない。道中で折り合いを欠いていたように、引っ掛かり癖のあるこの馬にとっては流れが遅すぎたことは残念だった。それにしても、最近のキンシャサノキセキの走りを見ていると、函館SSを押して勝ちに行ったことが悪い方向に出てしまった印象は拭えない。
ビービーガルダンは、迷わず先手を奪い、最後まで渋太く脚を伸ばした。落ち着いたペースに恵まれた面はあるが、勝ち馬に早めに来られてのものだけに、価値ある3着である。この馬の地脚の強さを生かして、バテた馬を最後まで粘り込ませた安藤勝己騎手の技術もさすがであった。
スズカフェニックスは展開が向かなかったのひと言に尽きる。前走を叩いて体調はアップしていただけに、先行馬に有利なペースを、後ろから外々を回して追い込まなければならなかったのは不運だった。さすがに昨年に比べ力が落ちている感は否めないが、この馬なりに力を出し切っている。
ファイングレインは、道中でゴチャついてエキサイトしてしまったこともあったのだろうが、それにしても見せ場すらなかった。放牧先から体が減って帰ってきたところから、何とかセントウルSは間に合ったのだが、まだ春の激戦からの疲れが抜け切っていない。G1を勝つような馬でも、連勝が止まるとガタっと来るということは覚えておきたい。
カノヤザクラはスタート後に挟まれて、道中の位置取りが後ろになってしまったことが痛かった。終始、行きっぷりも悪く、今回のレースの展開では力を出し切れなかった。それにしても負け過ぎであり、最終追い切りの動きも悪かったように、直前になって急激に体調が下降線を辿ってしまったのだろう。これが牝馬の難しさである。

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Comments
初めてコメントさせて頂きます。
いつもブログを更新される度に楽しみに拝見しています。
競馬歴は短いのですが、私はG1レースは極力リアルタイムで観戦しています。
それで馬券は毎回ハズレですが、なぜか満足して、それでいて泣けてしまいます(笑)
今回もそうでしたし、これからもきっとそんな気がします…競馬っていいですねぇ。
Posted by: 龍之介 | October 07, 2008 at 02:51 PM
龍之介さん
はじめまして。
いつもご覧頂いているのですね。
本当にありがとうございます。
私もG1レースだけは極力リアルタイムで観たいと願っています。
今年はなにかと忙しくて、録画になってしまったりするのですが、やはり感動は薄いですね。
一番はそのレースが行われている競馬場で生で観ることですけどね。
外れても満足できて(良い意味で)、泣けてしまうなんて、それは最高の競馬のマスターだと思います。
競馬っていいですねぇ。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 08, 2008 at 12:56 AM
スズカフェニックスはパドックでかなり良く見えました。アポロドルチェも。
キンシャサは掛かり癖が酷くなってますね。
完全スプリンター化しちゃったかなぁ~。。。
上村騎手と言えばナムラコクオー。
G1初制覇。長い道のりでした。
うん。久しぶりに感動した。
Posted by: はやひで | October 08, 2008 at 12:17 PM
はやひでさん
こんばんは。
キンシャサはスプリンター化してしまいましたね。
これが短距離を使うことの恐ろしさで、もう1200以上の距離を走っても結果が出ないのではないでしょうか。
ナムラコクオーと上村騎手はとても良いコンビでした。
あれからずっと闘い続けてきた上村騎手に心から拍手を送りたいですね。
Posted by: 治郎丸敬之 | October 09, 2008 at 02:05 AM