「三本木農業高校、馬術部~盲目の馬と少女の実話~」
つまらない映画を観るとつい寝てしまう私が寝なかった。と言えば、この映画の面白さが分かってもらえるだろうか。いや、馬という生き物が好きだからこそ、興味深く最後まで観られたのかもしれない。出産や子別れの場面、そして愛する馬を安楽死させなければならないシーンなど、心を動かされないわけにはいかなかった。あまり期待値を上げてがっかりされるのもイヤなのでソコソコにしておくが、馬が好きな方であれば十分に楽しめる映画である。
私はこの映画に出てくるひとつの言葉が好きだ。病気で視力を失いかけているタカラコスモス(父はサクラシンゲキ!)を担当する主人公の少女、菊池香苗に対し、獣医である坂口が言った、「馬は人間の信頼に応えようとする生き物なの」という言葉である。この言葉に支えられて、主人公の香苗はタカラコスモスのために生きることを決意し、互いの絆を深め合う。そして、「私がコスモの目になる」と周囲の反対の声を押し切って、高校生活最後の馬術大会に、香苗はなんとタカラコスモスをパートナーにして臨むのだ。
「馬と人の歴史全書」の序文にこんな下りがある。
馬は忍耐力に富む忠実な僕で、仕事であれ遊びであれ、主人の要求に応えようという欲求が限りなく強い。(中略)このように多才で献身的な動物に心から敬服できないとすれば、冷酷な人間といわれても仕方がない。優れた騎手は馬を理解しようと努め、パートナーたる馬に学び、共同で仕事を遂行する。(「馬と人の歴史全書」キャロライン・デイヴィス著)
人類の歴史に最も大きく関わってきた動物は馬にちがいない。馬はそういう生き物は、どれだけ苦しい労苦であろうとも、どれだけ無理矢理に速く走らされようとも、自分を信頼してくれている人間の気持ちに応えようと、私たちと共に耕し、共に旅し、共に戦ってきた。だからこそ私たち人間は、まず馬を理解し、信頼しなければならない。それは馬に携わる人間の最低条件だろう。
南関東から転身し、現在、中央競馬の関東リーディングジョッキーの座についている内田博幸騎手が、競馬の魅力について、ある雑誌で下のように語っていたことが印象に残っている。
「生き物と呼吸を合わせるというのはスポーツの中でも特殊ですよ。それは美しいスポーツのひとつじゃないかと思います」
競馬にしても馬術にしても、種別を超えた結びつきがこれほど要求されるスポーツも珍しく、だからこそ美しい。そして、私たち競馬ファンは馬券を買うことで、その信頼関係に主体的に関わることができ、勝利や敗北を共に味わうことが出来るのだ。これが競馬はギャンブルだけではないと言い切れる理由のひとつである。
「三本木農業高校、馬術部」公式サイト
→ http://sannou-bajutsu.com/index.html

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