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あそこから動いたからこそ

Kikka08 by @84 image
菊花賞2008-観戦記-
武豊騎手のノーリーズンがスタートで落馬した2002年を思い起こさせる曇天の下、今年の菊花賞は行われた。前半1000m58秒8-中盤66秒7-後半60秒2という前半が極端に厳しく、中盤が極端に緩んだペースも、その時の菊花賞と酷似している。この年の菊花賞を勝ったのがヒシミラクルだったように、中盤で折り合いが試され、後半でスタミナが問われるという、まさに真のステイヤーを決めるためのレースとなった。

勝ったオウケンブルースリは4コーナー手前から捲くり切っての完勝であった。夏を境に馬体が絞れ、3連勝を飾ったのもあっという間だったが、G1の勲章を手にしたのもあっと言う間だった。前走(3着)は本番の菊花賞を意識して8、9分の仕上がりだったというから、ディープスカイやブラックシェルの抜けたメンバーであれば明らかに力は上位であった。いや、もしその2頭が仮に出走してきたとしても、オウケンブルースリが勝っていたのではないだろうか。パドックでも良い雰囲気で歩いていて、本番に照準を定めて最高に仕上げ切った音無調教師の見事な手腕も光った。

それにしても内田博幸騎手の大胆さには恐れ入った。3コーナーからの下り坂を利用して、一気に捲くり切るのがベストな乗り方だと分かっていても、人気を背負ってしまうとなかなか動けないものだ。菊花賞の1番人気がなかなか勝てないのは、そこにも理由がある。躊躇することなくあそこから勝ちに行った内田博幸騎手の優顔の下に、百戦錬磨の冷たい鉄のような強かさが見えた。今から思えば、トライアルの神戸新聞杯は、折り合いと使える脚の長さを測ったトライアルだったのだろう。夏の上がり馬でトライアルに徹したその豪胆にも只々感服する。

スペシャルウィーク×リアルシャダイという長距離の血が騒いだのか、フロテーションが素晴らしい末脚を見せて2着に突っ込んだ。スペシャルウィーク産駒は寒くなると馬体を絞るのに苦労する馬が多い中、馬体が絞れていたことも大きい。研ぎ澄まされた馬体でパドックを悠然と歩く姿からは、最高の仕上がりが見て取れた。もちろん、藤岡佑介騎手の手綱捌きも素晴らしかった。決して勝ちに行く競馬ではなかったが、一発勝負を賭けた見事な騎乗であった。

スマイルジャックは道中でハミを噛んでしまい、心配されていた折り合い面での弱点がモロに出てしまった。小牧太騎手は自分が下手に乗ったと言うかもしれないが、スマイルジャックのように首の位置を低く保持して走る馬は、一度ハミが掛かってしまうと抑えるのが極めて難しい。道中は前が速いペースで引っ張ってくれて理想的な展開であったにもかかわらず、折り合えなかった以上、スタミナ云々ではなく、現時点では長距離に対する適性がなかったと考えるべきである。

3着に粘りきったナムラクレセントは後ろから切れ味を生かす馬とイメージしていただけに、好走には驚かされたが、和田騎手の好判断で先行したことが吉と出たのだろう。マイネルチャールズは思い切った騎乗をして、あわやというシーンは作ったが、4コーナーでは勝ち馬に捲くり切られてしまったように、この距離ではスタミナと底力の絶対値が足りなかった。セントライト記念の勝ち馬ダイワワイルドボアは外枠からスムーズに進めたが、勝負どころで反応できなかった。馬場が重くなれば結果はまた違ってくるのだろうが、現時点ではスピードの絶対値が足りない。

わが本命馬のロードアリエスは、道中、理想的な位置を進んでいたものの、他馬が動き始めた時に前が詰まって動けなかった。これはロードアリエスだけに限ったことではないが、スタミナに対して少しでも不安があると、内で脚を溜めるような競馬をしてしまい、それが結果的に内で前が詰まってしまうことに繋がってしまうのである。菊花賞で内を進むことはリスクが高く、そのリスクを回避するためにはスタミナに対する自信が必要だということだ。

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