野平祐二の競馬観、私の競馬観
会ったことも話したこともないのに、敬愛してやまない人が誰にでも一人や二人はいるだろう。私にとって野平祐二氏はその一人である。お会いする前にお亡くなりになった。いつかどこかで必ずや巡り会う運命にあった。そう私は信じている。だからこそ、私は野平祐二氏を“祐ちゃん先生”と心の中で呼び、敬愛してやまない。
競馬を始めた頃の私の月曜日は、祐ちゃん先生の観戦記を読むことから始まった。レースの全体像から各馬の走り、各ジョッキーのわずかな動きに至るまで、祐ちゃん先生の観戦記には競馬に対するありとあらゆる見識が埋め込まれていて、示唆に富んでいた。自分の抱いた見解(当時は感想にすぎなかったが)と祐ちゃん先生のそれが一致していれば秘かに喜び、ズレていればその溝を埋めようと幾度も再読した。そんなやりとりを何年も繰り返すうちに、祐ちゃん先生のひと言ひと言が私の血となり骨となっていった。
余談になるが、競馬をどれぐらい知っているかは、その人の書く観戦記を読めばおよそ分かる(と私は思う)。競馬は未来を占う要素がどうしても前面に押し出されてしまいがちだが、知れば知るほど、現実をどう解釈するかの方が大切だと知るようになる。どの馬が勝つのかという予想はうちの家内でも出来るが、さすがに観戦記は書けない。しかも真っ当な観戦記ともなると、競馬を少しかじっているぐらいの人では書けない。あの祐ちゃん先生の観戦記を精読できた経験は、私にとって貴重な財産である。
祐ちゃん先生の観戦記が読めなくなった年の秋、私は「ガラスの競馬場」を立ち上げた。競馬を教わる人がいなくなったという喪失感を乗り越え、今度は自分が競馬について書いていこうと思った。観戦記が読めなくなったのならば、自分で書けばいい(到底及ばないにしても)。祐ちゃん先生に競馬について書くことを許されたような気もした。それが祐ちゃん先生に対する、私にできる唯一の恩返しであった。
あれから7年間、競馬についてありとあらゆることを書いてきたつもりだが、ひとつ大切なことを忘れていたことに最近気が付いた。祐ちゃん先生から教えてもらった競馬観をひとりでも多くの競馬ファンに伝えるということ。これは競馬の神様から私に与えられた使命だろう。残念ながら観戦記ではないが、私がバイブルとして愛読している「口笛吹きながら」が幸いにして今手元にある。その中の言葉を引用しながら、私なりの解釈も加えて、今年ここに復刻させてみたい。

関連エントリ
・「ガラスの競馬場」:君は野平祐二を見たか?
・「ガラスの競馬場」:口笛吹きながら
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Comments
こんばんは治郎丸さん
GIレースが終わると治郎丸さんの観戦記を楽しみに待っている一人です。
「競馬を少しかじっているぐらいの人では書けない」納得です。競馬の予想と反省もできていないくらいです。
さっそく「口笛を吹きながら」をネットで注文しました。商品の説明を読んで、真のプロフェッショナルと感じました。今回もご紹介ありがとうございます。
Posted by: hagi | January 14, 2009 at 12:05 AM
hagiさん
こんばんは。
観戦記を楽しみにしてくれてありがとうございます。
そうおっしゃっていただけるだけで、書く甲斐が生まれます。
生意気言っているようですが、私も野平祐二さんの観戦記に育てられた一人として恩返ししたいだけです。
「口笛吹きながら」を買われたのですね。
こちらでも少しずつ紹介していきたいと思っているのですが、それでは一緒に読み進められますね(笑)
関連リンクに挙げている、「君は野平祐二を見たのか?」もおススメです。
Posted by: 治郎丸敬之 | January 14, 2009 at 02:05 AM
読了しました。
競馬全体に対する愛情あふれる本であっという間に読み終えてしまいました。
競馬の見方もさることながら、その人となりも素晴らしいと感じました。
もと騎手なだけあって、騎手に対してはかなり厳しいですね。
『自分でレースを組み立てて「こう乗って、こう勝ってやろう」と意識
して騎乗できる騎手<中略>それが出来るのは岡部幸雄であり武豊であって
二人以外の騎手のほとんどが、自分でレースを作れない』
と書いています。今の競馬界を見てどう思うのでしょうか?
また、素晴らしいレースを素直に素晴らしいと評価する野平氏が
昨年の天皇賞秋を見て何と言ったのか・・・
次郎丸さんが代弁されていると思ってこれからも観戦記楽しみにしたいと思います。
続けて「君は野平祐二を見たのか?」を読んでいます。
Posted by: ナルトーン | January 24, 2009 at 01:05 AM
ナルトーンさん
こんばんは。
読んでいただいてありがとうございます。
おっしゃる通り、まずはその人となりが伝わってくる文章ですよね。
ジョッキーに対する厳しさは愛情の裏返しでしょうか。
現役の頃から、競馬の世界を客観的に見ていて、もの凄く視野が広い方だったのだと思います。
今の競馬界をどのように見られるのでしょうか?
おそらく、海外や地方から一流ジョッキーが集まり、素晴らしいレースが行われつつある。
その中で若手ジョッキーも力をつけて頑張って欲しいとおっしゃられるのではと勝手に想像しています。
牝馬のクリフジを最強馬に挙げられていただけに、天皇賞秋もぜひとも観て欲しかったですね…
PS
「君は野平祐二を見たのか?」も傑作ですよ。
Posted by: 治郎丸敬之 | January 24, 2009 at 01:51 AM
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