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集中連載:「調教のすべて」第22回

Tyoukyou29

最後に、「本数」について。どれだけの追い切りが掛けられたという回数のことだが、たとえば宝塚記念に臨むにあたってのアドマイヤムーンは、最終追い切りを含めて5本の時計を出していることが分かる(下記参照)。1ハロン15秒以下の時計で走った追い切りが、中間に4本あったということである。

アドマイヤムーン
6/09(土) DW 重 助手      73.5-57.3-42.2-12.0 ⑨ 馬なり
6/10(日) 栗坂 稍 助手      55.8-41.3-27.7-13.9   馬なり
6/13(水) DW 良 岩田   85.4-69.0-53.7-39.5-11.2 ⑨ 一杯
6/16(土) DW 稍 助手 (7)98.4-69.2-55.0-41.1-12.7 ⑨ 馬なり
6/21(木) DW 良 助手 (7)95.6-66.5-52.5-38.3-11.5 ⑨ 一杯

サラブレッドの調教は結局のところ「質×量」に落ち着くと前述したが、追い切りの「本数」とは「量」にあたる部分である。たとえ1本1本の追い切りは軽くとも、多い本数を追い切られれば、全体として馬に掛かる負担は同じになる。

藤沢和雄厩舎の馬たちが馬なりで楽に追い切られているように見えて、実際のレースでは走られる体つきに仕上がっているのは、追い切りの「量(本数)」が多いということでもある。だからこそ、私たちは追い切りの「質(強さ・弱さ)」だけにとらわれてはいけない。どれぐらいの「質(強さ・弱さ)」の追い切りが、どれぐらいの「量(本数)」行われたかということが重要になってくるのだ。

しかし、ここで大切なことは、追い切り以外の運動や短期放牧先での乗り込みなど、私たちの見えないところで進んでいる調教については数字としては表れてこないということだ。追い切り以外の引き運動などを30分程度でサッサと終わらせてしまう厩舎もある一方で、なんと2時間近くもかけてひたすら歩かせる方針を採る厩舎もある。毎日少しずつの違いがレースでは大きな差になって表れるのだが、残念なことに私たちにその違いは見えない。

また、当面レースに使う予定のない馬はすぐに短期放牧に出され、レース直前に入厩させることが当たり前になってきているにもかかわらず、短期放牧先での追い切りの状況などを私たちが知ることはない。入厩してからわずか数本しか時計を出していない馬が、休み明けのレースをあっさり勝利したというケースなど山ほどあるだろう。

つまり、私たち競馬ファンが調教の「質×量」を完全に把握することは本当に難しいということだ。その馬に関わる、ごくわずかな関係者以外には、本当の調教の「質×量」など分かるはずもない。調教師のように馬の調教スケジュールを管理していたり、厩務員のように一日中付きっ切りでもない限り、どうして本当の乗り込み量や運動量などを把握することが出来ようか。調教を見ることの難しさは、ここに集約されていると言っても過言ではないだろう。

(第23回へ続く→)

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