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「ラップギア種牡馬系」 

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ご存知「ラップギア」の進化編である。続編とすべきか進化編とすべきか迷ったのだが、前作における課題が見事にクリアされているのだから、勝手ながらも進化編と銘打たせて頂いた。その課題とは、ラップギアだけでは勝ち馬が絞り切れないレースがあるということだった。たとえば、瞬発戦になりやすいレース(コース)には瞬発馬が集まりやすいということである。シンプルさゆえの弊害に過ぎないと私は思っていたのだが、なんと今回の「ラップギア種牡馬系」では、種牡馬というファクターを用いて、さらなる絞込みが行われているのだ。これを進化と言わずして何と言おう。

イメージとしては、ラップギアという白いキャンバスに、これまでは血統論者だけの領域にあった種牡馬というカラフルな絵の具をぶちまけた感じだ。その結果、ラップギアと種牡馬(血統)の世界との和合性が見事にあぶり出されている。私たちが従来持っている種牡馬の血統イメージを、種牡馬のラップ適性が裏切っていないのだ。たとえば、アグネスタキオンは瞬発戦型【瞬6平3消1】で、フレンチデピュティは平坦戦型【瞬5平4消2】、そしてサクラバクシンオーは消耗戦型【瞬2平4消4】というように、実にシンプルな表記にもかかわらず、これまで膨大な経験やデータから導き出された血統論とほとんど見事に一致するのだ。ラップギアが従来の血統論を裏付けている、と言い換えてもよい。

「優先されるのは個体の個性」という著者・岡村信将氏の考えにも私は同感する。

当たり前のことだが、瞬発戦が得意なサンデーサイレンス系にも消耗馬はいるし、消耗戦に強いミスタープロスペクター系にも瞬発馬はいる。競走馬の適性は父だけで決まるわけではなく、母系の影響を強く受けた馬もいる。アグネスタキオンが産駒に瞬発力を遺伝するからといって、すべての産駒が抜群の瞬発力を備えているわけではない。(中略)予想をする際には、「種牡馬の適性より、競走馬がすでに示している適性を優先」しなくてはならないのだ。

血統を少しかじると、まるで種牡馬や母父や~系といった血の記号が走っているように思えることがある。たとえばミスタープロスペクター系は勝てないというように、目の前を走っているサラブレッドではなく、まずは血統ありきに陥ってしまうのだ。これは大いなる錯覚である。史上最高のジョッキーの一人であるL・デットーリ騎手は、馬に初めて跨る時、血統についての情報は一切耳に入れないという。なぜなら、自分で乗ってみて感じた適性を優先したいと考えているからだ。血統は常に馬の個体の個性の後から来るべきものである。

ちなみに、種牡馬としての傾向とその馬の現役時代の適性には、かなりの関連性があるらしい。そういった観点から、新種牡馬の成否を占っているコラムが興味深かった。ゼンノロブロイの現役時代は【瞬8平4消0】。アグネスタキオンに似ていて、まさに今の時代にマッチしているようだ。【瞬11平2消0】のディープインパクトは、ラップギア的には瞬発力に偏りすぎている印象を受けるがどうだろうか。

逆にタップダンスシチーは【瞬6平12消0】であり、種牡馬としての必勝パターンからは程遠いらしい。母父サンデーサイレンスの助けを借りなければ、生き残りは難しいだろう。面白いのは【瞬3平4消5】というデュランダルである。個人的に、この馬は近年で最も柔軟な末脚を持っていた名馬だと考えているので、その数字には納得するとともに、種牡馬としての大きな可能性を秘めていると感じた。

ところで、ラップギアは突き詰めていくと、ある競馬場のあるコースのある距離において求められる適性に還元されると私は思う。大雑把に言うと、東京競馬場は直線コースが長いため瞬発戦に落ち着きやすく、中山競馬場は同じ距離であっても平坦戦~消耗戦になりやすい。短距離は消耗戦になりやすく、長距離戦になるに従って瞬発戦の色が濃くなってくる。種牡馬の血統イメージだけではなく、ラップギアは従来の私たちの競馬場やコースのイメージとも食い違うことはないのだ。

このことを煎じ詰めていくと、私たちは驚くべき結論に行き着く。わずかラスト4ハロンのラップの増減に焦点を当てた「▼7▼3△5」という簡素な記号が、私たちが知っている競馬の世界を饒舌に語っているではないか!これがラップギアという大発見の本質である。いや、もしかするともっと奥深いところにラップギアの本質はあるのかもしれない。あらゆる要素をラップギアというふるいにかけていけば、一体どのようなものが残るのだろうか。そこには私たちが見過ごしていた、コースなり種牡馬なり何なりの秘密が眠っているような気がしてならない。


関連リンク
「ガラスの競馬場」:ラップギア

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Posted by: 本田健一 | February 12, 2009 at 02:24 PM

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