気迫で逃げ、気合で差し返した
by fakePlace
高松宮記念2009-観戦記-
前半33秒1、後半34秒9といった前傾ラップにもかかわらず、レース全体としてはスローに流れたように感じてならない。開催6日目であること(例年は10日目)によって、芝の傷みが比較的少なく(特に向こう正面は馬場が絶好)、前が非常に止まりにくい馬場状態であった。さらにレースの流れが中盤から落ち着いたことで、後ろから行った馬では勝負にならないレースとなった。全てにおいて恩恵を受けたローレルゲレイロが、まんまと逃げ切った。
勝ったローレルゲレイロは、スタートしてから先頭を取り切れたことが大きい。香港遠征を経て、レースを2度叩き、馬がピークの状態に仕上がっていたこと。また、最初からハナを奪うという決め打ちが出来たことが勝因である。8分程度の仕上がりであった阪急杯でも3着以下に3馬身以上の差を付けているのだから、今回のように馬場や展開に恵まれれば、勝つチャンスは十分にあったということだろう。父キングヘイローと同じ5歳での勝利となり、大外から豪快に追い込んだ父に対し、ローレルゲレイロはスタートからゴールまで逃げ切った、対照的な勝利であった。
それにしても、藤田騎手がハナを主張した時には、意外にも流れが落ち着く。レース前からの口撃のようなものがあるとは思わないが、絶対にハナを取ってやる、下手に絡んでくる奴は許さないぞという無言の圧力がほとばしっているような騎乗であった。ショウナンカンプで逃げ切ったレースは馬のスピードで逃げ切ったが、今回は男・藤田伸二の気迫で逃げ、気合で差し返した逃走劇であった。
惜しくも春秋スプリントG1制覇を逃したスリープレスナイトだが、この馬のスプリンターとしての資質は十二分に示した。仕上がりは悪くなかったが、最後の最後で差し返されてしまったのは、やはり休み明けの影響である。最後の一歩を後押しする心臓までが出来上がっていなかったということに尽きる。どこかでひと叩き出来ていれば、違った結果が出ていたはず。スピードとパワー、そして最後まで走り切る精神力と、過去の名スプリンターと呼ばれた馬たちと比べても、この馬が劣ることはどこにもない。とはいえ牝馬だけに、今後も細心の注意を払ってケアしてもらいたい。
後方から突っ込んできたソルジャーソングやトウショウカレッジ、コスモベルは、勝てる競馬にはならなかったが、内枠と自身の好調を利して見せ場を作った。特に内田博幸騎手との追い比べを制した北村友一騎手にとっては、大きな自信につながる3着だろう。これから先、もっと活躍が見込めるジョッキーである。反対に、出脚がつかず、大外を回して届かなかったファリダットは、もう少しうまく捌けていればと思わせられた。人気を背負っているだけに外を回してしまうのだろうが、それにしても前半のロスがあった以上、後半はもっと思い切ったコース取りをしても良かったのではないか。
有力馬の凡走も目立った。ビービーガルダンは前哨戦の圧勝が嘘のような走りで、見せ場すら作れずに終わってしまった。行き切るならともかく、番手で競馬をしたかったビービーガルダンにとっては、外枠が予想以上に堪えた。左回りが初めてということもあったのだろうが、あれだけ外々を回されては苦しい。アーバニティは4コーナーでゴチャついてしまい、レースの流れに乗り切れなかったが、最後まで一度もガツンと来るところもなかった。前走を連闘で勝ったことによる目に見えない反動があったのかもしれない。キンシャサノキセキは見事なレース運びで、勝ちパターンに乗っていたが、最後は馬が止まってしまった。前回の負け方を含め、以前の勢いが感じられず、ピークを過ぎてしまった印象を受ける。昨年の覇者ファイングレインも全く伸びを欠いた。体調自体は問題ないのだが、血統的に強いクロスを持っている馬だけに、精神面での難しさが出てきてしまっているのだろう。








なぜ安藤勝己騎手がこれほどまでに馬を走らせられるかというと、それは馬の気持ちが分かるからである。もちろん、他のジョッキーも馬の気持ちは分かるのだろうが、安藤勝己騎手はそれ以上に深く分かるということだ。技術的には他の一流騎手と大きく変わることはないのだが、馬の気持ちが分かるという極めて曖昧な部分で、安藤勝己騎手は大きく秀でているのだ。


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