« 高松宮記念を当てるために知っておくべき3つのこと | Main | 中京1200m »

信じ続けること

Jiromaru

高松宮記念の過去の勝ち馬を見渡してみると、ビリーヴという馬だけが、私にはどうしても違った意味合いを持って浮かび上がってきます。スプリンターズSと高松宮記念を制した名牝にして名スプリンターというだけではなく、その名前に宿る魂(たましい)のようなものを感じてしまうのです。

私がビリーヴという名に取り憑かれてしまったのは、まさに彼女がスプリンターズSを勝った時でした。実はこの年のスプリンターズSは、中山競馬場が大規模な改修工事を行っていたため、新潟競馬場で行われました。当時、暇をもて余していた私は、競馬仲間を誘い、彼の車に乗せてもらって生まれて初めて新潟に行ったのです。温泉に入り、絶品のウナギを食べ、美味しそうに地酒を飲む友を眺め(私は酒が飲めないのです)、「セントウルSであれだけの勝ち方を見せられては、明日はビリーヴで仕方ないかな」と語りました。ビリーヴは1番人気になることが予想されたのですが、どちらかというと競馬にかこつけて新潟に行くのが目的でしたので、馬券で旅費を取り戻そうなんて魂胆は毛頭ありませんでした。

新潟競馬場初のG1レースということで、当日の混み様は想像を絶するものでした。下手をすると、東京競馬場で行われるG1レースよりも人が多かったように感じました。車で乗り付けてしまった私たちは、駐車場を探すのもひと苦労で、まるでパドックのように競馬場の周りをグルグルと1時間近く巡回した後、結局、民家がここぞとばかりに提供する庭先に1万円近い駐車料金を払って止める羽目になってしまい、愚痴を言い合いながら競馬場まで歩きました。このあたりから私たちの歯車は少しずつ狂い始めていたのかもしれません。

競馬場に到着した私たちは、まるで初めて競馬場に来た大学生のようにあちこちを探索し、他の競馬場とも大きな違いはないことを確認すると、ようやく馬券に集中し始めました。パドックを見て、返し馬をチェックして、競馬新聞に見入って、馬券を買い、レースを見る。午前中のレースからこられの作業を繰り返していると、明らかな傾向が見て取れたのでした。逃げ馬や先行馬など、前に行った馬がほとんど勝っているのです。秋のG1とはいえ、まだ野芝が絶好の状態を保っていることや、直線が平坦であることも含め、前が止まりにくい馬場だったのが理由でしょう。レースを追うごとに、私の意識は前へ前へと行くようになりました。メインレースであるスプリンターズSが始まる頃には、どの馬が逃げるのだろうと考えている私がいました。

最終的に、私はショウナンカンプの単勝を買いました。考えれば考えるほど(今となれば愚かな網羅思考なのですが)、前年のショウナンカンプの鮮やかな逃げ切り勝ちが思い起こされ、この馬が逃げたら今日の馬場では止まるはずはないとまで思い込んでしまったのです。もちろん、ビリーヴが思っていた以上に人気をしていて、妙味がなくなっていたということもありました。駐車料金を取り戻したいという打算も働いていたのでしょう。結果はご存知のとおり、武豊騎手に導かれたビリーヴは、ショウナンカンプ、アドマイヤコジーンという牡馬G1馬2頭を内からスルスルと差し切り、勝利を収めました。

帰りの車中で、私は観戦記を書きながら、「ビリーヴか…。ビリーヴを信じられなかったなぁ」と呟きました。そして、観戦記のタイトルは、シェイクスピアのハムレットをもじって、「To believe or not to believe」としました。信じるか信じないかそれが問題だと。私はビリーヴの強さを信じることが出来ず、前に行った馬が止まらないというトラックバイアスに囚われてしまっていたのでした。評論家の小林秀雄は自身の講演で、「信ずるということは諸君が諸君流に信じるということで、知るということは万人のごとく知るということ。人間にはこの2つの道がある」と語りましたが、私はビリーヴを信じることが出来ず、万人のごとく知るという道を選んでしまったのでした。

競馬や馬券は自分流に信じることが大切ですよね。自分流に信じることが出来るかどうかを問われているとも言えます。いや、競馬や馬券だけではないのかもしれません。私がこうして生きている中で、ほとんど毎日が後悔の連続で、その後悔はやはり自分流に信じられなかったというものばかりです。成功は曲がり角を曲がったすぐ先にあるのに、自分流に信じられなかったことで、その角を曲がらずに来てしまったことがこれまでたくさんあったかなぁと。今は、信じることよりも、信じ続けることの方がもっと大切だと信じています。もし一度信じることが出来かったとしても、信じ続けることが出来れば、私たちはいつか成功の曲がり角を曲がれるはず。ビリーヴは翌年の高松宮記念で、私たちにそう教えてくれたのでした。


高松宮記念での復活には本当に驚かされました。


関連リンク
「ガラスの競馬場」:稀有
「ガラスの競馬場」:To believe or not to believe

現在のランキング順位はこちら

|

Comments

こんばんは。

今年はどの馬を「信じる」のか予想を楽しみに
しております(^^)

ビリーヴの仔、ファリダットはキングマンボから
スタミナを受け継いだ美しい馬ですね。
持っている雰囲気が魅力的で個人的に好きな馬です。
ただ、おかげで短距離・・というイメージが
なくなった印象・・・。
いっそ、先行してくれたらどんな競馬をするのか
興味深いのですが、ひとまず後方からになりそうですね。

信じる、という意味では昨秋にスプリンターズSを
考察しているときに感じた、
「高松宮記念を制してもスプリンターズSを勝てないが、
スプリンターズSを勝てば高松宮記念も勝てる(かもしれない)」
という直観を信じてみようかな、と思っています(^^)

もちろん、考察優先なんで結論は変わるかもしれませんが
自分流に信じる馬を見つけてみたいですね。
今年最初の芝G1、好レースを期待しています♪


Posted by: けん♂ | March 25, 2009 at 03:43 AM

まいどです♪

久々にG1weekがやってきましたね。
前哨戦としては、ビービーガルダンが一歩も二歩も抜けていると感じていますが・・・
そのまま信じるか、結構頭を抱えています。

「自分流に信じる」こと、難しいですよね。
昨日まで「この馬が一番強いって!」と、周りに言っていたのに
色々な情報に惑わされ、自分でグルグル周り、
なぜか違う馬券へ到達・・・
なんてことは、良くありますねぇ。
そうですね、網羅思考の愚かさ!忘れていました。
復習しておきます、先生!

「信じる」ことに関して言えば、
一般的に女性の方が上手だと感じています。
「好きな(買いたい)馬≒強い(強かった)馬」という単純明快な組み立てが
出来るからでしょうか・・・それとも・・・
オッズに惑わされ易い男性が、ホトホト愚かなせいでしょうか(笑)
「信じる者は、救われるのですよ~。」と、
何度、嫁はんにニンマリされたことか・・・

今年のG1も、もうすぐ怒涛の様に押し寄せてきますが
今まで通り、治郎丸さんと同じく単勝で攻めますよ♪
お互い「競馬サイコー!」と、また叫びましょう☆

Posted by: enokeiz | March 25, 2009 at 10:37 PM

けん♂sann

こんばんは。

ファリダットはビリーブが海外で受胎した仔ですから、血統的にはBelieveと英字になるのですよね。

おっしゃる通り、ファリダットはスタミナを父から受け継いでいるはずですが、現状では気が勝っているので短距離が良さそうな印象を受けます。

おっしゃるように、今回は四位騎手が馬を出して勝ちに来るような気が私もしますね。

そういう競馬をした時に、この馬がどのような走りをするか見てみたいものです。

私が信じたい馬はもう決まっているのですが、最後まで信じ続けられるかどうか心配です(笑)

Posted by: 治郎丸敬之 | March 26, 2009 at 01:07 AM

enokeizさん

ご無沙汰しております。

ビービーガルダンは強い競馬をしましたね。

先行してパワーで押し切りたい馬なので、ああいう競馬になると強さを発揮しますよね。

もちろんここに来てさらに強くなっています。

安藤勝己騎手も、体がふたつ欲しかったのではないでしょうか。

武幸四郎騎手にとってはプレッシャーだなぁ(笑)

そう、自分流に信じることって、本当に大切ですが、難しいことだと思います。

おっしゃる通り、男性に比べ、女性は自分流に信じることが得意ですよね。

だからこそ、私たち男性は意識して自分の感覚を信じる練習をしなければならないのだと思います。

そうして自分の壁を乗り越えたとき、「競馬サイコー!」って叫べるのでしょう。

私も単勝で攻めますよ!

Posted by: 治郎丸敬之 | March 26, 2009 at 01:12 AM

Post a comment