ディープスカイの無類の末脚が
ディープスカイとスペシャルウィークが重なって見えて仕方ない。馬体や雰囲気や似ているということではない。ディープスカイは栗毛で派手な流星を携えたグッドルッキングホースであり、ゴムマリのような馬体からは爆発力が溢れている。対して、スペシャルウィークは黒鹿毛のスラリとした薄手の馬体で、まさに究極のマラソンランナーのそれである。姿かたちこそ異なれ、ダービー馬としての後の戦績において、私には両者の姿がダブって見えるのだ。
スペシャルウィークは武豊騎手に初のダービー制覇をプレゼントした後、休養に入り、青写真どおり京都新聞杯で始動した。当然のようにステップレースを快勝したが、必勝を期して臨んだ菊花賞では、セイウンスカイに逃げ切りを許し、まさかの敗北を喫してしまった。続くジャパンカップでも、3歳馬ながらも1番人気に推されたものの、最後の直線でフラついてしまい伸び切れずに3着に敗れた。ファンであった私にとって、3歳の秋の走りは、どうにも不甲斐ないという表現しか見当たらなかった。まだ完成されていなかったというよりも、何かスペシャルウィーク本来の力を発揮できていないように感じていた。
ディープスカイも同じような軌跡を辿っている。ダービーを大外一気の脚で差し切った後、秋緒戦の神戸新聞杯を完勝して復帰戦を飾った。しかし、距離適性が考慮され、菊花賞ではなく天皇賞秋に矛先を向けたところは異なるが、ひと叩きされた本番では、古馬牝馬を相手に3着と敗れてしまった。天皇賞秋は超がつくハイレベルのレースとなったものの、それでも牝馬に追い比べで負けしてしまった走りには少し不満が残った。さらに続くジャパンカップでは、上がりの競馬になり、後方からレースを進めたディープスカイには不利な展開となったが、それでも直線で交わせそうで交わせない末脚に不甲斐なさを感じた人も少なくなかっただろう。
それもそのはず。ダービーを勝つことによる反動は凄まじいのである。ダービーを勝つためには、極限の仕上がりが要求される。目一杯の調教に耐え、レースでは自身の持つ力の全てを使い切るほどでないとダービーを制することはできない。ダービーとは、それほどまでに苛酷なレースなのである。そして、ダービーで全ての力を使い果たした馬を、わずか数ヶ月で再び元の状態に持って行くことは至難の業である。
さらに難しいのは精神面での回復である。極限の状態で苛酷なレースを制した馬は、その後、精神的に燃え尽きてしまうことが多い。それが一時的なものになるか、完全に燃え尽きてしまうかはそれぞれだが、他馬に抜かれまいとする闘争心、苦しくても走り続ける気力が失われてしまうのだ。肉体的な疲労に精神面での燃え尽きも加わって、ダービー馬はダービー後に一時的なスランプに陥ってしまうのである。スペシャルウィークやディープスカイが見せた不甲斐なさは、今から考えれば、トップアスリートの宿命である一時的なスランプだったのだ。
スペシャルウィークとディープスカイの凄さは、そんなスランプの状況においても、厳しいレースの中で格好をつけていたということである。肉体的にも精神的にも、決して良いコンディションではなかったにもかかわらず、自分自身に鞭打ってライバルや歴戦の古馬に食い下がったのだ。スペシャルウィークはジャパンカップ後に一旦休養に入り、完全にリフレッシュされてからは、まるで馬が変わったかのような蘇りを見せた。天皇賞の春秋連覇、ジャパンカップの栄冠を手に入れ、ラストランとなった有馬記念でもグラスワンダーと死闘を繰り広げた。
ディープスカイもジャパンカップ後に休養に入り、今週の産経大阪杯から始動する。あの状態でウオッカとダイワスカーレットに食らい付いたのだから、肉体的にも精神的にも疲れが完全に抜け切った暁には、とてつもない強さを見せてくれるに違いない。日本で天下を獲るだけではなく、スペシャルウィークの果たせなかった海外への道をひた進んで欲しい。昆貢調教師は高松宮記念を勝ったローレルゲレイロを「10年に1度当たるかどうかの馬」と称したが、ディープスカイは何十年に一度の馬なのだろうか。どこまでも伸びゆくディープスカイの無類の末脚が、今から楽しみでならない。

菊花賞2
有馬記念
阪神大賞典
天皇賞春1
天皇賞春2
宝塚記念1
宝塚記念2
宝塚記念3
凱旋門賞1
凱旋門賞2
ジャパンカップ
ファイナルフライト1
引退式
ハーツクライ
伝説のウオッカ
メイショウサムソン
スイープトウショウ引退記念
アドマイヤムーン
ダイワスカーレット桜花賞
ディープスカイ
ウオッカ安田記念
伝説の天皇賞秋
ダイワスカーレット有馬記念
Comments